『もんきい・たあん』  
 
ここは九州・唐津競艇場。  
1日のレースが終わった祭のあとの寂しさの中、たたずむ人影は一組の男と女……。  
 
びゅううううううううううん  
ああ……秋風が身にしみる。  
 
「負けてしまった……。すべてを賭けたSG予選で、私、負けてしまった」  
「気を落とすなよ、青島。勝敗は時の運って言うじゃないか」  
 
女は、ここ唐津競艇場を地元とする若手女性競艇選手・青島優子。  
そして男は、やはり新進気鋭の競艇選手・波多野憲二。  
二人は、本栖研修所の同期生。固い友情で結ばれた82期の仲間同士。  
実はこの日、SG予選の第××レースに出場した青島優子は、  
いいところなく着外に敗れていた。  
いつもの、強気で元気な女の子はどこへ?  
 
うちひしがれた青島は、  
「波多野君! 女子選手はSGレースでは通用しない! 悲しいけどそれって現実なのよ」  
「ばかっ! 弱気になってどうするんだ」  
 
波多野憲二は思わず青島優子の肩をつかんで、激しく揺さぶった、ガクガクガクガク――。  
「やややや…めめめ…ててて…ははは波多野君」  
 
「本栖研修所での、地獄の特訓の日々を思い出せ!  
 競艇選手養成ギブスをつけての千本ノック! 涙に暮れる日もあったよな?!」  
「ないない」  
思い出話はいい。しかし、青島の揺らいでしまった自信をどうすればいいのか?  
そうだ! 波多野ははたと手を打って、  
「モンキーターンだ! 必勝のコーナリングを完全にマスターすることだ!」  
「でも、一夜漬けの練習でマスターできるわけないわ!」  
「何を弱気な! そうだ! 今から特訓だ!」  
「とっくん?!」  
「この艇に、俺と、君で乗り込むんだ、青島!」  
「でも波多野くん、二人乗りの練習艇ならともかく、普通の艇に二人で乗り込むには、  
  少しきゅうくつすぎるわ!」  
 
「それだよ、青島! そこがこの特訓のポイントなんだ!  
  二人の身体を密着させることによって、俺の身体の動きをじかにおまえに伝えてやろう!」  
「み……みっちゃく?!」  
「ただの方法では特訓にはならん……。そ、そうだ! お互い裸になって艇に乗り込むんだ!」  
「は、裸に?!」  
「そうさ! 君は前に乗れ、俺は後から君をサポートする!  
  そうして、お互いの筋肉の動きを肌で感じ取るんだよ! 青島!  
  モンキーターンをマスターするにはマウス・トゥ・マウス……じゃない、  
  ボディ・ランゲージ……だったかな?  
  とにかく俺達は二人で一人、三位一体というものだ! わ――っはっはっはっ!」  
 
――相変わらず生き方が前向きね、波多野くん。  
でも、何だかただのスケベのような気もするし  
それに波多野君には澄さんがいる、こんなふしだらなことが許されるはずが……って、ダメダメ! 優子! ここで弱気になってどうするの!  
これはもしかして、澄さんを出し抜いて波多野くんゲットするチャンスだわ!  
優子、あなたSGで勝ちたくないの?!(←関係ない)  
 
「やるわ! 私! やるわ!」  
なんかスゴイ、根性モノのノリだわ!  
 
なんだかんだ言ってるうちに、波多野くんもしっかりマッパになってるし、  
おち……股間のモノが必要以上に大きくなってる気がするし、  
とかなんとか言いつつヌギヌギ……。  
 
「どうした、青島! 前を隠すんじゃない!」  
「私は女よ! 波多野くんと一緒にしないでほしいわ! 恥じらいだって……」  
でも何だか波多野君は怒っているし……  
「女を捨てろ! 青島! SG に勝ちたかったんじゃないのか?!」  
SG……SG ……SG ……!  
「はッ! そううだったわ! 私がまちがっていたわ! 波多野くん、私を見て!」  
 
惜しげもなく波多野の眼前にさらされる青島優子の裸体。  
褐色の肌、形のいいバスト、くびれたウェスト、長く伸びた脚!  
 
「セイ!セイ!セイ! そうだ、そのまま乗艇するんだ!」  
剥き出しのヒップが、波多野くんに向いて……  
ああ、なんて無防備なかっこう……。  
「うしろから密着するのね?! 密着するのね?!」  
「のるぞ、青島」  
 
「ひやっ!」  
「どうした、青島?!」  
「か、固いモノが……あたって」  
「きにするな! モーター始動するんだ!」  
ドルルルルルルルル……  
 
むにゅう……。  
「きゃっ!」  
 
「青島、この柔らかいモノは何だ?!」  
「乳よ! 乳よ!」  
「バカ! 青島! いまは女性を捨てるんだ! 男は乳など出なああああい!  
  こうしてやる! もみもみもみもみもみ!」  
「あひゃあッ……! うふッ! あふぅん……!」  
 
「どうした青島! ハンドルから手を放すと落水するぞ」  
「む、胸は感じるのよう……!」  
「そうだ! 感じるんだ! 考えるんじゃない!」  
 
ドドドドドド!  
スロットルを握ったまま、全速でターンマークに突入し、カーブを切るところで、  
ボートの上で腰を浮かせて立あああつ! これがモンキーターンだああああ!  
バシャアアアアア!!  
 
勃ったあ!  
 
「ああンっ……!!」  
艇が大きくアウトに膨らんでいく!  
スピードにのったところで全速で突っ込む!  
「そうだ! 股間を締め付けるようにして、腰をひねりこむように」  
「ああっ……!」  
 
艇は大きな水しぶきをたてて旋回していく。  
それと同時に波多野のおっきいやつが、思わずぬるりんと……  
「入っちゃった! 入っちゃった……!」  
ヌブッ、ズププププ!  
ババババババ!!  
 
「大外から攻めるんだ! 青島!」  
「あっ、やめないで! そこっ!」  
ウオオオオオン!  
「腹(サイド)を水にかけていくんだあ!」  
「お腹が熱いのぉ!」  
「目をあけろ! 第2ターンマークが来るぞ!」  
「いやあ――-―っ!!」  
 
「よし、全速ターンだ! バランスをとるために腰をふるぞおお!」  
「腰を……? あっ、動いちゃダメえ……!!」  
「腰をこう振るんだあああ!」  
ヌプ、ヌプ! ズニュッ、クチュッ!  
「こ、こう?! でも、なんてイヤらしい動き」  
「そうだ! 激しく、ダイナミックに……!」  
 
し、締め付ける……!  
締め付けてくるぞ、青島あ!  
「か、感じてるう! 波多野くんを! スゴイ! スゴイぃ!」  
 
「前を見ろ、青島! 行くぞお! フィニッシュだあああああ!!」  
「イクの?! イクの?!」  
「イケええええええ!!」  
 
本能のおもむくままに、若さみなぎる男と女の青春の情動……  
この、サル並みな! ケダモノのような姿こそ、本当のモンキーターン(先祖がえり)  
 
(おしまい)  
 
 

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