「せ…千本木君?」  
「あきら…そろそろいいだろ?俺はもう我慢できないんだ!」  
「ギャーッ!たすけてーおまわりさ…うんっ。」  
あきらの悲鳴は千本木の唇によって封じられた。  
「俺をここまで本気にさせたお前が悪いんだ…可愛すぎるお前が…」  
「僕は…千本木…お前とずっと親友でいたかっただけなのに…ぐすん。」  
「じゃああの時、俺と付き合うと言ったのは嘘だったのか?」  
「それは…」  
「もう、あの頃には戻れないんだよ。ここまで好きになってしまった以上  
お前を女としてしかもう見れないんだ。」  
「千本木…。」  
「あきら…。」  
「ねえ…。千本木が好きなのは僕なの?それとも桃井さんなの?」  
 
「俺がお前のことをあきらって呼んでいるのは何故だと思う?  
お前を桃井だと思っていたらあきらだなんて呼ぶはずないだろ。」  
その言葉を聞いたあきらの心中は複雑だった。  
古くからの友人である千本木が今でも自分のことを思い続けてくれる  
のは嬉しいことだった。  
だが、それはあきらが望む友情という形ではなかったのだ。  
親友が喜ぶことなら何でもしてあげたい。でも、それは今までの友情が  
崩壊し、男と女という新たな関係が再構築される儀式でもあった。  
そんな心中を知ってか知らずかあきらの耳に千本木は息を吹きかけた。  
「やっ…」  
あきらの顔は真っ赤に染まった。  
 
千本木はあきらとの距離をさらに詰める。あきらの腿に千本木の硬いものが当たった。  
「ひっ…!」  
あきらは必死で逃れようとした。  
だが、それがかえって千本木のサディスティックな欲望に火をつけてしまった。  
「せ…千本木。冷静になれ。これは僕とお前だけの問題じゃないんだ。  
これは桃井さんの身体なんだ。自分の知らないところで初めてが失われたら  
桃井さんがかわいそうじゃないかっ!」  
「あきら。お前の方こそあそこまで自分の身体が好き放題にされているのに  
それでも桃井の身体を守ってやろうとするのか?」  
「だって…桃井さんは女の子だし…。」  
「お前のそういう優しいところ、小学校の頃から変わってないな。」  
でも、そういうところが俺は大好きだ。」  
「だ、だからダメだってば。ぎゃっ!」  
千本木は再びあきらの唇を奪い、乳房を弄った。  
 
(そんなところ触るな…)  
あきらの男としての自尊心はもはやずたずただった。  
だがそれと反比例してマゾヒスティックな感情が彼…否、彼女の心を  
支配しつつあった。ショーツは既に濡れていた。  
(感じている?僕が?)  
あきらは理性が弾け飛んでしまいそうなところを、頭の中で状況を整理した。  
(とにかく千本木に濡れていることを悟られるのはまずい。気づかれたら  
きっとあいつはそれを口実に僕を一気に責め落とそうとするに違いない。)  
その千本木はあきらを責める手を止め、あきらと距離を置いていた。  
それは、あきらを絶望の淵に陥れる一言を放つためだった。  
「あきら。濡れてる。」  
あきらの顔面は蒼白となった。  
「ち…ちが…これは深ーい事情がっ!」  
千本木はあきらの必死の弁解を見てニヤリと笑った。  
「やっぱり濡れてるんだ?」  
あきらは千本木がお得意とするはったりに騙されたことを察した。  
 
「往生際が悪いぞ。男らしく覚悟をさっさと決めろよ。あきら。」  
「で、でも…。」  
千本木はズボンを脱ぎ、トランクスの隙間からそれを取り出した。  
「初めてを捨てるのはさすがに無理でも手でするくらいならできるだろ?」  
「むぅ…。」  
あきらは千本木のそれをまじまじと観察した。  
あきらが男だった頃に所有していたものと比べるとやや小さく包皮が亀頭に  
被さっている。仮性包茎だ。  
(何だかかわいい。)  
あきらは母性本能をくすぐられた…が次の瞬間、我に返った。  
(何だ!今の!うわあああああああああああん!)  
あきらは女性化する自身の感性とこれから自分がやらされようとしている行為に  
戦慄が走りサブイボが全身の毛穴から立ってしまった。  
(お父さん、お母さん、ごめんなさい。あきらはもうオムコに行けそうにありません。)  
 
あきらは千本木のそれを握り上下に動かした。元男なだけあってコツは心得たものだった。  
「気持ちいいよ。あきら。」  
しかし、当のあきらは千本木のそれを握りながらも心はここに在らず。  
頭の中では桃井との行為を夢想していた。  
(桃井さんになら、強引にされてもいいかな…)  
「あきら。今、何を考えてるんだ?」  
「う…ううん!何でもない。何でもない。」  
しかし、千本木はあきらの本心を見抜いていた。桃井への未練が未だ残っているその心を。  
千本木は急にあきらの身体を押し倒し、両腕をねじ伏せた。  
「気が変わった。今すぐお前を俺のものにする。」  
「え!?」  
突然のことにあきらは放心状態になっていた。  
千本木はあきらの服を脱がしにかかる。  
「せ…千本木!や…め…!」  
菜々子の身体とはいえ所詮男女の体格差。あきらはあっという間に全裸に剥かれてしまった。  
「あきら…綺麗だ。」  
「ひ…ひどいよ、千本木!親友だと思ってたのに。何でこんな酷いことを…」  
「前から言ってるだろ?好きになったからに決まってるだろ。」  
「で…でもこんなのって…!」  
「あきら…」  
(うわあああああああああああ。)  
千本木のそれがあきらの処女膜に達しようとしていたそのときだった!  
 
「ういーっす。千本木、遊びに来てやったぞー。」  
玄関から聞き馴染みのある呑気な声が響いてきた。  
「も…桃井さん。」「しまった!」  
2人は現実に引き戻された。菜々子に今までの行為が  
バレたら何をされるか分からない!  
裸ソックス以上に千本木が襲われる以上にもっと  
危険な嫌がらせが待っているだろう。  
「返事がないのなら勝手にあがるぞー。」  
二人はあわてて身なりを整える。  
「何やってんだおめーら?」  
「な…何にもないよね?千本木。」「あ…ああ。」  
「あ、そうだ、千本木。この間貸したエロビデオ返して  
 くれよ。また、おかずにしようと思ってさ。」  
(も…桃井さん。僕の知らないところで何をやってるんだこの人は。)  
あきらの頭痛の種がまた一つ増えたとさ。  
完。  
 

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