事件後、サンとの約束どおり、アシタカはサンの許にたびたび通うようになった。  
とはいえ、とりとめのない話をしたり、タタラ場からの森の伐採案を相談したり、  
あくまでその付き合いは話し相手で、戦友で、仕事仲間のようなものに留まっていた。  
この夜、それまで他愛のない話をしていたサンが、突然真顔になった。  
「アシタカ」  
「ん?」  
「初めて会ったときのこと、覚えているか」  
もちろん覚えている。岩の隙間から見えた、対岸に現れた巨大な山犬、彼らと親しげに  
接する人間の娘。そして、その口元に付いた血。強い眼差し。全てが目に焼きついている。  
「私は、お前を殺すと思っていた」少しおかしそうに、サンはつぶやいた。  
「それが、こんな風に親しくなるとはな」  
“親しい”という言葉がおかしくて、アシタカは小さく笑った。  
「なぜ笑う?」サンが不機嫌そうに眉をしかめた。その頬に、臙脂の刺青が際立っている。  
決して落ちない、半人半妖の烙印。  
獣たちの仲で育ち、兄弟犬と変わらぬ愛情で育てられても、母モロはそれでも、  
はっきりとサンを差別した。山犬になり切る幼い少女に人語を教え、道具を作ることを  
教えた。語彙は少ないながらも人語を解し、身の回りのものを自分で作る器用さを身に  
付けはしたものの、心とは裏腹に、成長と共にしだいに“人間の女”になっていく自分が  
嫌でたまらなかったのだろう。  
 
「醜く汚らわしい人間ども」と、モロは言う。母を愛するがゆえ、それならば自分は醜い  
のだと思い込み、思い込むほどに山犬への模倣を強めた。毛皮を背負い、牙を首に巻き、  
人間への憎悪を掻き立たせ、母に認められるために死をもいとわず闘う姿は高潔で、  
孤独だ。森の犠牲になって死ねば、自分を疎む獣たちもようやく、あの娘は仲間だったと  
認知してくれるだろうと信じた。その姿は捨て身で、痛々しかった。  
だから、アシタカは言った。「生きろ」と。こんなにも若く、悲しく命を散らして  
しまっては、あまりにも惜しい。  
「きれいだよ」  
アシタカは傍らに腰を下ろす、その身体を抱き寄せた。引き締まっているものの華奢な  
体が、腕の中で驚いたように息づいている。  
その身体の輪郭を間近に感じ、熱い衝動に襲われる。思わずその手を腰まで下ろし、  
もう片方の手で胸をまさぐりそうになる。が、それを抑えて背に回した。  
図らずも、息が荒くなる。それを整えようと目を閉じたアシタカは、耳元にサンの温かい  
気配を感じた。サンはかすれるような穏やかな声でささやいた。  
「…いいよ」  
 
 驚いて、思わず後ろに身を引く。しかし、その声に迷いはなく、全て分かっているような  
覚悟さえ感じさせた。サンは本気のようだった。目を伏せ、頭帯を外し、耳飾りを外し、  
ゆっくりと衣服に手をかける。しばらくその様子を見つめていたが、思い起こしてその  
手を上から握り、アシタカが代わって服に手をかけても、サンはそれを止めなかった。  
彼女も、アシタカの身を覆うものを、一枚ずつ解いていく。  
サンの肌が、二つの乳房があらわになった。月に照らされ、柔らかい陰影を描いて、  
その身体の輪郭をなぞっている。最後に黒曜石の首飾りに手をかけた時、サンは静かに  
その手を握り、首飾りを外そうとするのを制止した。  
裸のままサンを抱きしめ、ゆっくりその上に覆い被さる。  
その美しい、赤らんだ顔を見つめて微笑む。すぐ下に、女のぬくもりと匂いを感じる。  
柔らかい乳房が、アシタカの胸に押しつぶされていた。その下で、心臓が鼓動している。  
鎖骨に口付け、その輪郭を下へなぞる。肩、腕、乳房、ここに力を込める。白い肌に  
うっすら血管が透けている乳房は柔らかく温かく、呼吸するたびに膨らんで指に吸い付く。  
さらに腹、腰と降りて、引き締まった尻を指のはらで揉む。そして腿に触れると、  
サンの紅潮した身体がびくっと反応した。熱い血液が、女の中を流れている。  
この身体の中で、女の機能が静かに、しかし思った以上にしたたかに、確実に働いて  
いる。切れ長の、意志の強い目を伏せ、火照った身体をしなやかに動かすサンは、山犬と  
いうよりむしろ猫のようだ。アシタカは筋肉質な内股にそっと手を入れ、ゆっくり押し広げた。  
 
 思ったよりも薄い茂みから伝い、腿と腿の間に、ゆっくり指を入れてみる。  
温かく柔らかく、湿った襞が何枚ものぞいている。指を動かし、襞をまさぐっていると、  
 小さな突起が指に当たった。途端にサンは切なげに呼吸を荒げ、顔をゆがめる。  
指でこする度にサンは小さく声を上げ、アシタカもその呼吸に波長を合わせる。  
突起から下に指を這わせると、さっきはただ少し湿っていた場所が、すでにぬるぬると  
滑るほど濡れていた。中指をそこに当ててみる。熱く、弾力のある筒のような穴に、指は  
わずかな抵抗と共に吸い込まれていく。その圧迫のある、窮屈な感覚は、アシタカの頭を  
燃え滾るような熱さで刺激する。アシタカは濡れた指を引き抜き、腕をサンの両脇につい  
て、きつく抱きしめた。  
 
 見つめ合っている。頬が赤く染まっていくのがわかる。私の顔のすぐ前に、アシタカの  
顔がある。鼻がこすれそうなほど近くに、彼がいる。同じ鼓動を刻み、生身の肌と肌を重ねている。  
彼の重い体が、私の体を求めている。  
 アシタカの「美しい」という言葉。母の口からこの言葉を聞きたかった。しかし、私に  
向けて発せられることは決してないだろうと思っていた。だから私は、喜ぶより先に困惑  
した。この人間は何を考えているのだろう。何かの罠に違いない。そして私は、その命運  
をシシ神に託した。  
 今なら、その判断は正しかったと確信できる。母はとうとうその言葉を言わぬまま死ん  
だが、今、アシタカの瞳は本気だ。だから私も心から、その言葉を受け入れられる。  
アシタカを受け入れる場所はすでに鼓動に合わせて反応し、濡れているのを感じる。  
「いいのか」荒い呼吸の中から、アシタカのささやく声が聞こえた。  
 私はうなずき、彼の背に腕を回し、広げられた膝を立てて彼の腰をはさんだ。乳房の上  
に、早鐘のような彼の鼓動を感じる。たくましい首筋に顔を埋めて、腰に力を込めた。  
 
 ずん、と彼の身体が上の方に動くと同時に、腿の付け根に熱く、硬いものが押し付けら  
れた。それはゆっくりながら、私の身体を押し上げていく。それほど痛みはなかった。  
ただ、自分の身体の形と深さを実感するには充分だった。彼の肉杭は、びくん、びくん  
と脈動しながら私の身体を内側から押し広げる。  
 アシタカの肉杭が私の身体に収まっていくのを想像すると、急に、今彼と繋がっている  
のだという実感が沸き、私の呼吸も荒くなる。次いで一瞬、きつく捻じ込まれるような  
感覚の後に、肉杭はするっと奥まで入ってきた。  
「入った」アシタカが、くぐもった声でささやいた。  
「…うん」私も、口の中でつぶやく。  
 奥まで到達してしばしの後、彼は腰をゆっくりと前後に動かし始めた。アシタカの  
身体の一部が、私の身体の中を往復する。熱い肉杭が、身体の内側からぐいぐい押し付け、  
舐めるようにこする。そのたびに、彼の腰や肩に力が入る。私も、背に回した両腕に力を  
入れ、しっかり彼につかまって目を閉じる。私の腰も、彼の腰の動きに合わせて  
絶え間なくしなる。はあはあと荒い呼吸が耳のすぐ傍で響く。  
 もう、どちらの呼吸かわからない。私たちは二人で一頭の生き物だった。  
アシタカは私という獲物を食らう虎だ。虎は獲物に覆い被さり、首筋に噛み付いて離さな  
い。私も負けじと雌虎となり、雄の首筋に噛み付き、背に爪を立てる。  
 次第に、腰の動きが激しくなる。肉と肉がこすれる音が大きくなる。その刻動に合わせ、  
じんじんと下腹が熱くなり、熱い液がつうと筒を伝って彼の肉杭を滑らせる。肉がこすれ  
る音に、ぬめるような音が加わる。ぐん、ぐん、と、硬いものが私の内臓を押し上げる。  
液はさらにとめどなく流れ、二人の腿までも濡らした。  
 
 人間の男に抱かれている。自分にこんな機会が訪れようとは、思いもしなかった。一生  
を森で過ごし、山犬としても人間としても当たり前のことを経験せずに死ぬのだと、決め  
てかかっていた。アシタカに出会い、全てが現実味を帯びてきた。彼となら、共に生きて  
ゆけるかも知れない。母さんはどう思うだろうか。獣たちを裏切り、人間を愛する私を  
許してくれるだろうか・・・。次第に朦朧とする頭で、そんなことを考えた。  
 気がつくと、私もアシタカもかなり大きな声を上げていた。上げずにはいられない、  
押し上げられる度に、どうしても声が漏れてしまう。耳許で、サン、とつぶやかれる度に、  
心臓を鷲掴みにされたような切なさに襲われる。私の背は反り、脚は持ち上がって、  
懸命に上下運動を繰り返す彼の腰を締め付けた。  
 アシタカが、苦しそうにうめき始めた。腰の動きがさらに大きく、激しくなる。  
いきり立った肉杭が、私の中で大きく跳ねた。びくびく、と痙攣するように脈動し、  
その先端が身体の奥を突く。  
 次の瞬間、アシタカは弾けるような声を上げ、私の身体の中には、熱い粘液がどくどく  
注ぎ込まれた。彼はなおも小刻みに腰を振り、粘液を最後まで絞るように出し続ける。  
やがて全て私の中に注ぎ込まれ、彼はぐったりと手足を投げ出し、私の上で力が抜け切っ  
たように脱力した。  
 
 聞こえてくるのは、彼と私の荒い呼吸だけだ。二人とも、汗でぐっしょりになっていた。  
月が急に明るく感じられる。その青い光が、柔らかく二人を照らし、影をつくる。私の中  
の肉杭も、徐々に硬さを失っていった。しばらくしてアシタカは私の脇に両腕をつき、  
慎重に杭を抜いた。ごろりと大の字に横になった彼の二の腕に、私は自分の頭を乗せた。  
 暖かい快感に満ちていた。身体の向きを変えると、さっき彼から出た粘液が身体の奥で  
とろりと動く。もう彼と私は離れているのに、不思議な余韻がいつまでも下半身に残って  
いる。じん、じん、と、鼓動に合わせて余韻が響く。私と彼が、身体を結んだ証。それを  
失いたくないばかりに、私は彼の胸に腕を回す。すぐに彼の腕も伸びてきて、私の肩を  
すっぽり包む。アシタカは、私の頭をくしゃくしゃ撫でて、微笑む。  
 私も微笑んで、余韻をかみしめながらしっかり彼の胸に抱きつく。  
ほどなく、アシタカは寝息を立て始めた。  
 
しかし、アシタカは知らない。私達は、実はすでに関係を結んでいるのだ――  
 
 アシタカの看病中、次第に氷解していく彼への不信感と共に、彼の体力も戻り始めていた。  
その朝、私は毎日するように、排泄させるために彼の下半身を覆うものを解いた。  
 そこで私の動きは止まった。  
脚の間から突する泌尿器としか思っていなかったものが、弱弱しく横たわる彼とは  
対照的に、たくましく屹立して はじけるように飛び出したのだ。赤くふくらみ、太い血管  
があちこちに浮き出ている。  
 思い返してみると、あれは自然に起こることで、つまり回復の兆候だったのだろう。  
しかし、その時の私が何を思ったかはわからない。わからないが、そのとき私は、反り  
返ったそれを、咄嗟に手で包んだ。感じたことのない強い衝動が湧き起こり、じわりと  
下腹が熱くなった。それは硬く熱く、私の手の中で脈動していた。目を閉じて反応しない  
アシタカを見おろし、それを握ったまま、辺りを見回す。  
 誰もいない。私と、この男だけだ。胸が、苦しくなるほど激しく鼓動していた。息を  
殺し、口を、手で包んだものに近づけ、舐めてみる。寝言のように、アシタカは低く  
うめいた。舌をつけたまま、恐る恐るそれに唇をつけ、先端を口に含んだ。熱く、弾力が  
あり、生き物のようだった。アシタカはわずかに腰を動かし、苦しそうに顔を歪める。  
口の中で鼓動する彼の体の一部を感じ、私の心臓は早鐘のように打っていた。  
 気がつくと、脚の付け根から大腿にかけて、滑液で濡れていた。じんじんと、下身が  
主張していた。それに抗う術を、私は知らなかった。  
 
 衣服をめくり、仰向けに横たわる彼の上にまたがる。すぐ前に、屹立したものがある。  
ゆっくりと腰を上げ、彼のわき腹に手をついて身体を支える。もう一度周りを見回し、  
恐る恐る脚を広げ、硬い先端が脚の付け根に当たるのを確認し、腰をゆっくり沈める。  
 ぐん、という重い感覚に、滑液で濡れたひだが、痙攣を起こしたようにしびれる。  
再度周りを見て、誰もいないのを確認する。  
 慎重に、まっすぐ腰を落とす。鈍い痛みと共に、硬いものが身体を割って入ってくる。  
感じたことのない痛みに、 少したじろぐ。しかし、本能の声は私を解放しない。  
ただそれに従うように、私はさらに、腰を深く落とす。  
 体の奥で、何か弾けるような感覚と共に、硬い肉棒は深々と付け根まで入った。  
結合した部分から血液が流れ出た。奥までとどいた、という感覚は、痛みに取って代わっ  
て私を刺激する。  
腰を上下に動かしてみる。肉が摩擦している。何も知らない人間の男と、身体を繋げて  
いる。 ぎこちなく腰を動かすうち、なんとなく、どう動かしたら痛みが軽くなるか  
分かってきた。私の中の物は、ただ周りの肉の筒にこすられ、しごかれて脈動を続けてい  
た。さっきよりも、硬さが増したように感じる。 私はうめくアシタカを見降ろし、  
火照った顔を上に向けて、はあはあと荒く息をしながら腰を振る。  
 次第に熱くなる体にぴりっと張り詰めるような感覚を覚え、乳房に指を這わせると、  
その先端が硬くなり、衣服の上からでもはっきり形がわかった。指で乳房の先端をこする  
と、下腹とつながっているかのようにじんじんと快感が広がった。顔が熱くなる。体と体  
がぶつかり合い、ぱん、ぱんと、肉体同士がぶつかる音が聞こえ、それが私を刺激する。  
 心臓の刻動が全身を駆け巡って、下身の奥までも同じ刻動で痙攣し、滑液を出す。  
それは結合部の外にまで流れて、私の脚の付け根や彼の腹を濡らしていた。  
 
 治まってきた痛みは快感となり、それを欲して腰の振りを激しくする。 外に聞こえない  
よう押し殺した声が、突き上げられるたびに喉から漏れる。アシタカの腿は濡れ、  
ぱん、ぱん、という音にぬちゅ、ぬちゅ、という液体のこすれる音が加わった。  
 中で跳ね、内臓を突く肉杭を感じ、高まる興奮と共に思わず大きな声を上げた瞬間、  
アシタカの顔が苦しげに歪んだ。一瞬、肉柱が緊張し、熱い粘液が勢いよく私の中に  
なだれこんでくる。私の下腹もそれを受け入れ、軽く痙攣を起こす。  
 私はアシタカにまたがったまま、しばし粘液が筒を伝うのをを感じた。しばらくして、  
肩で呼吸しながら、私はゆっくり腰を持ち上げた。ぬちゅっという、生々しい音と共に  
それは私の体から外れ、私は脱力してアシタカの隣に横たわった。  
 手をのばし、今まで男と繋がっていた場所を探る。熱いひだはぬるぬるに濡れていて、  
その間にはさらにべたべたしたものが付着している。指でこすって顔の傍に持って来る。  
白っぽい、どろりとした粘液が、指に付着している。鼻に近づけて、彼の匂いを感じる。  
 ふととなりのアシタカに目を移すと、ぐったりとした様子で眠っているようだった。  
股間に目を移すと、それはほぼ元の大きさに戻り、脚の間に納まっていた。  
私はそれについた滑液をふき取ると、褌で元のように包んだ。  
 
「ごめん」  
口の中でつぶやき、毛皮と仮面を背負って日が昇った外へ出たあともしばらく、  
じん、じんと、眠っていた機能が目を覚ました余韻は消えなかった。  
 その夜、偶然かこのせいか、アシタカは意識を取り戻し、母と私のことで言い合った  
ようだった。そして戻ってきたアシタカは、私に言った。  
「ありがとう、サンとシシ神さまのお陰だ」  
どきっとして、思わず顔をうずめて目を閉じた。ばれているのだろうか、いや、そんな  
はずはない。内心どきどきして寝た振りをする私の上に、アシタカの毛皮がかぶせられた。  
彼はどこまでも優しい。  
 そんな優しい男を、私は騙しているのだろうか。  
言えるはずがない、この先一生、誰にも。  
これは、口が裂けても告白できない私の秘密だ。  
 朝、アシタカは私より早く起きていて、「処女を失った」私を気遣った。  
「体、大丈夫?」  
私は微笑み、答える。「うん、大丈夫」  
アシタカも微笑み、また私を抱き寄せて額に口付けをした。       おわり  
 
 

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