私の予想に反して、繭の中から這い出てきたのは妖精だった。  
そのときからだと思う。私がこのモンスター「チュア」に対して仄かな、特別な感情を抱いてしまったのは。  
 
……私の父はブリーダーに憧れていた。父の幼いころはモンスターバトルの全盛期であり、  
特に「テスカ」というブリーダーと、彼の育てたモンスターは特に観客を魅了し続けていた。  
父もその魅了された観客の一人だったというわけだ。  
私が幼いころから父は「俺がもう少し若ければ…」といつも呟き、  
次に「お前が俺の夢を叶えてくれればなぁ」という目で私を見つめてくるのだった。  
だが、父は「ブリーダーになった私」を見ることなくあっけなく他界した。  
私には譲り受けた夢と、生前、父が(何を血迷ったのか)衝動買いした円盤石一枚だけが残された。  
 
わたしは猛勉強した。父の期待に応えたい、という思いは確かにあった。しかし、それだけではない。  
裕福では決してなかった少年時代、(父はどうやってチケットを入手したのか)一度だけランクSの公式戦に観戦しに行ったことがある。  
堂々とした体躯を誇るゴーレムの猛攻を紙一重で交わし続け、じわじわと相手の体力を奪い、判定勝ちを奪うライガー。  
ナーガ同士の激しい刹那的な勝負。ワンランク下のスエゾーに踊らされ続けるゴーレム。しかし、最後の一撃でスエゾーはK.O。  
ガリの神秘的な攻撃。ゲルの変則的な攻防。勝利者は賞賛され、敗者は健闘を称えられ、時には罵声。  
モンスターの動きに反射的に反応する観客、歓喜する観客、肩を落とす観客。そこに貧富の差はない。  
幼い私はいつの間にかそのうちの一人になっていた。  
 
きっと、幼い私はこう思ったのだ。「自分も参加してみたい。あの遊びの輪の中に」  
なんのことはない、わたしも魅了されたのだ「モンスター」と「ブリーダー」に。  
 
 わたしがブリーダーの公的試験を受けられる歳になるまでにモンスターバトルは全盛期から徐々に衰退しだした。  
しかし、トラウマの如く幼心に興奮を刻まれた子供は思いのほか多く、ブリーダー競争率はむしろ上昇傾向にあった。  
 しかし、これは試験の三回目にようやく合格した私の言い訳ではない。不合格だったのは私自身の知識が  
著しく不足していたからだ。私は、そのことを嫌というほど思い知ることになる。  
 
 とにかく試験に合格した私は、合格発表後の説明を適当に聞き流し、紹介されたFIMBAの助手(中性的な顔を持つ男)と共に  
会場から直接、神殿へ向かう。目的は勿論、父の残した円盤石の再生のためだ(余談だが、過去二回の合格発表会場にも、直接、  
神殿へ向かうために、汗だくになりながら円盤石を持参していた。会場からの帰り道は円盤石がとても重かったのを覚えている)。  
 仕事熱心な神殿関係者は、汗だくの私たちに一瞥を送っただけでさっさと円盤石の再生を始めた。過度の運動と、期待によって  
心臓は張り裂けんばかりだ。とうとう父と私の夢が、円盤石再生の眩い光と共に目の前に実現したのだ。光が徐々に収束され、  
その中から夢への第一歩が姿を現す。ライガーか、スエゾーか。どうか初心者に優しいモンスターを…、神様。  
 硬い背、軟い腹、長い胴、いくつもの足、そして複眼。ワームだった。ワームだったのである。  
神様は「初心者に優しいモンスター」を確かに下さった。しかし、初心者の夢を、複雑な心理までは汲み取っては  
くださらなかったようだ。父からの夢、私の夢の第二歩目…、ワームが。  
そこはかとない寂寥感に襲われる私に、優秀な助手は「うわぁ、気持ち悪いなぁ」と、笑顔で止めを刺してくれた。  
 
 とにかく、私と「チュア(第一印象のあまりのショックぶりに言葉もない私に代わり、有能な助手がこう名付けた)」の初対面は  
滞りなく終了した。  
 無言のまま我々はFIMBA推奨の、育成環境付住宅に足を向けた。  
育成環境とはボロイ小屋が二棟あり、無駄に広い敷地を確保するために、町からの長い道のりを余儀なくされる環境のことを言うらしい。  
 
 その長い道のりの間中、私はこれからの育成のことを素人なりに計画していた。天下のFIMBAも人手不足らしく  
優秀な助手は「ワームのことはさっぱりわかりません」と言い切り、育成方針はブリーダーが決めるものだ、ともっともらしい  
台詞を吐き、私との話し合いを回避した。そのため、私は一人でチュアのことを考えなければならなかった。  
 
 この素人計画がうまくいくはずもなく、重要であるはずの育成初期は混乱を極めた。  
モンスターの訓練は、FIMBAの斡旋する仕事をモンスターがこなすことで行う。  
そして、モンスターにどの仕事をさせるかは、その成長特性を見極めて選ぶのが基本だ。  
例えば、ガリに怪力車引きをさせても効果は薄く仕事効率も悪いが、力仕事を得意とするゴーレムにやらせれば効果は大きい。  
逆もまた然り。  
 しかし、ワームは? ワームは何を得意とするというのか? あの軟い腹で怪力を出すというのか?  
そもそも車を引けるのか?あの複眼の奥に深い知性が宿っているというのか? あの短い足でサーカスは不可能だろう?   
一体どうすれば…?  
 有能な助手は正直者で、本当にワームのことを知らなかった。  
しかし、勤勉らしく図書館からたくさんの育成本、FIMBAから資料を取り寄せてくれた  
(ただし、不人気のためか、直接ワームのことを記載しているものは数少なかった)。  
 二人と一匹は、まるで何かの実験でもしているかのように試行錯誤を繰り返した。時に助け合い、時に傷付け合う。  
いくつもの失敗、いくつかの成功。この喜劇的実験行為には時を加速させる効果でもあったのか、瞬く間に時は流れた。  
仕事選びの際、優秀な助手と3時間もの激論を交わしたこともある。ヘルシーだと勘違いをして「じゃがもどき」ばかり  
チュアに与え続け、結果、嫌われたこともある。そして、初めての大会。こちらの指示がうまく伝わらず立ち往生する  
チュアに思わずマジギレ。結果、1勝2敗(内、1棄権)。チュアに判断をまかせて戦わせた一戦だけが勝利を飾り、ヘコむ。  
 それから、さらに時は加速する。いくつもの修行を経験し、いくつもの大会に出場し、多くの負けを味わい、数少ない勝利を勝ち取る。  
 
少しづつ、だが確実に勝率が上がっていく。ようやくランクが一つ上がったときには、私たちはもうチュアの外見をどうとも思わなくなった。  
チュアは私の指示を理解したような反応を返すようになってきた。私はチュアの言いたい事を感じ取れるようになった。  
 目に見えない信頼は、いつのまにか私たちを大きく包み込んでいたようだ。  
 
 しかし、現実は、実力という基準を重要視しているようだ。  
 
 一つ上のランクでも、比較的、勝ちを拾えるようになった私たちはさらなる上を目指そうと努力と錯綜を重ねた。  
だが、そんな私たちの前に大きな壁が立ちはだかった。  
 公式戦である。公式戦で優勝すればモンスターのランクが上がり、初優勝であれば同時にブリーダーのランクも上がる。  
しかし、公式戦優勝を狙う場合、立ちはだかる相手全てに対して勝利を収めねば、それは実現しない。  
 チュアの場合、大会中、一つか二つ、相手に勝ちを許してしまうのだ。  
 問題は決定力不足。  
 ワーム族特有の体力の高さを生かした持久戦。それがチュアの戦法であり、一つ下のランクでは通用していたのだが、  
ランクを一つ上げるとそれが厳しくなる。いくら、相手の攻撃に耐えることができても、こちらの攻撃が通じなければ  
意味がない。どうしても、攻撃威力が足りないのだ。それは、ちから、あるいはかしこさの低さに由来する。  
 
 そもそも、ワーム族の力の伸びはそこそこであり、そこそこでしかない。大幅に上昇させる有効な手段は修行だが、  
ブリーダー初心者には結構な痛手であり、資金稼ぎのための大会出場も力不足のため準優勝がいいところだ。  
また、こつこつ、仕事をさせるにしても、諸々の生活費と消えてしまい蓄えが残らないのだ。  
 つまり、中途半端な八方塞がりに我々は陥ってしまったのだ。  
 育成初期の混乱も影響し、早3年。今日も効果の上がらない仕事にチュアを送らなければならないのかと、胃が痛む。  
最近では、無能ブリーダーの悩みを感じ取るのか、チュアも不安がっているようだ。  
 モンスターに負担をかけるようでは、ブリーダーを名乗るのもおこがましい。  
 ドアの前でため息を一つつき、ドアを開ける動作と共に笑顔を作る。心の中で何かが軋む。  
 しかし、ドアを開けたその瞬間、そんな小汚いものどもは全て吹っ飛んだ。  
   
 繭だ。見まごう事なき繭がそこにあった。  
 
「ワームの繭」……現世に再生され幾年か経たワーム族は、稀に、変態を行うための繭を作り出す。その正確な条件は不明。  
個体は、準血統をワーム族としたまったく別の種族に変態する(という事例しか報告されておらず、例外の有無は不明)。  
比較的、報告が多いのは「ハム族」、「ゴーレム族」など。  
また、ワーム族であったころの基礎身体能力値は引き継がれるようだ。  
 
 そんなFIMBAの資料の記載を思い出したのは、放心した私(そんな私と同様、繭を見て固まった有能な助手)を、  
現実に引き戻してくれた郵便配達員の差し出す受け取り証明にサインを何とか済ませた後だった。  
 
 それから三日三晩、私たちは神に祈った、縋った。どうかチュアが無事に変態を終えますように。できれば、ちからの上がり易い  
種族に変態しますように。ナーガ族は強力だけどちょっと初心者には厳しいので、ハム族とかオススメします。神さまぁ!  
 優秀な助手は自信ありげに「きっと、ハムか、ゴーレムですよ。FIMBAの資料だから間違いない」  
しかし、FIMBAに勤めておきながらワームについて何も知らなかったという男を私は一人知っている。FIMBAだからといって  
無条件に信用はできない。それに、資料には報告が多いとだけしか書かれていなかったと思う。  
 だが、私もハムか、ゴーレムであった欲しかったのでその予想に同意を表明した。  
 夜になると私は期待よりも不安で眠れなかった。どんな姿であってもいい一刻も早く、チュアの元気な姿が見たい。  
まるで、胸が焼かれたように苦しかった。そんな日々が幾日か経った。  
 
 私の予想に反して、繭の中から這い出てきたのは妖精だった。  
そのときからだと思う。私がこのモンスター「チュア」に対して仄かな、特別な感情を抱いてしまったのは。  
だけど、その時の私はその感情に対して自覚的ではなかったし、そんな微かな反応は圧倒的な安心にかき消され、飲み込まれた。  
 
 停滞していた時が、再び動き出す。  
 変態を終えたチュアはピクシー族、正確に言えばナハトファイターというモンスターだった。  
ピクシー族はその奔放な正確のため初心者よりもむしろ、中級者向けのモンスターである、というのはブリーダーの常識だ(と、  
何故かピクシーについてやたら詳しい有能な助手がのたまっていた)。  
 今回も神は「無事に変態が終えますように」という片方の願いしか聞き届けてくれなかったようだ。先行きに不安を感じている  
助手とは裏腹に、わたしはチュアがピクシーであることにそこはかとない神に対する感謝の念を抱いていた。それが何故なのか  
そのときは判っていなかった。判っていないつもりだった。  
 確かに、変態を経たチュアはピクシー族特有の奔放な性格を余すところなく受け継いでいるようだ。チュアのまさに妖精のように  
跳ね回るような動きはそれを裏付けている。何度か私に対して体当たりをかましてきたこともある。  
 しかし、ワームのころから培ってきた信頼関係は消えてはいないようだった。それはバトルの最中のしぐさによって判断できた。  
 育成方針の大幅な変更は、チュアが繭に入っている間できるだけ、どの種族になってもいいように、助手と何時間も討議していたため、  
ある程度の目処は立っていた。  
 つまり、ワームのころからの高い体力と命中精度、それに加えて、ピクシー族の成長特性であるかしこさ、反射運動能力を伸ばすこと  
によって大変バランスのいい戦闘能力を手に入れられるのではないか。  
 
 この丸出しの素人考えは私たちの行ってきた育成の中でもっともいい方針だったらしい。  
 チュアは瞬く間にかしこさを上げ、不足がちだった攻撃威力は難なく補うことができた。高い回避能力のおかげで、  
もう容易には敵の攻撃に当たらない。こちらの攻撃は難なく当たるのに!   
あれほど高く感じた壁は、新たに手に入れた翼によって難なく超えることができた。そこからはまさに破竹という言葉が相応しい。  
 次々、大会に出場し、そのこと如くを優勝でかざる。もう資金難などに頭を悩ませる必要がない。小屋を大きくし、家も増築した。  
少しづつだが、ファンもついてきた。ランクも上がり、益々得られる資金の桁が上がった。負けることを考えなくなった。そして、  
 
 初心も忘れていったのだろうか?  
 私はそのことを救いようのないほど後悔することになる。  
 
 それは、円盤石に心躍らせたあの時には考えられないランクの大会での出来事だった。負けるはずのない試合だった。勝ちしか  
用意されていないはずの勝負だった。相手はゴーレム。何度か違う大会で対戦したことがあり、二度K,Oを奪ったことがあり、  
以来の大会では対戦カードが組まれるたび相手が棄権していた。  
正直、なめていた。それが思い上がりであることを私は思い知ることになる。  
 攻防は試合開始直後からチュアが優位に進めた。さすがゴーレム体力がなかなか減らない。しかし、K,Oだけが勝負ではない。  
このまま判定に持ち込めるだろう。私と有能な助手は観察するように試合を眺めていた。チュアが骨身を削って戦っているのに。  
ゴーレムは諦めているのか、積極的に攻撃してこない。試合終了間際、私たちは勝利を確信した。チュアはどうだったのだろう?  
ゴーレムが捨て身の攻撃を、大きなバクチを打ってきた。なるほど、体力を温存し一発勝負に賭けたわけか。しかし、当るはずがない。  
 
 ズドン…  
 
 鈍い音が聞こえる、と同時に幼いころに見たSランクの試合がフラッシュバックのように蘇る。  
「…ワンランク下のスエゾーに踊らされ続けるゴーレム。しかし、最後の一撃でスエゾーはK.O」  
 当るはずのない攻撃が、当った。しかも、ただでさえ威力の高い攻撃が急所に当っているように見える。その証拠にほら、  
チュアが、ワームの高い体力を誇るはずのチュアが一撃で動かなくなったよ。  
音が消える。色が無くなる。  
 
 光が吸収されたように消えていく。意識が遠いていくのがわかる。  
 その中で、横倒れたチュアの姿が見えた。  
 
 気づいたときには私は、会場近くのモンスター総合病院のベンチに座っていた。優秀な助手いわく、私は気絶していたのではなく  
忘我状態に陥っており、大声で何かを喚きながらチュアに駆け寄ろうとして思いっきり階段で躓いたらしい。その私を引きずって  
病院まで連れてきてくれたのは優秀な助手らしい。  
 なぜ、総合病院なのかと、私は、自身でわかりきった質問を有能な助手に聞いてみた。「軽い検査ですよ」と言って欲しかったのだ。  
助手はその質問には答えず、私を病院まで引きずってきた苦労話をエンドレスで語り続ける。  
 聞くまでも、そして言うまでもない。  
 
 大会会場での医務室では高い治療を受けられないからだ。  
 
 チュアが高い医療技術を必要としている。そのような状態に陥っている。その事実に私の意識はまた遠のきそうになる。  
次に襲ってくるのは激しい後悔、潰されそうなほどの自省の念。誰か、私を殺してくれ、殺してくださいよぅ。あぁ、  
神様神様神様。チュアを助けてください。私の命は差し上げますから、どうか、チュアを。助けてくれるのなら、神でも、  
ガリでも、ゲルでもいい。チュアの命を救ってください。目に浮かぶのはチュアの顔。チュアの姿。どうしようも無いほどの  
愛情。自分がこんなにもチュアのことを愛していたなんて、それにいまさら気づくなんて。今、気づきたくは無かった。  
他のいつでもいい、しかし、今だけはそんな気持ち気づきたくは無かった。  
 
 それから二日後のことだった。  
 ベッドの上のチュア。もう妖精のように跳ね回ることは二度と出来ないであろう、その姿を見ることが出来るようになったのは。  
 
 医者は冷凍処理を勧めることはなかった。冷凍処理自体に耐えられないだけでなく、工場まで運ぶことさえ困難なのだ、と。  
もとよりブリーダー失格なことに、そんなことは頭になかった。氷付けのチュアを想像することさえしたくない。  
 
 私は病室に常に居座り、優秀な助手は新たな円盤石を探す合間に訪れるようになった。  
 ブリーダーという職業柄、次を探しはじめるのは当然のことだ、と優秀な助手は自ら申し出た。そして、いまのあなたは痛々しくて  
見るに耐えない、とも正直者らしく心情を吐露した。わたしはそんな彼の目をまっすぐに見ることができない。そして、彼の目は  
チュアの手を片時も離さない私を捉えているだろう。しかし、有能な助手は、私に対して何もいわない。  
 
 チュアは一日のうち数時間ごとに数十分だけ目を覚ました。わたしに心配をかけないように気でも使っているつもりなのか、  
私のことを笑顔でジーと見つめ、つないだ手を振り回そうとする。勿論、そんな体力はないため、振り回すふりをするだけだ。  
排泄物の処理は寝ているとき、体を拭くのは起きているとき。  
 
 食事は私が詰め込むように、じっくり食べさせる。あまり食欲がないようだが私はチュアに生きている証を見せて欲しかったのかも  
しれない。そして、私は眠れない。夜も昼も。うっかり眠ってはチュアが起きるその時を、回復する瞬間を見逃してしまう。違う、  
本当の理由は違う。言葉にしたくなかった、もう、そう遠くないであろう未来予想図を。  
 
 そんな日々が幾日か過ぎた、ある昼の出来事だった。  
 いつものようにチュアが目を覚ます。きっと酷い顔であろう私を見て思うところでもあったのか、チュアは擦れた声で歌を歌いだした。  
その歌声は私に、感じたことがないほどの深い安心をもたらした。その安心はいつしか私の意識を奪っていった。  
 
 手にいつもの体温がないことでハッと目を覚ます。ずいぶんな時間眠っていたのか、もう辺りは夕暮れの朱に一面染まりかけていた。  
寝ぼけ眼で寝台を見やる。  
 
 いない。チュアの姿、影も形もなかった。  
 
 そこからのことはあまり覚えていない。私と有能な助手、病院関係者総出で探し回ったようだ。  
 
 気がつくと私は、ファームにいた。真っ赤に染まった広い敷地の真ん中でポツンとチュアは座っていた。  
よろよろと私はチュアに近づく、チュアは顔を上げ私を視界に捉え、笑顔を浮かべる。そんなチュアを私は思わず抱きしめる。  
もう、私はチュアを離したくなかった。私は自分を抑えることができなかった。チュアはキョトンとしている。  
そんなチュアに私は口付けをする。驚いたように目を見開くチュア。しかし、私を拒むことなく、むしろ求めてきた。  
 ずいぶん長い間口付けをした、口や舌を動かすたびに「ぴちゃ、ぴちゃ」といやらしい音がする。その音に興奮しさらにチュアを  
求めてしまう。さらに私はチュアの口付けしながら、手を乳房へ移動させ、その先端ではなくその周辺を刺激する。  
「う…うんっ」  
 いつもより甲高い声に気を良くした私は、しかし、チュアを焦らすようにピンポイントな急所は避ける。  
「はぁ…はぁ…。あ…う」  
 激しい運動と、興奮によって途切れ途切れのチュアの呼吸に甘いものが混じる。  
 いい加減焦れてきたのか、チュアは唇を離し、求めるような視線を送ってくる。頬が上気し、口から銀色の糸を  
引く、その顔で。私はチュアにもっと感じてもらうために、今まで避けてきた頂点を摘む。  
「ひゃ、ん」  
 かわいらしい悲鳴をあげるチュア。私はその声をもっと聞きたくなり、唇を下に這わせ、乳房の頂上を貪る  
 
「あぁ、ああああっ」  
 私の舌は乳首が完全に勃起したことを感じ取り、もう片方も同じ目にあわせるために頭を動かす。空いた乳房を手で撫で回したり、  
つまんだり。私の舌と手の動きに連動して、  
「あう、あうぅ…。ひゃん、ぅう、くぅぅん」  
と、かわいらしい反応を返してくれる。  
 まるで赤ん坊のように乳房を求めてしまう。吸い付き、甘噛み、舌で刺激をくりかえす。  
「やっ、ぅうん。……ひぃん。はっ、はっ、あああぁううううぅぅ」  
 胸部の刺激に酔っているチュアに更なる感覚を与えるため、私は片手をそろそろと下ろし、彼女のまだ  
誰も触れたことのない、秘所に撫でるように軽く触れる。  
「はぅっ、うぁうぅぅ…」  
 慣れない感覚に驚いたのか、チュアは反射的に足を閉じようとする。  
 だが、指はその動きよりも速く進入に成功しており、私はチュアの大事な部分に探りを入れる。  
「あぁ……ん、ンん……く……ん」  
 そこは熱い液体に満たされた空間だった。私の指に絡みつくような運動を活発に行ってくる。それに応えるように  
私は指を激しく動かす。周囲に「じゅぽっぬちゃっ」などいう、いやらしい音が響き渡る。  
 
「あぅうううう、ひゃぁ、んん……うぁぁぁあ」  
 刺激すればするほど、洪水のように蜜が滴ってくる。私の指はふやけてしまいそうだ。一段と高い声を  
あげたチュアに私はそっと呼びかける。チュアはのろのろと頭を動かし私に笑いかけてくる。  
軽く達してしまったようだ。そんなチュアに私は思わず笑みを浮かべる。  
 
 私はチュアを横に倒し、脚を開かせる。私が華奢な脚の中心に顔を寄せると、チュアはまるで  
恥ずかしがるように小さな手で顔を覆う。しかし、真っ赤な顔を完全に隠すことはできていない。  
先ほど、軽くイってしまったそこは敏感になっているのか、私の息だけですぐに反応を示す。  
私は、その反応だけでは満足せず、指の腹でクリトリスを擦るように撫でる。  
「あっ……ひゃぁあん…」  
手の動きを続けながら、私は突発的に秘所に顔を寄せ、その亀裂か漏れる体液を勢いよくすする。  
 そんなことを主観的時間間隔では何時間も続けたように思う。チュアはまるで天使の奏でる楽器の一つに  
なったように甘い、官能的で、澄んだ音色を響かせ続けた。  
 
 チュアの味を十分に堪能した私は、自分の欲望の塊をズボンの中から開放する。すでにチュアに  
負けないくらいに透明な液体によって滴っていたソレは、今にもはちきれそうな様子だ。  
 私はチュアの様子を伺う。長い間、舌による行為に及んでいたためか、トロンとした目で私のことを見返してくる。  
たまらなく淫靡で、限りなく純粋な姿で、私のことを見返してくる。  
 私たちはビショ濡れの性器と、性器をあわせた。  
 
 ……結局、生態構造的な理由で私たちは、つながることができなかった。  
 すべてを受け入れるような瞳のチュアを見て、私は泣いた。  
 
 多くの出来事があったファームのなか、チュアは私の腕の中で息を引き取る、などというロマンにあふれた現実は訪れず、  
翌日、チュアは私と共に総合病院に戻った。有能な助手と病院関係者は、安堵した様子で私たちを迎えた。  
 それから一週間程、病院での以前のような生活をおくり、ある晴れた昼に、数人の関係者に見守られながら、  
チュアはこの世から旅立った。長い育成と、致命的な一撃は彼女の命を吹き消したのだ。  
 
 私はそれ以来、ワームとピクシーを育てていない。  
 

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