ずっと、ずっと続くと思ってた。  
京にぃが居て、あたしがいて、…そこに好春がいる。柏木ホームという帰るべき場所があって、三人一緒でずっとずっと笑っていられると思ってた。  
───家族として  
 
だけど、あたしは何も知らなかった。  
あまりにも知らなさ過ぎた。  
こんなにも身近にいた人達の事なのに。今まであたしは何を見てきたんだろう?  
 
────ちぃ姉  
────ちぃちゃん  
 
あたしは…………─  
 
 
「…んっ……ゃ、…ぁあ」  
 
ゆらゆらと揺れる、ろうそく火  
暗闇を照らすには頼りないその明かりが二人の影を映し出す。闇夜の中、絡み合う影、水音、声。女はされるがままに、ただ、快感に順応に反応する。  
 
…どうしてこうなってしまったのだろう。  
朦朧とする頭の中でぼんやりと考えた。目の前で今、あたしを抱くのは誰?いつだって後ろをくっついて来た好春?  
 
何にも考えてなさそうで実は誰よりも聡い子で、あまりの鋭さに驚かされる事もある。……ツラい時とか、寂しい時を共有してきたからなのか、好春には何だって話せた。  
 
 
そう、夏の終わりに起こった出来事さえも。  
 
 
一謡とか九艘とか、太刀だとか…もう、正直言うと頭の中がパンクしそうだった。非現実的過ぎる。太刀に選ばれました。ハイそうですか。…なんて済む話じゃない。  
 
自分が一謡という一族らしい事。九艘という一族は敵だという事。だけど、今は休戦していてお互いに協力関係にあるらしい事。  
ほぼ毎日行われる  
戦闘、戦闘、戦闘  
 
何か役に立てればって、それが太刀に選ばれた役目だからって頑張った。頑張ってきた。  
 
そして、少しずつ明かされる真実。………もう、頭の中がパンクしそうだった。自分の事しか考えられなくて……  
 
そう、変化に気付けなかったんだ。  
 
 
それが原因だったのだろうか  
 
 
両手で強く腰を掴まれ、揺さぶられる  
揺れる、揺れる視界  
あまりの快感に腕が何かを掴もうと、縋ろうとし、空を掴む。それに気付いた男は片手を腰から離し、空を漂い落ち着かない手を掴んだ。  
 
まるで「ここにいるよ」というかのように。  
いる。ここにいるよ、ちぃ姉。  
目の前に、あたしの中に。繋がってる今、痛いほどに感じる。  
 
あぁ、駄目だ  
また流されてしまう。まだ考えたい事があるのに、好春…よしはる────っ  
 
 
「…ごめッ…ぁ……ごめん、ね…」  
 
何に対しての謝罪が分からないけど、気が付いたら口に出していた謝罪。その言葉に対し、好春は一瞬目を見開いた。……が、直ぐ元に戻り、行為はラストスパートへと移された。  
 
もう何に考えられない。  
 
 
繋がれた手を握れば、握り返してくれる。求めるように見つめればキスをしてくれる。何度も、何度も角度を変えては求め合う。絡み合う。  
 
零れた滴  
汗が流れる。  
 
離れた口からは銀色糸と、激しさを増した行為故の艶声  
 
「───ん…んッ…ゃあ……あぁぁ」  
 
熱い思い想い  
 
 
「────…好きだよ」  
 
その一言を聞きながら、意識を手放した。  
 
 
罪悪感。彼女を抱けば抱くほど湧き出る感情。  
 
───ならば、あの娘も連れてくるといい。気に入っているのであろう?  
 
幾度そうしたいと思ったか。  
でも、彼女はそれを望まない。望むはず…無いんだ。だから、諦めた。…………けどね、耐えられなかった。ちぃ姉が僕以外を見るのが。自分でもびっくりしちゃった。こんなにも独占欲の強い僕に  
 
常に不安だったんだ  
毎日会いたかった  
危険な目に遭わせたくなかった。  
 
どうか、何も知らないままでいて  
 
だけど───本当の僕に気付いて欲しかった。沸き起こる矛盾。  
僕の、僕だけのちぃ姉…  
 
 
─────  
 
隣に眠る、愛しい人。閉じられた瞼はまだ開きそうに無い。おでこに張り付いた前髪を分け、口付けを落とす。  
 
「ごめん」  
 
行為中に彼女……ちぃ姉が口にした言葉。僕に対して…?謝らないでよどうしていいか分からなくなるじゃん。  
 
「…ごめん、ね」  
 
やめてよ。もう、決めたんだから。  
 
 
雑念を振り払うかのように目を閉じ、…口を開いた。  
 
「何か用?…今僕、機嫌悪いんだ」  
「…お取り込みの中、申し訳ございません……そろそろ宜しいでしょうか?」  
 
あぁ、もうそんな時間か。夢中になり過ぎて時の流れが分からなかった。  
 
「ただ今、伺うと…そう伝えてくれ」  
「はっ!」  
 
 
再び愛しい彼女へと目を向け、  
 
「大好きな…………きら。ごめんね」  
 
今まで一度も口にした事のない下の名。こんな時位、口にしたっていいでしょ?  
 
 
「…ごめん……好きなんだ……どうしようもない位に。だから…ごめん」  
 
伝わらない謝罪  
ただの自己満足でしか無いけどさ、言わせてよ。  
 
「愛してるよ、きら」  
 
 
糸冬。  
 

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