「臨界」  
 
 
『泉がいらないなら 僕がハナちゃん もらってもいいよね』  
 
 起きぬけに貰った夏希の不敵な電話に、泉であっても自分の気持ちに気付かない振りを  
するのは、もはや限界だった。  
 泉は窮屈な飛行機の中で、どんなに考えても自分が13時間もエコノミーに拘束されて  
ハナの後を追うなんて、ありえないことだと思った。  
 ありえない時には、ありえない事が次々と起こる。ローマからミラノへの飛行機が全便欠航、  
やむなくタクシーにすれば道に迷いエンジントラブル。ハナと夏希が二人きりで夜をどう過ごし  
たのか……泉は胸をジリジリと焼くこの不快な感情の意味に向かい合わずにはいられなかった。  
 そこまでして辿り着いたのに、恋に対して幼かった泉は対処をまたしても誤った。  
結果、無邪気なハナの言葉が残酷に泉の心を抉る。  
 
「やっぱり夏希先輩のほうが好き♪」  
「これからは ハナちゃんの面倒は僕が見るから 泉はもういいよ」  
 
 ハナを連れ去る夏希の言葉に一度は引き下がったものの、意を決して後を追えば、  
そこにあったのは、ハナと夏希のキスシーンだった。  
 
『夏希先輩に本気出されたら絶対かなわないよな―――』  
 
 鮎原兄弟の言葉が何度もグルグルと泉の心を苛む。  
 かなわない?……もう、ハナは夏希のものなのかと……  
ミラノでの二人きりの夜にハナと夏希は――。  
 
 帰りは夏希の家の自家用ジェットで帰る事になった。  
 夏希は泉の物言いたげな視線を気にすることなくハナの向かいの席に座る。  
そんな空気を感じられるようなハナではないので、飛行機が苦手な事もあり  
離陸するより早く、座席に座るなり眠りに落ちた。  
 上機嫌な夏希と不機嫌に落ち込む泉と……空間を上滑りする会話が、途切れ途切れに  
続く飛行機の中で夏希が動いた。  
 夏希は当然の権利のようにハナの隣の席に移動して、眠るハナのブランケットを  
直してやる。それを見つめる泉の苦しげな表情に気付いていながらわざと牽制する。  
 
「なんか不思議だよね……好きだと思うと、何でも可愛く見えちゃうんだ」  
 
 夏希に言われるまでもなく泉だってそんなことは十分知っている。顔をそむけ、  
不快気に眉をよせて押し黙る泉をからかうように夏希は言葉を続ける。  
 
「僕は泉とは違うからね……ミラノでハナちゃんと寝たよ」  
 
 弾かれたように振り返る泉を、気にすることなく夏希はハナの髪を弄びながら薄く  
笑んで続ける。  
 
「服を脱がす時はさすがに蹴られたけどね……ハナちゃんの肌がね…これが意外なんだけど」  
「夏希! もうやめろっ!」  
 
 崇のきつい制止に夏希は言葉をとぎらせたが、それが悪い事と思ってやめたのでは  
ないのはその表情からも明白だった。  
 
「……そうだね。これ以上言ったらハナちゃんが可哀そうだからね」  
 
 ハナの頬を、曲げた指の背で愛おしそうに撫でながら囁いた言葉は優しかったのに、  
振り返って発せられた言葉は鋭く冷たかった。  
 
「僕は何度も忠告したよね泉? そしてチャンスは何度もあったのにそれを逃したのは  
 泉だろ? そんな泉にどうして気を遣って自分の気持ちを諦めなきゃならないのかな?」  
「「「「…………」」」」  
 
 夏希に射るような視線を向けられて流石の崇も反論できずに黙りこむ。こんな会話が  
なされたことなど知らずに眠るハナの寝息とエンジン音だけがやけに機内に響く帰路だった。  
 
 
 打ち萎れたまま帰国した泉は微熱を出し寝込んでしまう。実際、寝込むほどの熱では  
無かったのだが気分的に起き上がる気になれずにベッドから出ないでいるというのが  
本当のところだった。  
崇はそんな泉を初めて本気の恋をして、その失恋からの知恵熱かと思う。  
 だが、まだどう見ても勝負が決したとは思えない。一番変化があってもおかしくない  
ハナの態度がいたって普通だったのだから。  
では“じいや”として崇が泉のためにできることは……。  
 
 ――考えた末、崇は鈴木豆腐店にいた。  
 
「鈴木、お前、泉んとこへ見舞いに行け」  
「えーっ! なんで私が? やですよ。最近の泉先輩、意味不明で怖いし……」  
 
 このハナの鈍感ぶりに、崇は益々泉が不憫でならなくなる。  
 
「そうか……うちの縁側もう貸さないぞ」  
「っ!……承知しました……行かせていただきます……」  
「この車を使え、見舞いの品は乗せてあるから着くまで食べるんじゃないぞ」  
「わかりましたよ……まったくめんどくさい……」  
 
 ぶつぶつ文句を言いながらもハナが了解したので崇はほっとしたが  
(まったく面倒くさいってのはこっちの台詞だ。お前が普通に鈍感じゃなければ  
 こんな苦労はしないんだ)  
と内心舌打ちしながらハナを見送った。友の健闘を祈って……。  
 
 
 その頃、微熱のあるだるい体でベッドに横になりながら泉は考えていた。  
 
『チャンスは何度もあったのにそれを逃したのは泉だろ?』  
 
 夏希の言葉が泉の後悔をより深く抉る。自分に覚えはなかったが、酔ってハナに  
キスをしてしまい『責任とってください』と言われた時も……  
自分の気持ちに向き合わずお菓子で誤魔化してしまった。  
 ハナのファーストキスはカールが持って行き、今度は夏希かと微熱で潤む目に  
腕を乗せて泉は溜息をつく。  
 何よりも泉にだって一度ならず夏希と同じようにハナと二人きりの夜はあった。  
熱海では一度はハナと――と思ったのに結局自制心を働かせてセイウチPを  
飲む事も無かったし、それを飲んだハナがその気になっている時も必死で拒んだ。  
 そう、好きだと告げるどころか体を重ねるチャンスだってあったのだ。  
 
「俺がバカだったんだな……」  
 
 ぽつりと反省の言葉を珍しくも泉が呟く。そうして泉が後悔の記憶の山と格闘している所へ、  
見舞いに来たハナが通された。  
 勝手知ったる泉の部屋。ハナはずかずかとベッドへ近づき泉に声を掛ける。  
 
「あれ、泉先輩? 意外と元気じゃないですか? これ糸魚川先輩からのお見舞いです」  
 
 差し出された見舞いの品には目もくれずに泉の視線はハナばかり追ってしまう。  
 
「……ああ、微熱だしな」  
「どれどれ……?」  
 
 ベッドの縁に腰を下ろしたハナの手が泉の額に伸びると、途端に泉はヒートアップし  
顔を真っ赤にしてしまう。  
 
「ん? でも顔赤いですよ? 熱が上がったんじゃないですか?」  
「そ、そんなことはないっ!」  
 
 泉の額に手を置いて心配そうに顔を覗き込むハナが、泉にはたまらなく可愛く見える。  
泉はハナに触れられた所がジンジンと脈打ち、それが全身に広がって行き、心臓が耳の中で  
ガンガンと鳴り響いているような錯覚にとらわれる。  
 耳鳴りのような自分の心音を聞きながら、泉は今さら遅いと思う気持ちを抑え込んで、  
はっきりと自分の気持ちを告げなければと思う。ミラノでハナと夏希が体を重ねたにせよ、  
夏希の告白にどうしてかは分からないがハナは即答を避けていた。  
 ハナの気持ちを自分に向けられる可能性はゼロではない。それは、このまま  
告白しなければ間違いなく失ってしまう可能性だ。  
 だが、告白などしたことがない泉は何をどういうふうに言うべきなのかが分からない。  
 泉がこんなに葛藤しているのにも関わらず、態度のおかしな泉にハナはどん引きで  
何か良い口実を見つけて、ささっと帰ろうと考えていた。  
 
「あ、なんか……長居したら余計疲れさせちゃって良くないですよね……」  
 
 帰る素振りを見せたハナに泉の焦りが暴発する。  
 ベッドの縁から立ち上がり掛けたハナの手を泉は素早く捉えた。  
 
「泉…先輩?」  
 
 戸惑うハナの声に少しばかり後悔した泉だったが『チャンスは何度もあったのに』  
という夏希の言葉を思い出し、意を決してハナの瞳を見つめる。  
 
「ハナ……好きだ」  
「へぁ?」  
 
 一瞬何を言われたか理解できないハナは間の抜けた声を出したが、そんなことは  
想定の範囲内だったのか、泉は気にせずに捉えたハナの手を強く引き寄せた。  
そして腕の中にハナのぬくもりを感じながら泉は熱海で自制心を働かせたことに  
対する酷い後悔を再び蘇らせる。  
 あれは何を守ろうとしての自制だったのか……  
ハナを夏希にくれてやるために守ったわけじゃない、と。  
 
「お前が好きなんだ」  
 
 言って唇を重ねようとする泉に、ハッとしてハナが突然もがき出す。  
 
「ナ、ナニするんですかいきなりっ? 泉先輩は清楚で素直でかわいい子がいいんでしょっ!?」  
「そうだが、好きになったもんはしょーがねーだろ」  
「しょ、しょーがないってっっ!」  
 
 ハナの怒声は泉の唇に飲み込まれた。詰り続けるハナに、泉は何度か舌を噛まれたが  
それでもやめずにハナの口内を侵し続けた。  
 しばらくポカポカと泉の背中を叩いていたハナの手が泉のパジャマを握りしめると  
泉はやっとハナの唇を解放した。  
 ハァハァと酸欠で朦朧としながらもハナの目には怒りが滲む。  
 
「何なんです? 突然こんなっ! 顔が赤いと思ったら、お酒飲んだんですか?」  
「ばっ、酒なんか飲んでないっ!」  
「お酒も飲んでないのに、何なんですか? 泉先輩ここんとこずっとヘンで気持ち  
 悪いですよっ!」  
「なっ!? 誰のせいでヘンになってたと思ってるんだ!」  
 
「わ、私のせいですかっ!? もう、わけわかんない!」  
「わけわかんないって! だいたい、お前のこと好きだって事自体がヘンなんだから  
 ヘンになってもしょーがねーだろ!?」  
 
 滅茶苦茶な俺様論理での半ば怒鳴り散らすような告白。こんな告白をされたら  
ハナでなくとも『私がかわいそう』だと思ってしまいそうだが相手が泉では諦めるしか  
ないのかも知れない。  
 
「――な、夏希先輩なら……」  
 
 あんまりな言われように鈍感なハナはつい夏希の名前を口にしてしまう。  
ハナの口から夏希の名を聞いて、泉が表情を強張らせる。  
 
「夏…希……?」  
 
 だが、泉の変化に気付かないハナは言葉を続けてしまう。  
 
「そうですよ。夏希先輩はそんな怒鳴ったりなんかしませんよ。まったく小学生か……」  
「悪かったなっ! 小学生みたいで、お前だって……」  
 
 売り言葉に買い言葉、もはや告白と呼べる状態ではなくなってしまったのだが、  
それを益々悪化させるように、発した言葉の意味するまま泉の視線がハナの胸に注がれる。  
 
「ちょっ! どうせ私の胸は小学生みたいな貧乳ですよっ! 悪かったですねっ!  
 夏希先輩は気にしないって言ってくれたのにっ!」  
 
 やっぱりミラノで二人は――  
何とも言えない感情が渦巻いて泉は苦しそうに顔を歪め、ハナの腕を握った手に力がこもる。  
 
「痛たたっ! 痛いですよ! 何なんですか?」  
「俺だって気にしないっ!」  
「え? 何を? やっ!?」  
 
 ハナの服をたくし上げ、泉の手はハナの胸をブラ越しに揉みはじめる。  
 
「ぎゃー! 泉先輩! 何するんですか! 私が気にしますって!」  
 
 ハナの抗議をものともせず、泉は空いた手をブラのホックに伸ばすが、いかんせん  
どうなっている物なのか分からない。  
 だが、何度目かの挑戦の時にちょうどハナが泉から逃れようと身を捩ったので幸運にも  
ホックが外れ、泉はほっとしながら、たくし上げていた服ごと強引に脱がそうとする。  
 ……がシャツの袖口のボタンがとまったままなので完全に脱がせきることができずに  
裏返った数枚の服がハナの両腕にぶら下がった状態になってしまう。  
 
「嫌ーっ!」  
 
 叫ぶハナの唇を再び自身の唇で覆いながら泉はハナの服をその背後に回して押し倒す。  
そうなると体の下になった洋服に絡め取られたハナの両腕は完全に拘束されてしまう。  
 泉はハナに馬乗りになって口付けながら素早くパジャマの上着を脱ぎ去りハナを掻き抱く。  
合わせた素肌のえも言われぬ感触に泉の中にハナへのどうしようもない愛しさが増す。  
 なにぶん初めての事で、泉は愛撫の仕方というものが分からなかったが、過去に崇が  
調達してくれたAVを基本になんとかするしかないと腹をくくっていた。  
 泉は、ハナのささやかな乳房にそっと指を這わせる。小さな頂に緊張で少し冷たく  
なった泉の指が届くとハナはぴくりと身を震わせ、それに連鎖するように、混じり合った  
二人の唾液をこくりと飲み下す。  
 ハナの反応に少し驚いて一瞬手の動きを止めた泉だったが、すぐにまた指を動かし  
焦らすようにそっと双丘を撫でまわす。一見、雑そうな泉ではあったが、実のところ  
お育ちがいいせいか触れる指使いはソフトで心地好い物だった。猿さえも夢中にさせる  
指使いに、ハナの胸の頂は見る見るうちに愛でてと言わんばかりに起ち上がってしまう。  
 
「……ハナ……気持ちいい…のか?」  
 
 手触りからその変化に気付いた泉が囁けば、ハナは羞恥とプライドから、目に涙を浮かべて、  
ぷいと横を向いてしまう。その姿は泉の庇護欲と嗜虐心を煽るだけだった。  
 
「……清楚で素直でかわいい子がいいって言ってたじゃないですか? なのに……  
 誰でもいいんですか?」  
「――っ そんな事あるわけあるかっ! キスでさえお前じゃなきゃ嫌だと思うくらいなのに」  
「だからって――っ」  
 
 泉はそれまで指で嬲っていたハナの乳房を両の手で押し上げるようにして揉み上げ、  
つんと起った頂に舌を這わせて何度も転がす。躰の自由が利かないハナは泉に翻弄される  
まま身を捩りながら切なげに眉を寄せる。  
 
「ふっ……ぁあ……」  
 
 執拗に胸を責めているうちに泉の中にも、このままでいいのかという疑問が湧いてくる。  
泉は舐めるだけではなく甘く噛んだり、強く弱くハナの肌を吸って、時折キスマークを残す。  
 
「や……やだ……泉先ぱ…い……あぁん……こんなの……んぅ……」  
 
 甘く鼻にかかった声で言ったところで効き目があるわけがなく益々泉を煽るだけだった。  
 ハナの反応が良かったこともあり少し余裕の出て来た泉は、ハナの胸を撫でながら  
耳朶を噛んでみる。柔らかで頼りないハナの耳朶を甘く噛んで舌を這わせ、ぴちゃりと  
小さな音をたてて耳の穴まで犯す。首筋にも歯を立て舌で味わい、また小さく紅い華を挿す。  
 
「んぁ……ぁぁ……はぁ……」  
 
 泉は今まで聞いたことのない甘い声を上げるハナが愛おしくて仕方がない。  
 そうしているうちに泉が跨いでいたハナの脚がもじもじと擦り合わさる感覚が  
感じられて、泉はもっと肝心な場所があったことにようやく気付いた。  
 泉は愛撫する場所を少しずつ下げて行きハナの脇腹を舐め上げて、くすぐったさから  
ハナが身を捩る隙にそのスカートを脱がせてしまう。そうやって泉は執拗に臍の周りから  
脇腹を責め続けてソックスとショーツまで脱がしてしまった。  
 くすぐったさから逃れることに集中していたハナは、ショーツまで脱がされていた  
ことに気付くと泉を詰りながら脚をバタつかせた。  
 そう言えば夏希でさえも、服を脱がす時にハナに蹴られたと言っていたなと思いだした泉は、  
ハナに蹴られないように注意して足首を持ち、そのままぐいっと上半身に押し付けるように  
してハナの動きを封じる。  
 秘所を露わにされて、羞恥のあまり半泣きになりながら弱々しくハナが抗議する。  
 
「泉……先輩は清楚で素直でかわいい子が……」  
「俺の気持ちがまだわからないのか? ならこうだ」  
 
 言うなり泉はハナの秘所に吸いついた。  
 
「――んぁっ! やぁぁあん」  
 
 そこはもう充分に潤い蜜を零していたのだが、経験のない泉にはそれが普通の状況なのか  
そうでないのか分からなかった。それが幸いして余計な事を言わずに済んだ。  
 泉が舐めたり吸ったり軽く噛んだりするごとに少しずつ色を増すハナの左右の小さな花びら。  
 
「こんなこと好きな奴にしかできねーだろ、いい加減わかれ!」  
「……んぅ……泉…先輩……んぁ……わ、分かりましたから……ひゃぅっ」  
 
 「もうやめてください」という言葉を口にする前に紅く膨らんだ花芽に吸いつかれて  
ハナは軽く達してしまう。それなのに、ほどほどという言葉を知らない泉は、一番反応の  
強い場所を責め続ける。より敏感になったハナの花芽の薄皮を剥くように執拗に舌先で  
チロチロとねぶる。その刺激に脊髄反射のようにハナは太腿を震わせ身を捩り逃れようとするが、  
泉に抱え込むように太腿をがっちりと抑えられていてそれは叶わなかった。  
 
 ハナの蜜壺がひくりとわなないて蜜を零すたびに舌をねじ込み総てを掻き出すように  
舌を蠢かせ吸い上げて責め続ける。  
 
「……なんか、綺麗だな」  
 
 震えるハナの秘所を見つめて言う泉の声もハナの耳には届かず、嬌声をあげながら何度も  
絶頂に導かれたハナは疲れきってもはや身を捩ることもできなくなっていた。  
 反応が薄くなった事で泉はこの愛撫の方法ではもうハナが満足しないのかと思い、  
次なる行為はと考えたが、何度考えても“次”は挿入しか考えられない。泉はコクリと唾を飲む。  
 
「ハナ……」  
 
 泉の切なく呼びかける声にもハナは肩で息をしているだけで答えられない。否が無かったことで、  
泉は強引に自分を納得させ、自分も総てを脱ぎ去り、ぐったりと脱力するハナの膝裏に手を  
差し入れて引き上げ、今までさんざん嬲っていた秘裂に、いきり起った自身を宛がう。  
熱くぬめるハナの入り口に触れただけでも泉は気持ち好くてたまらない。  
夏希と経験済みといってもまだそれほど慣れてはいないだろうと思い、泉はそっと腰を進める。  
ハナの潤みきった蜜壺はそんな泉自身をゆっくりと呑み込み続ける。  
 
「んんぅ……」  
 
 それまで荒く息をしているだけだったハナが突然高く声を上げたので泉は驚いてハナの顔色を窺う。  
ハナは上気した顔を歪めて涙を零していた。  
 ここで泉の罪悪感が揺り起こされたが、もう後戻りができないところに来ている事は明白だった。  
 
「ハナ……ごめん……」  
「……ぅ……くぅ……」  
 
 涙をこぼし続けるハナの様子にキリキリと胸が締め付けられながらも泉自身は狭いハナの  
蜜壺を進みコリッとする子宮に鈴口が口付ける処まで到達した。  
 ここで行き止まりかと泉は思うが、なんとも納まりが悪い。泉としてはまだ総てを納めた気に  
なれないのだ。このままもっと奥まで進んでもいいものか、また、あとどれくらい収めるべき  
自身が残っているのかと気になり視線を落とすとハナの蜜壺に埋まる自身にドキリとしてまた  
頭に血が上りそうになるが、直後、シーツを汚す赤色に泉の目はくぎ付けになる。  
 
「……ハ……ナ?」  
「泉…先ぱぃ……う…ごか……ないで……痛……」  
 
 その赤色は明らかにハナの蜜壺から零れ出ている。そして息も絶え絶えに苦痛に耐えている  
ハナのこの様子はどうみてもハナが処女だったとしか思えなかった。  
この時、泉はやっと夏希に騙されていたことに気付いた。  
そして何とも言えない罪悪感と後悔とを胸に重く感じていた。  
 ハナも少なからず後悔していた。だがそれは、泉とこうなってしまった事ではなく単純に想像より  
痛かったことによっていた。いつかは誰かとこうなるだろうと頭の片隅で考えた事が無かったわけ  
ではない。もしそうなるなら泉と、と考えていたことも事実だ。  
 そう、ハナはずっと泉を意識していた。軽井沢でハナがクマに襲われた時も最後は素手でも  
食い止めようとしてくれたし、埋蔵金探しの時は、幽霊が大の苦手なのにハナの命が危ないと  
なったときに鎧武者に立ち向かってくれたのは泉だったのだから。  
 ただ、悲しいかな泉の他の求愛行動は、鈍感なハナにとっては奇行にしか見えずマイナス  
ポイントとなって今まで二人の間を遠ざけていた。  
 
 さて、泉だが「動かないで」と言われたこの現状をいったいどうすればいいのか悩んでいた。  
抜くに抜けず進むに進めず、たっぷり数分間の膠着状態に陥ってはいたが、それでも泉自身は  
硬さを失うことなく維持されていた。なぜならば、ハナの肉襞が何度も達した後の余韻の蠢きで  
泉自身をざわりと締め付ける快楽に浸っていたからである。  
 一方ハナの方も動かぬままではあったが確固としてそこにある泉の存在感とそれを受け入れて  
時折蠕動する自分の蜜壺の甘い疼きとを感じていた。  
 
「――なら……ぃぃ…です」  
「ん?」  
 
「……少しなら……動いても……大丈夫ですょ……」  
 
 ハナの意外な申し出に泉は「いいのか?」と言ったものの、すぐには動かなかった。  
泉はハナの両手を拘束する袖口のボタンを外してハナの腕を解放し、それから少し眩しそうな  
顔をしてハナの唇を軽くついばんだ。そうして何度か角度を変えてハナの唇を堪能した後で  
やっと少しだけ自身を動かしてみた。  
 泉の予想通りにハナは痛そうに顔を歪めたが、それでも「やめて」とは言わなかった。  
泉は抽挿を繰り返しながらそれでも少しずつ自身を深く埋めて行き、泉の総てが収まりきると  
ハナの手が泉の背中にそっと回された。  
 泉が腰をくねらせハナの最奥を擦りあげるとハナの肉襞はきゅっと締まり泉に絡みつく。  
そうやって泉は、ハナの負担にならないように少しずつ抽挿の角度や深さを変えて好い所を  
探しては責めて行った。  
 
「ハナ、すげ――気持ちいい」  
 
 言われてハナは顔を赤らめ、ふいと顔を逸らしてしまったが、泉は軽くふっと笑むと  
二人の繋がるところへ指を伸ばし、泉の抽挿によってハナの蜜壺から掻き出され零れる蜜を、  
指にからめてハナの一番敏感な所をそっと円を描くように刺激した。  
 
「ひゃっ、泉…先輩……そこダメ……」  
「なんで?」  
「……なんでって……あぁん…また……おかしくなっちゃう…から…ですよぅ……はぁあん」  
「そっか……でも、そんなハナの顔が見たいからやめられない」  
「い、意地悪……言わないで……やあぁぁぁん」  
 
 蜜壺のひくつく感じと浅い呼吸でハナの絶頂が近い事を感じた泉は抽挿を速める。  
そうすることで泉にも限界の時が迫っていた。  
 
「んんぅ……あぁぁぁあ…ダメェ……あぁぁぁぁぁぁぁぁん……泉先輩ぃ……」  
「ぅ……ハナ、ハナっ!」  
 
 爪先にぴんと力を入れて脚を戦慄かせ、銜え込む泉をきゅうきゅうと絞り上げながら  
ハナが達すると、その動きに誘われるまま泉はハナの最奥に白濁する欲望の総てを吐き出した。  
 
 
 数時間後、泉の部屋の前には崇と夏希が居た。  
ハナを誘いに行って、ハナの母から、崇に頼まれて泉の見舞いに行ったと聞かされた夏希が  
崇の家へ足を運び  
 
「へぇ……でも、あの泉がフォローもなしに、ハナちゃんと二人きりで会話して悪化させなきゃ  
 いいよね」  
 
 と言った事から崇は不安になり――要するにハナとの関係を悪化させたあげく落ち込んでる  
かも知れない友の様子を見に来たということなのだが……。  
 
 泉の部屋の扉を開けると泉は眠っていた……ハナを抱いて。  
ベッドの周りに散らばる二人の衣服が総てを物語る。崇と夏希は黙ったままそっと部屋を後にした。  
 閉じた扉を背にして夏希が溜息をついて呟く。  
 
「ほんと、嫌になるよね。ここまでしないと気付かない二人って……やっとこれで落ち着くね」  
 
 崇は「夏希、お前鈴木の事……」と言おうとして、青ざめて目を伏せた夏希の表情に気付き  
 
「……あぁ、そうだな」  
 
とだけ答えた。  
 

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