数日が経過した、小屋の中でエボシとアシタカとサンが食事を囲んでいる  
サンの捕われてる小屋も既に格子は撤去され、鏡に触れることさえ出来るように  
なっていた  
相変わらず鍵はかけられているが、エボシは寝起きを共に出来るまでに  
なっていた  
エボシはサンに人間社会の大まかな仕組みや事情を教え始めていた  
理不尽な事象や難解な事象の説明を行っていると  
・・・それはおかしい!! 納得できない!!人間はやはり変だ!!・・・  
が始まり説話は中断されることしばしばであったが、エボシはそういう時は  
すっ・・とサンの肩に手を伸ばすのであった  
・・あ?!また!・・ おまえは汚い!!・・  
サンは口では反発するも体はむしろ積極的、そして女だけの濃い時間が  
始まるのである  
 
そしてあの日以来、アシタカが夕刻訪れるのも定着しつつあった  
本日は山で採れた山菜や茸の雑炊に舌鼓を打っていた  
 
「今日はアシタカが山で沢山採ってきてくれたお陰で皆大喜びしてるよ」  
「・・・さようでしたか・・・」  
 
エボシがしまった!という顔をした、  
今は別のアシタカなのだ昼間の行動は何も覚えていない  
やや焦ったような顔をしているエボシを他所に、アシタカは箸を淡々と進めながら  
正面に座ってぱくぱく食べてるサンの顔を見つめていた  
初めて体を交わしたあれ以来、度々二人はエボシの立会いの元で交わりを  
行ってきた  
視線を感じてサンの箸が止まった  
 
「なんだ? 私の顔に何かついてるか?」  
 
ぶっきらぼうな喋りだけは相変わらず、  
その時のアシタカの顔はサンの良く知る彼に似ていた、  
本人なのにおかしな表現だがそれでもやはり少し違う  
 
「・・・サン殿はとてもモノノケに憑かれた娘ごには見えませぬな・・・」  
「もののけなどもうおらぬ!」  
 
サンは横目でエボシを見ながら答える、エボシのほうは聞こえぬ振り  
むっとしながらも視線を正面に戻し、またアシタカと見つめ合う  
 
「じろじろ見るな! 飯が不味くなる!!」  
「・・・あいすいませぬ・・・」  
「そのものものしい言い草も嫌いだ!!」  
 
アシタカは無表情のまま視線を落としまた食事に集中し始めていた  
サンのあとの言葉は聞いていないかのよう  
 
((気に食わないやつだ!!  
  なんでこんなやつと、これから・・  
  エボシがいつまでも外に出してくれないからだ・・・))  
 
エボシのほうをちらりと一瞥したあと、また箸を動かし始めた  
 
食事も終わり一段落、正座するエボシの前でバサバサと衣が床に散乱していく  
入り口の近くに設置された大きな鏡が裸になっていく少年と少女を映し出していた  
全て脱ぎ終わったサンを、先に脱ぎ終えたアシタカが見つめている  
育ち盛りの肉体は、初めてここに来たときより、気持ち胸や腰が発達してるように  
感じられた  
己の身体を食い入るように見つめるアシタカを無視するようにサンは投げやりに  
床に寝転んだ  
 
「・・・それではサン殿、失礼いたす・・・」  
 
((こんなことで、何時になったらモノノケの瘴気が抜けたと  
  見なされるのか・・・ う・・))  
投げ出されたサンの体にさっそく愛撫が加えはじめられる  
いつも通り、エボシがサンの手を握り見守っていた  
鏡に映るアシタカとサン、仰向けに寝そべり、天井を見つめるサンの体の上を  
アシタカがしきりに指と口で弄っていた  
あたかも人形を愛でてるかのような風情だが、時折娘の澄まし顔が微かに  
歪んで、”う!”という呻きと同時にぴくんと跳ねる  
そしてアシタカの的確な女体のツボをつく愛しっぷりに、いつしかサンの肢体は  
いい色に変化して汗が滲むのであった  
 
「ん!・・ んん!・・」  
 
サンの股間に埋まった頭が、その上の口と鼻から甘い息を吐かせていた  
何度かアシタカ自身を受け入れてきたサンの陰部、まだまだ薄桃色で乱れは  
全くといえるほどない綺麗な入り口を、アシタカの指と舌が解し立てる  
サンの体の奥から潤いが湧きはじめたのを見計らい、アシタカの体は彼女の脚を  
広げながらずり上がり、サンの体と平行に添えられる  
興奮して準備の整った二つの肉体はゆっくりと結合しはじめ牝牡となっていく  
 
「く!・・うぅ!・・・」  
 
体温が噛み合っていく感覚に思わず嗚咽が漏れる  
アシタカの男根がサンの産道に挿入されていく様子が鏡にまざまざと映る  
サンは目を細めながらアシタカの体を奥まで受け入れるのである  
結合を完成させ一息つくと互いの性器の摩擦が開始される  
 
「く・・ う・・」  
 
アシタカの体に突き上げられる度、体が撓り上擦るような声を発するサン  
アシタカは己の男根をサンの産道で一心に扱き、より興奮の度を高めていく  
 
「う! う! ふ! う!・・」  
 
烈しいまぐわいが展開される、アシタカの腰が別の生き物のようにサンの  
腰を叩き、合わせて絞りだされる彼女の声も熱していく  
アシタカが目一杯腰を打ち込むと同時にサンの腰をも持ち上げ圧着  
アシタカの低い咆哮を合図にサンの胎内への射精がはじまる  
 
「く!・・ふぅ・・」  
 
体の内でどっと弾ける熱感、思わずサンの口から深い息が漏れた  
 
気の済むまで精を放ったアシタカの体がずるりとサンの体から抜け出ていく  
いつものように体内に残された熱いどろどろが体の外へ流れ出ていくのを感じる  
ぶくぶくと泡立ったものが尻の下に広がって行く様を鏡越しに見ながら  
サンは今日の役目は終えたのだと溜息をつく  
 
しかしその日は違っていた  
何時もならそそくさといなくなるアシタカがいまだに自分の上を覆っているのだ  
鏡を見ていた顔が、不審げに視線を上方に移す  
じっと自分の顔を見つめるアシタカの目があった  
 
「な、何だ? どうかしたのか?」  
「・・・サン殿・・」  
「え?」  
「・・・私は、そなたに惚れました・・・」  
「え?!」  
 
いきなりの物言いにぱっちりと目を見開くサン  
聞き返すよりも早くアシタカの顔はサンの顔めがけて降下してきた  
 
くちゅ・・ 「ん!・・」  
 
湿った音が鳴り響き、サンの口は名残の息が漏れたきり言葉を失った  
意表をつかれ、呆気なくアシタカに唇を奪われるサン  
出会ったばかりの頃、傷ついたアシタカに口移しで肉を食わして以来の接吻  
しかしあの時より遥かに深く熱い  
容赦なくサンの口の中に己の舌を送り込むアシタカ、  
エボシ仕込みの流儀でサンの舌を絡めとり巧みに愛撫する  
 
くちゅる・・くちゅり・・ 「ん!・・ んぅ!・・」  
 
口の中のツボをねっとりとつかれサンは甘い呻きを絞りだした  
しかしサンとてエボシにたっぷりと可愛がられてきているのである  
 
くちゅ・・くちゅ・・ ぬちゅり・・   
 
顔の角度を変えてアシタカの口を咥えなおし、反撃に出るサン  
彼の舌から器用に逃れ、お返しに裏側から潜り込んで弄り返した  
さすがのアシタカもたまらず声が出る  
 
「・・んく・・・ さ・・ん・・どぬぉ・・」  
 
ねりねり・・べちゃくちゃ・・舌の弄ぐり合戦を口の周り涎でべたべたに  
させながら繰り広げるサンとアシタカ  
やがてどちらからともなく舌の動きを緩めゆっくりと絡めながら唇を重ねていく  
・・・んんん・・ んふぅ・・・  
ひとつになった口の中で二人の息が交差し、其々の唾液で喉を鳴らす  
長々と濃厚な口付けを交わすサンとアシタカ、たっぷりと互いの唇の味を  
堪能して剥がれ落ちる  
 
「ふは・・ はぁ・・ この、ふざけるな!!」  
 
離れて開口一番、サンから出た言葉であった  
 
「・・・ふざけてなどおらぬ、サン殿、私はそなたが好きだ・・・  
 そなたに心を奪われてしまった・・・」  
「私はおまえが嫌いだ!!  
 憎いエボシの操り人形!! 恥をしれ!!」  
 
感情が激して噴出していくサン、この時とばかり胸のうちを吐き散らす  
 
「エボシは憎い!! 大嫌いだ!!  
 外に出れたら、山へ帰って、もう二度と会いたくない!!  
 それなのに!・・それなのに優しい  
 私に色々教えてくれる! 母さんみたいに・・・」  
「おまえは! おまえは、アシタカじゃない!!  
 私の知ってるアシタカは、日の光のように明るい!  
 湖の水より澄んでいる・・・  
 おまえは違う!! おまえはそこにある蝋燭の灯りだ!!  
 桶に汲んだ淀んだ水だ!!」  
「この体と交わったから私を好きになったのか?!  
 私が好きでおまえなんかと交わるものか!!  
 外に出たいから体を委ねてるだけだ!!  
 これからも私の体を好きにしたらいい!!いくらでも交わらせてやる!!  
 しかし私の心までも好きに出来ると思うな!!!」  
 
怒り、悲哀、そして戸惑いを一気に目のすぐ上にあるアシタカの顔に  
ぶつけるサン  
様々な感情の入り混じった激昂した顔と、あくまで冷めた表情が見つめ合う  
 
「はぁ はぁ・・ なぜだ?! なぜ、何も言い返さぬ!  
 言うべきことが無いからか?! 何とか言ったらどうだ!!」  
「・・・サン殿・・・」  
「”殿”はやめろ!!」  
「・・・では、サン・・・」  
 
彼の冷めた目に微かに変化があったことをサンは認めた  
尚更、ぐっ!と口を噛み締めて、対決の表情を強めた  
 
「・・・運命・・いや宿命だったのだ・・・  
 森が無ければ生きれぬ者と、森を崩さねば生きれぬ者が出会った  
 その結果不幸な宿命が生じた・・・  
 ・・・エボシ殿もそなたの母犬神も宿命に従い戦ったまでのこと  
 互いに死力を尽くした、エボシ殿は決して敬意を失のうたわけではない  
 モロ神に対する敬意あればこそそなたを助けようとしておるのだ・・・」  
「調子のいいことを言うなあああ!!!  
 私は!助けてほしいなどと言ったことはない!!」  
「・・・では問う、山犬は調子のいいことをせぬというのか?・・・  
 食い詰めれば、他所の山や野に出向くであろうが  
 そこにいる先住者が去れといえば大人しく引き下がるのか?・・・」  
「う・・それは・・」  
「・・・ここには、もはや他所では食えぬようになった者、  
 帰る場所の無い者ばかりが集まっておる  
 誰が好き好んで恐ろしいモノノケのいる山に住もうなどと  
 考えるものか・・・」  
 
もはや聞きたくないとばかりそっぽを向こうとするサンの顔を、アシタカの手が  
両側から挟んで強引に自分の顔のほうに向かせ続ける  
 
「・・・サン、そなたも一緒だ ここで生きるのだ  
 そなたはむしろ幸せだ 何時でも育った山へ行けるではないか・・・」  
 
やめろ! やめろ! サンは必死で叫ぶが声にならなくなっていた  
心が震える、より深く心の深淵に踏み込まれるのがおそろしい  
しかしアシタカは一向に手をとめない  
目を伏せ、沈黙で対抗しようとするサンの胸の内に容赦なく挿し込んでくる  
 
「・・・サン、山犬の心を失うのを恐れているのか?  
 山犬の心とは何ぞ?  
 山でエモノを追うことか? 人間と戦うことか?・・・」  
 
おまえに! おまえにわかってたまるものか! もうやめろ!・・・  
心で叫びながらアシタカの言葉はサンの胸の中を侵し揺さぶる  
山犬とは何なのか? シシ神を守るために戦ってきた  
しかし今はもうシシ神はいない シシ神のいた山も森も存在しないのだ  
それなら自分は何を守るために山にとどまるのか  
実際にシシ神が倒れた直後から彼女自身が思い始めていたことだ  
 
「・・・サン、山犬も人間も子孫を繋ぎ、未来を繋ぐ そのために生きる  
 これ以上言わずとも賢いそなたならわかるはず・・・」  
 
サンは心の中で泣き叫びたかった 山犬なのに山犬の子を産めぬ己自身  
母モロが自分を人間として生きれるよう育てた最大の理由  
”なぜここに人間がいる!”   
乙事主に率いられた猪どもの一頭が放った言葉が蘇る  
人間なのだ、しょせん私は人間なのだ、自分を山犬だと言ってくれるのは  
自分の家族だけ、それももう無い  
他所の山や森の山犬は決して自分を山犬と認めないだろう  
 
((心が・・・ 弾ける・・・))  
 
サンの瞳が潤みはじめる、唇が震える、それでも必死でこらえる  
山に戻ったところでそこには何も無いのだ   
時と共に風化していく思い出だけ  
私は・・私達は森を守れなかったのだ・・  
シシ神様を守り通すことが出来なかったのだ・・  
負け犬となったことを認めるのがこわかったのだ・・  
家族も使命感も全て失ったことをこれまでになく意識させられた途端、  
急激に襲い始める空虚感と孤独感、サンの体が脅えで冷たくなり始めた  
 
「・・・人も、けものも、森も、山も時間と共に生まれ変わる  
 山犬として生きたそのことは誇りにすればいい  
 新しい生き様を見つけても、人は決してどんな形の過去も  
 忘れない・・・  
「・・・サン、そなたも生まれ変われる、  
 そなたを必要とする者がいるここで・・・」  
 
かたかたと小刻みに震え独りの寂しさを実感しだす心と体を大きな手が  
包んでくる  
頼るべきものを何もかもなくしたサンの瞳にぼやけながら映るアシタカの顔  
 
「・・・私はそなたと生きたい そなたを守りたい・・・」  
   
アシタカは呼びかけながらサンの身体を脆くなった心ごと、両腕で包もうとする  
サンとアシタカの鼻の頭が接する、サンは一瞬の躊躇ののち、自ら口を緩めた  
その唇を改めてアシタカは摘み取った  
脇で一部始終を眺めていたエボシ、そっとサンの手を取りアシタカの背に  
乗せてやる  
サンは自分からもう一方の手もアシタカの首に回した、アシタカはサンを  
しっかりと抱き込む、二人の口はいよいよ深く咥えあい、強く吸いあう  
エボシは二人を残してゆっくりと小屋の外に出て行った  
 
蝋燭の灯りに照らし出される裸でもぞもぞと重なり合う男女  
十六の少年が十四の少女の胸に吸い付いてしきりに愛撫を加えていた  
アシタカはサンの青さと豊かさの同居した瑞々しい乳房の麓から頂まで余さず  
唾液と手垢をつけていく  
二つとも交互に執拗に揉み、舐り、解す  
 
「う・・ うぅ・・ 感じる・・」  
 
サンは甘い息を吐いていた、肉体の表面を撫ぜられているだけではない、  
アシタカの指と舌はサンの心を弄っているのだ  
アシタカのサンに対する愛撫は全身に広がって行く  
サンはアシタカが弄りやすいよう彼の指や舌の動きに合わせて身をくねらせる  
自分の体を愛撫するアシタカの体に常に手を添える  
サンの脆い心は縋り付くものを求めていた、母や弟達の体温に代わるものを  
赤子の如く探していた  
そして目の前にアシタカの優しげな眼差しを見つけたのである  
昔、母モロの見守る中、子犬だった弟達とじゃれあった記憶と合致していた  
 
「うは・・ うぅん・・・」  
 
これまでより一層熱心に自分の身体を愛撫しまわるアシタカの手と口  
体中が彼の唾液と手垢で温められていくのと同時に心もまた染まっていく  
冷たくなりかけたサンの体がじんわり解けて熱を放ち始めていた  
 
「・・・サン、そなたを想うだけで私は・・ こんなにも熱い・・・」  
 
アシタカはサンの手を取り己の最も熱い部分に触れさせた  
サンの手に力強い脈動が伝わる  
 
「おそろしいほど・・・かたくて熱い・・」  
 
脈動はサンの心を振るわせ身体の奥まで伝わり子宮を痺れさせる  
サンの股間は何時の間にか熱い潤いを垂れ流していた  
アシタカはサンの股の間に己の体を割り込ませようとする  
サンは迎え入れるように自ら脚を広げた、アシタカはサンと体を密着させた  
互いの心臓の鼓動を伝え合う  
 
「・・・離さぬ・・ 決してそなたを離しはせぬ・・・」  
 
アシタカはサンを逞しく貫いた  
 
「は!!・・ぐぅ」  
 
アシタカの固い脈動に体内を占拠された衝撃はサンの体を荒波となって駆け抜け  
サンの心までも貫いた  
互いにしっかりとしがみつくサンとアシタカ、これまで何度も重ねた情の無い行為  
とは違う、肌を密着させての交わり  
 
「・・・サン・・ やわらかい・・ 実にいいにおいだ・・・」  
「あ・・ かたい・・  
 すごく・・ あたたかい・・ 体の・・中も・・外も・・」  
 
じっと動かず、互いの体温、息遣い、汗のにおい、鼓動、脈動、相手の全てを  
己に染み付けようとする  
やがてそれは、一体感という名の自然となっていくのである  
 
鏡にゆらゆらと、固く抱き合ってしきりに揺れ動く未熟な若い肉体が写っている  
アシタカとサンが果敢に性交を行っている  
少年少女の甘酸っぱい汗の匂いの充満する部屋に床が軋む音、肌を打合う音、  
肉の擦合う音が交雑する  
 
「・・・サン! ・・・サン! ・・・」  
「うぅ・・ん ・・はふ・・ぅ」  
 
アシタカがサンの体に深く入り込む度、その名を口ずさみ、  
サンは応えるように嗚咽を漏らす  
二人とも顔を真っ赤に染めて、青さを残す心と体を必死に絡ませあっていた  
全身全霊熱の塊と化し、尚も足りぬとさらに烈しく温めあう  
 
「・・サン! こんなにも! 好きだ!  
 ・・サン! そなたが! こんなにも!・・・」  
 
アシタカは想いの限り、己の愛をサンにぶつける  
炎の芯と化したアシタカがサンの中を一途に行き来し、自らの形を刻む  
サンの子宮を突き上げる度に起きる熱の漣が彼女の脳天まで震わせ、  
心の底までも侵す  
 
「く! う! いぃ!・・ はふ!  
 もっと・・ きつく!・・やって・・」  
 
サンはアシタカが溺れそうなほど溢れさせ、烈しい男の想いに応える  
もし自分が弟達と同じ山犬だったなら、きっと今ごろはあの子達と  
こうしていただろう  
あの子達の熱い体を受け入れ、一族の絆の結晶を産み落としたに違いない  
一時、上に乗り自分を温める男に感情が乗り移っていた  
肉体の刹那の愛情が心の空白を寂しさを埋めようと、さらに要求を深めていく  
 
「は! あ! もっと・・ もっと・・ 強・・く・・・」   
 
サンの開け放たれた心の中にこれまで経験したことのない快感を帯びた  
高熱波が高潮となって押し寄せ続けていた  
身も心も今融けあっていこうとするサンとアシタカ、性愛の高め合いの果て  
生命の交渉へと結ばれていく  
 
「・・・サン!・・・ そなたに! ・・私の子を!・・・」  
 
サンにアシタカの生命の素が注ぎ込まれた  
 
「う!!・・ あ!・・ あつい!・・ くあぁぁ!!!」  
 
サンは必死に注ぐアシタカを下から羽交い絞めにする、  
男の腰に己の脚をも巻きつけ、さらに、さらに貪欲に熱い迸りを促す  
これまでで最も濃く、最も熱い生命の営みが今サンの胎の奥で繰り広げられる  
未熟な子宮を充たす感覚が、その繊細な心の底までも充たしていく  
 
「・・ひとりじゃ・・ない・・」  
 
腰を小刻みに震わせながら、サンは男に抱かれる悦びを知った  
 
外で夜空を眺めるエボシ、そこへジコ坊が通りかかる  
 
「ジコ坊殿、まだ起きてらしたの」  
「一度寝付いたのだがの また目が覚めてしまったわい  
 ・・・して、あの若者どもは?」  
「今ごろ三度目かと」  
「ふっふっ! さすが若さよの  
 ようやくこの件に関しては、肩の荷が降りそうか?」  
「どうでしょう」  
「しかし、アシタカは、今更だがまやかしに架ける必要があったのかのう」  
「素面のアシタカは、あまりにももののけ姫に寄り過ぎていたから、  
 ・・共に生きる・・我らにとっても森や山は大切、適うならそれが一番  
 だが我らにとっての森と、もののけにとっての森はあまりにも違いすぎる」  
 
エボシは袖の中から青く光る玉の小刀を取り出した  
 
「おぉ、それは娘が首に架けてたやつだな」  
「そろそろアシタカに返さねば」  
「ん? それはもしかしてアシタカがサンにくれたものだったのか  
 また再現させてやろうという目論見じゃな」  
「色恋沙汰にとんと縁の無さそうな坊にしては、立派なご明察」  
 
それから数日が経ち、サンは外出を許されるようになった  
シシ神が倒されて五ヶ月、サンが村へ来て三ヶ月が経っていた  
 
 
 
 
エボシタタラの村に懐かしい面々が集合していた  
かつてのワラツト衆の頭目が涙を浮かべながら挨拶したのを皮切りに  
主だった牛飼いの者達も次々懐かしげに挨拶をする、エボシも笑顔で出迎える  
 
「お久しうございます!エボシ様」  
「なんだいなんだい、大の男が泣いたりして・・  
 よく戻って来てくれたね 大変だけど手を取り合って、やっていこう」  
 
甲六もおトキもやってきていた、  
 
「エボシさまぁ! いよいよタタラ場を再建ですか!  
 駆けつけてきましたよ!!」  
「おトキ、思っていたより顔色よく、元気そうで何より  
 いくらかお腹が目立つようになってきたね、あまり無理はせぬよう」  
「全然!平気です! また、もりもり働きます!!」  
 
さらに見慣れない新手の牛飼い集団の長も挨拶する  
 
「お初にお目にかかるエボシ殿、  
 シシ神を狩り取るほどの御前、お目にかかりたく参上仕った・・」  
 
かつての倍のワラツト衆に渡りをつけれたことに心なしかゴンザは  
胸を張っているように見えた、ジコ坊もさすがに顔ぶれを見て驚いていた  
 
「ほほお・・ あの頑固者をよくぞ口説き落とせたものよ  
 いくら金を積んでも首を縦に振らなんだ者が・・」  
「見くびられては困るぞ坊、  
 銭で横面叩く奴らのやり方はよく見てきてるもんでな  
 結局、銭より胆のある者が最後は頼りになりまさあ」  
 
彼らは米、味噌、乾物、その他諸々の荷をどっさりと持ち寄っていた  
エボシが全財産叩いて用意した品々だ  
 
「さて、それでは皆の者、これより色々説明を行いますゆえ  
 中に入られよ」  
 
集まった面々の中の頭領格を一番大きな建物の中へ案内する  
全員が着座するとエボシは面々の前で大きな図案を広げる、  
一斉に食い入るように見つめ出す  
山上に貯水池を設け砂鉄を取るための土砂をその水に乗せてタタラ場まで流す  
窯はこれまで通り一基のみ  
大規模な製鉄作業は冬場だけ、木は炭に最適とされる松と栗を植え  
約三十年で循環できるよう伐採し山を枯らさない  
ワラツト衆達は春から秋までは麓の村に住み、農作業、河川工事に従事・・  
次々と説明していくエボシ、さっそくジコ坊が口を挟んだ  
 
「何ともどえらい計画だの 窯を動かすのは冬場だけかや」  
「他の季節も少しは動かしますが」  
「なるほどのお・・ この為に、地侍に使者を送り続けておったのだな」  
「結局のところ、地元の者とは上手くやっていかねばならぬ  
 きやつらもアサノにさんざん年貢を納めるのには飽き飽きしているでな」  
「ふむ・・ しかし、地頭はどうにか話がつくとして、他にもかなりの人足が  
 入り用だのお、師匠連の手配する鉱山師に頼らぬとなれば、自前で  
 それを呼ばねばならぬ  
 池を作る職人、植林に関わる者、あてはあるのか?」  
 
エボシはふふ・・と不審な笑みをジコ坊の目に向けた  
 
「ん? まさか、お主! わしの伝手を当てにしておるのか?!」  
「坊は師匠連の目となり鼻となり全国を渡り歩く身、  
 かなりの顔の広さを有しておられるはず」  
「まいったのお、わしに紹介状を書けというのか・・」  
「いえ ことがことですので私が直々に各方面に出向いたうえで  
 お頼み申すことと致します  
 そのうえで坊殿にもご同道願いたく存じあげます」  
 
面食らうジコ坊の前で有無を言わさぬとばかり頭を下げてみせるエボシ  
 
「・・お主、その様子だと、まさかわしを地頭にまで会わすつもりでは  
 あるまいな?」  
「さすが坊殿、大した洞察眼  
 女だけですと足元を見られますゆえ、高僧に化けるなど朝飯前  
 の坊殿に是非ご協力願われたく存じ奉ります」  
「化けるとはなんじゃ! 拙僧はこう見えても・・・  
 まことの僧籍のひとつも持っておらぬようでは役が勤まらぬわい  
 で、何人で旅めぐりいたす気か?」  
「そちらはご判断にお任せいたします、三、四人、供がおれば  
 見栄えもよろしいかと  
 私のほうは、我が里自慢の”若君”と”姫”を同行させる所存」  
「な・・ なにぃ?〜・・・」  
 
思わず開いた口の塞がらなくなるジコ坊であった  
 
(つづく)  
 

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