萌絵が犀川の胸に顔を埋める。  
「先生…私嬉しいです」  
「そう」ごく自然に犀川は萌絵の背中に手を回す。  
「あの…わかってらっしゃると思いますけど…」  
「いいから、萌絵君。ちょっとこっち向いて」  
「はい?」  
萌絵に口付ける。頬や手の甲などとは比べ物にならないくらい柔らかい。  
心地よい弾力を鋭敏な唇の感覚が伝える。  
突然のことに驚きつつも、萌絵も答えるように犀川の首に腕を回す。  
犀川は萌絵の震える睫毛と桜色に染まった頬を見る。  
唇が離れる。  
ゆっくりと目を開けた萌絵と犀川の視線が交わる。  
「…ずっと目を開けてらしたんですか?」惚けつつも、少し責めるような目つきで萌絵は問う。  
「うん」  
「つ、次からは閉じてくださいね」  
「どうして?」  
「どうしてもです!」  
犀川は吹き出しそうになるのを堪えながら、  
「じゃあきちんと目を閉じているから、今度は萌絵君から、良い?」  
「わ、わかりました…」萌絵が緊張しすぎているせいか、犀川は冷静になっていた。  
だがそれは理性が残っていると言う意味ではない。  
「……んっ…ふぁ」再び合わせられた唇をさらに押し付け、萌絵の口腔に舌を侵入させる。  
気持ち悪いような気がしていたが、実際してみると悪くはないと思った。  
唇を唇で挟みながら顔を離すと、瑞々しい萌絵の唇が淫靡な煌めきを見せた。  
 
「ここ、見ても良い?」  
「は、はい…というか、あの」  
「うん?」  
「確認とか、とらなくてもいいですから…」  
「そう」  
 

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