これはどういう事なのだろう。
初花になれる女の下限は、初潮を終えた13歳過ぎの娘なはずだ。
初潮を迎えればその女は村で真の元服と見なされ、一家で盛大に祝われる。
カヤはまだ12歳。初潮を迎えたという話も聞いていなかった。
それにアシタカとカヤは乳兄妹である。
乳兄妹は通常この村では近親者と同義に扱われ、婚姻対象者として見なされていない。
カヤとアシタカの仲は良かったが、それはあくまでも義兄妹として。
アシタカ自身、そのような対象としてこの娘を見た事など、今まで一度もなかった。
しかし、この場で意義を唱える訳にもいかない。これは長老達の決定なのだ。
この小さな集合体の中で、長上の者に逆らう。
それはすなわち村を追われるか、自らの死を選ぶ事を意味している。
カヤに対してどのように不憫に思っても、アシタカがこの場を引く訳にはいかなかった。
この義妹は、この場の意味を多分きちんと理解していない。
『憧れの兄様のお嫁さんになれる』と思っているのか、頬を赤らめ邪気の無い微笑みを見せている。
アシタカはこの後の事を思うと、胸の奥にある骨が鳴るほど辛かった。だが逃げ出す事も出来ない。
ヒイ様が、カヤの頭に椿の枝を差した。それが開始の合図だ。
「これより、初花の儀を行う」
最長老であるジイジが厳かに告げた。
アシタカはカヤに歩み寄った。静かに抱き寄せ、そっと唇を重ねる。
初花は頭に椿の花を差す。摘み手側は、その花をなるべく落とさない動きをしなくてはいけない。
承知の通り椿の花は、ほんの少しの衝撃でも花首が落ちやすい。
それを落とさぬ様、そっと未通娘(処女)の身体をほぐすのが摘み手の勤めだ。
初花が自ら反応して花を落としたら、その時が道を付ける潮時であると教えられている。
(せめて……せめて、少しでも長く花を落とさぬ様にしよう)アシタカは決心した。
「カヤ…声を出さないで聞いてくれぬか。あまり体を動かしてはいけない」
そっとその手を首の後ろに回し、他の誰にも聞こえない様にカヤの耳元に囁きかけた。
その動きを誤摩化すため、アシタカはその耳に口づける。
額に、頬に、首筋に、肩甲骨に、羽毛を落とす様に静かに口づけを落としていく。
手のひらで慈しむ様にそっと背中をなぞると、カヤの体がピクリと動いた。
そのポイントを避け、脇腹から上にそっと手をなぞり、少しづつカヤの装束を剥ぎ取ると、ヒイ様が脇からすかさず脱がせた服を片付けた。
だんだんその身体が露になって来る。
カヤの肌はどこまでも滑らかな手触りで、誰も足を踏み入れた事のない雪原の様に白かった。
「兄様…恥ずかしい…」
カヤは体を隠す様によじって呟いた。
「大丈夫、私が付いている」
アシタカはカヤの頭をそっと撫で、抱きしめながら落ち着かせた。
このままそっとしてやりたいが、それでは長老達もヒイ様も納得すまい。
「摘み手や、カヤを横たえなさい」
アシタカの胸の内を見透かす様に、ヒイ様が命令した。
その言葉に、どこにも逃げ場が無い事を改めて思い知らされる。
本当にこれで良いのだろうか。何かが間違っている気がする。
カヤを中央の敷き物に横たえながら、アシタカは内に沸き上がる苦い想いを飲み込まねばならなかった。
カヤは大きな瞳を見開き腕で胸を隠しながら、静かにじっとアシタカを待っている。
「アシタカ、何を怯んでおるのじゃ」
後ろから、長老の一人が焦れた様に声をかけた。横に佇むヒイ様は何も言わない。
だがその目は、『そなたの考えている事はお見通しですよ』と言っている。
アシタカは、そっとカヤに触れていった。
肝心の部分を避け、静かにその肌へ指を滑らせていく。それはヒイ様から教わった初花への手管でもあった。
カヤの身体は今までの『馬』達とは違いまだ青く、どこまでも固く張り詰めてアシタカの指を跳ね返して来る。
下をふと見ると、まだ産毛すら生えていない。
これに、ここ一ヶ月で野太く節くれ立ち始めた、己が魔羅を刺し込まねばならないのか。
太腿に手を這わせ、ゆっくり上下に撫でさすりながら、アシタカは懊悩した。
カヤは目をつむり、大人しくアシタカに身を任せている。その息が段々弾んで来た。
「摘み手や。そろそろカヤが、ちゃんと気を遣れる様準備をせねばね…」
ヒイ様がアシタカの耳に囁いた。この老婆には、アシタカの微細な心の動きなど全て判っているのだろう。
アシタカは一瞬目を固く閉じ、息を大きく吸って覚悟を決めた。
カヤの固く膨らみはじめた小さな胸を、そっと柔らかくなるよう揉みほぐしながら、その先端に舌を乗せ、蕾が立ち上がる様に細かく舐める。
「…………んっ…ぁ…」
か細くカヤの声が上がった。
そのまま固く尖らせた舌先で薄桃色の境目を丸くなぞり、少し吸い上げてから甘噛みする。
ピクリとカヤの体が大きく跳ねた。アシタカは一瞬ひやりとしたが、椿はまだ落ちていない。
カヤの蕾が、枸杞の実の様に小さく固く起きてきた。
指先で軽く円を描く様に押し込み、もっと固く丸く勃ち上がる様先に少し爪を立てる。
真白い肌の上で薄桃に閉じた蕾の色が、徐々に紅梅の様に赤く咲いていく。
「ひゃぁん、あ、兄様…っ!…」
その身体も少しづつ紅に染まり始め、寄り合い小屋の中にも少しづつ同じ様な熱が生まれ始めた。
「ほ…。カヤは初花にしては良き体のようだのう…」
「ほんに。流石、ヒイ様の跡目と目付けがあっただけの事はある…」
後ろで長老達が、アシタカ達に聞こえない様に囁き合った。
ヒイ様の後継者と見なされる。
それは鹿の骨を使ったト占の他に、一族のしきたりを統べる役割を引き継ぐ事に他ならない。
もちろんその中にはこれら性技も含まれ、後継者になれば、これから長となる男の馬役は全てカヤが勤める事になるのだ。
その身を以て長老達を従わせ、その占術を以て村全体を従わせる。
村の者達もアシタカも知らないでいるが、ここの実質的な権限は巫女のヒイ様にあった。
もちろん、幾ら巫女と目されていてもその能力が衰えたり、もっと上回る能力があれば他の者に取って変わられる。
しかし後継者は、数十年もの間出現していなかった。
ヒイ様と同じ程占者としての能力を持ち、同じ程男を惑わす肉体を持っている女は、なかなかいなかったのである。
カヤはヒイ様の血脈を継ぐ者の一人だ。
長になる予定であるアシタカと歳が合う事もあり、一族の期待を密かに背負っている。
もちろん、そんな運命を負っている事など、当の二人には知らせていない。
当てが外れれば、双方ともただ人として村人に戻されるからだ。
一見血脈に重きを置いている様に見えるが、実際村を治めるのに血はさほど問題ではない事を、長老達は経験で知っている。
アシタカが次の長として選ばれたのは、幼き頃から周りの者より抜きん出て聡い子であったからだ。
同じ様にカヤが次の巫女と目されたのは、その血の他に、幼き頃から周りの者より抜きん出て卦に敏感な子であったからである。
むしろこの場で一番期待されているのは、実はカヤの方であった。
男は統べる能力や人を惹き付ける力があれば、どんな男が長に加わろうと問題ない。
しかし巫女の力とは、全ての女が生まれつき持っている訳ではない。
その能力がある女がいるのなら早めに占術を覚えさせ、ヒイ様の跡目を誰かに継がせたいのだ。
その肉体が、全ての男を虜にする蟲惑を秘めているのならば。
カヤの背を手でなぞりながら、アシタカはその胸に柔らかく刺激を与えている。
カヤは先ほどの言葉を守り、懸命に身を震わせぬ様耐えていた。
「…あ…はぁ…あっ、あ、んんっ!」
じりじりと身を焦がされる様に、ほんの少しづつ官能を炙られていく。
それがどれだけカヤにとって残酷な事なのか、まだ女体を知って一ヶ月のアシタカに気付くすべもなかった。
カヤはもじもじと膝を摺り合わせ、その奥の疼きを長老達やヒイ様に伝えてしまう。
椿の花はまだ落ちない。
「…そろそろ頃合いでしょう。ほとへの道の為、さねにも備えを」
ヒイ様の導きに、アシタカがカヤの足元に廻った。そっとその膝を開いていく。
「………っ…兄様…見ないで…」
あらかじめヒイ様から心得は聞いていても、今まで誰にも見せた事のない場所を凝視されるのが恥ずかしいのだろう。カヤが真っ赤になりながら顔を覆った。
アシタカはその秘裂を見て、思わず息を飲んだ。
今まで見て来た女の秘所とはまったく違う。
毛が生えていない事は先から気付いていたが、その陰唇は淡い朱鷺色で薄い筋でしか無く、陰核は皮を被ってその身を隠しながらも奥にかそけき風情をたたえている。
むろんその陰穴も、指ですら入るのかと迷うほど僅かにしか開いていなかった。
それでもその身は健気に露を孕み、アシタカが膝を開いた瞬間、左右に小さな水の糸を引いた。
どうすれば良いのやら判らず、アシタカが初めてヒイ様を見上げる。
「…教えた通りで良い」
ヒイ様は笑って頷いた。
「カヤや。そなたは教えた通り、素直に摘み手の動きに心を従わせるが良い」
ヒイ様はカヤに向かってそう言い、その手を優しく撫でた。
「…はい、ヒイ様」
恐る恐るカヤが手を解き、潤んだ目でアシタカを見上げた。
今まで勃ち上がっていなかったアシタカの下半身に、初めてぞわりと熱が昇る。
その熱に後押しされ、アシタカは思い切って指先でカヤの秘裂を軽くなぞりはじめた。
湿った水音が小屋中に響く。カヤの身体が少しづつ跳ねはじめる。
「ああっ!あ…変です、ヒイ様。…あ、んっ、んうっ!」
「どう変なのだね?」
ヒイ様が、静かにカヤに問いかけた。
「お、お腹の奥が…んっ、切ない…です…あ、あ、ああっ!…」
ゆるゆると首を振りながら、カヤが答える。だが椿は落ちていない。
アシタカは、その陰芯を摘む様に縒りはじめた。その刺激に、細かにカヤが震える。
「…初花で、ここまで持つとは…」
「アシタカもだが、カヤも初花とは思えぬ…」
長老達は惹き込まれる様に、この淫媚な様に見入っていた。
「ほとに指を入れ、道への備えを」
ヒイ様がアシタカに命ずる。アシタカは、そっと指をカヤの肉壁へと差し入れた。
入り口近くに微かな引っ掛かりがある。多分、これが初花の徴であろう。
少しづつ指を奥まで入れるが、狭い壁がその侵入を密かに阻む。
カヤ自身の蜜を頼りに、わずかづつ前後に動かしながら徐々に指を沈めた。
「ん、はぁっ!あ、あ、んうっ…」
カヤが、短く息を吐きながらすすり泣いた。段々アシタカの肉茎もその反応に答え、高く勃ち上がってきた。
指で内壁を確かめる様になぞると、肉がその指の動きに応じながら締め付ける。
アシタカは指の出し入れを徐々に早め、少しでもカヤが痛くない様、中に道を付けて行く。
「痛いのかえ?」
「す、少し…でも…それより、奥がもっと切なくなっ、んっ!あ、ああん!」
カヤはぽろぽろと涙をこぼした。しかしその顔は初めてとは思えない喜悦に満ちている。
すでにカヤの体中が色付き、汗から立ち上る甘酸っぱい少女の体臭と、雌のもたらす独特な淫臭が辺りに立ち込めた。
椿はまだ頭上にある。もうすでに、寄り合い小屋の中には囁く者すらいない。
初の花摘み。その道を付ける過程で、ここまで持った摘み手は未だかつていないのだ。
また、花がここまで身悶え、よがった事も、誰もが見聞きしていない事だった。
ヒイ様だけがただ一人、カヤに昔の自分を見ていた。
(この子は…わたくしの跡目を本当に引き継げる娘やもしれぬ)
「あ、あ、あぁぁぁっ!!駄目ぇ…だめぇっ!!」
ガクガクと身をよじらせ、頭上の椿が落ちると共にカヤが果てた。
見ている長老達からため息が漏れる。
慣れた摘み手なら当たり前であっても、初の摘み手が道を付ける前に花に気を遣らせるなど、前代未聞だ。
「道を付けなさい」
即座にヒイ様がアシタカに告げた。下帯を解いたアシタカは、その身を静かに沈める。
柔らかくなった狭い肉の壁を、その槍が少しづつ切り開いていく。
カヤが小さく悲鳴を上げたが、その声はすでに色を含んでいた。
カヤの内部は微細な襞がその壁を形作り、アシタカが経験した事のない痛いほどの狭さで締め付ける。
肉茎がほんの少し長さを残し、コリッとした再奥まで突き当たった。
奥に粒だったざらつきがあるのも、初めての感触だ。
ゆっくりゆっくり押し入り、またゆっくり入り口近くまで槍を戻す。
少し経って、また奥へとゆっくり進む。固い肉の凶器が、初花の奥の奥まで道を開いていく。
カヤの蜜が初めてとは思えないほど滴り、その菊門まで伝って流れ落ちる。
その肉壁が、やわやわとアシタカの槍を締め付け、信じられない事に蠢動を始めた。
今まで経験した女達とは、全く比べ物にならない。
アシタカの乗初めがカヤであったなら、もうすでに気を遣っていたであろう。
しかし、アシタカもこの一ヶ月を無為に過ごしていた訳ではなかった。
10回ほどゆっくり往復して、アシタカはようやくその身を離した。初花の儀が終わりに近付く。
「カヤや。初花が散ったその徴は不老長寿の妙薬。その証を、長老達全員に分け与えねばなりません」
ヒイ様が後ろから身体を差し入れ、その手で動かぬ様大きく足を広げる。カヤがヒュッと息を飲んだ。
最長老のジイジ様から、僅かに血の滴る蜜を舐める。
その順番は決まっており、中には秘裂の奥や菊門を嬲る様に舌を差し込む者もいた。
全員からわずかづつ刺激を受け、その度にカヤが甘い声を上げ仰け反る。
全ての長老が舐め終わった頃には、そのゆるやかな刺激にカヤもぐったりしていた。
本来であれば、摘み手の役目はここで終わる。後は婿となる者が取って代わり、花の奥に気を遣るのだ。
しかしまだ正式ではないが、カヤの婿はアシタカになる。
「さ、アシタカヒコや。カヤの奥に思う様、気を遣るがよい」
ヒイ様がアシタカに微笑んだ。
その肉体は未成熟にもかかわらず非常に魅力的であったが、アシタカにとっては実の妹を手込めにしている様な背徳感が未だ拭えない。
カヤに対して勃ち上がった事すら、己がいかに獣じみているかを強く自覚させられた。
この娘に気を遣る事で、自分が人を離れ、もののけになる気すらする。
それは未知なる領域への原始的な畏れだった。
(人もまた獣なのか…)アシタカは心の中で呟いた。
エミシの村にそれから二度目の春が訪れた。
大きな山毛欅の木陰で、睦み合っている影がある。
良く見れば、それはアシタカとカヤであった。カヤがアシタカの肉茎を口に頬張り懸命に煽っている。
「カヤ、止めなさい。そなたはこれから薬草を摘みに行くのだろう?」
「はい…。ですが兄様、カヤはもう夜まで我慢なりません。後生です。少しだけ、お情けを下さい」
潤んだ瞳で荒い吐息を吐きながら、カヤが熱心にねだる。
アシタカは心の中でため息を付き、カヤの身体を立たせた。
「では、この樹に手を付き尻を掲げよ」
その言葉に、カヤが嬉しそうに下履きをおろし、期待に満ちて樹に手を付いた。
アシタカが指を差し込むと、そこはすでにしどどに蜜で溢れている。
「ああっ!あ、あ!嬉しい…んあぁ!…」
カヤは自ら腰を振り、差し込まれた指からも大きな悦楽を得ようと貪欲に誘い求める。
アシタカはカヤを見下ろし、その陰穴に楔を打ち込んだ。
カヤの肉壁が待ちかねた様に戦慄き、すぐさまアシタカの肉茎を奥まで取り込もうと蠢く。
その妖しい蠢きは、普通の男であれば、挿れてすぐさま噴き上げてしまうだろう。
カヤはヒイ様の跡目を継ぐ。
一週間前に長老達から味を見られ、昨夜評決が下された。
アシタカによって前も後ろも慣らされたその身体は、長老達全員からの責め苦を易々と受け入れる。
それどころか、白濁に全身塗れながらも法悦の表情を浮かべ、さらに貪欲に皆を誘った。
並の男がその肉体を知れば、あっけなく魅力に捕らえられ取り込まれてしまう事だろう。
ヒイ様を超える蟲惑の肉を持つ、稀代の淫巫女の誕生であった。
初花の儀の時、アシタカはカヤを責め立てても中々気を遣らなかった。
むしろ初花であるはずのカヤの方が何度も絶頂に追いやられ、最後は気を失ったその奥にようやくアシタカが白濁を注ぎ入れた。
『カヤはあまり良くないのではないか』その様を見た長老達から疑念の声があがった。
ヒイ様がその場を取りなし、アシタカに二年の間カヤのみを抱く様にさせた。
「カヤはまだ血の道が通っておらぬゆえ、好きなだけ火処に気を吐き出すがよい」と。
さらに血の道が通ってからは菊穴のほぐし方も教え、カヤがどちらでも気を遣れる様にすべしとアシタカに命ずる。
徐々に劇的な変化が訪れた。
最近では、アシタカがなるべく交わりを避けようとしても、自ら毎夜身体を開いてその槍をねだる。
ヒイ様から一月に一度性技の薫陶を受け、いつしかアシタカ自身もその肉体に取り込まれていた。
カヤは陽の明るい内は、誰が見てもあどけない少女にしか見えない。
しかし夜は、誰よりも淫らに舞い踊る肉の踊り子であった。
だが慈しみたい守りたいとは思っても、心からアシタカが望んでいる関係ではない。
むしろ体の奥に風穴が開いた様な、どこか空しい心持ちがいつもどこかにあった。
しかし義兄としていつまでもカヤを守りたい心に変わりは無い。それは嘘偽りのないアシタカの想いである。
ーーーせめてカヤが幸せになるよう努めよう。
この娘と共に生き、いつかはこの土に還る。それで良いではないか。
カヤが早めに絶頂を迎える様に、アシタカは陰核を弄りながら激しく突き上げた。
いつもであれば、日中カヤがねだる事は全くと言って良いほどない。
だが一週間前の儀での長老達からの輪姦が、カヤの快楽に対する箍を外している。
「んあぁぁっ!もう、もうっ!あ、あ、はぁぁぁん!」
カヤの絶頂による壮絶な締め付けと蠢きに、アシタカは歯を食いしばって必死に耐えた。
今から気を遣っていたら、これから仕事が勤まらぬ。
「大丈夫か?」
「は…はい…。兄様は、満足なさらなかったのですか?」
息も絶え絶えに樹の根元に崩れながら、カヤが心配そうに尋ねた。
「私は良い。今宵ゆっくり可愛がらせておくれ。さ、他の者が待っている。早く支度を」
「ごめんなさい、私が我が儘を言ったばかりに…」
カヤが慌てて身だしなみを調え、アシタカに淡く唇を落した。アシタカも下履きを直す。
「兄様…行ってまいります」
「気を付けるのだよ」
アシタカの言葉に、山笠に手を当て振り返ったカヤが嬉しそうに笑った。
ーーーその一刻後に起こる惨事の予兆に、幸せに満ちた娘は気付かないでしまった。
「兄様」
息せき切ってカヤが闇の中から現れた。アシタカが目を見張る。
その震える手に、黒曜石の小刀がきらめいた。
玉の小刀。婚儀の際乙女から渡される、変わらぬ想いの証である。
アシタカの住う地方で、黒曜石は採掘されない。
その石はもっと遥か北の果てから、この地方にもたらされる宝であった。
その価値は、今の翡翠や金にも劣らない。
カヤの万感の想いが込められているその小刀を、アシタカはそっと受け取った。
朝には土塊になるまで添い遂げようと想い合った二人が、夜には二度と逢えぬ今生の別れを告げる。
この村を出た者は、二度とこの村に帰れぬ。
それはヤマトに寝返った元村民の間者から、何度か村が壊滅の憂き目に遭った経験がもたらす、ここの不文律の掟であった。
もしも万が一この村に帰って来ても…やはりその者は日の目を拝めない。
カヤの瞳は受け取った小刀と同じ様に、黒く光って濡れていた。
しかしアシタカの胸の内は複雑だった。
カヤの告げた『お仕置き』とは、一週間から一ヶ月の間、長老達から好きに嬲られる事を意味する。
どうしても最後に自分に逢いたかったのだろうが、その代償はあまりにも大きい。
しかし、放たれた矢は元には戻らず、覆れた水は盆に返らない。
もう二度と逢えない義妹でもある婚約者に、今ここで自分の心を残して何になろう。
アシタカは後ろ髪を引かれる思いを断ち切り、ヤックルに飛び乗った。
(つづく)