暗闇に染まった町の中で何人もの人間が歩いている姿が見える。普通の人間ではない。みな、ボロボロの服装に顔の半分が吹き飛んだように見えなかったり足や手がない。ひどい腐臭をただよわせ何をするでもなく歩くのみだ。  
 もちろんこんな恐ろしい化け物たちが出歩いている中、外に出るものもいなければ明かりをつけようとするものもいない。いつもは光っているホテルの明かりもさびしいものだ。その中で一つだけランランと輝いている一室がある。その中からたくさんの人の声がする。  
「ハハハハハ!こんなに簡単につかまるとはなぁ。やっぱこういうのはお前に任すべきだよな」  
「ああ、そうさ。俺たちじゃあどうにもならなかったぜ」  
「あんたたち、そんなに誉めなくてもいいわよ」  
 部屋は普通の部屋より一回りほど大きいつくりだ。ダブルの大きいベッドがある。備え付けになっている備品や豪華な装飾品がキラキラと光っていた。かなり高価な部屋であるという事だ。  
 その中に不釣合いな人間が6、7人いた。皆、外を徘徊するゾンビと同じ姿だ。そのゾンビたちに混じってサングラスをかけた女と少年少女の姿があった。  
「……」  
 少年の方はさっきから何も言わずに黙っている。周りにいるゾンビたちをにらみつけているままだ。そして片手には自分がかぶっていた赤い帽子を大事そうに抱えていた。  
 いっしょにいた金髪の美しい少女の方は部屋のカーペットの上で横になっている。気絶しているようだ。白い顔がひどく青ざめていた。  
 その間にもゾンビだちは話を続けている。  
「こんな小さなガキたちが罠に飛び込んでくるとはな。俺たちの事をかぎまわるからこんな事になるんだぜ」  
 ゾンビはぐりぐりと少年の頭をなでまわす。しばしの間そのままになっていたが少年はすばやく立ち上がった。  
 
「うああぁぁぁぁ!」  
 いきなり雄たけびを上げたかと思うと地面に落ちていたバットを拾い上げる。かなり頑丈そうな鉄のバットだが所々へこんでいる。握りの部分には少年の名前なのだろうか。ネスとかかれていた。  
 バットを掴むと少年は狭い室内でなんとかジャンプしすぐ近くにいたゾンビに向けて殴りかかろうとした。  
「ヒャハハハハ。甘えよ。坊や」  
 振り下ろされた一撃は簡単にかわされてしまう。床を破壊してしまうのではないかと心配されるぐらいの音が鳴り響いた。  
 これほど大きな音がすればホテルの支配人も来るはずだがこの部屋の異様な雰囲気を恐れて一向に来る様子はない。攻撃はかわされたもののスキが出来たせいで逃げれると思ったのか少女を抱えドアへ近寄る。だが残念な事にドアの前に女が立ちふさがった。  
「ハッ!」  
 女は両手を前にかざし気合をいれた。瞬間ネスの体が浮きゾンビたちの方へ吹き飛ばされる。必死に耐えようとしたが壁へ飛ばされ待ち構えていたゾンビたちに体ごと押さえつけられる。その間に少女は、ネスを抑えているゾンビたちの残りにつかまってしまう。  
 ネスは少女に手を伸ばし必死に逃げようとするが頬を拳で殴られ痛みのせいでうずくまった。両手はつかまれ武器のバットは窓から外へ放り投げられる。もう武器はない。  
 抱えていた少女は地面に落ちぐったりとしていた。気絶したままで目覚めようとしない。ゾンビたちは少女に近寄ると手で触れ足を撫でたり、髪を触ったりと遊んでいる。   
「ポーラに触るな!」  
 ネスは激高した。興奮するネスに女は近寄っていく。ぎりぎりと歯を食いしばりにらみつけるが女が動じる事はない。ネスのあごに手を寄せると顔を上げてジロジロと見ている。何かを決めたようにひとり頷く。  
「この子、あんがい可愛い顔してるじゃない。ちょっと失礼して『やらせて』もらうわね」  
「ケッ、好き物だな。テメェも」  
「何いってんのよ。あんたたちゾンビ相手だったらボロボロで全然気持ちよくならないせいじゃない。私のせいにしないでよ」  
 
 笑うゾンビ男のそんな言葉を受け女は怒り出す。しかし少し興奮しただけで付き合っていられないという風に男たちから背を向けた。  
「ヘッ!俺のモノだってちゃんと立てば、このお嬢ちゃんやお前なんか何百回だって泣かせてやるのにな」   
 男は負け惜しみのようにそれだけを口から吐くと壁に近寄り女たちの様子を見ることにした。もちろん他の数人のゾンビたちに命令し、気絶しているポーラをちゃんと捕らえておく。  
「って事でちょいと味見させてもらうわね」  
 会話が済んだ時、女はその良く張った豊満な胸を弾ませながらネスに近づいていく。じゅうたんの上では歩きにくいのか、ずいぶん履きにくそうなハイヒールを後ろへ放り投げた。  
 女から必死に逃げ抵抗しようとするがポーラが人質に取られている事と自分は縄で縛られているせいでで動く事が出来ない。だからおびえた声で文句を言う事しか出来なかった。  
「く、来るな!さっさと僕たちを離せ!僕がPKを使ってお前たちをふっ飛ばさないうちに!」  
 必死に叫ぶが唇が恐怖でがたついていてうまく発音が出来ない。他のゾンビたちはネスの様子をみてニヤニヤと笑っている。  
「そーんな事いっても無駄無駄。もしやろうとしたらそこの女の子がひどい目にあうぜ」  
「…くっ!」  
 ネスは自分の事を見透かされたようで地面を向く。確かにポーラがとらわれている以上抵抗する事は出来ない。自分が守ると決めた大事な女の子だ。傷つけられる事は耐えられない。観念したように力を抜くと自分のふがいなさに泣き始めた。  
「ああ?そこのガキ泣いてるぜ。恥ずかしい奴だな」  
「ハハハ。くやしいでちゅか〜」  
 まわりをかこんでいるゾンビから下卑た笑い声とからかいの言葉が飛んでくる。言葉の矢はネスの心を突き刺し少しずつ追い詰めていく。  
 必死に涙に耐えようとするが、自分の無力さに我慢ならず涙は止まらなかった。まだ延々と続くと思われた罵声だがそれを止めたのはネスの前に来ていた女性だった。  
「やめな!あんたたち。恥ずかしくないの。こんな子供にそんなこといって」  
 
 意外だった。敵であり自分をいまから辱めようとする女がそんなことを言ってくれるなどとは思わなかった。ネスは女を見上げる。  
 まだ女はゾンビたちと言い争っている。ゾンビたちは一言二言文句をいっていたが女の方がこの場での地位は上らしくしぶしぶとひきさがった。  
「…ごめんね。あんたを泣かしちゃって。でも絶対気持ち悪くはさせないからさ」  
 女は思ったより優しく話し掛ける。近くで聞くと惚れ惚れするような美しい声だ。サングラスを取った女を間近で見るとかなりの美人だ。ポスターで見たビーナスともいい勝負が出来るかもしれない。  
「それにここで奴らに見せつけとかないとね。後ろの奴らが女の子に手出ししちゃうかもしれないしさ」  
 ネスはビクリと震えた。確かにここで何とかしておかないと興奮した奴らがポーラに何をするかわからない。そのためには自分が犠牲になるしかなかった。  
「いいわね?」  
 コクリと首を上下に振る。仕方がないと思った。とても怖かったが、ポーラを守る為に我慢しようと決める。体を堅くし震えながら目をつむると暖かい感触が顔を覆う。  
「あ…」  
 目の前には女の大きな胸があった。もう服もブラジャーもはずしている。ずいぶんと早いものだ。生の乳房は顔に密着し両端から挟んでいる。自由にされた両手でおそるおそる目の前にある胸を触る。指で触れるとポヨンとよく弾む。  
「あ…あん」  
 女の口から甘ったるい言葉が漏れる。慌てて両手を引っ込め逃げようとする。  
「逃げないで。別に痛くも何ともないからさぁ」  
 両腕を女につかまれ逃げる事が出来ない。力を振り絞ればはずす事は簡単なのだがうまく力が出せない。しかも乳房の感触がとても気持ちよくそちらのほうばかりに気が取られている。赤ん坊の頃に触れた懐かしい母親の時の感触だ。  
 つかまれた両腕が持ち上げられる。両手を女が自分の乳房に押しつけようとした。怖いという気持ちはまだあった。  
 
「ううう…くっ」  
 しかしネスの好奇心の方が勝っていた。母親以外の女性の胸を見るのは初めてだった。その驚き、体験、手触り、温もり全てが新鮮だったのだ。  
 ネスの手は恐る恐る女の胸に当たる。指しか当たっていなかったのにぽよぽよとはずみゴムの塊のようにも思えた。  
(これが女の人の胸なんだ)  
 興味が出てきたのか、今度はもっと大胆に胸全体を握り締めてみる。外見からわかっていたが小さな手で包み込めるほど小さな胸ではない。指の間から肉のあまりが所々顔を見せた。  
「ああ、いいわ。そのままもっともっと責め、て」  
 天井を見上げ息を吐き出しながら女はネスに責めろと命令する。別に命令されずともネスは責めつづけるつもりだった。もう自分を止める事が出来ないのだ。  
 掌を押し付けた時感じた乳房の先端の突起。その部分をくりくりとつまんでみる。まるで肉を一つに集めたようだ。口ではうまくいえない不思議な感触だ。  
(何だろうな。これは。すっごい不思議な感じがする)  
「いいよ。とっても気持ちいい」  
 耳に顔を近づけ甘ったるい声を出す。  
「き、気持ちいいですか?」  
 恐る恐る話し掛ける。やはりまだ敵だという恐れがあった。  
「あ、話し掛けてくれたのね。うれしい。とても気持ちいいわ。…触るだけじゃなく舐めてくれない?」  
 頭を抱え込み触られている方とは違うもう一つの方へ引っ付ける。いきなりの事だったので驚きと息苦しさを感じたがとろんと溶けそうな匂いがした。香水のような、花の香りのようないい匂いだった。  
 舌をだし女の乳首を責める。最初はペロペロと舐めるだけだが次第に歯を使い出す。どんどんと堅くなるのを舌先に感じる。  
 硬くなった乳首を舌で転がしては歯で何度も何度も噛んでみる。何回も噛む動作を繰り返すうちに強く噛めば噛むほど女が息を荒くするのに気付いた。力を調節しながらギリギリまで歯に力を入れる。  
「あああぁ〜ううぅぅぅぅ」  
 部屋の中に響き渡るほど大きな声で鳴く。頭を下げていたが体を持ち上げ後ろに反らした。体が後ろにそれる事により乳房が顔を覆わなくなりやっと息苦しさから開放される。すこし残念にも思っていた。  
「意外と…いい気持ち。ふふっ」  
 ネスを再度抱きしめる。鼻と口が再度圧迫され息苦しくなるがとてもいい気持ちにもなる。  
 
「ありがとう。今度は私の番。あなたを気持ちよくさせてあげる」  
 目を細め笑う。天井の光を受けまるで娼婦のような妖しさがあった。  
 Tシャツに手をかけると少しずつだが脱がしていく。服が体にひっかかりずいぶん脱がしにくそうだ。が最後にはシャツごと脱げてしまった。子供ながらになかなかに鍛えられた体だった。これでもゾンビたちに仲間を倒しているのだ。普通の鍛え方ではどうにもならない。  
 女の唇がネスの乳首に近寄る。ゆっくりと乳首に触れるとネスの体に電気のようなものが走る。舌をだし乳首の先やまわりを丁寧に舐めていく。べちゃべちゃとした唾液がなんともいえない気持ちにさせた。  
「ああ。…ううううぅぅ」  
 思わず声が出てしまい恥ずかしくなる。自分はこんな状況なのに、こんな事で興奮ししまう事を恥じているのだ。  
「いいぜぇ。見てるこっちがゾクゾクしちまわぁな。おい!もっと責めてやれよ」  
 あたりから無責任な声が聞こえる。実際にゾンビたちも興奮しているらしくハァハァという息づかいと腐れかけている自分のモノを必死にこすっている。体を動かすごとに腐った肉が少々地面に落ち汚していた。  
 リクエストを聞いてやる気が出たのか、女はネスのズボンのチャックへ指をかけた。金具に指を絡ませゆっくりと下へ降ろす。チャックを開け脱がしやすくなったズボンを引き抜く。  
 ズボン引き抜かれるともうはいているのはパンツのみだ。パンツの方も今まで責められたせいでパンパンにテントが張っている。  
「ちぃ。いいねぇ。あんなに元気そうでよ」  
 まわりのゾンビたちはうらやましそうな目でよく張ったテントに注目した。自分たちのモノが腐れているのでまだ若々しいモノを見るのがうらやましくてたまらないのだ。赤く光った目でにらんでいるゾンビもいる。だが大半のゾンビは羨望の眼差しだ。  
 
「……」  
 ネスは自分のモノが見られ更に恥ずかしくなる。母親や妹には何度か見られたことがあるが知らない人間に、それもたくさんの人数に囲まれて見られることなどなかったためだ。  
 恥ずかしさは頂点に達しようとしていた。そんな中、更に恥ずかしさを倍増させる事が起こる。  
「わぁ。大きいわね。でもこれがじゃまね。エイッ!」  
 空いた両手を使い今度はパンツを取ろうとする。こばもうとはするものの快感にはあがらいがたくやはい思い切り抵抗しようとする気分にもなれなかった。  
 そのため、あっさりと脱がされてしまう。これで本当に裸になってしまった。家族以外見せた事のない裸体がゾンビたちの衆目に晒される。  
「やっぱり綺麗な体ね。それにここは一段と立派なんだから」  
 まだ発育途上とはいえ、女が指差す先にはネスのたくましくそりたつ男があった。  
 色はまだ白く形状も幼い感じだったがやはりかなりの大きさになっている。同世代の少年たちに比べ成長が著しい。ただ少年らしく先端は剥けておらずまだ皮に包まれていた。  
 このことを友人のポーキーにからかわれた事がある。ポーキーの前で偶然勃起したことがあるからだ。  
 だから自分にとって恥ずかしいのか、手で抑えて隠そうとするがすぐにはずされてしまう。  
「隠すなんてもったいないわよ。こんなに美味しそうなのに」  
 なんとネスのモノめがけて女が顔を降ろしてくる。驚くがどうしようもない。そそり立つ男はまったく逃げる事が出来ないのだ。  
 モノはパクリとアイスキャンデーでもくわえるように女の口の中へ入っていった。  
(食べられてる、僕のオ、オチンチンが…)  
 ゾクゾクと背中を走るものがある。それが何なのか表現する事は難しかった。  
 女は歯と舌を使い皮を剥く。女の口の中はとても温かく唾でモノ全体がじっとりと湿っていった。右手と左手を使いネスの玉の部分をコロコロと転がして楽しんでいる。  
 それさえも今のネスにとっては快感だ。子供とはいえ感じる所は感じている。むしろこういう事をなれている人間より何倍も感じやすいだろう。  
 時には口で吸い付きネスの放出を促そうとする。執拗な舌の攻撃が敏感な個所を的確に攻め声をあげさせる。放出が耐えれそうになくなると今度は甘く舐めるのみにしてネスを我慢させた。  
 
(も、もう耐え切れない。このまま我慢させられたらおかしくなりそうだ)  
 ネスの苦しそうな表情や気持ちが女に伝わったのか、女は遊びをやめネスを本気で攻めだした。首を上下に振り頬をへこませ全てを出させようとする。  
 腰の奥深くより盛り上がってくる何かがある。何度も出すのを止められたせいでもう耐えれそうにない。  
「あ、出、出ちゃう。出る!出る!」  
 舌で何度も己のモノを擦られついに先端から真っ白な精液が噴出した。つい女の頭を抑えてしまう。  
 女はそんなネスの行いにも動じずのどを震わせながら必死に飛び出してくる白液を飲み干そうとする。次第に放出は治まっていくが、舌をべろべろと動かし少しも逃すことなく舐め取ろうとしていた。  
 女が口を大きく開くと飲みきれなかったのか精液が見える。ニヤ〜と笑いながら女は顔を下に向ける。  
 口から白く濃い匂いを発する精液がだらりだらりと部屋に落ちる。落ちた精液は床で白いたまりを作った。  
「とっても美味しかったわ。たぶん初めてかしら?」  
 顔を赤くする。落ち着いてハァハァと息をついた。体中から汗が流れていてもう立ったり動けそうにない。目を一瞬閉じゆっくりと己の息づかいが収まるのを待った。再びネスが目を開くと女は立ち上がり腰の横に足を置きしゃがんでいく。  
「それじゃあなたの童貞、頂くわね。怖くないから力を抜いて」  
 女は体を落としそそりたった男に向け秘所をあてがう。ネスは始めて見る女にまだ目を白黒とさせている。どうする事も出来ずされるがままだ。ネスの先が女に触れる。だがいきなりは入らない。腰とネスのものの場所を必死になって合わせる。  
「くぅ。あと…もう少しね」  
 最初はうまくはいらなかったものの何度も体重を落とすとゆっくりと入り包み込んでいく。最後にはすっぽりと合わさってしまった。まわりのゾンビたちから見ると女がネスに騎手のように乗っているよう見えるはずだ。  
 
 女の内部はグチャグチャと溢れそうなほどの蜜でいっぱいだった。さっきまでの愛撫でかなり気持ちよくなっていたのだろう。脱ぎ去ったパンツを横目で見ると愛液でかなりぬれていた。  
 ネスも先にぬるぬるとした汁を染み出していたが女の量とは比べ物にならない。蜜はネス自身を包み込みながら更に玉、股間、太ももに垂れてくる。  
(これが『女のひと』なんだ…。不思議な感じだ。なんだか吸い込まれそうだ)   
 ゆっくりゆっくりと動き出す。蜜の音は動きと共に音を増していく。  
 騎乗位の状態で何度も何度も跳ねる。そのたびにパンパンと肉と肉が合わさりはじける音がした。あたりのゾンビたちはもう雰囲気に飲まれ声も出せない。ただこの二人の甘美な時を眺めるだけだ。  
「あ…あああぁ!いいっ!いい!いい!」  
 女のグラインドが大きな声となり響く。ネスは十数回跳ねられただけなのにもう耐えれそうにもない。女の内部は口内より数倍気持ちよかったのだ。  
「い、いやだぁ。気持ちいい、気持ちいいぃ。で、出るぅ出るぅ!」  
 ネスの上でまたがりながら女は叫びつづける。  
 堅くそそりたったネスの男は内部のすべてに吸い付くような気持ちよさに耐えながら必死で放出を抑えている。  
 抑えてはいるが我慢しよう我慢しようと思うほどどんどんと男は堅くなっていった。もう一度放出したというのに衰えはしなかった。  
 女の向こう側にポーラの姿が見えた。真っ白な体。美しい金髪。それが目の前の女とかぶる。とたんに全てに耐え切れなくなる。  
 歯が砕けそうなほどの力で食いしばるとネスはたまっていた全ての精液を女の中めがけて出した。童貞との別れの瞬間だった。  
「ああ〜。いくっ、いっちゃう!いいよぉ!気持ちいいっ!!」  
 初めての膣内射精だというのにあふれそうなほど大量の精液が女の内部に行き渡る。  
「ああああ…おおぉぉぉ……」  
 女は再度大きく叫ぶとヒクヒクと震えながら涙をこぼした。体中を突き抜ける快感に襲われている。涙はポロポロとこぼれ女の胸や足元に落ちる。  
 
「…いい。あなた本当にいい。初めてとは思えない。…泣いちゃったわ」    
 男全てを包み込む肉壁は最後の一滴までもったいないとばかりに搾り取ろうとぎゅうぎゅうに締めてくる。初めてのネスはそれに耐えられるはずもなく、精の全てがなくなるまで吸い尽くされてしまった。痙攣をくりかえし目の前が暗くなる。地面に倒れ掛かる。  
 薄めで目の前を見ると女が光悦した顔でいる。頬を真っ赤に染めとても満足したような表情だ。なぜかその顔を美しく思う。笑ってやると女も精一杯の笑顔で笑い返してくれた。  
 再度夢の世界にいったような心地よさに襲われ体の力を抜き眠っていく。遠い暗闇の中で数人のゾンビと女の声がしたようだが覚えてはいなかった。遊びつかれた子供のように眠るだけだった。  
「…う、ううう」  
「あっ!ネス起きたのね!大丈夫?ネス、ネス」    
 目がさめる。あたりは暗闇だ。服を気にしたが、ちゃんと着せられていた。女の指の感触を少しだけ覚えていた。  
 まだ目がないため手探りであたりに触れているとスカートのすそにあたった。そのスカートの主ポーラがネスに気づき言葉をかけてきた。  
 ネスは体を起こしまわりをみまわした。そこはもうホテルではな暗闇が支配する地下室だった。そこに二人は閉じ込められてしまった。  
 最初はポーラも気絶していたようだが、先に気づいたらしく何度も脱出しようとしたらしい。指が土のせいで真っ黒になっていた。  
 ポーラの安全を確認するととたんに力が抜けてしまった。地面に向けて倒れ掛かる体をポーラが受け止め力いっぱい抱きしめる。ネスの顔にポーラの涙の粒がいくつも落ちていく。  
「ごめんね。私の為に。…ご、ごめんね。ごめん…ごめん」  
「いいんだ。…別にいいんだ」  
 ネスは泣きじゃくりながら謝るポーラの胸の中で眠りについた。体の力を抜きゆっくりと目をつぶると長い長い眠りについていった。  
 
「くそっ。貴様らこんなことしやがってどうなるか覚えてろよ!畜生!!」  
 サーカステントの中で大きな叫び声がする。中には数十匹にも及ぶゾンビの群れがとりもちに引っかかったように地面にへばりつき必死にもがいている。しかし叫び声も必死のあがきもまったく通用せず逃げる事はかなわなかった。  
 外ではたくさんの町の人間たちが集まっていた。その中にネスとポーラの姿があった。近くにはもうひとりめがねをかけた少年の姿もある。三人とも楽しそうに笑っていた。町の人間たちもゾンビたちがつかまり安心しているのかなごやかな雰囲気だ。  
「ありがとう、ネスくん。君達のおかげで助かったよ」  
「…いえ。別に僕たちのおかげじゃないです。みんながひとつになってがんばったせいですよ」  
 ひげの生えた町のリーダーがネスの手をとり力強く握った。ネスは自分たちが誉められ恥ずかしそうに照れている。  
 そんな中、一人の男がリーダーのもとに近寄り耳打ちをする。リーダーは男の言葉を聞くと首を振り合図をした。すると数人の町民といっしょに誰かがよたよたとつれてこられた。  
「!」  
 ネスはその人間を見たとき思わず声をあげそうになった。ゾンビたちといっしょにいた女だったからだ。  
 女はネスたちのことに気づいているのかいないのか目を向けようともしない。リーダーはネスたちに事の次第を説明する。  
「ネス君。実はこいつはゾンビたちの仲間らしいんだ。君はゾンビに捕まったって言っていたね。どうだい。見覚えはあるかい?」  
 女の顔を持ち上げネスに良く見えるようにする。それでも女は必死に目をそらす。どうしても顔を合わせたくないようだ。何度見ても間違いなかった。あのときの女だった。  
「リーダー、噂になってた奴ってこいつだぜ。さっさと殺すなり何なりやっちゃおうぜ」  
 「殺す」との町民の言葉に女は体を震わせ反応した。本当に殺すわけではないが、それでも女の立場からすると十分脅しにはなった。体から冷や汗が流れてくる。  
 
 ネスは考えた。こんなにおびえている女の正体をばらしていいのだろうかと。自分を襲ったのもこの人。だがあの時結果的にポーラを守ったのもこの人だった。  
「どうだい。やっぱりこいつは仲間なんだね?」  
「…いえ。ちがいます。見たことはありません。関係ない人だと思います」  
 搾り出すように言葉を選びリーダーに返答する。隣に控えているポーラが驚いた顔をする。女も驚いた顔をする。  
 ネスの言っている事が信じられないという風に。何かを言おうと口を開いたがすぐにとじた。ネスの真剣な横顔を見ていると何もいえなくなったためだ。  
「…そうか。君が違うというなら違うんだろう。よし!そいつを離してやれ」  
「えぇ?リーダー、いいのかよ。それで」   
 町の住人たちは口々に不満を言いながらだがしぶしぶ女の両腕を離してやる。女はそれを逃さずに立ち上がると住人たちを振り払う。  
「!!」  
 女は三人の目の前から飛び出すように出て行くと走っていった。何のお礼の言葉も残さずに。ネスは去っていく女の後姿を見ながら別れる事がさびしいと思った。  
 町の出口まで女は走っていくと、そこで止まりネスの方を向いた。もう出口のトンネルは目の前だ。  
 そこで女はかけていたサングラスを取る。女の顔は思ったとおりあのときの夜のままでとても綺麗だった。女は一瞬だけ笑うとトンネルの中に消えた。なぜか目が潤んでいたように思える。  
 ネスは何故かとてもさびしく思いながらも、また女と会いたいと思った…。  
 
 

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