学校の授業が終わり、店に帰ってきた寿々子。あい変わらず裸エプロンで店番している兄。勿論客はいない。  
握り拳を見せて兄を少々威嚇した後、二階に上がりウェイトレスの服に着替える寿々子。  
「ちょっとスーパーで食材買ってくるから店番しててくれ」と言って兄が出かけていく。  
着替え終わった寿々子、カウンターに座る。と、床に落ちている物に目がいく。  
さっきまで兄が付けていたエプロンだ。着替えたような感じではなく、文字通り落ちたという状態だった。  
嫌な想像を必死で振り払いつつ、ふと思う。  
(……なんでお兄ちゃんはあそこまで裸エプロンにこだわるんだろう?)  
エプロンを拾いしばし眺める寿々子。兄が良く使う下半身だけおおうタイプのエプロンだ。  
こだわる理由について想像をめぐらす……が、「趣味」の二文字しか浮かばなかった。もっとも簡単な疑問の解き方以外は。  
(……実際に付けてみればわかるかな……  
 い、いや、そんなことしたらますますアブナイ店だと思われちゃう!お兄ちゃん一人だけでもかなりアブナイのに!  
 ……でも……)  
店の中を見渡す寿々子。客は一人もいない。外にも客が来る気配は無い。ここしばらくは客が一人もこない日が続いている。  
崖の上にも下にも一応人家があるという状況からか、最近は自殺志願者もあまり訪れなくなってきていた。  
そして今日は借金の取立ての日でもない。崎と島岡が来る心配も無い。  
(……ちょっと試すだけなら……)  
二階に上がる寿々子。手にはしっかりとエプロンが握られている。  
 
自室にて鏡の前に立つ寿々子。下半身をおおうエプロン以外は全裸に近い状態である。  
実際につけてみてわかった事は只一つ。  
(寒っ!カゼひくよ!何でいつもこんな格好で平気なのお兄ちゃん!?)  
それだけであった。  
馬鹿な事をしてしまったと反省しつつウェイトレスの服に着替えなおそうとする……が、  
「寿々子、いる?」  
「手伝いにきたよー!」  
ドアが開かれ、千織と苺が入ってきた。  
鏡の前で裸エプロン姿のまま硬直する寿々子。  
その姿を見て同じく硬直する二人。が、次の瞬間、千織がカメラのシャッターを切りまくる。  
「ちょっ、何撮りまくってるの!?止めて!」叫ぶ寿々子。が、  
「売れる!これは売れるわ!一枚千円でも飛ぶように売れるわ!」  
「そして何を言ってるの!?」  
と、全く聞いてない千織。  
「お願いだから止めてー!」赤面し絶叫する寿々子。胸を腕で隠そうとする。が、  
「良いわよその表情!そのポーズ!一万でも売れるわ!」  
やはり全く聞いてない、というより聞こえていない千織。  
「寿々子……とうとう、そっちの趣味に目覚めちゃったの……?」  
唖然とし、半ば涙ぐんだ表情で苺が呟く。  
「ち、ちがうの!これには訳が……その前に千織を何とかしてー!」  
絶叫し続ける寿々子。と、階段を誰かが上がってくる。何やら話している。  
「いやー助かったよミッチェル。まさかパンツどころかエプロンまで脱げるなんて」  
「何で気が付かないんですか!?スーパーで見た時一瞬幻覚かと思いましたよ!  
 私が丁度服を買った帰りに立ち寄ったから良かったものの……」  
「ごめんごめん、後でこの服洗って返すから」  
「洗わないでそのまま崖下に放り捨てていいぞ」  
「や、藪木君!?」  
「藪木、またそんな事言って……ん?なんか騒がしいな?」  
騒ぎに気づいた兄・ミッチェル・藪木の3人、開けっ放しのドアの隙間から寿々子の部屋の中を覗く。  
 
裸エプロン姿で悶える寿々子。  
その様子をあらゆるアングルから激写しまくる千織。  
涙ぐんだ表情で立ち尽くす苺。  
部屋の中の異様な光景と雰囲気に絶句する兄・ミッチェル・藪木の3人。  
と、兄達が部屋に入ってる事に気が付く寿々子ら。  
「あ、あら、皆さんお揃いで……」  
「あ……お、お邪魔してます!じゃなくて、手伝いにきました!」平静を装う千織と苺。と、突然何かが倒れる音が。  
「み、見ないで……てギャーー!藪木君!?」叫ぶ寿々子。倒れたのは藪木であった。鼻から盛大に血が溢れている。  
「藪木ー!起きろー!」兄が必死に揺り動かすが起き上がる気配は無い。  
「藪木君!起きなさい!起きないとフランスチョップかましますよ!」  
「ちょ、フランスチョップて何!?」訳がわからない苺。  
「どうしても起きないのですね!ではいきますよ!日頃の恨みを込め、今必殺の……」  
「『必殺』て、トドメ刺す気かアンタ!?」同じく訳がわからない千織。  
「わー!よせー!?」血迷ってフランスチョップをかまそうとするミッチェルを必死で止める兄と千織と苺の3人。  
眼前の阿鼻叫喚の光景を見つめつつ、寿々子は思った。  
「二度とお兄ちゃんの真似をするのはよそう」と。  
そして「騒ぎがすんだら、お兄ちゃんに二度と裸エプロンをつけないよう夜通し説得しよう」と。  
 
その日の深夜、崖の上の家からゴリラの咆哮と男性の悲鳴が一晩中響きわたったと言う。  
 
 

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