リュカとクマトラの間に子供が出来た事が分かったのは、最後の戦いから一ヶ月程経った日の事だった。  
 
闇のドラゴンは光のドラゴンとなり、滅びた大地を蘇らせ、キマイラ達を全て元の動物の姿に戻した後、天へと上っていった。  
ニューポークシティは崩壊し、タツマイリの村もボロボロにはなったが死者は一人もおらず、皆で元の町並みを取り戻そうと必死に復興に向けて努力した。  
当然その中にはフリントもいる。ダスターも。リュカも。…そしてクマトラも。  
育ての親であったマジプシーのイオニアが役目を終え、消滅してしまった時、  
彼女は帰る場所を完全に失った。  
そんな時…、声を掛けたのがリュカだった。  
顔を例えられないぐらい真っ赤にして…"僕の家で、羊の世話でもしないかい?"と。  
勿論、クマトラは二つ返事で受け入れた。イオニアも、それを望んでいた気がしたから。  
そして。…リュカと一緒にいられるから。  
リュカの方にも、勿論下心はあった。  
クマトラと片時も離れていたくない。そして、いつの日か"その時"が来たら…。  
 
だが"その時"は、それから一ヶ月後に訪れた。  
何時ものように羊毛を刈って、糸を紡いでいた時…。クマトラは突然吐き気を催した。  
それが何を意味していたのかは、当の彼女にも、リュカにも。薄々感づいていた。  
妊娠…していた。リュカの子供を。三ヶ月めに入っていた。  
医者から告げられてから、リュカはクマトラに即、"その時"が来たときの事を実行した。プロポーズを…。  
とは言っても、一ヶ月前の言葉がとっくにプロポーズになっていたのだが。  
 
当然、周囲は混乱した。"早過ぎる"と反対の声もあった。  
14歳の少年と16歳の少女。論理的に言えば当然と言えば当然かもしれない。  
そんな二人に最後まで味方した大人は、ダスターとフリントの二人だけだった。  
それでも、リュカは無我夢中で皆を説得した。もうこの流れを止める事は出来なかった。  
あの大人しかったリュカが見せた猛り狂う程の情熱に後押しされ、二ヶ月もしないうちに反対の声はなくなった。  
イノリバの場所で慎ましく行われた挙式の際、フリントはただ一言だけ、こう言った。  
 
「俺は、肝心な時に母さんを…、ヒナワを守ってやる事ができなかった。  
お前は…、その子を一生懸けて守ってやれ」  
 
そして五ヶ月後。青空に流れるような美しい雲が広がっていた夏の日…。クマトラは元気な男の子を産んだ。  
太陽のような橙色の髪をした、リュカにとてもよく似た男の子を。  
若くして祖父となったフリントは、その子に"クラウド"と名付けた。  
あの雲のように皆を包み込める心を持てるように。  
そして、自分の息子の一人…、クラウスが、再び帰ってきてくれたのだと言う願いを込めて。  
リュカは、その子を抱いた時、一筋の涙を零して……こう呟いていた。  
 
「また会えたね」と…。  
 
こうして、リュカとクマトラは、新しい家族と共に幸せな生活への一歩を踏みしめた…。  
 
…かに見えた。  
リュカはその数ヶ月後、育児間における最大の危機に直面していた。  
 
「ぜん………。っぜん"してない"だと?」  
ここは、新しいタツマイリ村の新村長となった、ダスターの家。  
そこのダイニングテーブルで、リュカはぐったりと頭を乗せていた。  
「うん…。キスが精一杯……」  
「何やら大変みたいね…。はい、あなた。リュカちゃん」  
リュカ達から遅れて半年後にダスターと夫婦になったテッシーが、ジャナイカティーを容れてダスターとリュカのテーブルに置いた。  
「お。有り難う」  
テーブルの上には、顔に隈を作っているリュカの頭といい香りのするジャナイカティーの他に、今月発表する予定のDCMCの新譜の楽譜。  
タイトルは『SMILES and TEARS』と読める。  
彼は新村長になったとはいえ、DCMCのメンバーを止めた訳ではない。  
ダスターもまた、多忙な毎日を送っているのだが、自分の弟分のようなリュカの悩みと聞いたら、聞かないわけにはいかなかった。  
…村民会議をサボってでも。  
リュカは本来は、頼まれていた羊毛の織物を届けに来たのだが。  
旅の間何かと頼れたダスターに、思いきって悩みを打ち明けてみたのだ。  
「…もうちょっと、詳しく話してみろよ」  
「……わ、分かったよ…」  
リュカの話だと…。  
 
〜回想。昨日の晩…〜  
『クマトラ…』  
『ん……、リュカ…』  
仕事が終わり、ご飯も食べ終わり。一段落した時、二人は導かれるようにキスを交わす。  
啄むようなキスが、段々と濃密なものに変わっていく。  
ここまではいい。だが…  
『ほぇぇぇーー! ふぎゃあああ! ほにゃー! ほにゃー! ほにゃー…』  
クラウドは、あまり寝付きがいい方とは言えなかった。  
『あ…、またぐずってる! ご、ごめんリュカ!』  
一瞬にしてリュカの下から瞬間移動するかの如く、愛する息子の元に駆け寄るクマトラ。  
お腹が空いているのだと察すると、胸をはだけさせて母乳を与える。  
その姿は、強気で男勝りな普段とはまるで別人の、完全に母親の姿だった。  
リュカはそんな愛する彼女と我が子の姿に、幸せで満たされていく。  
そして、戻って来てぐったりとベッドに横になるクマトラを見ると…、  
どうしても"抱いてやろう。むしろヤる!!"って気にはなれなかった。  
3時間ごとにこれを繰り返している上に、自分以上に安眠が必要な彼女を見てると、頭を撫でてキスするのが精一杯だったのだ。  
だが…。そんな頭とは裏腹に、下半身は完全に別人格だった。  
クマトラが完全に寝た後にこっそりとトイレに向かい…。  
お陰でリュカ家でのトイレットペーパーの消費量が多い事。  
終わった後には、何やら空しい気持ちと我が子に嫉妬してしまってる罪悪感だけを感じてしまう。  
そんな悶々とした日々が、もう半年近く続いていると言うのだ……。  
 
「そんで……、なんか僕、そのうち襲っちゃいそうで…」  
殆ど惚気話に近い。って言うか惚気話。  
でもまぁ、話を聞いてるとリュカのクマトラへの心遣いと愛だけは感じ取れる。  
ダスターはウッドベースの手入れをしながら、一つ溜め息を落とす。  
「確かにそれは辛いな…」  
端から見れば贅沢な悩みである。  
だがリュカは一児の父になったとはいえ、まだ15歳の少年。やりたい盛り真っ盛り。  
自分が15歳だった頃を頭に浮かべたダスターは、そのもどかしさと辛さが痛い程理解できた。  
「うーん。せめて通じと食事の時だけは何とかしてやりたいところだな」  
「そうなんだよね…。あやしても直ぐに寝てはくれないし、僕よりもクマトラの方が身体壊しちゃうんじゃないかなぁ〜って思うんだよ…」  
しかしまぁ、子供の時から知ってる泣き虫で甘えん坊なリュカと、あのガサツで、男言葉でおっちょこちょいなクマトラが今や夫婦になって育児の事で悩んでるとは。  
こうして第三者の立場から言えば、微笑ましくもあるけどかなりの凸凹カップル。  
一年とちょっと前までは想像すらできなかっただろう。  
そんな二人を短い間とはいえ間近で見て来た立場としては、何とかしてやりたいという気持ちになる。  
暫く考えて…ふと、ダスターの頭に一つの案が浮かぶ。  
「…リュカ。こんなんはどうだ? ………………ゴニョゴニョ」  
ウッドベースをテーブルに置いて、リュカの耳に頭を向けてボソボソ声で話しかけた。  
「…ええっ!? そ、そんな事?」  
「ま、まぁ、これはかなりキケンな事だからな…一回しか無理だろうな…」  
「…方法。教えてくれる?」  
「マジか!?」「マジです…」  
やがて二人して部屋の隅に行き、あれこれと男同士で内緒話をしてるうちに…。  
お互いの背中を叩き合い、声は大きな笑い声になった。  
「二人とも、なーにこそこそ話し合ってるの?」  
そんな二人を見てテッシーが話の輪に入ろうとするも。  
「「フフフフフ……」」  
テッシーの方を向いた二人はにへら〜、と不気味な笑いを浮かべるだけだった。  
「……!?」  
テッシーはその笑いに、不吉な予感を感じずにはいられなかった…。  
 
 
そしてダスターの家に織物を届けに行ってから二時間後に、リュカはクマトラの待つ自分の家に帰ってきた。  
「ただいまー!」  
「あ、お帰り〜!」  
玄関のドアを開けると、愛息を抱いたクマトラが、ぺたぺたとサンダルの音を立てながら迎えてくれた。  
ドアを開けた途端、ポトフのいい香りが鼻に漂ってくる。  
「ワン、ワン!(お帰りなさーい!)」  
そして晩ご飯を貰ったばかりのボニーも、元気な声を上げる。  
「ごめんね。ちょっと遅くなっちゃったよ」  
「いいんだって…。ほーらクラウド〜、パパが帰ってきたぞ〜♪」  
クマトラが嬉しそうに揺さぶるようにあやすと、クラウドも天使のように微笑んでくれた。  
リュカも愛息の頭を撫でながら、クマトラのおでこにそっとキスする。  
いつも帰ってきた時のこういう風景が、リュカは大好きだった。  
数年前まで殆ど独りぼっちで重苦しい空気だった自分の家が、こんなにも明るくて、楽しくて…幸せな空間になるなんて。  
リュカはダイニングの椅子に腰掛けると、テーブルの上に三十センチぐらいの紙袋をどさりと置いた。  
「はい。テッシーさんが書いてくれたジャナイカティーのレシピと茶葉。  
それと…来月のDCMCのライブのチケットだよ」  
「おっ、さーんきゅー! これでオレ達の家でもテッシーさんのお茶が飲めるな…  
…って、あれ?」  
クラウドをベビーベッドに置いたクマトラが紙袋の中身を取り出していたら。  
「どうしたの?」  
「いや……。ライブのチケットが三枚入ってる」  
「三枚? アレ…」  
リュカも覗いてみると。DCMCのライブ(特別ゲスト、エントツ&アチャト。漫才師として成功したらしい)のチケットが確かに三枚。  
二人してふと考える。  
二枚は自分たちのもの。クラウドは赤ちゃんだからチケットは必要ない。  
と、言う事は……。  
「「ひょっとして…」」  
二人の脳裏に、外にいる愛犬が浮かんだと同時に、一年半前の"あの姿"が目に浮かんだ。  
「「ぷ──────────っ!!」」  
同時に吹き出す。  
「あっはははは…! ひょ、ひょっとして"イヌてきなおにいさん"の分??」  
「ぷっくくく…! も、もうそうとしか考えられないよ!!」  
「じゃ、じゃあ今度はもっと完璧な変装をしてやらなくっちゃな! あはは…」  
「そ、そうだね…! ヅラでも被せなきゃ…はははは」  
二人して笑ってる中、その当の"イヌてきなワンさん"は、訳も分からずくしゃみを一回するのだった。  
 
二人して笑ってる中、その当の"イヌてきなワンさん"は、訳も分からずくしゃみを一回するのだった。  
そして一通り笑ったら、クマトラがふと気付く。  
「…そう言えば。織物を届けに行っただけなのに随分遅かったなぁ?」  
「あ…。うん。ダスターとつい話し込んでてさ」  
「ふーん。…どうしてだ?」  
「いゃあ、さいみ…んがんぐっ!」  
リュカは慌てて口を塞いだ。  
クマトラの眼が、疑惑の眼差しに変わる。  
「さいみ…何だって!?」  
「い、いゃあ、なんでもないですよ??」  
「絶対?」  
「ぜ……絶対ゼッタイ!」  
完全にジト目のクマトラに、元来ウソはつけない性格のリュカは必死で潔白を訴えた。  
そんなリュカの眼をジーッと見て、クマトラはクスリと微笑む。  
「……ま、いいか。そろそろご飯の時間だし、もう止めにしょう!」  
そう言うと鼻歌を歌いながら、台所に向かって行った。  
リュカはそれを見届けると、心の中でホッと胸をなで下ろす。  
こういう時にだけ、大雑把な彼女の性格が幸運を招いてくれる。  
今はまだ、知られるわけにはいかない。  
例え知った時に、PKスターストームを喰らってでも…!  
取りあえず実行は今夜9時頃と、心の中で固く誓ったのだった。  
 
そして…。  
夕食のポトフを食べて、刈り取った羊毛の片付けをして、クラウドのおしめを取り替えて…としていたら、あっという間に時間は午後の9時を回っていた。  
二人とも寝間着に着替えて、ベッドルームに。  
勿論二人の使ってるベッドの直ぐ隣には、クラウドのベビーベッドがある。  
食事を終えたばかりのクラウドは、"今の所は"すやすやと寝息を立てている。  
リュカは愛息の頭を撫でた後、ベッドにどかりと腰掛けた。  
「…おいで」  
クマトラも頷いて、リュカの隣にちょこんと腰を下ろす。  
彼の背は、もう完全に自分に追い付いていた。恐らく抜かれるのも時間の問題だろう。  
「リュカ。今日もお疲れ様」  
「そっちこそ」  
二人して笑い合って、今日の出来事とか世間話とかをする。  
こうして見てれば、何の変哲もないごく普通の少年と少女のカップルでしかない。  
そのうちに、リュカの左手がクマトラの右手をそっと握って…。  
「…クマトラ。あ、その…久々に…」  
一瞬、クマトラの目がテンになる。  
言葉の意味と、赤くなってる彼の顔を見て、ようやく理解したクマトラも頷いて握り返す。  
「…うん。オレも…、いいかな…」  
そして二人して向き合い、唇を近づけ…  
「ふぎゃああー! おぎゃああー、ほにゃー……」  
ようと思った矢先、愛息の泣き叫ぶ声。  
「あ…また。ちょ…」  
リュカは立ち上がろうとしたクマトラを、そっと静止させて自分が立ち上がった。  
「いいから。黙ってて」  
そう言うとスリッパも履かずにベビーベッドの方へ。  
クラウドを抱きかかえると、鼻を近づける。…お通じではない。  
食事も一時間前に母乳を飲んだからまだ大丈夫。多分、ベッドの軋む音に反応したのだろう。  
「(…よし! ごめんよクラウド…!!)」  
リュカは意を決し、クマトラに背を向けて胸ポケットに入れておいた"あるモノ"を取り出し…。  
「{ウエス流泥棒術秘奥義!!}」  
 
…すると一分もしないうちに、愛息のぐずる声はピタリと止み、心地良さそうな寝息だけが聞こえてきた。  
「…もう大丈夫だよ」  
ベビーベッドにそっと寝かせると、クラウドは今までにないぐらい完全に熟睡していた。  
「す、すごいじゃないかリュカ! どうやったんだ?」  
「ま、まーそのー…。いわゆる一つの、"パパの愛"ってやつ?」  
リュカは気付かれないように、そのブツをお尻のポケットにサッとしまう。  
「何だよー。それじゃあオレの愛が足りなかったみたいな言い方じゃん」  
「そうは言ってないって…。でもどうせだったら!」  
「うわっ!?」  
隙を見てリュカはクマトラに抱きつき、そのままベッドに押し倒す。  
今度はクラウドも起きない。多分これで丸々三時間は解放してくれるだろう。  
「…リュカ?」  
「今だけは…その愛は僕の方に向けて欲しいかな?」  
少々気障っぽい言い方だが、クマトラは不思議と逆らえなくなる。  
リュカのその、真っ直ぐで奇麗な瞳に見つめられると。  
「…いい、よ。向けて、あげる」  
「……ありがと。クマトラ……」  
そして先ほどはできなかったキスをする。  
啄むように、何度も、何度も。  
「ん…」  
クマトラもリュカの首に腕を廻して、積極的にキスに参加した。  
「ん、ッつ、は…クマトラ……」  
「ふ…、んん。あ…、リュ、カぁ…」  
やがてどちらともなく舌が絡んでゆくと、無意識のうちにお互いのさっき着たばかりのパジャマを脱がし合っていた。  
 
そして名残惜しそうに唇と舌を離すと、二人はベッドの上では実に久しぶりに、下着だけの姿で向き合う。  
「奇麗だよ、クマトラ。久しぶり…だよね」  
「ん…そ、そうだな。でも…」  
「でも?」  
「…リュカだけズルい」  
「へ?」  
一瞬、訳が分からずに間の抜けた声を上げるリュカ。  
何が? 自分もトランクス一枚で見下ろしてる以外には立場は同じ筈だが。  
「なんかリュカだけ…大きくなってズルいぞ…。  
背とか、肩とか。お腹だって…割れちゃってるし」  
クマトラはすっかり逞しくなってきてるリュカの肩や腹をそっと指で撫でながら呟く。  
確かにこの一年半の間に、リュカは背も体格も見違える程逞しくなっていた。  
少年から青年へと変わる二次成長期としては当然の成長と言えるのだが。  
リュカはクスっと微笑んだら、彼女の艶やかに濡れた唇をペロリと舐めた。  
「ひゃ、あ…」  
「可愛いよなぁ…クマトラってさ」  
「な…! か、からかうのはなしだぞ?」  
「何で? 自分のハニーの事を誉めて何が悪いのさ?」  
「なななな??」  
赤くなってるクマトラの顔が、更に真っ赤になる。  
いつの間に、こんな恥ずかしい言葉を惜しげもなく言えてしまう男の子になってしまったのだろう?  
 
「それに、クマトラだって…胸とか」  
リュカの手がそっと、白いレースのブラの上から前よりも豊かに膨らんだ乳房に触れる。  
マシュマロのように柔らかく、弾力に富んだそこはリュカの指に吸い付くように収まり、形を変える。  
「ん、あ…バカぁ、し、仕方ないだろぉ…」  
「そうだよね。クラウドに飲ませてあげる為だし」  
「それ、だけじゃない……。  
…揉んで揉んで揉みまくったのは何処の誰だよ!?」  
「……僕です。申し訳ない」  
ブラのホックを外しながらつい反射的に、頭を下げてしまうリュカ。  
「ん…。よろしい」  
そんな彼を見て、さっきのお返しとばかりにクマトラの方がリュカの唇を舐める。  
「オレはもう、身も心もとっくにぜーんぶ、リュカだけのモノなんだぞ?  
…だからもっと…、リュカの色で染めて? あ・な・た」  
「……………っ!!」  
うっとりと艶かしい視線で彼を見上げながら、"おいで"と言わんばかりに手を広げる。  
"もの"発言と"あなた"発言にリュカはもう堪らなくなってしまう。  
「そ、それじゃあ、もっと染めてあげるよ。僕だけのお姫様…」  
「…ん、どうぞ…。オレの王子様…」  
彼女が瞳を閉じたら、先ずはおでこに、赤くなってるほっぺに。何度も何度もキスの雨を降らせる。  
首筋や鎖骨の辺りにはワザと強く吸い付いて、赤く痕を残す。  
そう言えばまだ馴れていない頃に付けてしまったキスマークは、温泉とかに入る度に二人して必死に言い訳を考えていったけ。  
ダスターにはもうとっっっっっっっくにバレバレだったんだけど。  
 
そう言ったたわいもない事を思い出しながら、リュカの顔はたわわに実り、既に食べ頃を知らせている桃色の果実に近づく。  
「クラウドの飲んでる所を見てて…、ずっと飲んでみたかったよ」  
両手で優しく揉みながら、先端に吸い付く。  
「んひゃっ! あ、だ、めぇ…!」  
リュカの口の中一杯に、母乳の甘ったるい味が広がってゆく。  
初めてハッキリと味わった味なのに、妙に懐かしい感じを覚えてしまう。  
「ん、………っ! 美味しいよ…。クマトラ…」  
もっと味わいたくて、今度は両方の乳房を寄せて、纏めて吸い付いてみる。  
「や、あ…! クラウドの分…なくなっちゃうだろぉ…ああんっ!  
(な、なんだか…、おっきな赤ちゃんみたいだなぁ。男の子って皆こうなのかな?)」  
クマトラは無意識のうちに彼の奇麗な金色の髪を撫でながら、愛息に母乳を与えてる時では味わえない快感に酔い痴れた。  
「…クマトラも飲んでみる?」  
「え? ん、んんっ!?」  
リュカの突然の言葉の後、クマトラの唇が返事をするまでもなく塞がれる。  
「んん、んー…ごく、んぐぅ……」  
即座にクマトラの口の中にも、牛乳とも違う味が口移しで注がれてゆく。  
口移ししてる間に、リュカの手は彼女の腰の下に伸びて、ショーツをそっと下ろしていた。  
やがて彼女が全部の見切ったのを感じたら、唇を離して隙間から零れた唾液と母乳がブレンドされた汁を舐めとる。  
「…美味しかった?」  
「ン、あ……、っ、ぅん…」  
頷きながら、うっとりとリュカを見つめてくるクマトラ。  
愛しさと嬉しさと快感、そして色っぽさが複雑に混じり合ったその表情は、  
肌を重ね合う度に何度も見てきた筈なのに、今でもリュカの胸を締め付け、熱くさせる。  
久しぶりに見れたその顔に、リュカは改めて  
"染め上げられてるのは僕の方なんだろうな"  
と確信するのだった。  
 
「じゃあ、今度は…」  
自分の指を舐めて、彼女の甘く香り立つ莟へと手を伸ばしてそっと触れる。  
「!! ひゃ、あ…!」  
触れたその場所は既に滴り落ちる蜜でとろとろに濡れて、水飴のようにリュカの指に絡み付いた。  
「やっぱり、感じやすいのは変わってないね」  
「っぁ…、バカぁ…」  
恥ずかしさで顔を俯かせるクマトラ。  
その表情を見て、彼の心にある悪戯心が浮かんだ。  
「…亭主の事をバカ呼ばわりする奥さんには…お仕置きしなきゃ!」  
そう言うなりリュカは彼女の蜜壷に指を一本、ずぶりと挿し込む。  
「えっ? あっ…! だ、ダメぇっ……やぁぁんっ!」  
挿し込んだら、膣で曲げて、天井の方を弄り回す。  
「クマトラ、ここが良かったよね?」  
「ンあ、そんな、あっ、事…んあ、言うな、よぉ……あ、あー…!」  
じゅぷじゅぷとワザと音を立てて、悪戯小僧のように羞恥心を煽る。  
「ほらほら。どんどん溢れてる。前よりも感じやすくなったんじゃない?」  
「ひゃん、あっ! ん、リュ、んぁ、カぁ、あっ! はっ…」  
クマトラはもう、返事もできないぐらい快感に酔い痴れてしまっていた。  
リュカは弄りながら彼女と対になる体勢に寝そべって、隆起した分身をクマトラの眼前に晒す。  
 
「……っ!」  
一年半前は少しだけ皮を被っていたが、今では戦闘態勢の際には完全に剥けている。  
久々に見るある意味では"まぼろしのぼう"をも凌ぐであろう戦闘能力を持つリュカの分身を前に出されて、クマトラは思わず唾を飲む。  
一応は何度も見てきた筈なのに、こういう時だけは一回りも二回りも大きく見えてしまう。  
「僕にも…してよ。久しぶりにさ」  
「ん、あ…。うん…」  
クマトラはそっと頷いて、唾液を舌に含ませながらその小さな口を近づけ、リュカの分身を口に含む。  
含んだら、歯で傷つけないように気をつけながらゆっくりと、顔を前後に動かして奉仕してゆく。  
「!! ………くっ!」  
リュカも久々の口でのご奉仕にすぐに出してしまいそうになるが、何とか意地で堪える。  
今はもう、只の年下の恋人ではないのだから。  
そしてお返しとばかりに、指で弄ったまま彼女の蜜壷に舌を這わせた。  
「…! んんー…!!」  
「んむ…ちゅ、クマトラっ…じゅるっ」  
溢れ出てる蜜を舐め取り、小さく自己主張してるクリトリスも舌で刺激しながら、乳首にする時のように吸い付く。  
空いている手は、人指し指を一度口に含ませると、お尻の穴にも挿し込んで刺激した。  
「ん!!、んんむ、ふ、んんんっ……!」  
クマトラもリュカの腰を掴んで、意識が朦朧としてる中必死で奉仕を続けていく。  
愛息がすやすやと安らかな寝息を立てている中、若い父母は部屋一杯に厭らしい水音を立てながら求め合っていた。  
 
やがてクマトラの背中にむずがゆい感覚が迫ってきた途端、リュカがその動きを慌てて止めさせる。  
「…!? リュカ…?」  
「悪い。ここまで……」  
クマトラはなにかしてしまったのかと不安げな表情で、口から彼の逸物を抜く。  
起き上がって胡座をかく姿勢になったリュカは、もぞもぞと小声で言う。  
「僕、もうそろそろ限界だから」  
直ぐに、言葉の意味は理解できた。クマトラが達しそうだったとき、彼もまた…。  
多分リュカは自分の方が根負けしたのだと思っているのだろうが、今は内緒にしておこう。  
彼女も起き上がって、ぽつりとこう漏らした。  
「…く、口に出しても…、良かったんだぞ?」  
「…………っ!」  
あまりこういう事はしたがらないタイプのクマトラのこの言葉に、リュカの胸は嬉しさで締め付けられる。  
「い、いや…。嬉しいけど…」  
彼女の細くて小さな身体をぎゅっと抱き締めて、耳元で囁いた。  
「やっぱり、君の中で…」  
「…! うん…」  
リュカの胸の中で、クマトラも頷く。  
そんな彼女を再び優しく寝そべらせて、もう迎え入れの準備が整った莟に、自分の逸物をそっとあてがう。  
「…行くよ、クマトラ」  
「ん、来て…リュカ」  
お互いの頬に一回ずつキスし合い、最後に、舌を入れない長めのキス。  
それが二人のいつもの合図。  
終わった直後、リュカはゆっくりと、クマトラの膣へと分身を沈ませていった。  
 
「あっ! あ…。んん〜っ!」  
クマトラも固く瞳を閉じて、彼の背中に爪を立てながら必死でしがみつく。  
やがて奥まで入りきると、お互いに大きく息をした。  
「っく…! や、やっぱり…久々だから、ちょっとキツいね…!  
だ、大丈夫? クマトラ…」  
「ン…、な、何とか…。  
で、でも何でだろ? オレ…リュカとこうしてる時って…、なんか、こう…。  
まだ恐いけど、その後にじわーって幸せを…感じちゃうんだよなぁ…」  
「……僕だって、そうだよ……」  
二人して眼で合図して頷き合うと。  
リュカが少しずつ、しかし確実に腰を動かしていく。  
「んぁ…! あっ! は、あぁっ…!」  
リュカが腰を動かす度に、クマトラの膣内は蠢き、収縮して、彼の分身を時に優しく、時に荒々しく締め付けてくる。  
半年ぶりに味わうその快感を、愛しい人の中をもっと味わいたくて。  
リュカの動きもどんどん速くなっていく。  
ちくりと背中に感じる痛みすらも、快感へと変わっていった。  
「やっぱり、クマトラ…、ッく、最高だよっ…クマ、トラ…クマトラっ…!」  
クマトラの方も、頭が真っ白になりそうな中、無意識のうちに激しくなる彼の動きに、ぎこちないながらも腰の動きが合わさっていった。  
「ひゃぁっ! うれ、ふぁ、しいっ…アアン! リュカ…、あっ、リュカ、りゅかぁ…!」  
最早父と母である事も忘れ、少年と少女である事も忘れ。二人は殻を脱いで、只の男と女に姿を変えていた。  
 
「クマトラっ…クマトラぁっ、愛して、あいしてるよっ…! クマトラ…!!」  
「お、おれぇ、もぉ……! リュカ、りゅかぁぁっ、あい、してるぅっ…!」  
聞こえる音は、ベッドの軋む音と二人の荒々しい呼吸とお互いの名前だけ。  
なにもかも忘れて、なにもかも溶け合うように求め合う。  
やがて蟻の大群が這うようなゾクゾクとした感覚と、打ち拉がれるような波が、二人に襲いかかってきた。  
手を指を絡めて握り合って、もう片方はお互いの背中に廻す。  
「んゃあっ…! もう、ダメぇっ…! 来る、きちゃう、きちゃうよぉっ…!」  
「っ! ああ、僕も…、このままっ、出すよ…出すよっ!!」  
「ふぁぁ、きて、きてぇぇッ…! オレの、中…いっぱいに、してぇぇ……!!」  
リュカが最後の一撃とばかりに腰を突き立て、捩じ込んだ瞬間。  
「んぁぁ! リュカぁ、あ、ああぁ────────っ!」  
「クマ…クマ、トラぁぁっ…!! ッく…!!」  
奥の子宮口に捩じ込ませた逸物の先端から、彼の熱い欲望の固まりが、勢い良く爆発させていった。  
クマトラもまた、自分の中がリュカの子種で満たされていくのを感じながら、幸福の中で絶頂を迎えたのだった。  
 
 
ちょうど同じ頃。今回の仕掛人(?)の一人でもあるダスターの家では。  
「なぁ、テッシー」  
「なぁに? あなた」  
ソファーに座ってるダスターが、ちょっとそわそわしながらバツが悪そうに呟く。  
「そ、そろそろ…俺達も欲しいかなって…」  
ちょっと目を丸くするが、やがて答えが分かってハッと気が付く。  
「…子供?」  
「…あ、ああ」  
この二人もまた、ダスターがバンドと仕事で忙しい事も相まって、ついつい夜の事が疎かになりがちになってしまっていたのだ。  
つまりダスターは、リュカの悩みを自分と重ねて見ていたのだった。  
まぁ、リュカのケース程は疎遠にはなってはいなかったが。  
「ん…そうね」  
エプロンを脱ぎながら、テッシーもダスターの隣に座る。  
そしてダスターの顔に自分の鼻を近付けた。  
「お、おわっ!? テッシー?」  
くんかくんかと、口の匂いを嗅ぎ取ってから一言。  
「宜しい。今日もしっかり予防してるわね?」  
「あ、当たり前だろ? 一応は歯磨きとうがいとノド飴毎日してるんだからよ」  
テッシーと結婚して以来、ダスターはこうやって毎日口臭のチェックを受けていた。  
「一応じゃないわよ。あなた顔は結構イケてるんだから。  
足はともかくも…これぐらいはちゃんと直さなきゃ…」  
「…"産まれてくる子に、まともにキスもできない"…だろ?」  
「分かってるじゃない♪ それに私の方も…ね?」  
二人して笑い合って、軽くキスをしあう。  
「こっちも、久々だな…いいか?」  
「いいわよ…。だけどあなた。"アレ"はなしよ?」  
「…うぐっ!! あ、当たり前だろうが…」  
ダスターの動揺ぶりに、テッシーはやはりと感づく。  
「(やっぱり…リュカちゃんに教えていたのって…)」  
しかし、"ま、いいか"と思い直して、久しぶりに彼に身体を預けるのだった。  
 
 
それから…翌日。  
「……ん…」  
カーテンから優しく光が差し込む中、クマトラは微睡みながらゆっくり目を開けた。  
「あ…リュカ。オレ…」  
「…お早う。随分とお寝坊だったね」  
目覚めると、愛しい夫が背を凭れさせて、愛息を抱いて見つめていた。  
途端にクマトラの脳裏に昨日の出来事が蘇って、ポッと赤くなる。  
「!! そ、それは…!  
…リュカが……その、あのあと…ろ、六回も……したからだろぉ…」  
最初の行為が終わって以降も、二人は休む事なく貪り合った。  
リュカがクラウドのお通じでぐずる声に気付いた時には、抜かずに六連発。計七回も続けていた。  
勿論その間に…、クマトラは完全に失神してしまっていた。  
皮肉にも、このお陰でクマトラは実に半年ぶりにぐっすりと安眠できたのだった。  
「ごめんごめん…。まぁ仕方ないだろ。半年分…だったんだし。  
あっ、クラウドなら大丈夫だよ。おしめも取り替えて洗ったし、ミルクもあげたし」  
「…そっか。ならいいよ…」  
リュカの腕の中ですやすや寝息を立ててるクラウドの頭を撫でて、優しい笑みを浮かべるクマトラ。  
聖母のようなその表情に、リュカは一瞬、母のヒナワの笑顔を垣間見た気がした。  
 
…と、思ったら。  
「……それより〜」  
布団の中で手をモゾモゾとさせながら、今度は完全にジト目で、リュカの方を睨みつける。  
「なっ、何でしょうかクマトラさん!?」  
「これの事…説明してもらおうか〜…?」  
布団の中から取り出したるは。丈夫な糸の先に小さいモノを付けた道具。  
「ゲッ!!」  
たちまちリュカの表情が青ざめる。  
それは、パジャマのズボンのポケットに入っていた筈の品。  
人呼んで…"さいみんふりこ"。  
但しリュカが持っていた品は、先っぽのものが"どせいさん"の形にカスタマイズされている。  
「ご、ごめんなさい!!」  
クマトラの殺気を感じたリュカは、一瞬のうちにベッドから下りて土下座する。  
勿論、クラウドはちゃんと枕の上に寝かせていた。  
「ご察しの通りです。僕はクラウドをさいみんふりこで寝かしつけてました…」  
「…ふーん」  
「な、なんなりとお裁きをお下しくださいませお奉行様!」  
パニック状態になってる彼は、自分でも訳の分からない事を口走っていた。  
ベッドから下りて、ぺたぺたとに、二、三歩近づく音が聞こえる。  
「Pぃ〜Kぇ〜…」  
「(ああっ、やっぱり! でも甘んじて受けなきゃっ!! バッチコーイ!!!)」  
リュカは目を固く閉じて、正座したまま顔を上げる。  
…その瞬間。  
「…でこぴんっ」  
ペチン、と軽い音がしたと思ったら、リュカの脳天に一発痛みが走った。  
「あ痛っ!?」  
確かにちょっと痛かったけど、あまりの予想外の展開に目を丸くするリュカ。  
「はい。これでおしまい。だけどまたしたらホントに怒るぞ?」  
 
目を開けると、クマトラは立ちながら腕を組んで、そっぽを向いていた。  
「…これで、いいの?」  
「いいも何も…。  
……一人目からこんなんじゃ、二人目できたらどうするんだよ…」  
クマトラの呟きは、しっかりとリュカの耳に入った訳で。  
「二人目……欲しいの?」  
「えっ!! あ、あの、その………!」  
後ろを向いてても、湯気を立てて真っ赤になっている顔は容易に理解できた。  
立ち上がって、後ろからそっと彼女の身体を抱き締める。  
「あっ…、リュカは…その、ほ、欲しい…のか?」  
「…うん。女の子がいいかな?」  
「そ、そっか…。良かった。オレだけじゃ、なかったんだな」  
クマトラは赤くなりながらも、自分を優しく包み込んでるリュカの手をそっと握る。  
「"一心同体"だな、オレ達って…」  
「うん。僕がおじいちゃんになっても、クマトラがおばあちゃんになっても、ずっと…」  
そのまま顔を近づけて、キスをする。  
「愛してる。リュカ…」  
「ずっと一緒だよ。クマトラ…」  
熱い視線を混じり合わせながら、もう一度熱い口付けを交わした。  
 
 
…ら。  
「おーっすリュカ! お早う!!」  
「おはよ…朝からごめんねぇ〜」  
勢い良く部屋のドアが開いて、妙に血色のいいダスターと欠伸をしてるテッシーが入ってきた。  
「「!!」」  
当然…。二人がキスしてる真っ最中の中に。  
「あ。」  
「い?」  
「う!」  
「え…」  
一瞬、沈黙が走ったと思ったら…。  
「お、お前らノックぐらいしろぉ──────────────っ!!」  
クマトラの大きな叫び声とともに、物凄い爆音が轟いた。  
その音を聞きながらボニーは"やれやれ"と溜め息を一つ付くのだった。  
 
 
 
余談ではあるが、その"さいみんふりこ"はその後…。  
リュカの家のランプにぶら下げられ、一家の成長を見守り続けたそうな。  
 
*おしまい*  
 

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