――私は…何を求めているのだろう…
「…………しはポーラ、わたしはポーラです。私の呼びかけを感じますか?ネス助けて!助けにきて!ここがどこなのかわからない。…遠くから水の流れる音が聞こえる…。ネス!ネス、助けにきて!」
いつもの様に『彼』にテレパシーを送り終わった少女は、ふぅ…と溜息をつく。
少女の名前はポーラ。超能力が使えるという事で、地元ツーソンでは彼女の名前を知らぬ者はいない。
だからこそ、事件に巻き込まれてしまったのだろう…。
ポーラはある日、全身青尽くめの集団に連れ去られ、どこか知らない場所に監禁されてしまった。
「冷たい……」
小屋の内壁に設置された檻に手を当てていたポーラは、小さく呟いた。
「これじゃあまるで……篭の中の小鳥ね…」
自由を奪われ…狭い部屋に閉じ込められ…小鳥は何を思うのだろう…
「私は……」
言葉に出しかけて、ポーラは口を噤む。
誰にも言えない…私の秘密…
手を通して伝わる檻の冷たさが、彼女の芯を熱くする…。
「…だめよ。」
こんな事を考えてはいけない…でも私は…
――ガチャ
ハッと音のした方に目を向ける。そこには、赤い野球帽を被った少年が立っていた。…それが誰なのか、直感で分かった。
「ネス…あなたがネスなのね?」
少年は頷いた。彼こそが、ポーラの夢に出てきた少年。地球の平和を守るため共に戦う仲間。
「ネス…これを。」
ポーラが手にしている物は『フランクリンバッチ』。彼女が監禁されている小屋の鍵は、カーペインターが持っている。だが、カーペインターは雷使い…『フランクリンバッチ』は彼の雷を退ける効果がある。
「これがあればカーペインターの雷を防ぐ事が出来るわ…私、待ってるから…」
ネスは『フランクリンバッチ』を受け取り、小屋を後にした。「大丈夫さ…すぐに迎えに来る。」…そう言い残して…
小屋の周りは静けさに包まれ、どこか違う世界に独り取り残された様な感覚に襲われる…。それが無性に怖かった…このまま忘れ去られてしまうのではないかという思いが、私の心を強く締め付ける。
「んっ……」
私は、無意識のうちに自らを慰めていた。こうする事でしか孤独感に耐えれなかった。
「あっ……んんっ…」
ショーツ越しに秘所を撫で上げ、つんと屹立した陰芯に触れる。
「はぁ…あんっ…」
口元から溢れ出る声を抑えきれない…今、私がしている事はいけない事…でも、背徳感が更に私を高ぶらせる。
これが私の性癖……独りでいる事に耐えられず…気が付けばこうして、自分を慰めている私がいる…
「あぁ……んくぅっ……」
私を独りにしないで…
「嫌っ…独り…なんて…んんっ…」
誰か…私を見つけて…
「はぁ……ひぃっ…くぅっ…」
私を…繋ぎ留めて!!
「んぅっ…ひぃっ…んああぁぁぁっ!!」
私は果てた…わずかに残る余韻に、身を預ける。
「はぁ……はぁ……」
でも…最後に残るのは虚しさだけ…
「…………」
私はぼんやりと、代わり映えの無い天井を見続ける。
ネス……不意にあの少年の名が頭をよぎる…
彼なら…私の事を…
「…だめよ…」
彼は仲間。世界を平和を守るため…共に……戦…う…
少しずつ意識が霞んでいく…身体が眠ろうとしているのだろう…
「ネ…ス……」
私の思考はそこで途切れた…。
「鍵は手に入ったし、これでポーラを自由にさせてあげれるな。」
カーペインターを倒したネスは、彼が隠し持っていた鍵を手に入れ、ポーラが監禁されている小屋に向かって歩いていた。
「それにしても、ポーラって可愛いな…」
ポーラの姿を思い出し、ネスは頬を赤める。普段、学校で顔を合わせるどの女の子よりも可愛い…整った顔立ちで、肩の辺りでカールしたブロンドの髪もよく手入れされており、彼女の美しさを引き立てている。
檻越しに話をした時の事を考えていたネスだったが、不意にポーラの言葉が蘇る。
(私、待ってるから…)
心細そうに…そう呟いたポーラ…
「急ごう…」
ネスは雑念を振り払い、小屋に向かって駆け出した…。
――ガチャ
小屋の扉を開けたネスは異変に気付き、急いで中に入った。
「ポーラ!?」
檻の中で横たわるポーラ。呼びかけても反応が無い…。
ネスは慌てて檻の鍵を開け、ポーラの元に駆け寄った。
「ポーラ!どうしたんだ!?」
身体を揺すってみるが、わずかに身じろぎするだけ……だが、ゆっくりと呼吸を繰り返してるので、命に別状は無い様だ。
「…なんだ…寝てただけか…」
一安心するネス。色々と疲労が重なっていたのだろう…そう思い、自然に目が覚めるまで待つ事にした。
「スー……スー……」
静かな部屋に、ポーラの寝息だけが響く。穏やかな表情で眠っているポーラを見て、ネスも落ち着いた気持ちになる。
「なんか…トレーシーみたいだな…」
居間のソファで昼寝をしている妹の姿と重なり、ネスは思わず笑みを零す。
「みんな似たようなもんなんだな…」
不意にポーラが寝返りをうつ。何の気なしにその様子を見ていたネスだったが、ふと、視線が一点に留まった。
「あ…」
思わず声を漏らすネス。なぜなら、寝返りをうった事でスカートが少し捲くれ上がり、彼女の張りのある真白な太ももが目に飛び込んだからだ。
普段見る事の無い異性の姿に、心臓が高鳴っていく。
「だ…だめだ…見ちゃいけない…」
そう呟きネスは視線を逸らす。だが、すぐに目線が戻ってしまう…
彼は健全な男の子…異性の身体に興味を持つなというのは酷な話だ。そして、その欲求が押さえ切れなくなるのも時間の問題だった。
(触りたい…)
ポーラの太ももを見ながら、ネスは心の中で呟いた。しかし、彼の理性がそれをどうにか押し留める。
(だ…だめだよ…ポーラは寝てるんだから…)
だが、その考えが逆にネスの欲求を後押しする事となった。
(でも…寝てるんだったら…気付かれなければ…)
恐る恐る…ポーラの様子を伺いながら、彼女の太ももに手を伸ばしていく。そして…
「……」
(柔らかい…)
ネスは無言のまま、掌から伝わる感触を堪能する。家族以外で女の子の太ももに触れるのは、ポーラが初めてだ。その事実が、更にネスの鼓動を速くする。
「ネス…」
「!!」
不意に名前を呼ばれ、慌てて手を離しポーラの方に目を向けるネス。だが…言葉がそれ以上続く事は無く、ポーラは静かな寝息を立てている。
「なんだ…寝言か…」
ホッと胸を撫で下ろすネス。見つかったら弁解の余地が無い…今回は気付かれずに済んだ事だし、もうこの位にして……とは思うものの、体はいう事を聞かない…気が付けば、また触っていた。
(気付かれなければ…)
スリスリと太ももを撫で上げていたネスだったが、徐々にエスカレートしていく…
(まだ気付いてないみたいだし……む…胸も触ってみたいな…)
そーっと胸元に手を伸ばし、ゆっくりと二つの膨らみに触れる。
「ん…」
ビクッと身を震わすポーラ。慌てて手を離して様子を伺うが、起きる様子は無い…ネスは再び手を伸ばす…
(こ…これが、女の子の胸……柔らかい…)
女の子特有のその感触は、服越しでも十分に分かる。
「ん…」
胸を揉む度にポーラは少し反応を見せるが、全く起きる気配が無いので、ネスは手の中でフニフニと形を変える膨らみをじっくりと味わった。
と、そこでネスはポーラの異変に気付いた。ポーラの顔はいつの間にか真っ赤に染め上がり、息づかいも少し乱れている。
(なんかやばいかな…)
不安になったネスは、ポーラから手を離し暫く様子を見る事にした。ネスに性的な知識がもう少しあれば、ポーラの反応の意味に気付けただろう。ポーラは感じていたのだ。
数分後…ポーラは目を覚ました。
「…ん…ネス?」
「え?な、なに?」
先程の事で動揺していたため、あからさまに怪しい返事をするネス。だが、ポーラはそんな様子を気にする事無く、話を続ける。
「私寝てたみたいね…ごめんなさい。」
「え?そんな、気にする事無いって!」
謝ってくるポーラにあたふたするネス…
(むしろ謝らないといけないのは僕の方だよ…)
なにせ寝ているポーラをすき放題にしていたのだ…今更ながら罪悪感に駆られるネス。
その後も色々と話をして、取りあえずは一件落着した。
「ネス…助けてくれてありがとう。」
「いいよ、気にしないで…それよりツーソンに戻ろう。みんな心配してるからさ。」
「そうね。」
そう言ってポーラは立ち上がった。つられてネスも立ち上がり、そのまま二人で小屋を後にした。
「ねえ、ネス?」
小屋を出た時、ポーラに呼び止められる。
「なに?」
ポーラの方に振り向いたネスは、何か違和感を覚えた。
「ううん…やっぱりいい…」
「…そう?…じゃあ帰ろう。」
「うん。」
ネスはあえて聞き返さなかった…その時のポーラは…どこか悲しげな顔をしていたから…
何か触れてはならない事の様な…そんな気がした…
川のせせらぎしか聞こえない静かな道…二人はツーソンに向かって歩いた。
第一章 終