洞口はこのところ成績が振るわず、解散後珍しく酒をあおっていた  
帰りの新幹線に乗ろうと駅に向かう途中、  
人気のない場所で二人組の酔っぱらいに絡まれ、  
成績不振の苛立ちから、つい相手にしてしまった  
 
暴力沙汰になるとまずいと悟ったがもう遅かった  
威勢良く啖呵をきったものの手が出せず防戦一方  
いくら鍛えているとはいえ先ほどまで飲んでいたし、二人組にはかなわず二、三発喰らったところで女性の声がして二人組は去っていった  
 
いつもならこんな不毛な事になる前にあしらって帰る筈だった  
背もたれ足を投げ出したまま、うなだれていると  
「競艇の方ですよね?」  
先ほどの女性だろうか、声のする方に目をやると、長い栗毛色の女性が心配そうにこちらを見ている  
「洞口…さん?」  
アルコールと痛みで朦朧としていたが名前を呼ばれ、その人が誰なのかハッキリわかった  
最近会ったことも(ありさと三人で)彼女から電話がかかってきたこともあった  
 
「生方さん…ありがとうございます  
恥ずかしいところを見せてしまいまして」  
少しバツの悪そうに立ち上がり汚れをはたく  
「競艇のスーツを着た人が見えたんで」  
そう言って澄は洞口の袖についたゴミをとると、袖の大きな綻びが目に付いて彼に教えた  
「まいったな…」洞口は上着を脱ぎ、半分あきらめていると  
「あの…よかったら直しましょうか?それに怪我もしているようですし」  
 
さっきの騒動で新幹線も逃したので澄の申し出をありがたく受けることにした  
「すみませんお言葉に甘えさせてもらいます  
しかし、生方さんこそどうしたんですか?こんなところに」  
彼女がこんな時間になぜ歩いているのか気になった  
「仕事の帰りだったんです  
今日はちょっと遅くなってしまって  
今、外に出て働いているんですよ」  
前にファミレスで三人で会った時聞いたのは、実家を手伝っているという話だったが  
今は、一人暮らしで外働きをしているようだ  
あれこれ聞くのも失礼だからその話は切り上げた  
 
家がこの近くともあり、ぽつりぽつりと会話しながら歩いていった  
澄の住んでいるアパートはまあまあの年式と、都内にしては安い家賃で、実家の小料理屋に来るお得意さまの伝で借りたとの事  
洞口は一人暮らしの女性の家に上がるというのはあまりない事だったが、  
正直言えば彼女のことを知りたいという気持ちが大きかった  
 
 
「どうぞあがってください」  
澄は鍵を開けると、洞口を招いた  
中は1Rで広くはない物がきちんと整理されていて、生活感が漂っている  
「お邪魔します」  
洞口が靴を揃えて上がると、澄は傷口を処置をし  
お茶を沸かしている間にスーツの袖を縫う  
その間なんとなくまわりを見ると競艇雑誌が置かれていた  
中には自分が表紙の号もあり、なんとなく嬉しかった  
 
澄は手慣れているのだろうか、手早く縫いつけた  
「縫い物とか普段するんですか?」  
縫製の出来に洞口が感心しながら聞くと、  
「母親が働いているから、ある程度のことは自分でやらないとダメだったんです」  
母親の話をしながら少し元気がない  
 
「元気がないようですが大丈夫です?」  
その理由は何となく予想ができてしまった  
自分も少し関わったし、澄から電話をよこした時点でどんな状況かわかってしまったからだ  
だが、二人きりでいるのに、このまま話が途切れて黙るよりはいいと思って洞口は訪ねた  
「私が、暫く物事に手がつかなくて、手伝いとはいえしっかり仕事しないから  
お母さんにどんな事があっても世の中、皆ちゃんと働いているんだから一度外に出て勉強してこいって言われて」  
話せば、楽になるだろうと洞口は黙って聞いていた  
「外で働きだしてから仕事している時はいいんですけど一人でいると…」  
澄は話すだけ話して少し気が収まったのか  
「あ、ごめんなさい!こんな話してしまって」  
席を立ち、既に煮えたったやかんを止めると、急須を手に戻ってきた  
話の後、無理に笑顔を作る彼女にいたたまれなくなった洞口は口を開いた  
 
「波多野の…事ですか?」  
澄は驚いて熱いお湯の入った急須を取り落としてしまい、指にかかってしまう  
洞口から言われた事で、押さえていた物が急に溢れだしてしまい  
堰を切ったようにその場でポロポロと涙をこぼす  
「変な事を聞いてしまってすみません生方さん  
手を冷やしましょう」  
洞口はあわてて彼女の火傷した手を掴み水道で手を冷やした  
彼女の白く細い指を冷えるまで握りしめていた  
泣きながらぽつりぽつりと話し出す  
「もう、憲ちゃんには…待つだけの私なんか必要ないみたい」  
その言葉で洞口の押さえていた気持ちが一気に吹き出した  
冷えた手を手繰り澄を抱きよせ、細い肩を抱きしめる  
「こんな時にいうのは卑怯かもしれないけど、僕は君の事が好きだ  
前に僕のレースを見たと言ってくれた時からずっと」  
顔をあげる澄を洞口はじっと見つめた  
「君にずっと見ていてほしいんだ」  
洞口は泣きながら頷く澄に深い口づけをした  
 
澄の薄紅色した柔らかい唇の感触が心地よい  
洞口の舌が澄の舌に触れ、澄は怖ず怖ずとそれに答えると彼の舌が絡まる  
「ぅんっ」  
澄から艶めかしい声があがると、洞口は高ぶり熱くなる  
ドサッと澄をすぐ後ろにあったベッドに押し倒す  
澄の長い髪がベッドに広がり不安げな眼差しを投げかけている  
「優しくしますから」  
洞口はベッドに座り優しく彼女の髪を撫で、口づけた  
耳に舌を這わすとぴくりと反応する  
耳から細い首筋、鎖骨までじっくりとキスを降らせ、胸元のボタンを一つ一つはずすと、眩しいほどの白い肌が露わになり、急くようにプチンとブラを外す  
綺麗な形の胸、触れると程良い弾力と、柔らかさに息を飲む  
突起に触れると、恥じらうように身じろぐ彼女  
彼女の何もかもがたまらなく愛おしい  
吸うように転がすように突起を刺激すると、色を帯びた吐息がもれた  
洞口の手がスカートにかかり、下ろすとしなやかに伸びた脚が目に飛び込む  
その吸い付くような手触りを楽しみ、下着の上から脚の中心に触れるとほんのり湿っていた  
洞口は自分の着衣を脱ぎ捨て、澄の下着を取り去り膝を割り込むと指を差し入れた  
「痛っ」  
痛みに眉根をひそめる澄  
 
「洞口さん…私初めてなんです」  
真っ赤になりながらも消え入りそうな声で澄は言う  
洞口は表情には出さなかったけど内心驚いていた  
彼女は本栖時代から波多野と一緒だったはずなのに、何も無かったなんて  
大事にしていたならなんで…と思う反面、自分がこんなに可愛らしい女性の初めての相手になるという事は素直に嬉しかった答えるように洞口は優しくキスをすると、ゆっくりと中の指を動かした  
徐々にほぐしていくとクチュリと水音がしてきた  
「っは…ぁ」  
澄の方も感じているのかだんだんと息が荒くなっていく  
指をニ本に増やしに動きを徐々に大きくする  
合間に少し上にある小さな突起に触れると  
「ぁあっ」  
強い刺激に澄は身悶える洞口は脚の間に顔を埋めて突起を吸いながら舌で擦るようにしつつ、中の指も動きを増した  
「ぃや… ぁあん…」  
声を殺していた澄だったが沸き上がる快楽に声が出てしまう  
澄は中の指をしめつけ、びくんびくんと背筋が跳ね達してしまった  
洞口は彼女が収まるまで、頭を撫でる  
落ち着いたのか、洞口を見つめる澄  
 
「痛いと思うけど…」  
洞口の言葉に静かに頷く澄  
大きくなった洞口自身をゆっくり挿入すると、痛みで顔をしかめるが、徐々に奥まで進んでいく  
結合部からは少し血が出ている  
ゆっくり腰を動かしていくと、だんだんと滑りが増していく  
最初は痛みをこらえていた澄も突きあがる快感に縋るように洞口に抱きつく  
「あ…んっ洞口さ…んああぁっ」  
彼女の限界が見え、ペースをあげ襲いくる射精感に彼女の中から引き抜きお腹の上に放った  
 
洞口は放出物を拭うと優しく澄にキスをした  
 
「あ、新幹線の時間が!」  
澄は慌てて時計を確認するがもう最終の新幹線も行ってしまった  
でも洞口にはどうでも良かった  
「朝まで君とこうしていたい」  
穏やかな笑みを浮かべながら洞口はいった  
 
 
終わり  
 

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