アシタカの目の前で重なり合った女の尻が揺れる  
質感量感たっぷりとしたエボシの尻と、締まって適度に丸みをもったまだ青さの  
残るサンの尻  
そこから生えた四本の脚が巧みに絡み合い、互いの女陰を擦り付けあっている  
 
「どうだ!サン!・・ もっと、もっと腰を入れてくれる!!」  
「う! あ! うぅ!」  
 
神殺しの女が山犬の娘にこれでもかとばかり快楽の味を食らわせている  
アシタカは興奮して揺すりあう二つの肛門を眺め続けていた  
 
これまでもアシタカは何度かエボシの肛門を味わったことがあった  
膣とはまた違う趣に存分にそのはらわたの中でぶちまけたものだった  
エボシは見つめているアシタカの視線に気付いていた  
 
「どうした? おまえも混ざりたいか?」  
 
アシタカは無言のままゆっくりと立ち上がると嬌声をあげる二人に近づいた  
重なった四つの尻たぶにアシタカの鼻息がかかる  
 
「・・・エボシ・・ ひさしぶりに、こちらを賞味させていただきたい・・」  
「ま!待てアシタカ! そ、そっちは充分湿ってるか・・  
 確かめてからだよ」  
 
アシタカは指に己の唾液を塗るとエボシの肛穴にずぶりと挿し込んだ  
”ひ!・・”という頭のほうから響いた鋭い声も気にもかけず、  
もぞもぞと指をほじって腸の湿り具合を確かめる  
 
「んん!・・ ど・・どうだい? 按配は・・」  
「・・・申し分ないかと・・・」  
 
アシタカはエボシの助平な尻の奥が十分に腸液で充たされてることを認めて  
指を引き抜き、エボシの背に覆い被さった  
そして、散々見せ付けられた二人の痴態で固くなった陰茎を女の尻のひり出す  
穴に宛がった  
ぬず・・ アシタカの亀頭の形にエボシの放射状の皺が広がった  
 
「は! あぁ・・」  
 
頭を反らして、目を剥き出すエボシ  
尻への挿入はさすがの彼女も早々慣れてるわけでもない  
アシタカは構わず、エボシの腰のくびれをがっしりと両腕で掴み  
その後ろのむっちりとした尻たぶのど真ん中をぬずずずっ・・と割り裂いていく  
アシタカの男根はエボシのきつい歯条線を貫き、ふっくらしたはらわたの粘膜  
の渦の中へ侵入していった  
 
「・・・くぅ!・・エボシ! これは・・かなわぬ・・・」  
 
まんまとエボシの尻を手に入れたアシタカが余りの居心地の良さに溜息を溢す  
エボシもまた、己のひり出す場所を逆挿された固い熱いものにはらわたを  
どきどきと脈打たれる異様な快感に組み敷いたサンに伝わるほど身震い  
させていた  
 
ぱん!ぱん!ぱん!・・ アシタカの腰がエボシの尻を叩く  
しっとりとした尻たぶは、ぼよんと男の腰を弾き返し、肛門の中に嵌り込んだ  
異物をひり出す  
男の固い陰茎は尚も女の尻の中の温もりを貪ろうと、臭い穴に突入して  
ぬぶ!と栓をする  
その瞬間、何ともいえない心地よさが繋がった二人の身体に広がり、頭の中を  
白く染めていくのだった  
 
「はあぁ・・ たまらない、たまら・・ないよ、アシタカぁ・・」  
「・・・く! ふふぅ・・ わたし・・もだ・・・」  
 
アシタカは腰が砕け、エボシの背中に上体をもたれかけた  
余った手はエボシを挟んでさらにその下にいるサンの身体に届いていた  
サンは自分の体の上で起こってる淫ら過ぎる情景に気付かず、相変わらず  
火照った身体を持て余すようにぼんやりとした表情を浮かべ、肉のうちつけあう  
妙な音と烈しい振動だけが彼女の身体に伝わっていた  
 
「あし・・ アシタカ・・ 今、我らの行い・・ サンにみせてやろう」  
 
サンの体の上になってる者達が方向転換をはじめた  
やがてサンの目の上に信じ難い光景が出現した  
自分の頭を挟むように林立する四本の脚、すべやかな白い太ももに、  
そこそこ毛深い太ももがしきりに打ち付けられてる  
その上で女の白い尻に男の肉棒が突き刺さりさかんに出入りしていたのである  
・・あ!・・あぁ!・・ 青筋を立てた怒張が不気味に広がった尻の穴を貫く度  
サンの足元で嬌声が鳴り、ぱぃん!という肉の打つ音と共に、肛門の下の  
陰唇の奥からじゅる・・と露が垂れ、サンの顔にかかった  
 
「な! なんだこれは・・ 女の糞穴に男の性具が・・」  
 
信じ難いほど卑猥な様に目を剥くサン、とその時自分の股の間に刺激を感じた  
 
「あ!!・・」  
 
快感に目を剥きっぱなしで尻を掘られるエボシの指がサンの股を弄くり始めたのだ  
ぐっと脚を曲げられ、尻を覗き込まれるサン、エボシはそこに意外なものを  
発見した  
サンの尻が微かに割れていたのだ、これはまさしく今しがた自分らと同じ  
行為をしでかした証拠  
 
「ふ! ふふ・・サンよ おまえも・・ 隅に置けぬ  
 こ、ここを・・ 山犬の兄弟に 掘らせたのか」  
 
エボシの鋭い指がサンの尻の穴をずぷっと貫いてきた  
 
「!!・・ わあぁぁ!!」  
 
忌まわしい記憶ごとほじられ絶叫するサンであった  
 
「ふふ・・アシタカ みるがよい、この娘の尻の穴を  
 犬に辱めを受けた跡だ」  
「く!・・・」  
 
悔しげに目を細めるサン、これだけは何としても知られたくなかった  
 
「さあアシタカ、お前もその手でこの娘の傷を癒してやるが良いぞ  
 私の舌と、お前の指で、この娘の淫らな穴を両方慰めてやろう」  
 
遮るものの無いサンの蕾と菊穴にエボシの舌とアシタカの指が迫った  
男の指が少女の未開の縦筋をなぞるように侵入、サンの豆を摘んだ  
 
「うひゃ!・・う」  
 
再び始まった下半身への甘美な刺激にサンは甲高い声をあげる  
サンの小さな豆はくりくりと指先で撫ぜまわされる、その間にもエボシの指は  
サンの尻の穴を捕らえて離さない  
それでいて彼らの下半身も休んでおらず、肛膣による不潔な交わりは  
続けられていた  
アシタカの指に急所を撫ぜまわされて、サンの初々しい身体は女としての  
反応を見せ始める、徐々に陰唇が開いてきた  
そこへエボシの舌が降下していった  
 
「ふひゃぁ!!・・」  
 
膣の入り口に舌を挿され、また声を上げさせられるサン  
エボシは長い舌をほじるように未通の牝穴に挿し入れていく  
そして中を舐めずり、露が湧き出すのを促す  
 
「う・・ あぁ・・ あぁ」  
 
顔の上では烈しい肛姦、そして己の下半身では男女の指と舌で濃厚な愛撫  
サンはまた鼻水と涎を滲ませはじめた  
そして愛撫を受ける股の奥が熱くなり、十四の娘は女の生理反応を引き起こした  
こんこんと露を湧かせ、エボシの舌を濡らし始めたのだ  
エボシはべっとりとサンの愛液を掬い取ると、それを尻の穴に塗りつけ始めた  
 
「尻穴と牝穴、同時にいかせてやろうぞ」  
 
エボシとアシタカの三本の手と一本の舌で苛烈な刺激を股と尻に受けるサン  
これまでの経緯ですっかり性感を剥き出された身体は生娘とは思えぬほど  
熱く燃え上がり、じわじわと大量の露を垂れこぼした  
ぱぁん! ぱぁん! ぱぁん! 目の上で繰り広げらる尻を掘る音さえ  
遠くに聞こえ始める  
 
「う! ふ! うは! ふわぁぁ!!!」  
((もぉだめだ!・・・ おかしな・・きもちぃ・・・))  
 
サンの頭の中が真っ白になった瞬間、本日何度目かの絶頂がその若々しい  
肢体を駆け抜けた  
ふやけた顔と対照的に、身体はびくん!びくん!と波打ち、股の間から豪快に  
噴出していた  
同時にアシタカもエボシの尻を押し潰さんほど腰をめり込ませ、女のはらわたの  
奥に存分に熱い白濁を注射した  
エボシは、 ”ひいぃぃぃ!!!・・” という歓喜の叫びを上げ、  
その腹がぐるり・・と鳴った  
陰茎を引き抜かれたあともぴくぴくと収縮する肛門の奥から漏れたアシタカの  
濁汁が朦朧とするサンの顔にぼたぼたと垂れ汚した  
 
「腹が減ったろ? 今食べさせてやるよ」  
 
体の異様なだるさで身動きの取れないサンの口に白湯のような薄い粥を  
エボシは運んでやる  
んぐ・・ぐぐ・・ 喉を鳴らして飲み込むサン  
エボシの病人に飯を食わせる間合いの取り方も心得たもの、相手が物足りず  
吐き出さず丁度良い頃合で胃に流し込んでやる  
それでも時折むせいで吐き出しそうになる  
アシタカの時にしたのと同じく、エボシは口に水を含み、そのままサンの唇に  
重ねた  
・・こく・・こく サンの喉が鳴り食道で滞った食物が溶けるように  
胃に流れ落ちてゆくのであった  
 
あれから数日、もうサンは手足に鎖はついていなかった  
捕われた翌日からアシタカに使ったのと同じ薬を盛られ、今は酔っ払ってる最中  
すぐに酔う割には薬効は殆ど現れないのは意外であった  
 
「よう食うたな、まだまだ育ち盛り、食欲旺盛なのは良いことだ」  
「・・・なぜ・・・ころさない?・・・」  
「殺してほしいなら何時でも言うがいい」  
「・・・おまえを・・ころしてから・・でないと・・しにきれん・・・」  
「毎日、同じ台詞ばかりでいい加減飽きてこぬか?」  
「・・・うるさい・・ほかに・・いうことは・・・ない」  
 
やれやれといった表情でエボシは小屋をあとにした  
頑丈な扉が閉じられ、ぼんやりと天井を見つめるサンが間もなく見えなくなった  
外にアシタカが何気に立っていた、心根を察してエボシが話し掛ける  
 
「今はまだ会わぬほうがいい」  
「いつになったらサンに会えるだろう?」  
「今はまだ何とも言えぬ、今のサンはおまえを嫌い抜いてるわいね」  
「・・・」  
 
催眠状態での出来事は何一つ覚えていないアシタカ  
自分が扉一枚先にいるサンにどんな仕打ちをしたのか、さすがにエボシに対して  
腹を立てていた  
 
「すまぬアシタカ、私の読み違いが起きてしまった  
 もう少し我慢してくれ、今はそれしか言えぬ」  
 
強烈な体験をさせることで心を砕こうと謀ったものだったが、サンの精神は  
そんなにヤワではなかったのだ、現在は心に付け入る糸口を探っている状況だった  
 
((こんな間近にいるというのに・・ 顔も見れぬとは・・))  
 
アシタカは拳を握り締めたまま振り向きもせず立ち去っていった  
その背中にエボシはもう一度わびた  
 
「薬を使うのはやめにするか・・・ 返って遠回りだ」  
 
この数日の観察で、サンが思っていたよりずっと人間らしい情緒を持ってる点に  
エボシは気付いていた、そのうえでの判断であった  
 
夜風に当たりながらエボシとジコ坊がのんびり月を眺めている  
耳に心地よい虫と風の音に時折、弓を引く音、矢を放つ音が混じった  
ハシュ!ヒューーーン!!・・・ 櫓の上から湖に向けて音が小さくなっていく  
 
「何をしておるんじゃ? あれは」  
「縛りが解けて元の自分に戻った時、記憶が抜けてることが、  
 ひどい不快感を催す  
 アシタカの場合、ああすることで、気を紛らわしているのだ」  
「なるほどの  
 それで、何時まであの少年を縛り付けておく気なのじゃ  
 それと山犬の娘はどうする気だ?」  
 
エボシがジコ坊の湯のみに茶を注ぐ  
 
「お、済まぬな」  
「中々良い茶でございます、わざわざのお持ちより有難う存じます」  
「このくらいの物はいくらでも調達できるでな  
 と、茶の話ではない、あの二人どうする気じゃ?」  
「ずっと手元におきます」  
「なんだと? アシタカはともかく娘のほうは無理ではないか?」  
「アシタカを繋ぎ置くためにもサンが必要です」  
「つくづく豪胆だのお、あの娘にとってこの世で一番憎んでおるのは  
 まさしくお主だろうて、寝首を掻かれても知らんぞ」  
 
エボシは目を瞑った  
 
「あの娘はモロに人間の女として育てられております」  
「ほお・・」  
「それでも人に戻すは難題ですが、無理だとは思うておらぬ  
 ただ時が足りませぬな・・ なんとしてもそれが心残り  
 お陰で荒療治を施さねばなりませぬ」  
「ほっほ、娘や病人を救うのが生き甲斐か?」  
 
ハシュ!ヒューーーン!!・・・ 矢の音が夜空を切り裂いていく  
 
「気になることがもう一つ、お主、侍とも何やら取引しようとしておるな?」  
「天朝より侍のほうが身が軽い」  
「わしの前でそのようなこと申すとは、いささか口が軽過ぎるな」  
「所詮他所の国の集団と、この国で生きていかねばならぬ者の差  
 というもの、ジコ坊殿とてこの国の者であろう」  
 
ずず・・と茶を啜りながら、耳をほじってみせるジコ坊  
 
「師匠連など金や書状でしか人を動かせぬ者どもとこきおろすか  
 世の中そんな甘いものではないぞ」  
 
急に笑い出すエボシ  
 
「それも常套句ですな 天朝の書状もいつまでもここへの歯止めには  
 なりますまい  
 ジコ坊殿こそ気をつけられよ 身を寄せる先を見誤らば、  
 この先増えるばかりの侍どもに尻を追われる羽目になりますぞ」  
「・・やれやれ、お主も何やらとんでもないモノノケに憑かれておるようだ」  
 
サンのいる小屋、外に出すと他の者に危害を加える恐れがあるとして厳重に鍵  
がかけられていた  
扉と部屋の間にはさらに余った鉄材で設えた格子が嵌っており、座敷牢といった  
趣である  
彼女の目の高さよりずっと高い位置に拳大の窓が幾つもあり、そこから外の光が  
差し込むため、決して真っ暗というわけではない  
 
「ん・・・」  
 
目を覚ますサン、頭は相変わらず重いが体がいつもより軽い  
手足を動かしてみると、以前通りに自由が利く  
すっと立ち上がってみる、辺りを見渡して部屋の中をぐるぐると三周ほどうろつく  
すっかり薬の酔いが抜けていた  
 
「・・・ふつうに動ける」  
 
ぼやけっ放しだったサンの眼に以前のような強気な視線が戻って来た  
さっそく部屋の探索をはじめる  
コンコン・・と壁を叩いてまわる、格子を一本づつ掴んで力任せに押し引き  
してみる  
 
「恐ろしく頑丈に出来てる・・ 壁の厚さも並じゃない・・」  
 
とても打ち破って脱出は無理だと悟る、今度は這いつくばって床に耳を当てながら  
叩いてみる  
 
「床板の下に石が敷かれてる・・・」  
 
一人では持ち上げられないような大石を敷き詰めた上に床が設えられていた  
サンは上を見上げる、天井までは高さ二丈余り、狭さの割に圧迫感がないのは  
高い空間がある所為であった、七尺目辺りから天井付近まで拳大の窓穴が  
四方の壁に空いていた  
窓のついてる位置から上が何やらすべすべと光っている  
サンは助走をつけると、やっ!と上へ跳躍してみた  
民家の屋根へ地面からひょいと飛び乗れる彼女ではあるが、さすがにこの  
天井までは手が届かない  
途中の壁に手が触れたが、つるんと滑って、まるで掴み所が無い  
板の継ぎ目を伝われないよう、滑りやすい何かが塗られていたのだ  
 
「おのれ・・ お手上げか」  
 
あのエボシのこと、そう簡単に逃げ出せるような場所に監禁するはずがない  
サンはすとんと床に腰掛け、ふー・・と溜息をついた  
その時、ガチャリ・・と鍵を開ける音がした、サンは咄嗟に横になり死んだ振り  
扉が開き、エボシが食事の乗った盆を持って入って来た  
 
「目が覚めたかい?  
 ほれ、今日は少しは噛み応えのある物を持って来てやったぞ」  
 
背中を向けたまま、まんじりと動かないサンに呆れたようにさらに話し掛ける  
 
「何を今更寝た振りしてんだい? まったく耳をぴくぴくさせてからに  
 ほら、ここに置いとくから勝手に食べな」  
 
エボシは格子の外に握り飯と水桶を置くと出て行った  
 
サンはむくりと起き上がる、牢内に入って来たら襲撃してやろうという目論見は  
脆くも崩れ、むくれた顔で膝を叩いた  
 
「ふん! そんな飯など、だれが食うものか!!」  
 
ちらりと横目で握り飯を見やる、ぐぅ〜・・と腹の虫が泣く  
香ばしい匂いが鼻をくすぐり捲くる、そろりと手を伸ばしてしまう育ち盛りの  
少女であった  
くんくん・・と飯の匂いを嗅いでみる、嗅ぎなれない匂い・・  
しかし美味そうな匂い、頭をひねるサン、食うべきか、食わざるべきか  
 
「殺す気なら、今までも出来た・・・ 毒入りなんて疑うだけ無駄か」  
 
結論に達したサンは、ぱくり!と食らいつく  
 
「!! ・・・なんだ、この味は?!」  
 
初めて舌に乗った妙な味覚に握り飯の中を覗き込む、  
そこには鮎の塩辛が具として入っていたのだ  
ぱくぱく!! はむはむ!!  
瞬く間に用意された分、全て平らげ、最後に桶の水を柄杓でぐびっ!と胃に  
流し込んだ  
 
「美味かった・・ くそっ!・・」  
 
何故か悔しいサンであった  
周囲に聞き耳を立て、誰もいないことを確認するとサンはようやく悔しげな表情に  
涙までも浮かべ始めた  
 
「母さん・・ 私は・・ サンは、人間に囚われました  
 人間の作った食い物を口にし、日に日に人間の匂いが  
 気にならなくなってまいります・・・」  
   
うな垂れながらサンは無意識に体を指で掻き始めていた  
捕まった日に体中の垢を洗い流されて、あれ以来かいた汗の所為で体が  
痒くなってきたのだ、山暮らしの頃ではありえない現象である  
 
「くそ!・・ 体が痒い!」  
 
そこへ、エボシが盆を下げに再び現れた  
 
「おやおや、しっかり食べたね ん?どうした?体が痒いのかえ?」  
 
サンは背を向けたまま、振り向こうともしない  
 
「手拭を持って来てやろう、水桶ももう一ついるね」  
 
それから一時経ち、裸になって汗を拭うサンがいた  
ぴちゃん・・ 濡れ手拭いの水をサンの肌が弾く、肌の表面を流れ落ちる水玉を  
見つめる、この雫ひとつひとつが自分の中から獣の匂いを消していく感覚に  
捕われていた  
水浴びは嫌いではない、兄弟たちと川でよくふざけ合ったものだ  
しかし、今自分の体の表面に流れる雫には川の匂いはしない、一度沸かせた  
水だからだ  
 
「匂いが落ちていくからといって、山犬でなくなるわけではない!」  
 
自分に必死に言い聞かせていた  
 
「そなたも女、己の顔を眺むるのも気が紛れるであろう」  
 
翌日、エボシが何やら大きな包みを持って現れた、中身は大きな鏡  
扉の横に据付けて行った、もっとも割られぬよう格子の向こうではあったが  
サンは馬鹿馬鹿しいと思い一瞥さえくれない  
時の流れの止まった空間、偶に軽微な運動をしつつ、あとはぼんやり床や天井  
を眺めるだけ  
 
「外に出たい・・ 山に帰りたい・・」  
「帰ってどうする? 誰もいないのに・・」  
 
時間を持て余すと鬱なことばかりが脳裏に浮かぶ、振り切るように頭を横に振る  
ちらりと自分の顔が鏡に映るのが見えた  
これまでは水面を鏡とするだけだったサンにとって、一瞬でもかなりはっきり己の  
顔が映ったのに少し興味を引かれる、次第に眺める時間が長くなっていった  
しまいにはもそもそと這って行き格子の傍で座り込む  
己の姿がくっきりはっきりと映し出されていた  
 
「これが・・私の顔・・ 私の姿・・・」  
 
あの憎いエボシによく似ている、母モロや弟達に比べれば・・・  
そこに映っていたのは紛れも無い人間の女であった  
サンはぐっ!と目を瞑り、ぎりぎりと格子を握り締めた、  
崩れ落ち、布団の中に駆け込んで丸まり、咽び声をあげることしばし  
突然、布団を吹き飛ばして、奇声を上げながら、壁に格子に床に、体当たりや  
蹴りを繰り出し始めた  
 
びりっ!! 「つぅ!・・」  
 
思い切り柱に肩を打ち付けて、木の削げに絡んだ衣の肩口が破れた  
はあはあ・・と荒い息を吐く、肩の痛みが染みる  
それでも気が紛れていいとさえ思えていた  
そうしてる間に時が経ち夕飯の時間、いつものようにエボシが食事の盆を持って  
入って来た  
 
「随分どすどす音がしていたが、だいぶ鈍っておるようだな・・  
 おや?肩を破いてしまったのか、繕ってやるから脱いで寄越すが良い」  
 
あくまで無視するサン  
 
「まあいい自分で縫うか? 裁縫の道具をあとで持って来てやろう」  
 
何もしなくとも腹は減るのは若さゆえ、すっかり平らげた飯と入れ替えに  
裁縫道具と幾枚かの布地が差し入れられた  
 
翌日、サンの朝食を持って訪れたエボシは思わず驚き呆れた顔をした  
恐らく徹夜したのだろう、与えた布地で山暮らしの頃とすっかり同じ服を作り  
着ていたからだ  
与えた布地の色の所為で以前と比べればかなり派手  
現在のワンピースのような下衣は緑地に桔梗色と蜜柑色の馬鹿でかい  
幾何学模様  
上衣は薄紫地に桜の花模様がそれぞれ鏤められていた  
サンは満足げな顔ですーすーと寝息を立てている  
 
「よほど、この格好が好きなようだな・・・」  
 
エボシは起さぬようそっと立ち去った  
 
「ん・・・」  
 
昼過ぎ、赤い目を擦りながらサンが目覚める  
瞳に入ってきた像に、はっ!として一挙に眠気が飛んだ  
格子の向こうにエボシが座り込みじっとこちらを見つめていたからだ  
美味そうな匂いが女の膝元から漂う、今しがた飯を運んで来たばかりのようだ  
 
「よく眠っていたな  
 よりによって一番派手な布地を使うとは、おまえの趣味がようわかったわ  
 ほれ飯だ、こっちに来て召し上がれ」  
 
にこやかで優しげな表情のエボシの顔、不審の色を浮かべながらもサンは  
無言で近づいて行く、そして女から目を離さないで、格子の向こうの床に置かれた  
握り飯に手を伸ばした  
怪訝な表情のまま食べ始めるサンに対し、構わずエボシは笑顔のまま続ける  
 
「山道が往き易くなったお陰で、ようやく米を里に買いに行かせれるように  
 なったわえ 食い潰すのが米から金に代わっただけだがね  
 でも、お前にも当分たらふく食わせられるよ」  
 
サンはふん!と鼻を鳴らすだけ さらにエボシは語りつづける  
 
「獣の骨を見繕ってきた、 暇つぶしにお前の好きにするがよかろう」  
 
磨かれた動物の骨が格子の隙間からサンのほうへ差し出される  
やや意表を突かれた感じで動きが止まったサンだったが、おずおずと手を  
伸ばしてそれを受け取る  
一つ受け取ると、次をエボシは差し出して来た それもサンは受け取る  
以下、同様のやり取りが続き最後に、繰り刀が差し出された  
サンの手がぴくんと震える  
((・・・これがあれば、エボシを殺せる・・いや、今目の前にいる  
  受け取った瞬間、格子の隙から刺せば!・・・))  
 
「どうした? 早く受け取れ」  
 
にこやかな表情のまま刃を返した形で凶器を渡そうとするエボシに、  
サンの手が伸び遂に柄を掴んだ、エボシの手が持っていた刃から離れる  
((・・今だ!!))  
サンの目が鋭く光った!・・ しかし手に持った刃が一閃することはなかった  
何故か金縛りにあったように繰り刀を持った手は動かなかった  
相変わらずエボシは表情を崩さずサンを見つめていた  
そして食い終わるのを待って全て片付けて小屋を出て行った  
 
シュッ・・ シュッ・・ 繰り刀で獣骨を削る音がサンのいる小屋に流れる  
削りながら、サンは考えていた  
 
「なぜ、あの時、手が止まったのか・・」  
 
サンのしなやかな手元で無骨な骨の欠片が徐々に丸みを帯びていく  
 
「あいつがあまりにも堂々と惚けているから、調子が狂っただけだ  
 今度、来たときは・・・」  
 
綺麗な楕円形に磨かれた骨片を、鏡を見ながら耳に合わせてみる  
己の耳たぶの厚みに合わせて真円の孔を開けた  
やがて、サンの両の耳と首にジャラリと素朴かつ大胆な装飾が施された  
 
 
「・・ほお なんとも秀逸な出来具合だ」  
 
訪れたエボシが、サンが暇に空かせて拵えた骨細工の数々を見て  
感嘆の声をあげる  
 
「驚くべきは、計ったように大きさの同じ物を作れる才だ  
 しかも手際がいい・・  
 サンよ、実は魚を釣る針が不足していてな  
 これと同じ物を成る丈沢山拵えてくれぬかな  
 さすれば漁獲も増え、握り飯に入れる具の量も増えるのだがな」  
 
エボシは見本の釣り針を置いていった、それを摘み上げるサン  
((・・ふん、馬鹿馬鹿しい わたしをこれで利用してるつもりか!・・))  
そして、はっ!と気付く、エボシを殺すのを忘れてしまっていた  
 
「機会なら幾らでもある!」  
 
 
翌朝、ぐうすか寝息を立てるサン、又しても徹夜したらしくエボシが来たのも  
気付かず、布団にくるまって熟睡していた  
その格子の傍に、どっさり骨の釣り針が小山を築いていた  
その日の夕刻、いつもより一回りも大きな握り飯を積んだ盆を携えてエボシが  
訪れた  
 
「本日は大漁でな、糸につける針の数が桁違いなのだから当然だが  
 皆喜んでいるよ サンのお陰だ、礼をいうぞ」  
 
サンは、うっ・・と言葉につまり両の瞳を鼻に寄せた  
巨大な握り飯を取ると、照れた顔を見せまいと、さっ!とエボシに背を向けた  
エボシを刺すことなどすっかり忘れて、ばくりと具沢山の大盛り飯に食らいつく  
のだった  
 
桶に入った水と手拭で体を拭うサン  
例の格子の向こうの大きな鏡を見ながら手拭を肌の上を走らせていた  
自分の裸の体を怪訝そうに見つめるサン、腕を動かす度に両の胸の膨らみが  
ぽむぽむと揺れる  
何となく気になるので片方の腕で押さえてみる、深い谷間が出来て水滴が  
その中にちょろりと流れ落ちた  
 
「前より大きくなった?」  
 
鏡の中の自分に問い掛ける、勿論答えるはずはない  
サンは大きく息を吸い込むと、顔を突き出してべーーー!!と舌を鏡の中の  
自分に向かって思い切り突き出した  
 
お腹を拭い、鏡に向かって背を向ける、くいっと腰から上をひねってお尻を拭き  
始める  
ちらりと鏡を見てみる、やや尻を突き出して腰をひねってる艶かしい自分の姿に  
思わずドキッとする  
それでも尚、腰をどんどん屈め、尻を突き出していき、終いには完全に四つ這いに  
なってみた  
鏡の中に己の尻がどーーん!と大映しになっている  
肛門も生えかけの陰部も丸見え  
 
「母さんに教わった牡を誘う姿勢・・・」  
 
顔を赤らめながらもくいっくいっと尻を振ってみた、  
あまりの恥ずかしさと馬鹿らしさに耐えられなくなって吹き出しそうになった顔を  
床に伏せてしまった  
つっ伏せたまま、弟達のことを思い出す  
 
「私が・・ 山犬の子を産めたのなら・・こんなことには」  
 
”人間にもなれず、山犬にもなりきれぬ、あわれでみにくい、かわいい、  
 わが娘だ”  
母モロの君がアシタカに対して言っていた言葉を思い出した  
 
「・・ごめんなさい母さん、私、弟達を守れませんでした・・・」  
 
悲しくなり眼を細めた、もう何度この言葉を壁に向かって言ったことだろう  
突然背後で、ガラリ!と扉が開いた、サンはぴょん!と飛び跳ね、慌てて身を繕う  
 
「起きているね、身体を拭いていたか  
 水が無くなるな、汲んできてやろうか」  
 
エボシは食事の乗った盆を置き、軽くなった桶を持って出て行こうとした  
 
「エボシ」  
 
素っ裸で胡座をかくサンが、薬をやめて以来しばらくぶりにエボシに対し  
口を開いた  
 
「私を・・どうするつもりだ?」  
「水を汲んできて、それからだ」  
 
睨みつけるように尋ねるサンに対し、エボシは桶を持って出ていった  
数分後、一杯になった桶を持って戻って来た、サンはがつがつ飯を食っていた  
エボシは格子の鍵を開け中に入っていった、彼女に薬を使わなくなって初めて  
のことだ  
水桶を脇に置くとエボシはすとんと座り込んだ  
 
「何も危ない物は持ってないし、何もしやしないよ ゆっくりお食べ」  
 
一瞬、手の止まったサンは視線だけエボシに向けたまま食事を再開した  
食べ終わるまでエボシは一言も発さず、じっと一方向を向いたまま待ち続けた  
素っ裸のままがっついていたサンは、ぐびっと最後に水を一杯喉に流し込んだ  
ようやくエボシが口を開く  
 
「おまえから危険性が無くなったと判断出来るまでここにいてもらう」  
 
突然、だっ!と跳ねるようにエボシに飛び掛るサン、その腹に強烈な蹴りを見舞う  
エボシの胃袋にサンの爪先が食い込み、う!と呻いて片目だけ閉じ蹲る  
サンの手が彼女の髪を掴んで蹲ろうとするのと逆方向に引っ張り、仰向けに  
引き倒すとその腹に馬乗りになった  
眉間に皺が寄り、興奮した怒気を鼻と口から吐き出すサン  
相手の襟首をぎりりと握りこんで頭を固定すると、もう一方の手を高々と  
持ち上げた、そして一気にエボシの顔めがけて振り下ろした  
 
「このぉ!!・・」 ばっしっ!! ぱしぃ!!  
 
血走った目は、続かない言葉を発しながら、エボシの顔面めがけて拳や張り手を  
振り下ろし続ける  
ばしん!! びしぃ!! ばしぃん!! ぱしぃん!!・・   
エボシの端正な顔が派手な打撃音に乗せて歪み捲くる  
彼女は片目を瞑ったまま声も上げずじっと為すがままにさせる  
頬が腫れ、口の中や端が切れて唇から血が滲み出た  
 
「おまえが!!・・・ おまえがああああ!!!」   
 
血走った目の少女は呂律の回らない叫びをあげ、殴るのを止めて  
その首に両手をかけて締め上げはじめた  
うぅ・・ さすがのエボシも苦痛の声をあげる  
ぎりぎりと締め上げられるエボシの首、顔が青くなっていく  
 
「この!・・ なぜ!・・なぜ!抵抗しない!・・  
 なぜ!やられたままで! そ、そんな顔を!・・・」  
 
エボシは苦しそうな相を浮かべてはいるが、あくまでそれは半面だけ、  
もう半面はじっとサンの顔を見つめていた  
やがてサンの手はがたがたと震え出し、徐々に力が抜けていった  
エボシにサンが馬乗りになったまま、はぁはぁ・・と二人して荒い息を吐く  
 
「おまえは汚い! ・・とことん汚い!なぜ敵のままでいない  
 なぜ、底の浅い優しさを覗かせる・・・」  
 
サンは大粒の涙を流し始めた、ボタボタといまだ苦しげに息を吐くエボシの顔に  
涙の雫が降りかかる  
 
「・・・いまさら・・  
 いまさら、おまえを殺しても・・何も元に戻らん・・何も・・」  
 
サンの身体は力が抜けてエボシの上にどっと崩れ落ちた  
 
仰向けに倒れた、髪の乱れた袴姿の女の腹の上に短い髪の裸の少女が  
取り付くように倒れ込んで、わーわー声をあげて泣いている  
サンは悲しかった、あれほど憎んでいた相手を目の前にして殺せなくなって  
しまっている自分が途方も無く情けなかった  
エボシはとうに見抜いていた、サンの母親モロがどのような教育を彼女に  
施していたのかを  
モロ自身が予め人間の世界に戻れるよう、この娘に道筋をつけていたのだ  
 
「母さん・・ 母さん、ごめんなさい・・ 私は皆の敵は討てません・・・」  
 
自分の胸の上で泣きじゃくるサンの短い髪をエボシの手が伸びてきてそっと  
撫でた  
 
「・・・おまえは・・・、本当に優しい娘だな・・  
 モロは良き母親だったようだ・・・  
 ・・・憎みたければ、うんと私を憎めばいい・・  
 だが人間すべてを憎むのは間違いだ・・」  
 
嗚咽の止まらないサンにさらに話し掛けるエボシ  
 
「・・・おまえの気持ちは・・・少しはわかるよ・・ 私も娘の時分・・  
 親に捨てられた身だ・・・  
 ・・・男の前で舞を披露し・・ 好いても無い相手と・・・   
 男と床を供にすること数知れず・・・  
 死のうと思ったことも・・・ やはり数え切れぬ・・・」  
 
エボシの胸元に顔を埋めたまま、ようやく泣き声は止みじっと聞き耳を立てるサン  
 
「・・・だが、私は・・・ 自分を捨てた親を恨んだことはない・・・  
 家が落ちぶれ・・・一族で首を括る手もあった・・・  
 しかし私の親は・・・どんなに惨めでも生きる道を私に残した・・・」  
 
サンが細い声を発した  
 
「・・・おまえも、山犬になればよかったのに・・・  
 そうすれば好かない奴としたくないことをせずに済んだ」  
 
エボシは思わず笑い出した、同時に腫れた頬に痛みが走り顔を顰めた  
 
「・・・おもしろい・・言い草だ・・・  
 おまえがどれほどモロに大切にされてきたか・・・ようわかる」  
「なんで・・ なんで私を産んだ人間の親は私を捨てたのだろう?  
 なんで、おまえはこの山に来た? なんで大勢殺した?!」  
 
再び語気を荒げ出すサンに、エボシはあくまで静かな口調で答える  
 
「おまえとて、エモノを取って食うだろう?  
 つまり生き物だからだ、生きるとは何かを残し、何かを犠牲にすることだ」  
「・・・そのうえで無益な殺生はしない  
 私から見れば今のおまえは犠牲にすべき相手ではなくなっている  
 あとはおまえ次第だ・・・あくまで戦うか・・我らと残るか」  
 
「それは!・・ それは確かに一理あるのかもしれない・・  
 でも! でも、私の感情はどうする!! 犠牲にされたものの感情は」  
「身内の犠牲を言うなら私の側とて多くの犠牲を払った  
 おまえ自身はまだ生きてる、生き残ってるではないか」  
 
サンは尚、エボシの胸の中で大きく振りかぶる  
 
「納得できない!! 私は!・・ 私は、お前があくまで憎い!!  
 お前と歩むなど! 私には!・・私には出来ぬ!!」  
「私はお前がかわいい・・」  
「・・・なんだと?!」  
 
唐突なエボシの物言いに、彼女の胸の中でサンの目がぱっちりと見開かれる  
 
「人の感情はどうしようもないこと 抑え切れぬぶんは私にぶつけたらいい  
 ・・・それにはお前が私の傍から離れぬことだ」  
 
エボシの目がここにきて何やら妖しげな光を宿し始めていた  
その指が徐に伸びて、素っ裸のサンの肌を下からつぅー・・となぞった  
サンはそれだけで、ひくん!と微かに波打つ  
危険な予感が走る、なのに意思とは裏腹に体が動かない  
 
「ずっと伝えようと思い、忘れていたことがある・・  
 おまえが捕らえられた晩のこと、枕元にモロが現れおってな  
 ”我が、箱入りの娘を頼む 世間を知らせてほしい”と私に囁いたのだ」  
「なんだと!! そんなの、うそだ!! うそ!・・ あ?!」  
 
エボシの手がサンを抱えるとごろりとひっくり返り、あっというまに上下が  
逆転した  
仰向けにされたサンの目の上にエボシの腫れた顔があった  
 
「うぅ・・ はなせ!」  
「サンよ・・ 夢の話だが、私はせめてもの罪滅ぼしに引き受けることにした  
 おまえを立派な娘に育てると、モロに誓ったよ」  
「そ! そんな話、信じるものか!!」  
「信じたくなくば、信じなくともよい・・ 私は我が道を往くのみ」  
 
エボシはサンを押し付けたまま器用に自らの着ている物を脱いで行く  
サンの面前にみるみるあの日さんざん己を玩んだ豊かな肢体が露になっていった  
散乱する衣に囲まれ、大柄なエボシの裸身が小柄なサンの裸身を抱き込む  
温かい腕の中でサンは子猫のように身震いしていた  
   
「うう・・・ ど、どうして・・こうなる・・ やっぱりおまえは・・卑怯だ」  
「お前の家族を死に至らしめたことは私にとっての永遠の罪業  
 それ故、私に科せられた罰としてお前を傍に置き、一人前の女にする」  
 
エボシの顔がサンの顔に迫り、あの時同様、顔の刺青に接吻した  
密着した胸の膨らみが互いに潰しあい、どきどき・・という心臓の音を  
伝え合っていた  
サンの頬から額、そして鼻先と愛撫したエボシの唇がやがてサンの口まで  
這ってゆき、その唇をくちゅりと捕らえた  
 
「ん!・・ふぅ・・ お・・のれ ひ・・きょうものぉ・・」  
「んふ・・サン・・おまえからもののけのニオイを消し去るのが我が仕事・・  
 その暁には・・外に出してやるぞよ」  
「んんん・・・」  
 
女同士熱く深く接吻を交わすサンとエボシ、ぬるりと二本の舌が絡み合い  
互いの口の中を舐めまわす、エボシの口の中は血の味がしていた  
 
エボシの舌がサンの体を愛し始めた、サンの首筋から鎖骨までをすりすりと  
行き来している  
青い首筋と鎖骨を時折唇で軽く噛みながら念入りに舌で磨いていく  
先ほどまで長々と交わしていた口付けの余韻で唇の周りを涎でてろてろに  
濡らしたサンは、はぁはぁと熱い息を漏らす  
体が妙に熱く、頭は現世にいるのに、体のほうは夢の中のよう  
 
「・・この女の体・・ 重くて・・・ 柔らかい・・  
 甘くて・・なつかしい匂いが・・・」  
 
エボシは舌だけ動かしてるわけではない、  
己の匂いを染み付けるように下に抱き込んだサンの上で微妙に身体を  
揺すっていた、ずっしりとエボシの肌がサンの肌を浸していく  
 
「やめろ・・やめろ!・・ はなれろ・・・  
 私の体・・ この女の匂いに塗れていく  
 私は山犬!・・ 私はモロの娘だ!・・・」  
 
エボシの舌がサンの肩口から移動していく  
サンの腕を捲り上げちろちろと脇をくすぐり立てる  
 
「うあっはは! やめろ! くすぐったい! ひきょうだぞ!・・・」  
 
笑い転げるサンを真剣な眼差しで舐め解すエボシ、次第に二人の肌に汗が  
浮き始めていた  
 
「あは! うは! げほ・・ けほ・・ もぉ・・やめぇ・・・」  
 
エボシの舌は、いい加減勘弁してやるとばかり向きを変え、  
サンの敏感な腑の下から育ち盛りの胸の膨らみに上り始めた、  
青々とした孤を描きながら、歳の割にかなり立派に女を主張する急な稜線を  
麓から頂きへねろれろと行き来する  
 
「うぁ! ふわぁ! こんなもの! こんな胸・・ いらぬのに・・・  
 走るのに邪魔なだけなのに・・・ やめろ! やめろぉ!  
 よけい! 大きくなる・・・」  
 
エボシの唇が薄桃色の頂きにちゅっと口付けした  
サンはぴくん!と一際身を撓らせる  
大きな真っ赤な口に頬張られていくサンの青い胸、エボシの温かい息がつんと  
張った白い肌に広がり、長い舌は可憐な乳首でとぐろを巻いて刺激を与えてくる  
 
「くぅ! 感・・じるぅ・・・」  
 
薄桃色の乳首がエボシの口の中でみるみる震えながら立ち始める  
弄られてない一方の胸にさえ刺激が伝播し、ぷるぷると震えながら頂きを  
勃起させた  
エボシは口でサンの胸を執拗に愛しながら、指は蜘蛛のように彼女の腰の線を這い  
骨盤を伝いながら、まばらに生え始めた可愛らしい茂みの中へ潜っていった  
 
「うわぁ!!」  
 
青い蕾を女の指に摘まれ、サンはびくん!と大きく跳ねる  
エボシは胸と股同時に熱の篭った愛撫を施しはじめた  
 
「うわ! うひ! だめ! やめて! だめだぁぁ!!」  
 
エボシの指はサンの蕾に差し入れ、妖しげに慣れた舞を踊る  
さらにエボシの舌はサンの乳首を入念の舐め解し、  
その歯が弾力を確かめるように軽く噛み跡をつける  
サンは頭を振って、必死に快感を否定しようとする  
否定しても、否定しても、性感を剥かれた若い芽はじわじわと快感の波を頭に  
送り込む  
 
「はわ! ふわ! なにか! くる! なにか! きてる!!」  
 
白い肌を紅く染め、いい汗を吹き出させるサン、エボシの瞳がにやりと淫靡な  
光を放ち、その指はサンの既に奥からこんこんと漏らし始めてる蕾の中へ  
入り込んだ  
処女膜に指先が触れ、つにつにと撫ぜ回した  
サンは大きく目と口を開き、ぐーーんと身体を弓なりに反らした  
 
「あううううううう!!!!!」 ぷしゃぁ!!  
 
サンはいかされた、十四の身空で知る女の極み、  
ぴくんぴくん・・と又しても肌を震わされた  
 
「あ・・ あぁ・・・ ふるえがとまらない・・ 何かもらした・・」  
 
エボシは胸と蕾から離れると、サンをゆっくり横向きにしてその背にぴたりと  
取り付いた  
再び長い舌が伸びる、今度はサンのうなじにぴとりと乗せられた  
 
「うぁ・・ また、舐めはじめ・・ はぁ・・ くすぐったひ・・」  
 
エボシは熱い息を吹きかけながらサンのうなじから髪の生え際に沿って  
耳たぶへ滑っていく  
かぷかぷ・・むずむず・・耳の内側も裏側も咥えられ舐めとられる  
サンの短い髪がぞわぞわと逆立った  
エボシの舌はサンの耳から離れ、うなじを通って肩甲骨の線をなぞる  
女の指がすり・・と骨の隙間に潜り込む、まだ若々しく、凝りなどどこにも  
見当たらないことを確認して、指と舌はサンの背骨の上を走りながら、さらに下へ  
と降りていく  
サンの引き締まった、それでいてぽこんと丸みを帯びた尻  
割れ目にエボシの高い鼻が潜り込む、放射状の皺に鼻息を感じてサンは訝る  
 
「尻の匂い・・・嗅がれてる!」  
 
そしてサンの片方の尻たぶをエボシの指が鷲掴みにして乳房のように揉みしだき  
もう一方の尻たぶを肛門から離れた舌が、ねっとりと舐め回し始めた  
 
「く!・・ 私の尻・・食われてる!」  
 
エボシはまんべんなくサンの尻に人間の歯形と手垢をなすりつけていく  
そしてそれは、窄めた舌により、肛門の中にまで及んだ  
 
「あ! うん!」  
 
尖った舌先に肛門内側を舐め摩られ、肩や頭をわなつかせて嬌声をあげるサン  
青い尻もまたふるふると小刻みに震わせていた  
そして、彼女の頭の中に懐かしい感触の記憶が蘇っていた  
 
「そうだ・・母さんだ・・・ 幼いころ、私を優しく舐め回してくれた・・・」  
 
サンは体だけでなく遂に心まで、すぅ・・と気を抜いた  
母親に縋る幼子のように、今自分を愛撫する相手に対し身を任せていった  
 
サンの脚、やや傷跡が多いところは少年のそれのようにも見える、  
しかし無駄な毛など一切ない、筋肉質に見えて触ると極めて柔らかい  
やや日焼けしたふくらはぎと真っ白な太ももの光と影が健康的かつ  
爽やかな色気を醸し出していた  
サンの脚は片方づつ、エボシの愛撫に晒される  
豊かな乳房が太ももから順に足先まで、たっぷり大人の人間の女の匂いを  
塗りつけたあと、真っ赤な口と舌が続いて唾液で浸していく  
 
「うふぅ・・・」  
 
先ほどいかされたばかりの余韻も抜けず、何ともいえないくすぐったさに  
猫なで声のような甘い息を漏らすサン  
エボシは抱え込んだサンの足に、並の人間と比較にならないほど抉れた  
土踏まずを発見した  
幼少の頃より、木々や険しい岩場を飛び回る生活でこうなったのだろう  
エボシは足の指一本一本全てを愛してやった  
 
「うは! ひゃはは!!・・」  
 
サンは無邪気な黄色い声をあげていた  
 
さんざん笑わされ、感じさせられてぐったりしたサンの青い脚が開かれる  
その間に向かい合わせて噛み合うようにエボシの長い脚が絡み付いてきた  
女同士の股の付け根が、にちっ・・と湿った音を立てて密着する  
サンとエボシの貝合わせが始まろうとしていた  
ぎし・・ぎし・・ 床が鳴り出す  
 
「あ・・・ うん・・・」  
 
サンとエボシ、二人の豆が互いに揉みあい、同時に声を立てる  
ゆらゆらと腰を揺らめかすエボシ、サンの若葉とエボシの濃い森がくちょくちょと  
縺れ合う  
二人の花弁の奥から蜜が溢れ、縮れた毛と肉の丘を潤わせていった  
 
「ふん・・ うぅん・・ なんて・・いぃ・・きもち」  
 
サンの腰を挟み込んだエボシの脚を真似、サンもエボシの腰に脚を巻きつけてみた  
そして負けじと自分も腰を揺らめかしはじめる  
少女と妖艶な女が腰を絡めて揺れあう様が格子の向こうの鏡に映っていた  
エボシの胸がゆさゆさと揺れる、サンの胸もぽむぽむと揺れ動く  
ぎし! ぎし! ぎし!  くっちゅ・・ぐっちゅ・・  
エボシの豆とサンの豆がはげしくまぐわう  
あぁ! はぁぁ!エボシの甲高い嬌声、  
ふぅん! うぅん!サンも可愛らしく喘ぐ  
甘い空気が部屋中に篭り、熱を帯びた女の時間が過ぎていく  
二人は逝った、二度、三度、女同士でしか味わえない禁断の悦び  
 
くちゅ・・ ちゅぷうぅ・・ 興奮の渦の中で盛んに接吻を交わすエボシとサン  
度重なる絶頂で微かに痙攣させた肌をしっかりと抱き合い、  
重なった二つの女の尻がぐっしょりと濡れて異臭を放つ  
サンだけでなくエボシまでも失禁してしまっていた  
 
飽くことなく快楽の追求は続く、エボシがごろりと仰向けになり、  
今度はサンが鏡で確認しながら最も心地よい姿勢をエボシと作る、  
サンから先に腰を振りはじめ、二人の口からまた歓喜の声が漏れ始めるのだった  
 
(つづく)  
 

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