今年も、この季節がやってきた。
例年通り行われるピクシー種による走、泳、飛全ての速さを競う過酷なレース、トライアストロン。
今年は、有力候補とか優勝確実とか言われる選手の少ない……言うなれば不作な大会と言われている。
「かってだな〜」
「しょうがないですよ、去年の上位陣が軒並み試合と重なったんですから」
SランクAランクってのも楽じゃないみたいだな〜
「その分、ウチは気楽だね、4年やって今年は最高でDだっけ?」
「これまでの最高記録、ですね」
FIMBAから送られてきた助手の女の子(割と美人……というより可愛い)が微笑みながらお茶を入れてくれる。東方の出らしく、お茶の煎れ方は本当に上手い。
「ウチの代表は、どんな感じかな」
彼女は試合に向けて最後の調整に入っていた。
「ゼフィー?」
「のわたたたたっ!!?」
声をかけると足をもつれさせて盛大にコケる、うーん、不安だ。
「び……びっくりさせるなぁっ!!ばかぁっ!」
「で、何のようなの?」
汚れを手で払いながら、立ち上がる我がファームのモンスターさん。
「いや、調子を見に来たんだけど・・・ハァ」
「なんで、そこで溜め息がでるのよ!?」
トレーニングを中断し、こちらに詰め寄ってくる、ゼファーさん。
もうすこし、おとなしければファンもつくだろうに、ヤッパ忠誠度が低いのかな。
今度、アイテム屋でなんか買ってみるか、でも金が無いんだよなぁー。
あぁー、金が欲しい。なんてなHAHAHAHA(米笑)
「ちょっと、黙ってないで何か言いなさいよ。」
「はぁ・・・」
「この、また、人の話をきけー!!!!」
叫び声(?)を聞いて顔を上げると、眼前に迫る、右ストレート。
もちろん避けれる筈も無く、思いっきり食らう。それはもう鮮やかに。
相手もピクシー種とは言っても、やはりモンスター、人間とは違う。
「ひでぶ!!」
人は言った、あれほど見事な飛びっぷりは見た事無い、と。
ドスンと体が地面についてから、意識を取り戻す。
「あ、あんたが悪いのよ。人がせっかく頑張ってあげてるのに、溜め息なんかつくから。」
俺は、まだ痛む顔を押さえながら立ち上がる。
「まったく、ブリーダーに渾身の右を食らわせるモンスターなんて聞いたこと無いぞ、
俺がギャグキャラ属性じゃ無かったら死んでたぞ。」
「また、意味分からない事言うし、このスカポンタンは。」
ゼフィーは飽きれた様に、こめかみを押さえる。
「こんなのがブリーダーだなんて頭痛がするわよ。」
頭痛!?それは大変だ。ゼフィーにはこの大会に勝ってもらはなければ、うちのファームは、
赤字になってしまう。
俺は、ゼフィーの額に、手を当てる。
「ちょ、なにを」
「大会前なのに、熱でも出されたら困る。ん?少し熱い・・・かな?」
ゼフィーは顔を真っ赤にさせて何か言ってる。けど今はゼフィーの体の方が大事だ。
「あんまり、渾をつめるのは良くないだろう。今日はもう休め。」
手を離してちょっとブリーダーらしく言ってみる。
「また、人の話を聞いてないし、このスカポンタンは。」
ゼフィーはまだ赤い顔のまま言う。
「お前に、今風邪でもひかれたら、うちのファームは赤字になってなる。
それに、俺が悲しい。」
引いてき顔の赤みが、また濃くなる。
「な、何言ってるのよ!?こんなの少し運動したからに決まってるでしょ。」
「確かにそうだが、お前はいつもはしっかりしてるんだが、ここぞという時に、
やりすぎてどじる事があるだろ?前だって」
「はいはい、分かりましたよ、もう。」
しぶしぶだが納得してくれたようだ。
「もう少しやってから休むわ。」
「おい。」
「分かってるわよ。でも今回の大会負けられないんでしょ?」
「ああ」
「なら、尚更頑張らなきゃいけないじゃない。」
「・・・」
そうか、うちのファームの事、こいつなりに考えてくれてたんだな。
「ごめんな。」
「なんであんたが、謝るのよ!?」
「俺が、もっとちゃんとしたブリーダーなら。もっと良いトレカジ用意出来たのに。
こんな駄目ブリーダーで、ごめんな。」
「そんなの気にしてないわよ。」
ゼフィーは、俺に背を向けてトレーニングを再開する。
「私は、あんたがブリーダーで良かったわ、捨てられてノラだった私を、
拾ってくれたのはあんただったんだから。あんたじゃなかったら 私は、
他のノラみたいに・・・殺されてたと思うし」
「ゼフィー・・・」
俺はトレーニングをしているゼフィーの背中を、見つめる。
「そ、それにあんたみたいな、駄目ブリーダーは、私がいないと、
駄目を通り越して、駄目駄目駄目駄目ブリーダーだろうしね。」
「・・・ありがとな、ゼフィー。こんな駄目ブリーダーのモンスターでいてくれて。」
「ふん」
「ちょっと俺顔洗ってくる。」
俺は、ゼフィーのそばから離れて、水場へと向かう。
今の顔は、見せたくない。
「本当、私がいないと駄目ブリーダーなんだから。」
そう言ったゼフィーの顔は満面の笑みだった。
翌日、朝顔を洗おうと水場に向かうと…。
「ち……ちょっ……勘弁してよぉ……」
「だーめ、女の子なんだからこー言う時くらい可愛い格好しないとね?」
この声はゼフィーと……助手のシーラさん、だよな、二人で何してるんだろう?
ふと頭の中を妄想がよぎる。
−−−−−−−−−【(*´д`*)ハァハァ 】朝一から妄想しる【(*´д`*)ハァハァ 】−−−−−−−−−
(勘弁してよぉ……私、そこ弱いんだってばぁ……)
(ふふ……判ってるわよ、でも可愛いしついしちゃうの♪)
そう言いながらシーラさんの白魚のような手がゼフィーの股間に宛われ、その両足をゆっくりと開いていく。
程なく、ゼフィーはM字開脚の状態で秘裂を弄られ始める
(やぁ…アイツにもこんな格好見せたことな……ひゃぅんっ)
−−−−−−−−−−− 糸冬 了 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ハァハァハァハァ……っといかん、涎涎(ふきふき)
おや?なんか背後から殺気が……
「ナナシさん、本日一発目、終わりましたか?」
「……この……っ怒助平!!!」
次の瞬間、俺の身体はゼフィー渾身の右ストレートによって天高く舞っていた。
あ。忘れてたけどナナシって俺の名前な、名無しだからナナシ……ありがちって言うな。
で、ゼフィーが怒ったまま訓練に行ってしまったので、こっちはこっちでエントリーの準備をしておく。
「え〜と……必要書類はこれでよし、後は切手切手」
「はい、ゴルドールの剣ですよ」
「そうそうこれでずばっと斬って……って違うっ!」
10年前のギャグをかましてくれるシーラさん(これでも有能で可愛い助手)にツッコミ入れてから改めて切手を貼り、ポストに叩き込む。
え?直接FIMBAに持っていけばいい?………出す前に言えよ orz
そして午前中の書類仕事もそつなく終わり(と言っても、俺は殆ど何もしてなかったけど)
今日の午後はゼフィーも訓練休んでのんびりすることにしている。
なぜなら、今日は俺達がゼフィーを連れて帰ってから丁度1年だから。
「「ハッピーバースデイ!ゼフィー!」」
クラッカーが2つ、ぱんっと景気のいい音を立てる。
「はい、ゼフィー。シーラ謹製アルタケーキよ」
シーラさんが店で売っているものの倍以上あるのではと思える程巨大なアルタケーキを持ってくる。
「うわぁ……おっきぃ♪」
それを見てゼフィーも大はしゃぎだ。
「HAHAHAHAHA、ゼフィー、食い過ぎて太るn」
(^0^#)===○)´д`)ウグハァ
……横も見ずに逆腕のフックを当ててさらにそれなりに身体の出来た男性を吹っ飛ばすとは、流石見た目幼女でもモンスター……
「まーだいうかこの男は」
甘美な敗北を十二分に味わっていた俺が復活を遂げた頃、席を外していたゼフィーがドアの影からちょこっと顔を出す。
「えっと……どーしてもこれ着て出なきゃダメ?」
「だ〜め♪ほら、早く早く」
なんとなくウキウキとした感じで、スケッチブックと鉛筆など構えながらシーラさんがゼフィーに出てくるよう催促する。
「わ……笑わないでよ?」
真っ赤になりながらでてきたゼフィーの姿は、なんというか、一瞬コイツピクシーじゃなくてエンジェルだったっけ?と思ってしまうほど可憐な姿だった。
普段のタイトっぽいミニスカではなくて踝までしっかり覆うスカートの付いた立派なドレス、それも華美にならない程度にフリルの付いた純白の。
可愛らしい衣装に身を包んだその姿は、いつも黄金の右や必殺延髄斬りで人を吹っ飛ばしてる本人とは思えない。
「………」
(ほら、ナナシさん、なんか言ってあげないと)
惚けていたら脇腹を突かれた上小声でこんな事言われた。
「えっと……なんだ、その、似合ってるぞ」
「ほんとっ?」
不意に花が咲いたかのようにぱっと笑顔を浮かべるゼフィー。
その姿に、ちょっとだけ悪戯心が擽られる。
「あぁ。それにな……これをちょっと拝借して……こーすれば……」
カーテン変わりにしているレースの切れ端をちょっと細工してヴェールっぽく仕上げ、それを頭に被せた上でゼフィーの身体に大して大きいような花束を持たせる。
「花嫁さん一丁上がり、ってな」
「え……?」
言われた途端、ゼフィーが身を固くする、あり?今度は真っ赤になって顔背けちまった。
(シーラさん、俺、なんか変なこと言った?)
(そーですね〜、ゼフィーが花嫁なら、花婿は誰なんでしょうね〜?)
なんかくすくす笑いながら混ぜっ返された。
むぅ……なんか照れくさいぞ
「ま、アレだな、馬子にも衣装ってのはよく言ったもn……」
「ゆにばぁぁぁぁぁぁぁっすっ!!」
意味不明のかけ声と共に、ゼフィーの蹴り上げた足が俺の顎を直撃、いかなギャグキャラと言えどもこれは耐えきれずゆっくりとスローモーションで背後に倒れ込む俺。
……あ、なんか違和感あると思ったらアイツ
ぱ ん つ は い て n
(勢いに任せて続く)