・・・  
 
 
禿山に緑が戻って はや一年になろうとしていた。  
あの日と同じ青空。日は高い。  
かつてのシシ神の池のほとりにも草が生い茂り 周りのあちこちに若木が風に吹かれてゆらいでいる。  
 
その池を見下ろす尾根で草を食むヤックル、そのそばにはアシタカが大の字になって  
流れる雲を見上げていた。  
 
風の音と一緒に足音が近付く。やがて止まる。  
アシタカを見下ろして人影が立つ。 サンだ。  
 
「アシタカ。」  
「サンか。 久しぶりだな。」  
 
サンは黙ったままアシタカを見つめる。浮かない顔だ。  
 
「どうした? 何かあったのか。」  
 
サンは崩れるように腰をおろす。肩が震え、ついにはこらえきれずに  
手が顔をおおった。  
 
「兄弟の山犬たちはもう言葉が通じない。体も日に日に小さくなって  
 もうほとんど普通の犬とかわりがなくなってしまった。」  
 
「・・・ そうか。」  
 
「とうとうついに昨日、二人ともわたしを置いてどこかへ行ってしまった。  
 もうどうしていいかわからないの。」  
 
「・・・。」  
 
「もうこの山にはだれもいない。 わたしひとりきりなんだわ。」  
 
 
・・・  
 
 
はるか遠くのたたら場の 鉄を打つ音さえ聞こえてきそうな静けさだった。  
 
アシタカがやさしくサンの手を取る。  
 
「サン。ぼくは東の郷里へ帰ろうと思うんだ。エボシにはもう話は付いている。  
 
 きみにぼくと一緒に来てくれる気持ちがあるなら。」  
 
「・・・。 アシタカ。いいのか。」  
 
「一緒に来てくれ、サン。」  
 
涙をあふれさせ サンはアシタカに倒れ掛かる。  
 
アシタカとサンはおたがいに抱き合う。  
 
互いの手が背中にまわる時 長年サンの顔にまとわりついていた不安の表情が  
このとき完全に消えた。  
 
「ああ・・ あぁ・・。」  
 
あまりの抱擁のはげしさに ふたりの体は斜面を転げ落ちていった。  
 
 
・・・  
 
 
倒木の下の 苔の上まできて やっと止まった。  
 
横に並んだ互いの顔がいままでにない笑顔をもたらした。  
 
「フ・・ フフ。」  
 
「は・・ はははは。」  
 
あらためて見つめあう二人。  
 
空を見上げてアシタカが言う。  
 
「すべてのものは変わっていくんだ・・ この山だけじゃない。  
 人間だって、 いずれは。」  
 
サンは身を起こしてアシタカにたずねる。  
 
「シシ神さまも モロも 兄弟も 消えてしまった。  
 いずれは人間も消えてしまうのだな。」  
 
 
・・・  
 
 
アシタカは言う。  
 
「人間・・。 人間は自分の力だけで生きてるわけではないようだ。  
 山の神々とは何かが違う。 人間の知恵はあまりに奇妙だ。  
 いつの日か 人間も消えてしまうことになるかもしれないが  
 その前に 人間自身が 知るようなことになるかもしれないな。  
 自分たち人間が生まれてきたわけを・・。」  
 
アシタカにもそれが答えになっていないとはわかっていたが サンの気持ちは  
少しは安心したようだった。  
 
「アシタカ・・。」  
 
サンは唇をアシタカに重ねた。  
 
 
・・・  
 
アシタカがサンの体をひきよせる。サンの体は流れるように  
アシタカの意志でなめらかに滑ってゆく。  
 
二人の体温を感じながらアシタカの腕がすべてをリードしてゆく。  
 
アシタカというよりは アシタカの腕の傷跡がリードしていたのかもしれない。  
 
アシタカはサンの胸に顔をうずめ 首でサンをしごいていく。  
 
それまで知ることのなかったたまらない快感に身をよじれさせ 息喘ぐサン。  
 
アシタカの腕はその役目を舌にとって代わらせた。  
 
サンの動きがより激しく 気持ちはよりたまらなくなってゆく。  
 
 
 
・・・  
 
 
 
 
倒木の枝の影から太陽の光が入る。サンの顔には涙がこぼれ落ちる。  
 
「きょうという日のためだったんだわ・・。モロが 人間に捨てられたわたしに  
 人間の言葉を伝え 服を着せ 人間の振る舞いを忘れさせまいとしていたのは。  
 モロにはわかっていたんだ・・。  
 わたしがいつかは人間たちの中にに帰ってゆく日がくるということを。」  
 
表情に出る感情の高ぶりを手で必死に隠すサン。  
 
 
「サン・・。」  
 
 
 
 
手で塞がれたサンの顔がゆっくりうなずく。  
 
 
「サン・・。 いくよ。」  
 
 
日が再び山肌に隠れた。  
 
 
 
コダマが二人を遠巻きにして集まってくる。  
 
カタカタと頭を鳴らしながら無表情な顔をならべている。  
 
その中でもひときわ大きなコダマの影が。  
 
 
・・・  
 
 
それは何故か宇宙戦艦ヤマト技師長の真田志郎その人だった。  
 
目を合わす三人。 凍りつくような空気?  
 
真田「あ。 いや。 その。 なんだ、ひょっとしたら何かの参考に  
 なるんじゃないかと思って。 ああ、 すまんね、 いや、お邪魔だったかな。」  
 
サン「きゃあああああ!!」  
 
アシタカ「なんだおぬしは。」  
 
真田「いや、お気になさらず続けて下さい。いや、ホントに失礼した。」  
 
サン「アシタカ、こいつも人間なのか!?」  
 
そう言うが早いか、アシタカからはなれたサンは短剣に手をかけた。  
 
真田「わわわ。 ぼ、暴力反対なんだな。」  
 
サン「でやあああ!」  
 
胸を一突き。  
 
真田「ぐああ!」  
 
サン「このっこのっこのっ」  
 
抜いては刺し 抜いては刺しを繰り返すサン。  
 
アシタカ「やめろ、やめるんだサン!」  
 
サンの目は恐怖と怒りに燃えていた。  
 
人生でもっとも気を許したこの時の自分を 山育ちのサンは許せなかったのかもしれない。  
 
「このっこのっこのっこのっこのっこのっこのっこのっ」  
 
 
おわり  
 

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