「ねぇ、ママ、いつになったらお兄ちゃん帰ってこれるの?」  
ネスが旅に出てもうだいぶ経つ。  
お兄ちゃんっ子のトレーシーは不安げな顔でママに聞く。  
「そうね。トレーシーがいい子にしてたらお兄ちゃんグーギとか言う  
  奴なんてコテンパンにして、すぐ帰って来てくれるわよ。」  
ママは優しく頭を撫でながらトレーシーに言う。  
「んじゃぁ、わたしいい子になる〜!」  
トレーシーは嬉々として階段を登っていく。  
「わたしがいい子にしてたらお兄ちゃん帰ってくるんだよ!」  
部屋に戻り、愛犬のチビに話し掛ける。いつも下の階でグータラ寝ているチビを  
運動させるため、2階まで散歩させたのだ。  
「チビ、お兄ちゃん帰ってきたらどうやって迎えたらいいかな?  
  やっぱり『おかえりなさい!』って言って抱きついたりすればいいのかな?」  
トレーシーは有頂天になったままチビに話し掛ける。  
「なんでわたしがこんなに自信あるか分かる?」  
チビがめんどくさそうに首を振る。  
「だってね、わたし産まれてからずーっとサンタさんにプレゼントもらって  
  るんだよ!サンタさんっていい子にしかくれないんでしょ?だからわたしは  
  普通にしててもいい子なの!今年のプレゼントはお兄ちゃんって言っておこうかな!」  
ふぅ、とため息をつくと、チビは部屋から出ようとした。  
「あー!ダメよ。ひとりじゃ降りられないでしょ?  
  今日はわたしと寝るの!」  
半強制的に自分のベッドの横にチビを座らせる。  
「おやすみ!チビ!」  
トレーシーは電気を消し、眠りについた。  
 
・・・・・・。  
「眠れない!」  
兄、ネスが帰ってくるかも、という事を考えただけで、トレーシーは  
興奮して眠れなくなってしまっていた。  
チビはすでに熟睡状態だった。  
「あ〜。なにか遊ぶものないかなぁ。」  
部屋を見渡すが、夜中に遊べそうな物は何一つない。  
「お兄ちゃんの部屋ならなにかあるかも!」  
トレーシーは意気揚々とネスの部屋へ入った。  
「前帰って来た時、彼女らしき人連れてきてたな〜。お兄ちゃん。  
 なら、女の子でも遊べるような物あるかも!」  
トレーシーはネスの部屋を縦横無尽に荒らし始めた。  
しかし、遊べそうな物はやはり無く、渋々と部屋へ戻ろうとした。  
その時、ふとベッドの下を見ると、なにかが見えた。  
「お兄ちゃんって自分の大切な物は隠す癖があったからなぁ。」  
と言いながら、ベッドの下から取り出す。  
それは、『HOW TO SEX』と書かれた一冊の本だった。  
「せっくすのしかた?」  
トレーシーは見慣れない文字に首を傾げるも、ネスの大切な物がどんなものだか  
知りたくて、自分の部屋へ持って帰った。  
ベッドにゴロンと身を投げ出し、本を読み始める。  
「なになに?『SEXは愛し合っている人同士がするものです。』か。  
  じゃ、お兄ちゃんが帰って来たらSEXしたいな〜。」  
などとぶつぶつ言いながら読みふけっていく。  
「『女の人の体には性感帯と呼ばれる箇所が多数存在し、そこを  
 刺激することによって、胎内から分泌液を出します。』ふ〜ん。  
  なんか変なの。性感帯ってなんだろ?」  
トレーシーは性感帯について、と書かれたページをめくる。  
「『まず女性の体で一番性感帯はヴァギナと呼ばれる所です。(ページ45に詳しい説明があります。)  
 次に、クリトリスという所です。ここは、愛撫するだけで気持ちが良くなり、分泌液の排出を促します。』  
 ふむふむ。クリトリスはここね。」  
パジャマのズボンを脱ぎ、パンツの上からクリトリスを触る。  
「きゃっ。」  
なんとも言えない感覚につい声が出る。  
「なにこれ・・・なんか変・・・だよ・・・。」  
くすぐったいような気持ちいいような、おかしな感覚がトレーシーに襲い掛かる。  
 
「あ・・・。気持ちいいかも・・・。」  
初めての感覚にとまどいながら、トレーシーは触り続ける。  
くちゅ・・・という音がトレーシーの耳に入る。  
「やだ!少しおもらししちゃった!」  
しかしトレーシーは指を離そうとはしない。  
続けていくにつれて、どんどん愛液が溢れてくる。  
「やだぁ・・・。ママにおこられちゃうぅ・・・。」  
トレーシーはパンツの上からでは我慢出来なくなり、パンツを脱いだ。  
直接触るクリトリスは、トレーシーに新たな快感を呼んだ。  
「あぁっ・・・!すごい・・・気持ちひぃ・・・。」  
トレーシーが夢中になってクリトリスを弄ぶ。  
「変だよぉ。わたし・・・、変だよぉっ!」  
ビクビクっと体を震わせ、トレーシーは絶頂に達した。  
「あ・・・はぁん・・・。」  
肩で息をしながら、少しづつ呼吸を整える。  
もうシーツはCD大のしみを作っていた。  
「ママに・・・何て言おうかな・・・。」  
だいぶ落ち着いてきた体を起こすと、タオルを引き、ベッドに横になった。  
「明日はママより先に起きてシーツを洗おう・・・。パンツはもう穿けないや。」  
そう考えながらうとうとし始めたトレーシーにあの感覚が再び襲い掛かってきた。  
「やぁんっ!何?」  
自分の足元を見ると、においに起こされたチビが、トレーシーの秘所を舐めていた。  
「やだっ!やめてチビ!」  
トレーシーはチビを払おうとするが、頑としてそこを離れない。  
「いやっ!なめちゃいやぁっ!」  
ぴちゃぴちゃと音を立てながら、尚もトレーシーの秘所を執拗に舐めまわす。  
 
「あ・・・。い・・・やぁ・・・。はぁ・・・。」  
再び訪れた快楽に、トレーシーは抗うことが出来なかった。  
「やめてぇ!わたし・・・また・・・あっ!」  
ビクっと体を強張らせ、トレーシーは2度目の絶頂を味わった。  
「う・・・はぁ・・・。」  
トレーシーがイッたのを確認すると、チビはまた自分の寝床へ戻った。  
「チビの・・・ばか・・・。」  
そう言いながら、快楽を与えてくれた愛犬に感謝をしていた。  
しかし、落ち着いてくると、トレーシーはあの本を思い出し、ハっとする。。  
「あ・・・愛する人とじゃなきゃしちゃいけないのに・・・。わたし  
  自分でもしちゃったしチビとも・・・・・。」  
トレーシーは自責の念にとらわれた。  
「お兄ちゃんが帰って来れなかったらわたしのせいだ・・・。」  
溢れてくる涙を拭おうとせず、トレーシーは一晩中泣き明かした。  
 
 
「トレーシー!朝よ!」  
ママの声が階下から聞こえる。一睡もしていない腫れぼったい目をこすりながらトレーシーは  
階段を降りる。  
「じゃ〜ん!今日は朝からハンバーグよ!」  
ママは昨日の夜のトレーシーのようにはしゃぎながら、ハンバーグをテーブルに  
並べている。  
「お兄ちゃん・・・。」  
ネスの好物を見ながら、また後悔する。  
 
ふとテーブルを見わたすと、ハンバーグが3つ並んでいる。  
「ふふふ。今日はね、お兄ちゃんがグーギを倒して帰ってくるのよ〜!」  
あまりの事に声が出ない。わたし、いい子じゃなかったのに・・・?  
「昨日の夜、トレーシーが階に上がった頃に倒したはずよ。だって、その前に  
  無性にお兄ちゃんのことが気になったでしょ?あれは帰ってくる前兆だったのよ!」  
ウインクをしながらママは言った。  
「じゃぁ、わたしがまだいい子の時にお兄ちゃん帰ってくることが決まってたんだ・・・。」  
トレーシーはぺたんと床に座ると、枯らしたはずの涙をまた流し始めた。  
「あらあら。泣くのはお兄ちゃんが帰ってからよ。」  
ママはそう言って、また食事の支度を始めた。その時、  
 
 がちゃ・・・。  
 
家の扉が開く。そこには、少したくましくなったネスがいた。  
「ただいま。」  
「おかえり!ネス!」  
ママが少しだけ目に涙を溜めて言った。  
「おかえり!お兄ちゃん!」  
トレーシーは笑顔でネスを迎えた。  
「ただいま、トレーシー。」  
ネスも笑顔で返す。  
「さぁ、お兄ちゃんも帰ってきたことだし、ご飯食べちゃいましょうね!」  
と、ママは言い、台所へ走った。  
「ねぇ、お兄ちゃん。」  
トレーシーはネスの手を掴みこう言った。  
「わたしとせっくすしよう!」  
 
 ネスが思いっきりこけたのは言うまでも無い。  
 
 
                              おしまい  
 
 

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