「…おれを倒しても…クッ、ギーグー様の…今ごろポーラはモノトリーの…ククッ」  
デパートの事務所。  
蛸の様な不気味な生物は、そう言い残し掻き消えた。  
「くそっ…」  
ネスは苦々しげに呟く。  
デパートで突然の停電。そして、姿を消したポーラ。  
店内に響き渡る不気味なインフォメーションを聞き、事務所へ飛び込んだネス達だったが、そこにポーラの姿は無かった…。  
代わりにいたのは、蛸足のような触手を持つ不気味な生物だった。  
戦闘を終え、その場に立ち尽くす二人。  
「うっ……」  
ネスはその場に膝を付く。思ってた以上に体力の消耗が激しかったようだ。  
「ネス!!どうした!?」  
ネスの様子を見て、慌ててジェフが駆け寄ってくる。  
(ポーラ…)  
次第に意識が薄れていく…ジェフが何か叫んでいるが聞き取れない…。  
ネスはその場で気を失った。  
 
―――――――――――――――――――――――――  
 
とあるビルの通路。  
そこを黒服の男達に囲まれ歩く、一人の男がいた。  
通路を警護していた警備員が男に気付き、敬礼する。  
「お疲れ様です。モノトリー様。」  
ごくろう…とだけ呟き、警備員の横を通り過ぎる男。  
彼こそが、このモノトリービルの主にして、フォーサイドの現市長モノモッチ・モノトリー≠サの人である。  
 
通路の先で別の黒服の男達が列になって出迎える。  
「お帰りなさいませ、モノトリー様。」  
「少女は?」  
先頭に立っていた男に問い掛けるモノトリー。  
「はっ、例の部屋へ運んで置きました。」  
「そうか…。」  
そうとだけ呟き、モノトリーはエレベーターへ向かい、歩き出す。  
「ご苦労だったな、君達はここまででよい。」  
そう言って、黒服達を残しエレベーターに乗り込むモノトリー。  
―チンッ  
エレベーターが48階に着く。  
ここはモノトリー専用の階である。  
通路を歩くモノトリーの元へ、見張りロボットが近づいて来る。  
「アナタノコードナンバーヲイッテクダサイ。」  
「私だ。」  
「オンセイニンシキチュウ…データイッチ…オカエリナサイマセ、モノトリーサマ…」  
機械音声で喋る見張りロボットを引き連れ、モノトリーはある部屋へと向かっていた…。  
 
―――――――――――――――――――――――――  
 
「あれ…ここは…」  
ポーラは知らない場所で目を覚ました。  
「あれ…?」  
体を起こそうとするが力が入らない…。  
首だけの動きで辺りを見渡すポーラ。  
部屋の中には何も無く、そのちょうど中心にあるベッドに寝かされている様だ。  
 
―ガチャ  
不意に部屋の扉が開き、一人の男が入ってきた。  
「お目覚めのようだね…ポーラ。」  
「あ、あなたは?それに…どうして私の名前を…」  
男はツカツカと靴音を立てながら、ポーラの横にやってきた。  
「まず、一つ目の質問から答えようか…私の名はモノモッチ・モノトリー…フォーサイドの市長をやっている。」  
「え!?」  
男の身分を明かされ、驚くポーラ。  
「二つ目の質問だが…君については色々と調べさせて貰った…君はツーソンの生まれで、両親は幼稚園を経営している…間違いは無いね?」  
「あ、あの…」  
「何かね?」  
「ネス…いえ、私の友達は今どこに…?」  
「さあ…彼らには興味が無いのでね…それにしても…話で聞いていた通り、なかなかの美少女ではないか…」  
そう言ってポーラの頬に手を這わすモノトリー。  
「や、止めて下さい…」  
身をよじってモノトリーの手から逃れようとするが、体が痺れて上手く動けない。  
そんなポーラの様子を見て、モノトリーは低い声で笑う。  
「フフフ…まだ薬が効いてる様だな…」  
「え!?」  
その時になって初めて、自分の身に起こっている事の元凶が、目の前の男だと気付いた。  
「そ、そんな…」  
「暴れられると困るのでね……そうそう、超能力を使おうとしても無駄だよ…この部屋には特殊な電波が流れていてね、君の力は使えなくなっているから…」  
 
「どうして…こんな事を…」  
恐る恐る問い掛けてくるポーラに、モノトリーは笑いながら答えた。  
「ハハハ…、どうしてかか……娯楽だな。」  
「娯楽…?」  
「そうだ…私は地位も名誉も手に入れた…今では警察も私の手先だ……ただ退屈でね…そんな時、君が現れた。」  
そう言って、じっ…とポーラを見つめるモノトリー。  
「君はとても美しい少女だ…いつしか君をを牝奴隷として調教したいと思い始めてね…」  
調教と聞き、背筋にゾクリ…としたものを感じるポーラ。  
「まあ、そう言う訳だ…これから君を調教するが覚悟はいいかね?」  
「い、いい訳ないっ…」  
身に迫る危険を感じ、今すぐにでも逃げ出したい思いのポーラだが、薬の効果で体が思うように動かず、言葉で反論する事しか出来ない…。ポーラはモノトリーを睨み付けるが、  
「ハハハ…その位イキのいい方が調教のしがいがある…」  
モノトリーは痛くも痒くも無いといった感じだ。  
「そうそう…私はこれから会議があるのでね…これで失礼するよ。」  
そういい残し、モノトリーは部屋から出て行った。  
独り部屋に残されたポーラ。  
「ああ…こんな事って…神様…」  
ポーラの祈りはどこにも届かない…。  
「ネス…」  
今のポーラに出来る事は、親しい友の名を呟く事だけだった…。  
 
 

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