『女子リーグ優勝戦、最終周第二ターンマークを回って三挺身差をつけて  
トップに立っているのは一年半ぶりに福岡に帰ってきた青島優子。  
もう間違えない、待ち望むファンの前で今ゴーーーールイン!青島優勝です!!』  
 
結婚して所属を変わってた自分に1年前と変わらぬ、いやそれ以上の声援を  
送ってくれたスタンドのファンに向け、優子は感謝を込めて手を振って応え、  
(結婚しても登録名を青島優子のまま変えずにいてよかった)と思いながら  
選手控え室へと戻った。  
 
「あーあ、もう青島にはすっかり敵わなくなったわね。新婚パワーで一時の  
ことだと自分に言い聞かせていたけど、もう1年以上もたっているのになぜ  
そんなに強いのよ?」と、声をかけてくるのは優勝戦2着だった萩原真琴。  
「いえ、そんな…。私なんかまだまだです。それに結婚してるといっても  
お互いレースの斡旋があれば開催中は離れて暮らすわけですし。」  
「それって、まだまだ新鮮な生活だから新婚パワーが続くって事?  
もう、それじゃ対抗するために私も独身にピリオドを打たなきゃ…って、  
その前に相手探さなきゃいけないか(笑)。  
で、どうなの。それだけ新鮮な生活ってことは今でも二人一緒の時には彼と  
毎晩Hしてるとか言うの?」  
「そ、毎晩なんてそんなことありません! 私が生理の時だってありますし。」  
「そ・れ・を『毎晩』って言うのよ。…もう、自分で聞いておいてなんだけど  
当てられちゃってたまらないわ。こうなったら罰として、この後おいしい店を  
紹介してもらって飲みながら小一時間じっくり問い詰めさせてもらうわよ!」  
「あの…。せっかくお誘いいただいたのにすみませんけど彼の両親と同居なので、  
遠くのレースが終わったらばなるべく早くに戻らないと…。萩原先輩と飲むのは  
今度地元開催で一緒になった時にしてください。お願いします(ペコリ)。」  
「そうか、青島もたいへんなんだね…。よし、じゃ地元の時にはたっぷりとって  
ことで、約束だよ。じゃ、早く愛しのダーリンのところにお帰りなさいっ!」  
ポン、と笑顔の萩原に背中をたたかれて、優子はほほえみかえして帰途に着いた。  
 
帰宅してレースの報告と家事を終えた優子は、結婚に合わせて改装された夫婦の  
寝室で物思いにふけっていた。  
(確かに、結婚してレースの成績はぐんと上がっているし、彼はとても優しい。  
お姑さんとの間の波風とかもないのだから、はた目には幸福そのものなんだろう  
けど…。私の結婚は本当に成功だったのかしら?)  
そして、優子の思いはいままでに数え切れないほど繰り返してきた「あの日の」  
情景へと立ち戻っていくのだった。  
波多野との結婚を決めていた優子は、その日、空港で憲二と落ち合って一週間ぶりの  
デートを心身ともに楽しんだ後、情事の後のけだるい満足感とほてりを体に残した  
ままで、新居のための改築の間取りの相談のために波多野家に向かった。  
 
波多野の両親は、息子の嫁となる優子に対しても初めて訪ねてきた時とまったく  
変わらない態度で接してくれて、妙な気遣いをしようとなどしないそんな態度が  
優子には好ましかった。  
…興味津々の目で優子を見つめる憲二の姉妹たちの態度も相変わらずだったけど。  
そんな話し合いがちょうど終わろうとしているとき、外出していた末妹のかんなが  
飛び込んできた時に優子の運命が変わった。  
 
「大変大変、今、2丁目のスーパーのそばの交差点で澄ちゃんが交通事故にあって、  
救急車で総合病院に運ばれていったの!!!……あ、優子さん来てたんだ(大汗)」  
いろんな意味で、その場が凍りついた。  
 
その時の優子には永遠にも感じられるほど長い時間に思えたけれど、実際には数秒の  
ことでしかなかったのだろう。するとその場の空気を何とかしようとした憲二の姉が  
「ま、まあ。ほらその、ここのところの澄ちゃんってばい何かつも上の空って感じで  
ボーっとして街を歩いていたから、そ、そんなに不思議なことじゃないわよ。かんな。」  
「お姉ちゃん、それ全然フォローになっていない。っていうか、かえって…」  
と応じるかんなの声を途中でさえぎるようにして憲二が席を立った。  
 
「優子、ごめん。俺、ちょっと病院に行ってくる。」  
皆が反応できずにいるうちに、憲二は風をまいて玄関から出て行った。  
 
「優子さん、すまん。こんな時に憲二が…」いつも物静かな憲二の父が謝ろうとする  
のを優子は微笑んで押しとどめた。  
「いいんです、お父さん。身の回りのに人たちの不幸をほうっておけないような  
憲二さんだからこそ私は好きになったんです。  
むしろ、憲二さんがこの場を何事もなくおさめて話を続けようとなんかしたらば、  
私がはっぱをかけて病院に行かせたかもしれません。」  
「ゆ、優子さん。ありがとうございます…」憲二の母はうっすら涙さえ浮かべて  
感謝の言葉を向けてきた。  
 
(そう、そんな憲二くんを私は大好きだった。でも…)と、さらに回想を続けようと  
してその時、いつのまにか扉を開けて夫婦の寝室に入ってきていた夫が声をかけてきた。  
 
「優子、どうしたんだい?ぼんやりしているけどレースの疲れが出たのかな?」  
「ううん、ちょっと考え事してただけだから大丈夫よ。雄大さん。」  
 
バスローブを羽織った洞口は鏡台の前で寝化粧を整えながら考え事をしていた優子の  
背中から近寄り、そっと肩に手を置き鏡の中の姿を見つめてささやいた。  
「今夜もきれいだね、優子。」  
「ありがとう、雄大さん。」はにかみながらほほえんで答える優子。  
雄大は肩に置いた手を前に回して優子を軽く抱きしめ、ほほにキスをした。  
「アン、まだお化粧終わっていないのに。」  
「きれいだって言っただろ?僕には充分以上に魅力的だよ。」  
雄大はそう言いながら両手を優子のわきの下を通して立ち上がらせ、向き直らせて  
今度は唇に軽くキスをした。  
「もぅ、雄大さんたら…」唇が離れて甘く抗議する優子。しかし、雄大は  
「いいだろ?」とさえぎって優子を抱き上げ、セミダブルの自分のベッドに横たえた。  
 
「ン…」  
今度は本格的なキス。新婚当初から変わらぬ丁寧なキス。  
優子の口の中にもぐりこんだ雄大の舌先は、優子の上あごを何度か軽くなぞったかと  
思うと次には舌を絡める。  
「ム…ン…」  
しばらくその感触を楽しんだ後は優子の舌の裏側の付け根のあたりを刺激してくる。  
雄大のキス自体はずっと同じ手順なのだけれど、洞口家でのこの一年ほどの生活で  
ぐんと豊かになった優子の官能は新婚当初よりはるかに大きな快感を湧き上がらせて、  
女陰の奥が濡れはじめているのがはっきりわかる。  
長いキスで息苦しさが気になってくるタイミングを計ったかのように唇が離れる。  
「ア、ハン」こらえきれずに漏れ出す優子の快感のあえぎ、そして  
「愛してるよ、優子。」いつも変わらぬ雄大の心のこもった愛の言葉だ。  
 
ささやきを合図にしたかのように、雄大の唇は優子の耳から首筋、鎖骨、乳房へと順を  
追って下がっていく。  
「あ、そこ。 いぃ、いぃの。」  
次々と襲ってくる快感の波に、優子の声もだんだんと大きくなってくる。  
唇が動いていく間、雄大の手のひらや両手の指も休んではいない。優子のふとももや  
腰に触れるか触れないかという、若さに似合わないソフトなタッチで責めていくのだ。  
「あぁ、ふん、はぁ。 あぁん。」  
優子が発する声は意味を成さないあえぎが多くなっていく。  
 
そして雄大の唇が乳輪に、指先が秘部に近づいてきたその時に優子が言葉をかけた。。  
「あぁ。ね、ねぇ。雄大さん、お願い。お願い。」  
「なんだい? 優子。」  
しらじらしく答える雄大に、紅潮した顔をさらに赤らめた優子が  
 
「もう、雄大さんのいじわるぅ。い、いつものように私の口を……縛ってください。」  
 
優子の口を縛るために、雄大はバスローブを脱いでからそのベルトを引き抜き、  
その間に優子はベッドサイドテーブルにあるスイッチで寝室の明かりを落とした。  
 
「さあ、王女様の、大きな声をあげる口をふさいであげるよ。」  
雄大はタオル地のベルトを、ベッドサイドに向けて身を起こして背を向けた  
優子の口に二重に巻いて首の後ろで結び、前ボタンの上ふたつを外した  
ネグリジェを頭から引き抜いて優子をスキャンティ1枚の姿にした。  
新婚当時に比べてぐっと女らしい色香を身にまとうようになった後姿を見て、  
雄大は優子を妻にできた幸せをかみしめながら再びその裸身をベッドの上に  
横たえていった。  
(それにしても、はじめて口を縛ってほしいとせがまれた時には驚いたよな。)  
雄大はいつもの手順で愛撫を進めながら、その夜のことを思い出していった…  
 
今日と同じようにキスから愛撫の手順を進めていき、とみに大きくなってきた  
優子のあえぎ声を聞きながら、左手で右の乳房を揉み、唇は左の乳首に近づき、  
右手が秘所を探ろうとしているときだった。  
「ま、待って。雄大さん。…あ、あの。」言いかけて口ごもる優子。  
「どうしたんだい、もしかしてどこか痛くした?」  
「あ、それは大丈夫。大丈夫なんだけど…。あの、変なことを言う女だと軽蔑  
しないでくれる?」  
「軽蔑なんてするわけないじゃないか。むしろ僕は優子のことを尊敬しているよ。」  
「じゃ、言うね。その、ここのところ私ってばしている時に大きな声が出ちゃう  
ことがあるでしょう? …でね、もしも万一にもお義父さまやお義母さまにそんな  
声が聞こえたらば、恥ずかしくてこの家で暮らしていけなくるってとても心配なの。」  
「そんな、一階の父さんや、母さんの部屋に聞こえるほど大きくないから大丈夫だよ。」  
「それは、私があれでも『大きな声を出しちゃいけない』と思って一所懸命に我慢して  
いるからなの。…で、だからね、心配をしないですむように私の…口を…縛って欲しいの」  
 
あまりに意外な妻の願いに雄大は驚き、戸惑った。  
優子を何よりも大切にしている彼にとって、ふだんであればそれは  
たとえ彼女自身の希望であっても聞き入れないものであっただろう。  
しかし、その時の雄大は違っていた。  
 
(来週の斡旋は、優子はこの蒲郡開催の記念レース、そして波多野の  
やつも同じレースに参加するんだ…)  
優子の処女を散らして、結婚の約束までしていた波多野の影が雄大を  
不安にさせ、いつもの彼らしい思いやりを捨てさせた。  
そして、脱いでいたガウンのベルトで初めて優子を縛ったのだ。  
 
驚いたことに、その夜の優子は猿轡の下で激しくうめき、普段と違う  
妻の姿に興奮していつになく激しく突き入れる雄大の下でついには  
顎を上げ身体をのけぞらせ打ち震わせて絶頂を迎えた。  
…それは、雄大が初めて目にした妻のエクスタシーの姿だった。  
 
雄大自身も、初めて経験するエクスタシーの絞めつけの中で果て、しばし  
感激にわれを失っていたが、息苦しそうに見える妻の姿に気づいて猿轡を  
ほどき、「とてもよかったよ、優子」とくちづけてから早くも回復しかけて  
いるペニスを引き抜きコンドームを外して後始末をした。  
再びキスしようとした夫に、優子は「ありがとう、雄大さん。」と言って  
自ら唇をぶつけてくるのだった…。  
 
その夜を境に、高まってきた優子への猿轡は夫婦のセックスに欠かせない  
小道具になった。もっとも、初めての翌日に絶頂に達しなかった妻にあせった  
雄大がそのまた次の晩に勘違いして  
(優子を確実に自分だけのものにしたい…波多野に渡さない!)  
と意気込み、口を縛った後に優子の体まで縛ろうとした時には激しく抵抗され、  
猿轡も外されて  
「私はあなたに勝ちたいと思っているA1レーサーなの!  
 あなたに服従して支配されたくなんかないのっ!!」  
と叱りつけられ、その夜は触れさせてもらえなかったりもしたが。  
 

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