「―――・・・ラ・・!!・・・・返・・!!」
霞んでいてよく見えないが、赤い帽子をかぶった少年と、眼鏡をかけた少年が、何か叫んでいる。
しかし大きいノイズ音にかき消され、何の言っているかは聞き取れなかった。
二人の前には、人間らしかぬ二本の触覚を持っている生物がニタニタ厭な笑みを浮かべている。
「P・・・アイ・・β・・!!」
赤い帽子がそれに向かって両手を向けると、掌から黄色と赤の閃光が放たれた。
同時に、眼鏡の少年が銃を撃つ。
閃光と弾は、奇妙な生物に向かって真っ直ぐ吸い込まれていったが、それがくちのはしをまげると、
め のまえ が、あ か く
まただ、なにも、今のが初めてなわけではなかった。
度々このような何か、幻覚というか、異世界の映像を感じるのは。テレパシー、というものだろうか。
以前に比べ、確実に映像を感じる時間が長くなっている。やはり、来るべき運命(とき)は近づいているのだろう。
「プー王子様、どうかなされましたか」
「なんでもない。続けるぞ」
今はちょうどセイ(静)の修行の最中であった。竹の頂上に長い時間立ち続けるのだ。
先ほどのような幻覚を見るようになってからは、ずっと修行に明け暮れていた。
理由はわからない、ただ、何かをしなければという、彼らのためにやらなければという思いが、俺を動かしているような気がしてならなかった。