そんなこと、意識したことはなかった。  
一緒に旅を続けてきたが、特にそう思ったことはなかった。  
だが、彼女にとってはそうではなかったということを、初めて知った。  
アナの一言は、ニンテンの心を大きく揺り動かした  
 
 
 「私のこと・・・・好き?」  
 
 
そんなことを言われるのはもちろん初めてだったし、  
誰かに好意を抱いたことも無かった。  
 「う・・・うん・・・・」  
小さく、俯きがちにそう答えると、アナの瞳が微かに潤んだ。  
 「嬉しい・・・・・」  
少女の頬は赤く染まり、明らかな喜びの色を浮かべていた。  
アナはそれだけ言うと、そっとニンテンの体に腕を絡ませてきた。  
 「アナ・・・?」  
 「暫く・・・このままでいさせて。傍にいてくれるって・・・言ったでしょ?」  
そう言った少女の体は、僅かに震えていた。  
もうすぐ世界を狂わせた悪の根源と戦うのだ。  
それで無くとも、この山小屋にたどり着くのは命懸けだった。  
不思議な力が使えるとはいえ、たかだか10歳やそこらの子供が、  
一人で死の恐怖に耐えられる筈も無い。  
ニンテンにはそんなことは分からなかったが、  
自分の体にしがみついて、振るえている少女を守らなければ。という気持ちに刈られた。  
 「・・・・僕が守る。」  
そう言った後、ニンテンは強くアナの体を抱き返した。  
 
自分の腕の中で震えている少女が愛しく思えた。  
いつもは明るく、弱音など吐かないアナが、  
今は、力を込めれば、折れてしまいそうなほど、細く、弱弱しく見える。  
 「ニンテン・・・・」  
不意に、腕の中の少女が顔を上げた。  
目を閉じ、口を軽くすぼめて、こちらを見上げている。  
そういうコトに関してはあまり経験の無いニンテンだったが、  
流石にアナの行動が何を意味するのかは理解できた。  
 「アナ・・・・」  
初めてのキス。唇同士が触れ合うくらいの軽いモノだったが、  
幼い二人が思いを確かめ合うのには、充分だった。  
 「この後・・・何するか・・・分かる?」  
顔を離した後、互いを見つめあいながらアナがそっと言った。  
 「えっ・・・・いや・・・その・・・・・」  
そこは健全な性少年。経験は無くとも知識はある。  
 「・・・・・・・うん」  
 「じゃ、いきましょ・・・・」  
お互いに顔を真っ赤にしながら、手を繋いでベッドの方へ歩いていった。  
 
 
ベッドに腰掛けて、緊張しているアナを、ニンテンはゆっくりと押し倒した。  
 
 
ベッドの上の、アナの服に手をかける。  
 「ま、待って・・・私だけ脱ぐんじゃなくて・・・アナタも」  
恥ずかしそうにニンテンの視線から顔をそむける。  
 「ゴ、ゴメンっ!じゃ、じゃぁ・・・・・」  
そういって、互いに背をむけて、服を脱ぎ始める。  
背後で『パサッ』っという床に服が落ちる音が聞こえる。  
その音を聞くと、頭の中でアナの裸体を想像してしまう。  
 「・・・・もういいわよ」  
 「うっ・・うん」  
その声は、普段のアナからは想像できない程小さく、弱弱しかった。  
 
 
 期待と不安が入り混じった、複雑な気分で振り返る。  
そこには、下着だけを身にまとい、恥ずかしそうにベッドに座るアナの姿があった。  
 「アナ・・・・・」  
それだけしか言えなかった。  
只、目の前の少女が愛しかった。  
その気持ちを胸に、再度アナを押し倒す。  
 
互いに見つめあい、唇を重ね合わせた。  
先ほどのキスとは違い、相手を求めるかのごとく、長いキスになった。  
 
 

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