僕フルゥは、まだブリーダーを始めて五年の若輩者だ。
そして、たった五年でSランクを勝ち抜いたということで世間にはやたらと騒がれている。
だがしかし。
僕たちがSランクを勝ち抜けたのも、むしろここまで頑張れたのも、相棒・・・ミントがいたからに相違ない。
「マスター、走り込み終わりました!」
「お疲れ様。後はゆっくり休んでね?」
「はい、分かりました」
丁度今日の特訓を終えたのだろう、ミントは汗を流すためにシャワー室へと行った。
足取りとかも、いつもの通り。
至って健康に見える彼女には、しかし寿命が迫っているらしい。
番犬−番狼というべきか−であるエコノキックスが、教えてくれた。
「あいつ、ピクシー種だろ?五歳・・・そろそろ寿命じゃないのか?」
昨夜それを聞かされたとき、僕は目の前が真っ暗になった気がした。
ブリーダーになりたてのころ、牧場に埋まっていた円盤石から生まれたのがミントだった。
とても従順で愛らしく、何事も一生懸命取り組む姿勢を持っている娘で、誰より僕のことを慕ってくれている。
二年の間は、とにかく練習と特訓を繰り返し、食事もオレンジやゼリーもどきなどの比較的栄養がありそうなものばかりをあげていた。
とある大会で優勝したときにもらった円盤石から生まれたのは、エコノキックスだった。
流石に二人じゃ心細いから、番狼をしてもらうことにした。
それから、公式戦や賞金大会、旅などにも行くようになり、ミントはメキメキと力をつけるようになった。
「そう・・・なのか」
何故か胸は張り裂けそうなぐらいの痛みと、このうえない程の冷静さで満たされていた。
「ミントは、頑張ってくれたんだ。・・・工房で冬眠させてあげよう」
僕は、静かにそう言う。元々大人しくて争いを嫌うような彼女を戦わせてきたのは、僕のエゴにすぎない。
最後ぐらいゆっくり休ませてあげたい。
・・・だが。
「マスター・・・それ、本当ですか・・・」
「・・・ミント!?」
どうやらシャワーを浴びてきてすぐらしい。
いつもの衣装を纏っているにも関わらず、艶っぽい雰囲気のミントが、そこにいた。