一週間ほど過ぎた、ゴンザが最初の用事を無事こなした証しが現れた  
数人の男がこの村を尋ねて来たのだ  
 
「ジコ坊殿、はるばるようこそ  
 こんなにも早く来られるとは思いもよりませんでした」  
「ふふ、なんじゃ”殿”なぞと他人行儀じゃの」  
「しかし久しぶりだの、 シシ神退治以来じゃ」  
「昔話をするためにお越し頂いたのでは御座いませぬ」  
「ふふん、エボシ 話を急かすな で、何を企んでおる」  
 
エボシは用件を話し出した  
 
「わしは今のままで良いのかじゃと?  
 ふむ、唐傘の者どもを束ねさせられ、これとして不自由なことは  
 感じておらぬがの」  
 
エボシが口を開く前に意を察したジコ坊がきり出した  
 
「なるほどの、まあ追い詰められてる気持ちはわかるがの  
 幾らなんでもその先は手に余るぞい」  
「この山を我が物にする」  
「ほほお、おまえ一人でか? せめて生き残っとる山犬を  
 そこの軒に吊るしてから言うことじゃな」  
 
エボシは数軒離れた場所で薪を割る若者のほうを見やった  
 
「んん? おお! あの少年は!! まだここにおったんかい  
 シシ神の首を返そうとした時の勇壮ぶりというか馬鹿っぷりには  
 肝を冷やしたもんじゃが」  
「今でも勇壮ぶりは変わりませぬぞ   
 アシタカはここからは離れることはありませぬ」  
「何じゃと? さてはお主、得意の色仕掛けで絡め取ったのか」  
「下品な物言いですこと それだけで落ちてくれれば苦労は  
 しませなんだがな」  
「何?、まさかエボシよ お主、あの例の明国の仙薬やらを・・」  
 
エボシは唇を歪めるだけで応えた  
 
「なんとまだ持っておったのか、  
 あの連中といまだ付き合いがあるということじゃな  
 それで山犬はどうするんじゃ?」  
「薬は他にも色々と取り揃えておりましてな  
 シシ神が倒れた時、隠し倉が無事だったのは幸いでした  
 こう見えても伊達に病者との付き合いが長いわけでは御座いませぬ  
 例えば獣に効く代物なぞも・・ モロには見破られましたがな」  
「ふん、恐ろしい女じゃ 毒使いは女の十八番と相場は決まっておるか  
 しかし見破られるのでは仕方があるまいよ」  
「・・・今はもうモロはおりませぬ」  
 
コーン!という薪を二つに割る音が青い空に響き渡る  
薪を抱えた若者は、ジコ坊の顔をみると軽く会釈して立ち去った  
 
「アシタカ、こんなにも会いに来ないとは・・・ 何があったのだ・・」  
 
シシ神のいた山  
山頂付近の山犬の塒の洞の入り口にある高見台から外を見下ろすサンがいた  
自分を好きだと言ってくれた人間の男  
憎しみにあけくれた自分を必死に宥め、共に生きようと何度も語りかけられた  
母モロにさえ、彼と生きる道があると背を押された  
でも自分は山犬、彼は人間・・   
共に生きるなどと口にするは簡単だが、現実に越えねばならない壁は大きかった  
アシタカが山犬になるか? それは断じてありえない  
では自分が人間に?  
 
「アシタカ・・ 私はどうすればいい、どうすれば・・・」  
 
度々、会いに来てさえくれれば、自然と何か答えが見つかると思っていた  
いや、会いに来てくれるのが当然とさえ思っていたことに今更気付いた  
 
「さびしい・・・」  
 
齢十四の娘は一人呟いた  
母もシシ神もなく、弟の一人も立ち去った  
もう一頭の弟のほうも、二日ほど前から餌探しに山を離れていた  
物心ついてこのかた圧倒的に一人で過ごす時間が増えていたのだ  
 
「アシタカは・・ アシタカはきっと、私のことなど忘れてしまったのだ!!  
 しょせん人間だ きっと、私などより美しい人間の女にでも  
 出会ったに違いない!!」  
 
サンは首にかけた彼からもらった玉の小刀を掴み、首から引き千切ろうとした  
しかし適わなかった  
小刀を握り締めた手はぶるぶると震えるばかり  
   
・・ガサリ・・  
ふと背後から足音が近づいて来る、サンは耳を澄ました  
 
「この足音は・・」  
 
紛れも無く弟のものであった、どうやら山へ戻って来たようだ  
しかし足取りがどうもおかしい  
ガサリ・・ ガサリ・・・ 足音が次第に近づいてくる  
と、同時に、ハッ・・ ハッ・・ という荒い息を吐く音も  
サンは、ばっ!と音のする方に駆け出していた、怪我を負ってるかもしれないと  
思ったのだ  
 
「お・・おまえ、 一体、どうした・・・」  
 
目の前に現れた弟は目が血走り、半分開いた口から舌と涎をだらだらと垂らし  
やや乱れた足取りでゆっくりとにじり寄って来る  
 
・・はっ・・ はっ・・  
「おまえ・・ おまえ! しっかりしろ!! 何があった?!」  
 
サンの問い掛けに対しても荒い息と歯軋りで応えるばかり  
完全に言葉を失っている  
 
「餌か・・ 人間の仕掛けた毒餌を食ったのだな」  
 
怪我もなく、この異常な状況はそれしか考えられないという結論に達した  
歯軋りするサン、人間に怒りを燃やしてる場合ではない  
心を狂わせる毒に冒された弟犬の牙を宥めるのが今は先決であった  
体格の違いで力でやりあえば敵うはずがない、  
後ずさるサンにとって取るべき行動は一つしかなかった  
 
サンはばたりと地面の上に倒れこみ、仰向けになって力を抜いた  
抵抗の意思の無いことを示す姿勢だ  
狂った相手には効かないかもしれない・・ それならそれでいい  
 
「私はおまえに食われよう・・」  
 
サンはゆっくりと目を閉じた  
相変わらず荒い息は途絶えず耳に鳴り響く、しかし鳴り響くだけだ  
寝そべった己の傍をぐるぐると回るばかりで一向に襲い掛かる気配はない  
うっすらと目を開けて弟の姿を確認する  
眉間に深い皺を寄せ、必死に理性と戦ってる様相を浮かべていた  
 
「おまえ・・」  
 
サンは地面を這うようにしながら近づいていった  
ぶるぶると毒の怒りで震える四肢の間を潜り、後ろ足の下まで到達すると  
股から半分露出しているものにそっと手を伸ばした  
 
・・ワ! フゥ・・  
 
サンの温かい手に陰茎を握られた途端、弟犬は情けない声を発した  
しゅっ!しゅっ!・・サンの柔らかい手指が弟犬のだらしない陰茎を揉み扱く  
小柄な並の牝犬と交われるよう、体の大きさに割にはこじんまりとして見えるが  
それでも人間の成人男性に匹敵する持ち物の大きさである  
やがてサンの手の中で弟犬は真っ赤に勃起させた物を完全に露出させ、  
先ほどまでの凶暴さを滲ませていたのとは違う、はっ! はっ!という荒い息を  
吐いていた  
 
サンは弟犬の腹の下から抜け出すとその鼻先に移動した  
そして彼の鼻にちゅっ・・と軽く唇を当てると、がばりと地面に膝と手をつき  
四つん這いの姿勢を作った  
そして腰から膝までを包んでいた衣をぺろりと腰上までめくり上げた  
白いつるんとしたもののけ姫の桃のような生尻が剥き出され、  
牡の山犬の面前に晒された  
 
「さあ、おいで・・」  
 
サンは心もち尻を振るようにして弟犬を誘う、  
母に教わった方法、サンは自らの身を張って狂った弟を宥めようというのだ  
はっ! はっ!という荒い息が近づいて来る、牡の名のつくものにこれまで一度も  
触れさせたことのない丸い生の尻ぺたに熱い鼻息がかかり、やがてぽたぽたと  
涎の雫が降りかかった  
サンはぐっ!と歯を食いしばり、前を見据えて腹を決める  
少女の背中に犬の影が覆いはじめ、震える細い肩と短い髪の上まで被さってきた  
 
「くっ!・・・」  
 
熱い肉の尖った感触が己の尻の割れ目を突付いている  
世にもおぞましい交わりが始まろうとしていた  
弟犬の陰茎の切っ先がサンの尻のど真ん中、放射状の皺を広げた  
 
「え?・・」  
 
訝るサン、ちがう!そこは、糞をだす穴!・・  
間違いをただそうと翻そうとしたサンの身を弟犬の頑強な前足がぐっと両側から  
挟み込んで固定した  
そして間髪いれずに太く熱い肉の感触がサンの尻の中へ抉りこんで来たのだ  
 
「そこ?!・・じゃ!・・なぃい・・ ひが!!」  
 
ずぬ!ずぬぬぅ!!・・弟犬の逞しい陰茎がサンの生白い尻を割り、  
肛門を穿って柔らかい腸に嵌り込んでいく  
 
「あぃっ!・・ひぎぎぎぃ!!!」  
 
サンは体を裂かれるような痛みに顔を顰め、尻の肉をきばって、  
強引に入り込んできた固い異物をひり出そうともがく  
しかし、侵入物は出て行くどころか益々、奥へと挿し進み、出すほうの穴を  
蹂躙していく  
やがてサンの臭い穴は固く熱い栓をみっちりとされ、柔らかいはらわたに  
弟犬の陰茎の形が歪に刻まれた  
 
「う!・・ ぐぐぅ!・・」  
 
あまりの腹苦しさに息の根を止められそうなほど苦悶するサン  
次の瞬間、異物感に占拠された尻の奥で熱い液がどっ!と噴出した  
 
「は!はぁ・・・」  
 
弟犬の容赦ない射精をこともあろうに腸の中で受けるサン  
汚物の溜まる場所を熱いねばった濃い液に充たされる異様な感触に  
尻たぶをぷるぷると震えさせた  
 
あっという間に掘られた底に液注を受けたサン  
しかしこれはこ衝撃的交わりのほんの序章でしかなかった  
サンの尻に嵌り込んだ弟犬の陰茎は萎むどころか逆に膨らみはじめたからだ  
 
「は! ひぃ!!」  
 
尻の中で膨大な圧力がはらわたの粘膜に焼けつく  
サンは己の尻の中で起きていることの痛さとおぞましさに自然に涙が滲み  
はじめた  
 
「かあ・・ さ・・ん」  
 
強気な山犬の姫、どんなつらい時でも泣いた事などなかった彼女の口から  
遂に弱音が漏れた   
弟犬の大きな体が組み敷いた小さな姉姫の体の上で前後動し始めた  
ばふ! ばふ!・・山犬の毛深い後ろ足がサンの白い尻を餅をつくように叩く  
そしてサンの尻の中からは、ずぽ!ずっぽ!という粘膜棒と肛門の粘膜が摺りあう  
異様な音がこだまする  
大量に出された犬の精液にサンの腸液が入り混じり、固い粘膜が抜ける度  
無惨なほど広がった肛門との隙間からぴち、ぴちゃ、染み出した  
 
「あぁ! あぐぁ! ふぁがぁ!・・」  
 
弟犬の腰の律動に合わせて揺れ動くサンの体、涙を滲ませながらも必死の形相で  
耐える  
開いた口の歯の隙間から、弟犬に突き抜かれる度、腹の中の空気を押し出される  
ような呻きを発した  
サンは山犬として、弟犬の慰み者となっていた  
・・オオン・・オオオン・・  
姉分の尻の穴に己の分身を突っ込んで、さぞ気持ち良さそうな叫びをあげる弟犬  
汗まみれで耐えるサンの尻を牝犬の膣穴と勘違いしたまま、いよいよ二度目の  
因子を注ぎいれようとしていた  
 
ばふん!! ばふん!! ずちゅ! ぐちゅ!・・  
牡の後肢と牝の尻が打ちあう音、小便と糞の通り道が摺りあう音も激しく  
不潔な交尾に興じるもののけ姉弟  
 
「・・はぁあ! あがぁ! からだが・・ばら・・ばらにぃ!・・」  
 
情け容赦ない牡犬の腰の動き、一突き毎が牝の内臓を揺るがし脳天まで  
振るわせる  
痛みはとうに痺れにかわり、サンは水を被ったような汗だくで半分白目を  
剥いていた  
幾ばくか前まで牡の体の感触なぞ何一つ知らぬ無垢の牝の体は事もあろうに、  
本来なら異性の接触など受けない場所を無惨に貫かれ、固い感触をこれでもかと  
ばかり彫りつけられていた  
 
「ぐひ!! ぐぅ!! 耐え・・るんだ! 耐え・・るん・・」  
 
意識を辛うじて保つサンの尻の中で犬の陰茎はひくひくと強く戦慄き出していた  
やがて、弟犬はわおおおお!!!!と大きく雄叫びを放つやいなや  
姉の尻に深々と根まで生殖管をぶっ挿した、  
次の瞬間、陰嚢の中身が遡りサンの身に注ぎ込まれる  
熱いおぞましい感触は彼女のはらわただけでなくその精神までも冒した  
 
「あしたかぁぁぁ!!・・・ぁ・・ぁぁ・・・」  
 
どっくん・・どっくん・・放心したサンの尻の奥に弟犬は長々と注射する  
ぐるるぅ・・大量の熱い浣腸効果がサンの便意をくすぐり下腹を鳴らせた  
 
日の光の射す森の中、  
繋がったまま動きの止まった二匹の動物が木々の間から照らし出されていた  
ぴく・・ぴくぴく・・と僅かに戦慄きながら放心した牝の尻の上から  
ようやく牡の中身を出し尽くして縮んだ陰茎がずる・・と引き抜かれた  
 
高くあがったままの尻からぷびゅぅ!・・と勢いよくたっぷり注がれたものを  
噴出してみせる牝の空ろな表情の顔を牡犬はぺろりと一度舐めて、  
そのままフラフラと立ち去っていった  
 
再び怒りの混じった荒い息を吐く足音が遠のくのを聞きながらサンもゆらりと  
立ち上がる  
腰上までめくれあがった衣の裾がばさりと膝まで降りる  
しかし尻と股に豪快な染みが広がり  
さらにどろどろ〜・・と凄まじい量の濁った液が両の脚を伝い流れた  
ちょろ・・ちょろちょろ・・さらにそこに黄金色の水が混じる  
 
「ぁぁ・・あし・・たか・・・」  
 
失禁したまま二、三歩進んで、再びばたりと倒れるサン  
そのまま完全に意識を失った  
 
 
 
元タタラの村、首尾を伝えにゴンザが戻って来ていた  
素早い正確な働きぶりにおおいに満足し労うエボシ  
 
「ごくろうだったねゴンザ、いや大したものよ  
 ここまで上手くやるとは、あんたに頼んで正解だったよ」  
「へい  
 毒餌仕掛けはもっと梃子摺るかと思ってましたが  
 どうも山犬は一匹しかいなかったようで」  
「ふふ・・ ジバシリにでも鞍替えするかい?」  
「・・いえ、やつらの真似事は、そうしょっちゅうは簡便でさ  
 まだ獣の血の匂いが残っておりやす」  
「うん、風呂につかって今日はゆっくりお休みね  
 また、明日発たなきゃならないのだからね」  
 
ゴンザが部屋をあとにしたあと、脇で聞いていたジコ坊が話し出す  
 
「山犬は一匹か、他の山へ移ったのかのう」  
「おおかた牝犬でも出来たのでしょう、所詮犬畜生です」  
「ほっほっ・・ それを言うたら人とて同じことよ  
 ところで、毒餌を食うた犬は死んだのかな?」  
「あれでも神の端くれ、盛ったことを気付かれぬほどの量の毒では  
 そこまでは・・ まあ、じきに結果が出ましょうよ」  
 
エボシがにやりと笑った直後、見張りの者が慌てて駆け込んで来た  
 
「ふふ・・どうやら来たようだ、噂をすれば何とやら  
 さて、アシタカに頑張ってもらわねばな」  
 
湖に囲まれた再建中のタタラの村の櫓からすぐ正面の山は切り開かれ  
ささやかな畑が広がっていた  
外界へ通じる道はその方角に一本しかない  
櫓と同じ高さの山の上、距離にして約十町、白い大きな犬の姿があった  
 
「山犬じゃな・・ どうするつもりじゃ?  
 こんな櫓いとも簡単に越えられてしまうぞ」  
「アシタカ、頼むぞ」  
 
ジコ坊の心配をよそにエボシはアシタカを呼ぶ  
周囲の狼狽と裏腹に冷静・・というよりは無表情な彼が、ざっ!と弓を担いで  
櫓の上を一歩進み出る  
その手に握られた弓はかつて彼が愛用していた軽快な単弓ではなかった  
上下非対称の合板弓、侍どもの使う重籐弓であった  
特別誂えの強弓で並の射手では弦を動かすことさえかなわぬ代物  
それに番えられた矢もまた、彼が長年使用していた石の鏃ではなかった  
鉄製の鏃に黄色く濁った液が滴っている  
南国の毒蛇の牙から抽出された猛毒の塗られた毒矢であった  
 
はぁはぁと息を荒立て涎を滴らせ凶悪に歪んだ悪鬼羅刹の如き山犬の様相  
 
「むぅ、鬼じゃな・・ 恨みをたぎらせた相じゃ」  
「来るぞ!」  
 
山犬の炎のように血走った瞳が櫓の中央に佇むアシタカの目とあった  
その瞬間、ざざっ!と山犬の脚が地面を蹴った  
跳ぶように村目指して一目散に突っ込んでくる  
 
「・・・皆、さがられよ・・・」  
 
表情一つ変えずアシタカは周囲の者に命ずると、ぐぐぅ!と弓を引き絞った  
びゅん!と日の光を受けて鏃が一閃、  
走り込んでくる怒りの火の玉と化した山犬めがけて真一文字に飛んで行った  
 
ザク!!  ・・ガアアアァァ!!!!  
 
山犬の右の肩を見事に射抜くアシタカの矢、深々と刺さった鏃の毒がすぐに  
回り始める  
毒は肉を溶かしながら全身をじわじわと冒していく、その際凄まじい激痛に  
襲われる  
山犬の動きが鈍った、そこへすかさず第二、第三の矢が襲い掛かる  
 
距離にして約三町、体に四本の矢を刺された山犬は怒りの炎をたぎらせ  
ながらも足取りは重くもはや進むだけで精一杯の様子  
 
・・ガフッ!! ガハアアァ!!!・・・  
 
毒の苦しみと頂点に達した怒りが歪みきった顔からどす黒い触手を  
生やし始めた  
 
「おぉ!タタリ神になり始めたぞい!!」  
 
「アシタカ!とどめを!」  
 
エボシは一本の重そうな矢をアシタカに差し出した  
鏃の回りに火薬を詰めた炎の矢  
重く飛距離がないのと、一本しかないため、最後の最後に使うとどめの矢である  
体からみるみるドス黒い触手を生やしタタリ神と化していく山犬  
されど動きは鈍く、もはや相当へぼな射手でも外しようのない動く的同然であった  
 
アシタカは矢を番え、さして労も感じさせず不恰好な怪物めがけて放った  
ぶーん・・と鈍い音を立てて飛翔する火矢はいまやうねうねととぐろを巻く触手で  
真っ黒くなった山犬の額のど真ん中に着弾した  
 
ドドーーーン!!!!  
 
真っ赤の炎が噴出し大音響が鳴り響く  
山犬の頭から両の眼が飛び出し、裂けた脳天から真っ赤な脳漿が天めがけて  
吹き上がった  
脊髄をぐしゃぐしゃに粉砕しながら亀裂は縦に山犬の体を引き裂き、  
全身から生えていたタタリの触手は四方八方飛び散って、じゅぅと落ちた地面を  
焦がす  
出来たばかりの畑はバラバラになった山犬の周囲十五間にも渡って焼き払われた  
 
しゅぅ・・と煙の立ち篭る中に恐る恐る近づくエボシ達  
 
「いやはや・・ なんとも恐ろしき眺めじゃった」  
「やれやれ、せっかく作った畑がこれじゃ台無しだね」  
「ふむ、ここに祠を建てて祭らぬといかんな」  
「そんな形だけのもので神の怒りが鎮まるものか?」  
「もののけの姫はどうしたかのお」  
 
アシタカが半分に割れ目玉の飛び出した山犬の頭の前に立ち尽くしていた  
 
「どうしたアシタカ?」  
「・・・これが、モノノケの山犬なのか?・・・」  
「そうだ」  
 
突然、アシタカは、うっ!と口を抑えて蹲った  
駆け寄るエボシ達、アシタカは顔が真っ青になって呼吸が荒くなり  
ぶるぶると小刻みに震えている  
 
「手を貸して! アシタカを中に運んでおくれ・・  
 ん? アシタカ?おまえ・・」  
「・・なぜ・・か なぜ・・だか・・目が・・ 熱くて・・ たまらない・・」  
 
アシタカは涙を流していた  
すっとエボシが擦り寄り、アシタカの頭を抱いた  
 
「緊張がほぐれ無意識に安堵したのだ、さあ向こうで休むがよい」  
 
一部始終をジコ坊が呆れたように見つめていた  
 
「これが薬と暗示で作られたもう一人の奴か 大した手なづけぶりじゃて  
 人の心の底に手を突っ込む手腕はモノノケ以上じゃな  
 くわばら、くわばら」  
 
(つづく)  
 

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