「G冷凍完了。・・・でもこれじゃ貴方のモンスター居なくなるわよ?」  
協会の担当者、ウィオラが問いかける。  
「心配しなくていい。円盤石は手に入れてる」  
「・・・この年齢でこの衰弱。貴方、相当無理させたでしょ」  
「知らない方が身の為だと思うけどな」  
振り返ったファンの目に宿るモノ。  
冷たい。  
まるでゴミでも見つめるかのような、普段意に介さない物への苛立ち。  
一時の躊躇もなく、一片の後悔もなく、それどころか私を壊し尽くしても足りない程の。  
彼自身に例えば―――神様のような力が備わっているわけではない。  
街の不良とかそういう類ともまた違う。  
何と言えば適切か判断に苦しむけど―――そう、人を人とも思わない、  
知り合いですら何かキッカケがあれば容易く壊そうとしてしまう。  
そんな雰囲気があった。  
 
「別に犯罪に使ってるわけじゃない。その点は安心してくれ」  
 
(・・・多少なりとも世話になったからな。介入さえしてこなけりゃ、手は出さねぇさ)  
そのまま振り向かずに協会を後にした。  
 
 
"いい女入ったら連絡くれよ、ああ、それとこの円盤石。マシなモンスター入ってるから使っとけよ"  
などと言われグラムに渡された円盤石を神殿へ持っていく。  
馬鹿で単純でどうしようもないが、良い仲間だとは思っている。  
・・・が、本当にアイツがこの中にマシなモンスターが入っているのかというと、  
信用出来るはずがなかった。  
 
(まさかまたガルゥが出てくるんじゃねぇだろうな・・・?)  
一抹の不安が頭を過ぎった。  
 
「おお、ファンじゃないか。何の用かな?」  
「チェザーレさん、この円盤石をお願い出来ますか?」  
 
レバーを倒す。  
一見すると簡単な作業だが―――  
実際のトコロ簡単だ。  
光が台座に落ち、徐々に形を成していく。  
 
「ほう、これは・・・かなり強そうなモンスターじゃな」  
出てきたのは純血のヘンガーだった。  
ほっと胸を撫で下ろす。  
その行為に対し疑問符を浮かべたようだが、定例通り質問を投げかけてきた。  
「さて、この子の名前を決めなさい」  
(名前か。Gが逝ったばかりという事も踏まえてつけるか。そうだな―――)  
「・・・レブナント(revenant:再来者・霊魂・幽霊の意)」  
 
「お前も運が無かったな。よりによってブリーダーが俺とはな」  
とはいえ、数ヶ月振りのマトモなモンスターだ。  
ある程度は大事に扱うさ。  
 
 
半年後。  
「・・・もうそろそろレブナントも大会に出すべきか。お前は如何思う?」  
「んっ・・・はむ・・・ふぁい?」  
ファンのモノをくわえていたリオが上目遣いをする。  
「・・・取り敢えずフェラやめてから喋れ。そのタイミングで聞いた俺も悪いが」  
「あ、はい。・・・そうですね、ウィトさんからメダルを戴いたお蔭で随分早く鍛えられましたし、  
 今も疲れは見えませんから星を集め始める頃合と思いますけど―――」  
「不安でもあるのか?」  
「・・・ティーティーって人はご存知ですか?」  
その名に聞き覚えは―――あったか?  
 
「知らん」  
あったかもしれんが思い出せんからどうでもいい。  
「一言で言うと、露出癖のある女性です」  
「・・・お前もう少しマシな言い方出来んのか?」  
リオってこんな女だったっけか・・・?  
ああ、だが思い出した。あの女か・・・  
その単語で思い出す俺も俺だな。  
「他に言いようがなかったので・・・噂の限りですがその人はかなりの実力者だったそうです」  
だった?  
要するに今はトゥグルにくすぶってるような雑魚なわけだな。  
まあ俺も今はその状態なんだが・・・  
「はっ!その程度なら眼中にすら入れる必要ねぇ。さっさと潰して消えてもらうか・・・って」  
(そういやあの女、初めて会った時俺に悪態つきやがったよな・・・)  
「・・・そうか、ささやかな復讐というわけか」  
 
 
「な・・・あの時のガキっ!!」  
トゥグルの町で、探していたティーティーを見つける。  
いくら探しても見つからず、本当は大会で会った時約束を取りつける予定だったが―――  
まあ今でも問題ねぇだろ。最初は探してたんだから。  
「ああ・・・丁度良かった。今度の公式戦、出るんだろ?」  
「え?当たり前じゃない!アタシが出なくてどーすんのよ!まさかアンタも参加しよーってんじゃ・・・」  
「なにか問題でもあるか?」  
ティーティーは町の往来で思いきり笑い出した。  
「あっははははははは!!アンタが?アタシに?冗談は顔だけにしてほしいもんだね!」  
「うるさいぞ。・・・で、そこまで言うなら賭けでもしてみるか」  
「賭けェ?アンタ何か良い物持ってたっけ?」  
何言ってるの?と言った風に馬鹿にした表情を見せるが、我慢だ。  
ここで俺がキレたら意味ねーんだ。  
「色々とな。で、賭けってのは今度の公式戦の結果だ。お前が勝てば俺の持ってる財産を全て渡す。  
 俺が勝てば―――」  
「ああ、良いわよ良いわよ、何でも言う事聞いたげるわよ!どーせ負けっこないしぃ?あっははははははは!」  
・・・・・・今すぐにでも殴りてぇ。つーかうるせぇ。  
まあ約束は取りつけた、この女の自爆気味だったが。  
余計に文句は言えねぇだろうさ。  
後悔すんじゃねぇぜ?人気ブリーダーのティーティーさんよ。  
 
 
「さあ!!ここトゥグルで行われているEランク公式戦も最後の試合となります!!  
 片や美しき熟練トレーナー・ティーティー選手、片や公式戦初出場ですが現在無敗!連続KO記録更新中のトレーナー・ファン選手の一戦です!!」  
 
「あーら、何処の雑魚かと思えばアタシに喧嘩売ってきた馬鹿ガキじゃない」  
「実力もねぇ癖に昔の栄光に縋りついてるだけのロートルはすっこんでろよ、うざってぇ」  
闘志というより敵意が会場に満ちる。  
明らかに険悪な雰囲気が場を支配し、司会者も戸惑いを隠せないようだ。  
「え、えー・・・準備はよろしいでしょうか?」  
「あのクソ女に聞いてくれ。俺はとっくに済ませてる」  
「トイレ行かなくていいの?どーせ負けるんだから、ビビって漏らさないようにしなさいよね」  
 
返された罵声を無視し、モンスターを見る。  
(ハムタイプか・・・手数で攻められると分が悪いな)  
ハムは元々攻撃・命中に重点を置いて育てるタイプのモンスター。  
ヘンガーは平均的に能力が良いものの、ライフと丈夫さは不安を隠せない。  
一撃当たれば良いという判定度外視な作戦でこられれば、  
正直な所分が悪いかもしれない。  
まあハムも同じくライフと丈夫さが悪い類なんだが・・・  
同じように育てるだけじゃ博打になりかねない。  
約束のこともあるし、出来るだけ勝率は上げておかなければ。  
(回避重視で育ててはみたが・・・・・・あとはお前次第だ、レブナント。失望させるなよ)  
 
「そ、それでは―――ファイトッ!!」  
半ば強引というか、雰囲気を吹き飛ばすように試合が始められる。  
 
試合前。  
「レブナント、恐らく相手はこっちの脆さを知ってる。つーことはこっちの長所も知ってる。  
 ならそれを逆に利用して相手に攻めさせろ。全く隙のねぇ攻撃なんて存在しねぇんだ、  
 相手の攻撃を避ける事に集中して、避けきった所で一発入れろ。  
 攻撃させて構わん。寧ろ攻めさせろ。避けきった所に隙がなければ、相手が疲れた所にブチ込め。  
 それを繰り返していきゃあ勝てる。とにかく攻撃に当たるのだけは駄目だ。分かったか?」  
"Sr Ys Sr My Mstr...!!!"  
「・・・返事したのは分かるが、なんつったのか分からんな」  
 
 
「ぐるぐるパンチよッ!!」  
懐に潜りこまれ、相手のモンスターが手を―――  
「え・・・?」  
既にそこにはレブナントの姿はなく。  
"Advnt MG.BLD"  
真横に、視界のぎりぎり外に構えていた。  
「あ、あぶな―――」  
"ATK!ATK!ATK!ATK!ATK!ATKKKKKKKKK!!!!"  
ザンッ。  
 
メガブレードを思いきり振るった。  
1m程吹き飛ばされ、崩れ落ちる。  
「予想外の早さだったな・・・急所に直撃だ、立てやしねぇよ」  
慌てて司会者がリング上のモンスターに駆け寄り、調べる。  
「しょ、勝者ファン選手ッッ!!ティーティー選手のモンスターをたった5秒でリングに沈めましたァッ!!」  
湧き上がる歓声。  
落胆する敗北者と、それを見据える勝利者。  
「さて、約束守ってもらうぜ?」  
「認めない、認めないんだからっ!!アタシのモンスターが一撃でなんてっ!!」  
「・・・いい加減にしやがれ。目の前で起きた現実くらい理解しろ。今日の夜、ファームに来い」  
項垂れるティーティーを尻目に、会場を後にした。  
 
 
「え?あの女の人一緒にならないんですか?」  
リオは驚いたような、それでいて嬉しそうな・・・更に哀しそうな、よく分からない複雑な顔をした。  
「ああ。ウィトに礼も兼ねてな、研究材料として提供する」  
「珍しいですねぇ、リオさんにはこんなに早く手を出し―――」  
「・・・トゥグルの海を石抱いて泳ぎたいか?ユリ」  
「な、なんでもないです・・・」  
そう、確かに自分でも珍しいと思う。  
メダルを貰ったこともあるし、その他に育成費が足りない時捻出してもらったりなど、  
色々と世話になってはいる。  
だが、昔のファンは女をここまで気軽に手放す男ではなかったはずだ。  
 
単純に苦手なのだろう、ああいう強気な女は。  
 
・・・苦手だからそいつを押しつけるというのは、礼とは言わない気がするが。  
「で、ウィトは?」  
「あ、はい。既にこちらに着いているそうです。ただ少し遅れると」  
「分かった。・・・それじゃ、アイツが来る前に準備を済ませとくか」  
 
 
「来たわよ!糞ガキ!」  
ティーティーがファームの前に立ち、叫ぶ。  
真夜中だっつーんだよ。うるせぇ。  
しかもいきなり糞ガキ呼ばわりか。  
やっぱりこういう女は苦手だ。  
屈服させれば確かにギャップが面白そうではあるがな。  
「人ン家に来て初っ端から糞ガキとは、馬鹿女の証明だな。  
 そんなんじゃその内テメェのマンコ使って稼ぐしかなくなっちまうぜ?  
 まあどっちにしてもガバマンになるだろうけどな」  
「・・・あんた何のつもりよ!?まさかアタシとヤりたいってわけ?  
 はっ!そんなの願い下げよ。約束なんて知った事じゃないわね」  
「馬鹿か。俺もテメェみたいなクサレマンコは願い下げだ。  
 ただ、お前の身体を提供すりゃ喜びそうな奴が知り合いに居るんでな」  
そこに居るだろ、とティーティーの真後ろの方を指差す。  
 
「ふぅ・・・どんな人材かと思えば、これはまた手を焼きそうだな・・・」  
振りかえったティーティーの真後ろに、呆れた顔をしたウィトが居た。  
「か・・・」  
「ん?」  
「カッコ良い・・・」  
『は?』  
ウィトに文句言われてもしかたねぇなとか、  
コイツをどうしたらマトモな便器になるんだとか、  
色々考えていたところに予想もしない台詞。  
「・・・一応コイツなんだが」  
「良く分からないが、気に入られたらしいな」  
「・・・物凄く複雑なんだが」  
「それは分からなくもないな」  
俺は糞ガキでウィトはカッコ良いかよ。  
まあきっとこいつの美意識が狂ってるんだと思っておこう。  
・・・我ながら無理があると思うが。  
 
「ウィト、そいつはお前に提供するが・・・あっちじゃ自由に動けねぇんじゃねぇか?」  
「ああ。出来れば人が居ない所で色々やりたい所だ。生憎住宅地も密集してて幅が狭いんだ」  
「そう言うだろうと思ってたからよ、ここ使ってくれても構わねぇさ。  
 女の喘ぎ声程度で如何こうなるような場所じゃねぇし」  
それこそ今まで大音量、それもステレオ状態でユリとリオを犯していても誰も気付かなかった。  
こんな場所に夜に来る物好きは滅多にいない。  
居るとすれば・・・いや、居る可能性、そして理由すら殆ど考えつかない程に。  
「助かる。取り敢えず、僕の"したい事"を説明するとしようか」  
「・・・お前の説明は堅苦しくて苦手なんでな、俺は適当に理由作ってリオの家に転がりこんどくさ」  
「分かった。明日の朝になったら来てくれよ」  
女二人を連れ、ファンはファームを後にする。  
道中、一つの思いがよぎる。  
(・・・これが抑止力になりゃあいいんだがな。アイツは・・・役に立つが危険過ぎるぜ)  
しかしその思いも、転がり込む理由をどうするかという悩みですぐに吹き飛んでしまった。  
 
「・・・さて、幾つか話したい事があるんだけど、いいかな」  
「は・・・はい。聞かせてください、ついていけるよう頑張りますから・・・」  
 
「この世界のモンスターは殆どが寿命を迎えるまで戦うか働くだけの運命だ。  
 しかしその例外としてノラモン・・・即ち洞窟やジャングルに棲む、  
 人に飼われていない若しくは飼われていたモンスターがいる。  
 彼等は寿命を迎えても協会で凍結されるわけではない。  
 飼われていたが捨てられた、というモンスターも当然居るが、  
 彼等は自然の中ならともかく遺跡などの人工物の中にも居る。  
 いくら心無いブリーダーが多数居るからといって、この増え方は異様だ。  
 このデータが示すところは、彼等は生殖行動が可能ということなんだ。  
 生殖器があること自体は分かっていたけど、その機能までははっきりとわかっていなかったんだけど」  
「あ、えーと・・・はい」  
絶対理解してないな、と内心思いながらも説明を続ける。  
「本来彼等モンスターは古代人達が"創作"した物だといわれている。  
 そして彼等は殆どの種族が"異種交配"が可能で、更に突然変異のような物も確認されている。  
 単純に言えば普通とは違った模様をしていたり、身体の細かい部分が違っていたり。  
 酷く簡単な疑問なんだけどね―――」  
 
「人間とモンスターが交わると、如何なるんだろう?  
 ファンも何匹かのモンスターと人間の女性を交配させていたけど、成果はなかった。  
 それはただその種族の精子が人間に合わなかっただけだったのかもしれないし、  
 単純に受胎しなかっただけかもしれない。安全日だったり、危険日でも駄目な時は駄目だから。  
 元々精子が薄かったり、もしかすると人間一人一人にも細かく相性がある可能性だって考えられる。  
 逆に女性形のピクシーと人間の男性が交わってピクシーを孕ませるという事も不可能ではないかもしれない。  
 色々あるんだよ。色々。何百、何千、何万、何億通りの式の中から正解を導き出す。  
 これが僕の望みだ。それじゃあ聞こうか。  
 君は僕についてこれるように頑張る、と言ったね。君は僕についてきて、何をしてくれるんだい?  
 ただ僕を見ているだけかい?それとも―――」  
 
唾を飲む音が、聞こえた。  
 
何を言いたいのかは分かった。  
最初の辺りは全く頭がついていかなかったが、  
それでもこの人の言いたい事は分かった。  
モルモットになれ、と。  
 
「・・・二度、言わせないでください。アタシは―――」  
ついて、いきます。  
 
堕ちようとも、堕とされようとも構うものか。  
出会って殆ど刻は経っていない。が、異常に惹かれる物を感じた。  
必要とされたからか、惚れた相手に。  
何時の間にか、頬には涙が伝っていた。  
「アタシは・・・いえ、私は―――貴方の為に笑って協力します」  
「その言葉を待ってた。それじゃあさ」  
 
ザン、ザン、ザン、ザン、ザンッ。  
揃っていない足音がファームの前に集まる。  
それを聞くと、ウィトはドアを開けて―――  
「これだけ用意したんだ。"君の為に"ね」  
ファームはそこまで広いわけではないが、  
それでも―――隙間が見えぬ程の数。  
月の光に照らし出される、数百匹のモンスター達。  
「借りてくるのに苦労したんだ。まあ、殆どは知り合い一人のモンスターだけどね」  
堕ちる事を決心したはずの心に、一瞬・・・亀裂が走った。  
 
人間で在る事すら許されない、阿鼻叫喚の夜。  
 
 
 
二時間が過ぎた。  
 
「ああぅ、くぅっ!!ひぃぃあああっ!!そ、そんなに激しくしないでよっ!!」  
身体中は白とは限らず、黄味がかっていたり黒っぽかったり、  
そんな"人間の物ではないような"精液で塗れていた。  
まだ意識は保てている。  
今こうしてモンスター達に抱かれて―――いや、犯されているのはウィト様の為だ。  
大丈夫。  
まだ大丈夫。  
でもこうして色々な精液に囲まれると分かる事がある。  
全部、同じように臭い。  
味は・・・甘かったり苦かったり、ばらつきがある。  
喉に絡むだけじゃなくて、そこそこ喉ごしの良い物もある。  
・・・どちらにしても嫌ではあるけど。  
「な・・・ぁっ!?そ、そこ、だめえぇぇぇっ!!」  
モンスターは時間が経つにつれ雌が一人―――いや、一匹しかいない事に腹を立てたのか、  
ティーティーのアナルへといきりたったモノを突き立てた。  
「あ・・・が、がぁ・・・っ」  
それも一番最初に入れたのがドラゴンタイプのモンスターで、  
一度も受け入れた事の無い穴に人間の規格外の大きさを無理矢理突っ込まれたのだ。  
当たり前といえばそうだが、裂けて血も出た。  
気持ちよくあるはずもなかった。  
そして"自分自身のことでないから"知った事ではないことも、また当然だった。  
「い・・・ぎぃっ!!痛っ!!痛い痛い痛いっ!!やっ、やめっ!やめ―――」  
彼女はここで一度意識を失った。  
 
 
五時間が過ぎた。  
 
度重なる刺激の所為か、身体が多少慣れてしまった為に気づくのが遅くなった。  
起きてみると、身体の表面は殆ど精液でパリパリになっていた。  
だがその上に更に精液をかけられるので、身体がかなり重く感じた。  
それ以上に深刻だったのは息がしづらい事。  
「はぁーっ・・・・・・・・・はぁーっ・・・・・・」  
口も、喉も、鼻の穴ですら精液で塗れている。  
臭いの苦痛は和らいだが、呼吸する度に張りついた精液の身体の中に入ってくる。  
そして起こるもう一つの問題が、腹の中身が殆ど精液だという事だろうか。  
精液も一応は『水分』で構成されている物―――今起きている症状は所謂水腹である。  
大きく、そしてはしたなく腹が鳴る。  
するとモンスター達はティーティーを囲ったまま、動かなくなった。  
いや、正しくは。  
「ま、まさか・・・」  
早く見せろ、と言わんばかりに。  
何かを期待する眼差しを向けて。  
「あ・・・ぐぅっ、もう・・・がまん・・・がぁっ!!」  
ティーティーは腹を抑えて一線を踏み越えまいとする。  
が、トドメとばかりに近寄って来たハムが腹部へと蹴りを食らわし―――  
「が・・・げぇえっ!?」  
口からも多少、そしてアナルからも大量の精液が吹き出した。  
さすがに気分が悪くなり、身体がふらつき自分のぶちまけた精液のたまりに腰を落とす。  
朦朧とする意識の中、違和感を感じた。  
"何故、排便したはずなのに出て来たのが精液だけなのか"  
ふと目に留まったのは小さなオギョウだった。  
"精液塗れ"になっている子供のオギョウの群れを見て―――排便以上の事をされたのではないか。  
その思いが頭の中を支配し、自我を保てている気がしなくなった。  
 
『食料にされたのだ』と。  
そしてまたも、彼女は意識を失った。  
しかも、殆ど自分からだった。  
 
 
七時間が過ぎた。  
もううっすらと明るい。人に見つかるのが怖い。  
最後の一線と言えるのかもしれない。  
何も知らない、普通の、一般の人に見つからないこと。  
この酷い―――いや、自分で望んだ事に対して酷いというのも何か変だったが、  
この地獄ともとれる状況を他人に知覚させなければ、それだけでまだ救われる。  
そう、救われるのだ。たったそれだけで。  
別に解放してくれとか言うつもりもない(もっとも言ったところでされるはずもないが)  
ただそう、この見通しの"良過ぎる"場所から移動したかった。  
精液が重く、固く張りつくこの身体を引き摺ってでも。  
そう思っていたからか、ティーティーは気付かぬ内に視線を逸らすようになっていた。  
それがモンスターにとって気に入らないらしく、  
「うぐぅっ、むごーっ!!ぐっ、ぐふっ!ごふっ!!」  
結局頭の向きを戻されてモノを銜えさせられるのだが。  
慣れてきたとはいえ突然喉の奥まで突き入れられると咳き込みたくもなる。  
 
・・・?  
今まで無我夢中で気付かなかった事があった。  
彼女は足の形でどんなモンスターが自分に交わっているのか判断していたのだが。  
"モンスター"だけである、と勘違いしていたのだ。  
 
「あ・・・え?」  
"モンスター"だけではなかった。そういう事だ。  
「あ――――い、嫌あぁぁぁぁぁああっ!!」  
人型に近いモンスターが多い所為で、気づいていなかったのだろう。  
"モンスター"を借りる報酬。  
その為に、数十人が既に交わっていたのだ。  
今一番恐れていた『人間からの完全な堕落』は、気付かぬ内に既に終わっていたのだと。  
「嘘―――こんなの、嘘よ、うん・・・悪い夢よ。負けたのも、ウィト様も、モンスターも、人も全部夢。  
 うん、目を覚ませばきっとまた私は上手くやっていけるのよ・・・大丈夫、何も気にしなくても・・・」  
そんな逃避の言葉を機械的に反復しながら、機械的に残りの者達の精を抜き取り続けた。  
白い涙を流しながら。  
 

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