私たちは過去の地底大陸でギーグと闘い・・・そして勝った。
『Achieved feelings』
「奇跡だ!君達の勇気がおこした奇跡だ!」
アンドーナツ博士が泣きながら私たちに語りかけてくる。・・・・・・本当なら、私たちはギーグを倒した後も、過去の地底大陸に取り残される筈だった。それでも、私たちは過去に行く事を望んだ・・・地球の未来のために。
でも、私たちはこうして、再びこの世界に戻ってくる事が出来た。
「・・・ギーグとの戦いは、確率的には99パーセント敗れるということだったんですが・・・あなた方の勇気が1パーセントの隙間をこじ開けたんですね。ぼくも、人間の「勇気」とかについてもっと知りたくなった・・・。」
「やったじゃねぇか。すげーよお前たち。なんだかわかんねぇけど、とにかく大したもんだ。」
その場に居たアップル君やモッチーさんも歓喜に声を震わせている。
戦いは終わった・・・これで地球の未来は守られた・・・。意識を取り戻したばかりの私たちも、ようやく実感が沸いてきた。
「勝ったんだ・・・僕たち勝ったんだよ!!」
「ああ・・・そうだな。」
喜びのあまり声を上げるジェフ・・・それに頷くプー。
「ブンブーン・・・僕たち勝ったよ・・・」
空を見上げながらそう呟いたネス。その横顔はとても爽やかだった。
「これで・・・終わったのね・・・」
ギーグの魔の手から地球を救った・・・その達成感が私たちを包み込んでいた・・・。
辛く苦しかったけど・・・それでも・・・楽しかった冒険・・・。正直、私は怖かった・・・過去にも行きたくなかった・・・でも、いつも彼が傍に居てくれたから・・・私は頑張れた。
彼・・・ネスが居てくれたから・・・。
「俺とお前たちの旅はここまでのようだな。」
そう言ってプーは立ち上がり、別れの言葉を残し帰って行った。
出会いがあれば別れがある・・・冒険が終わった今、私たちは普通の少年少女・・・みんな、それぞれの居場所に戻らないといけない・・・少し寂しいけど、仕方のない事ね。
「僕たちも帰ろうか。」
「うん。」
ネスに連れられ、私はサターンバレーを後にした。
帰り道・・・私はこれまでの出来事を思い出していた。
その中で一番の思い出は、ハッピーハッピー村での出来事・・・ネスと初めて出会った時の事。心細くて泣きそうになっていた私を励ましてくれたネス。今思えば、あの時から私は・・・。
「ポーラ?」
「・・・えっ?」
不意に呼び掛けられ、私は間の抜けた返事をしてしまった。でも、ネスは気にせず話しかけてきた。
「長かったね・・・」
「・・・うん。」
「苦しかったりしたけど・・・結構楽しかったね。」
「そうね・・・」
暫くの間、ネスと思い出話をした。
「そういえばジェフの奴・・・別れ際に言ってたよね。」
「え!?」
私は、ネスの言葉に心臓が高鳴った。ジェフが別れ際に発した言葉を思い出したからだ・・・
『もし、もしもだけどね・・・君達が将来、結婚するようなことがあったら・・・』
ジェフはそういうつもりで言った訳じゃないのだろうけど・・・私は、自分の心を見透かされた様で、気が気で無かった。
「もっと別の言い方があるだろうに・・・あれじゃまるで、僕とポーラが結婚するみたいじゃないか。」
「!!」
今、私の顔はきっと物凄く赤くなってると思う・・・ストレート過ぎるよネス・・・
「そう思わないポーラ?・・・・・・って顔真っ赤だよ!?熱でもあるの?ヒーリングしようか?」
「だ、大丈夫・・・何でも無いから・・・何でも・・・」
もうっ・・・ネスの鈍感・・・・・・少しくらい私の気持ちに気付いてよ・・・・・・でも、そんな所も含めて・・・私はネスの事が・・・・・・好き・・・・・・好きで好きで堪らないってくらい大好き・・・だから・・・ネスと別れる前に・・・
でも、気がついたら家の前についていた・・・・・・告白するチャンスはいくらでもあったのに・・・私のバカ・・・
「ネス・・・送ってくれてありがとう。」
「うん。」
これが最後のチャンス・・・今しかないわ!
「あ、あのね・・・ネス・・・」
「どうしたの?」
「え、えと・・・その・・・」
ネスの澄んだ瞳に真っ直ぐ見つめられ・・・・・・私は、言葉が出てこなかった・・・
「・・・・・・・・・言いたいことがあったけど忘れちゃった。今度会ったときまでに思い出しておくわ。」
ああぁぁっ!!・・・・・・バカバカ・・・私のバカ!!・・・好きって一言いえばいいだけじゃないの・・・
「そう?じゃあ、また今度聞きに来るよ。」
「う・・・うん・・・」
「じゃあ、さよなら・・・また会おう。」
「あ・・・・・・さよなら。」
そう言って、ネスは去って行った・・・私は、ネスの姿が見えなくなるまで見送った。
「ああ・・・どうしよう・・・」
好きなのに・・・大好きなのに・・・・・・言えなかった・・・
私はがっくりと項垂れながら家へ帰った・・・。
あれから数日が経った。学校の授業はかなり先まで進んでいて、私は今までの遅れを取り戻すのに必死だった。
学校が終わり家に帰ってからも、毎日授業の復習に明け暮れている。今日もそうだったのだけど・・・
「はぁ・・・・・・」
私は大きな溜息をついた。別に勉強が嫌な訳じゃない・・・理由はもっと別の事・・・
「今頃何してるのかな・・・」
また会おう・・・とは約束したものの、あれからまだ会っていない・・・。
一度気になりだすと、もう止まらない・・・・・・私は教科書を片付け、ベッドに寝転がる。こうなってはもう勉強が手につかない・・・・・・それほど、私にとってネスは大きな存在なの・・・
「ネス・・・・・・」
いつもと変わらない天井をぼんやりと見上げながら、私は大好きな彼の名を呟く・・・・・・逢いたい・・・逢って想いを伝えたい・・・
「んっ・・・・・・」
私は無意識のうちに、自らのショーツに手を這わせていた。
「はぁ・・・・・・んんっ・・・・・・」
ネスの事を想うと胸が締め付けられる・・・それを紛らわすかの様に、私は自分を慰めていた。
「やぁ・・・・・・んくぅ・・・」
彼の温もりが、今は遠い・・・彼を傍に居たい・・・彼の温もりを感じたい・・・・・・
「逢いたいよぉ・・・・・・ネスぅ・・・・・・」
私の手は止まらない・・・彼に触られている様な感覚に浸り、私は達するまで続けた・・・
「ん・・・・・・」
私は自室のベッドの上で目を覚ました。
「・・・そっか・・・あのまま寝ちゃったんだ・・・」
時計を見るとあれから数時間が経っていた・・・。
私はベッドから起き上がると、新しいショーツに履き替える。
こんな事をしてても・・・・・・何も変わらないよね・・・
身だしなみを整え、私は部屋を出た。想ってるだけじゃ変わらない・・・・・・今度会いに行こう・・・