紫子は全身を緊張させた。  
アイスクリームのように甘く、クリ−ミィな感覚。どこかでかいだ懐かしい香り。  
これは、現実?それとも・・・  
躰が徐々にほぐれていくのがわかった。  
紫子はゆっくりと目を開ける。まるで舞台の上の役者の様にわざとらしい仕草。  
まず視界に入ったのは明るい朝の光に包まれた自分の部屋だった。いつの間にか  
夜が明けたらしい。誰の許しも得ずに勝手にいなくなるなんて、夜はなんて自分  
勝手なんだろう、紫子はそんなことをぼんやりと考えながら寝返りをうった。  
すぐ隣で練無が眠っていた。あらあら、れんちゃんったらすっかりお休みモード  
やね。その無邪気な寝顔に思わず微笑んでしまう。布団もかけずに寝て、風邪ひ  
くで、と言おうとして紫子はやっとこの場面の異常さに気がついた。  
 
「ぎゃああああ!」  
紫子の悲鳴に練無はおこされた。  
「ああ………しこさん、おはよう」  
「ぎゃああ!」  
「どうしたの、新手の目覚まし時計の真似?」  
だとしたら斬新だ、と思いながら練無は紫子のほうへ手を伸ばした。  
「わっ」紫子ははじかれたように飛びのく。  
「こ、こんといて」  
「どうしたのさ。悪い夢でも見たの?」  
「け、けだもの!」  
紫子は怯えるような目で練無を睨んでくる。布団の上で上半身だけを  
起こし、両手でシーツを掴み、胸のところまでしっかりと引き上げていた。  
「ちかよらんといて!」  
「しこさん………あのね」  
「お願いやから」  
練無は仕方なく両手を前に出して広げた。軽くホールドアップしているよう  
な格好だ。  
「れんちゃん、私に何したん?」  
「もしかして昨日のこと、覚えてないの?」  
「え?」  
紫子は驚いたように目を見開く。どうやら本当に覚えていないらしい。  
「何って………」  
「まあ、無理もないよ。でもさ、大変だったんだから。」  
 
練無の話によると、紫子は昨日の晩遅くまで帰ってこなかったという。  
「それは別にかまわないんだけどさ、僕に電話かけてくるんだもん。何時だと思う?  
 四時だよ、四時。夕方じゃあないよ、念のため」  
紫子は酔っ払っているようだったので、練無は仕方なく迎えに行くはめになったらしい。  
「保呂草さんに車借りたんだから、あとで謝っといたほうがいいよ」  
「うわ、保呂草さんも起こしてしもてたんか」  
「なんか僕ならいつ起こしてもいいって思ってない?」  
「思ってない思ってない。で、それからどうなったん?」  
 
「うん………」  
練無は一瞬言葉につまった。言うべきじゃないのかもしれない。  
「おい、早よ言わんかい」  
練無は決心した。  
「じゃあ言うけどね。驚くかもしれないけど、黙って聞いててよ。僕がしこさんを  
 迎えに行った時にね、しこさんはね………」  
練無はちらりと紫子のほうを見た。不安そうな様子でこちらをみつめている。  
「なんか、そう、誰かにおそわれたみたいなんだ」  
 
「だいじょうぶ?」  
練無が心配そうに聞いてきたが紫子は冷静だった。  
「うん」実際、自分でも不思議な程安定していた。  
「なあ、君、どこまで迎えにきてくれたん?」  
「ああ、昨日のこと?那東区の一社の近くの公園だけど」  
「そうか。オオカミ屋敷のすぐ近くの店で飲んどったんや」  
ようやく昨日の記憶が戻りつつあった。  
「一人で?」  
「あ、なあにその質問?妬いちゃってるわけ?」  
「しこさん、人格かわってる」  
「なんで朝まで一緒にいてくれたん?」  
紫子は話題をきりかえた。  
「ここにいろって自分でいったの、覚えてないの?ずっと手を握ってては  
なさないんだもん。」練無は首を傾げてみせる。  
「他に質問があったら、今のうちだからね。早くシャワーをあびたいんだ」  
「保呂草さんは知ってんの?」  
「キーを借りただけ」  
紫子は昨夜の十二時以降のことは全く覚えていなかった。  
「もういい?」  
「あとひとつだけ。自分さ、今朝、私より早く起きた?」  
「なにいってんのさ。しこさんが今たたき起こしたんじゃん」  
 
 

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