みつめてナイト

彷徨のクレア2 

  稜は荒い息をつきながら歔いているクレアの頭をやさしく撫でてから、彼女の躰を抱きかかえる  
ようにして一回転して組み敷くと、敏感になっている赫い宝玉が稜の下腹によってひしゃげさせて  
彼女のなだらかな女性の美ともいうべき肢体が快美のブリッジを描くのだった。  
「り、稜っ、あっ、ああっ、おおっ、奥にまで来てるううッ!」  
 稜に返された時、クレアの脚はその体勢のままに、その鹿のようにしなやかな美脚をくの字に  
曲げながら、彼の逞しいものを深く受け入れていた。処女のピコの躰とヤングに慣れ親しんだ  
熟した女とが渦を巻いて、クレアをめくるめく官能の世界に引き摺っていっていた。  
「はあ、はあ、はああっ、はああっ、ああ……稜ううっ、稜ううッッ!」  
 彼の腰が回転するように動いて、クレアの濡れて蒸れきっている陰毛と彼の陰毛とが絡み合い  
ヌチャッヌチャッという音を立てて彼女の昂ぶりは頂点を迎える。稜はクレアの汗にまみれて  
乱れている長い髪を掻き分けて両手で挟んで、その歓喜の咆哮をあげる恋人の顔を見た。  
「くっ、クレアさん……!んああっ!」  
 稜が恋人だと思って貫いていた女性は海森ではなく、クレアだと知ってアヌスをきゅっと引き締めるも  
彼女の脚が腰に絡みつき、背中に爪を深く立てたことにより頭のなかが真っ白になって、全身全霊  
のエキスともいうべき精液をクレアの子宮にぶちまけていた。かつての恋人の顔が、憧れでもあり  
姉のようでもあり母のようでもあるクレアの顔に変化したことにとまどいを隠せなかったが、肉体の  
なかの欲望がなによりも勝って爆発する。  
「すき、すき、すき……!」  
 クレアの閉じられていた瞼が開かれて、真摯な眼差しが稜を射る。彼は迷わず、クレアのルージュ  
を刷いた赫い唇に熱いキスをした。ペニスは全てを解放しても尚、硬度を維持していて、やさしい  
律動がクレアを確実に衝きあげている。クレアもはばかりない愛の言葉と腰を揺さぶって、ベッド  
の上の男女の肉体は白い波に揺れる舟になっていた。辿り着くのは、無心になれる快美の世界へ。  
現世のしがらみを断ち切れるめくるめく場所に一瞬の儚き夢を男と女は同じ夢を思い描いていた。  

 クレアの好きという告白の連呼に欲望は枯渇することなく昂まりをみせて、稜は彼女の肉体を  
性愛の世界へとまた掠め攫っていく。クレアは膣内の稜のペニスがまた自分を欲して力を漲らせ  
ようとしていることに、膝裏を抱えて脚を高く掲げる。  
 クレアの唇には、稜の熱で乾いた唇が擦れて荒い感触を与えて、クレアから口を開いてもっと  
もっと甘いものをとおねだりするように、稜の口腔に舌をかるく出し入れし誘いを掛けてみる。  
「んっ、んん……」  
(来て、来て、稜!はやくうッ!)  
 稜の舌がクレアの誘いにのって、ゆっくりとやさしく侵入して来て、かるく絡めただけで潮が引いて  
いくようにあっさりと去っていった。  
(いや、いや、いかないでぇ!もっと、もっとしてえッ!)  
 クレアの舌が強引に稜の舌を追って彼の口腔へ入るや、彼女の舌を強く吸ってねっとりと絡めて  
来てくれるのだった。  
「んぐううッ、んんッ」  
(あん、呑まれちゃう、こんなのって、こんなのって……ああっ……!)  
 クレアの顔が待ち望んでいた喜悦に眉間に深い皺を刻んで歪んでいる。稜の律動は先ほどの  
性急だったものから余裕が生じ、彼女の反応を確かめながら突きあげを繰り出す。秘孔付近を  
ペニスがやさしくグラインドして、ここぞという時にズリュッと奥深く挿入されてクレアの子宮口を叩く。  
「んんっ、んはあっ、はああ、はあ、はあ、はあ……いやあ、そんなに見ないで……」  
 稜は唇を離してクレアの薄っすらと汗を噴出して、苦悶に揺れる女の顔を凝視している。かつての  
恋人・海森の残像を確かめるかのようにクレアにすまないと思いつつも、それを止めることが  
出来ないでいた。守ろうとして守りきれないで、自分を庇って逝った女性の名を呼ぶことなど本当に  
許される事なのだろうか。稜は烈しく揺さぶられていた。  

「はあ、はあ、はあ……いっ、いいわよ。呼んでみても……」  
「……!」  
 稜の繰り出すペニスの抽送に呼吸の深くなっていたクレアは細やかに、汗に濡れて額に絡み  
付いている稜の黒髪をやさしく取って顔をそっと撫でてやっていた。  
「ほら、甘えて……はうっ……はあ……んああッ!」  
「み、みもり、、海森いいいッ!」  
「はっ、はっ、はあああッ、いっ、いいいッ、はっ、はっ、はっ、いっ、イクううううううううッ!んんっ!  
あっ、あ、あ、あっ……!」  
「海森!海森!海森!」  
 吊りあがっていた細く綺麗な眉と深い皺を刻んでいた眉間が本来の美しさを取り戻し、クレアの  
快美感に陶酔しきった柔らかく穏やかな顔を稜に晒して、女の肢体は美しいブリッジをもういちど描き始めた。  
彼女の総身が汗に濡れて顫え、クレアの肉襞は稜のペニスを熱く包んで欲望の迸りを促していた。  
 稜は律動を止めて、掲げられている美脚のひざ裏をクレアから奪い取って、肩へと担いでぐいっと  
躰を密着させ、喘ぐ豊満な美乳を押しひしゃげさせてペニスを子宮を抉り、それから烈しく腰を振り  
始める。おなじ刻をめざして躰はうねり、舟は白いシーツの波に揺られてギシッギシッギシッと  
蕩けあう瞬間へと流されていった。  
「クレア……ク、クレアあああッ!」  
「ひっ、あ、あ、あっ……り、稜うううッ!」  
 ピコの躰と同化しての破瓜の後は、クレア自身の性欲が開花して稜のペニスを渇望しては  
奪われ、快美感へと耽溺してゆく。それは恥ずべきことではないとクレアのおんなは感じている。  
メッセニとの関係に疲れきっていたクレアにとって、にわかに信じられない変化でもあったが、  
性愛から生まれた感情で理解して癒されたのもまた真実だったから。  

たとえ端から見れば傷の舐めあいと卑下されようとも、男と女となって交ぐ合うことによって生きる  
希望をもういちど見い出して、あけすけに愛する男が欲しいと切ないまでに願うようになったの  
だから、それはそれでいいことなのだと思うしかクレアには道はなく、女であったことに改めて  
気が付かされていた。  
 しかし稜にも同じように言えることが彼には通じなく、今だ割り切れないでいた。稜は目が醒めると  
ベッドにヤング未亡人としてのクレアを見てしまっていて、いっしょに全裸となって添い寝していた  
自分が堪らなく嫌になっていた。女神のような美貌で穏やかに眠るクレアに嫉妬しつつも、このまま  
師匠・ヤングから掠め取って奪いたいとの気持ちが刹那的に湧き上がって彼女の顔にふれて、  
その結ばれた手をそっと解くとクレアの傍かゆっくりと離れていった。  
「俺がクレアさんを好きになっちゃいけないんだ」  
 クレアに聞えない小さな声で、なんとはなしに呟いてみる。もしかしたらクレアに甘えたくて、  
強く否定してもらいたかったのかもしれない。だが想いを断ち切って病み上がりの躰を起こして、ベッド  
を抜け出そうと足が縺れ、ぶざまに床に転げてしまう。  
「また逃げるのね」  
 その時クレアのやさしい声が稜の耳に響いてきた。  
「逃げるって、どういうことですか……?」  
(俺が逃げている?海森から?それともクレアさんからなのか?)  
 烈しく愛し合っていた時には気が付かなかったが、クレアは自分のなかの何かに烈しく迫って  
来ていた。クレアが肘を付いてゆっくりと起き上がって、脚を揃えてベッドから外すと腰掛ける格好で稜を  
見下ろす。クレアは彼を責めるでもなく、ただ女神のようなやさしい顔で稜を見つめている。  
そんなクレアにいたたまれなくなった稜が先に口を切り出した。  

「お、俺……クレアさんにとんでもないことを、してしまったから……なんて言ったらいいのか」  
 クレアはやさしい顔をして黙して、まだ稜を見ている。稜は床に腰を落としたまま右ひざだけを立てて  
腕を組んで乗せると、そこへ羞恥に真っ赤になってしまった顔を伏せてしまった。  
「お、俺は昔の彼女のことをクレアさんに重ねて抱いてしまったんですよ。許されることじゃない!ちがいますか?」  
「そんなに固く考えることないのに。それとも、海森さんのことで前に進めなくなっちゃった?」  
「な、なんでクレアさんが知っているんですか……」  
 クレアは両脚を揃えたそこに肘を置いて、頬杖を付きながら彼に言った。クレアは自分の心を全て  
見透かしているように思えてならなかった。でも、嫌なことではない。  
「わたしはあなたのことが好きよ。それじゃあ、ダメなのかしら」  
「でも、それは惨めなだけじゃないですか」  
「どうして、そう思うの?あなたなら、わたしの淋しさ分かるでしょう」  
「ええ……わかっているつもりです」  
「そう、つもりね。でも、その経験がなければわたしの傍には来られなかった。違うかしら」  
「俺、別に格好つけてるつもりじゃないです。でも、疵を獣みたいに舐め合うだなんて……俺には」  
 稜は言ってしまってから烈しく後悔して、顔を羞恥に染めて深くうな垂れる。  
(クレアさんと獣みたく愛し合っといて、なんて言い草なんだ!しかも、クレアさんはやさしさから  
俺に抱かれてくれたと言うのに……)  
「稜、ひとりじゃ、どうにもならないことやどうしょうもないことだってあるのよ。でも、いまはふたりぼっち」  
 さあ、とクレアは顔を上げた稜に長く白い手を差し伸べた。稜はそれを取って立ち上がろうとしたら、  
不意に強い力でぐいっと引っ張られて、クレアの膝に腹部を乗せて尻を突き出して横抱きにされる。  

「でも騎士さまなら、もっと強くならなくちゃね。あなたなら、それがきっとできる」  
(ヤングが出来なかったことまでもね、きっと彼が見守ってくれているから迷わずに進みなさい)  
「ちょ、ちょっと、ク、クレアさん、な、なにするんですか……!」  
「女の子を悲しませた罰」  
 冗談とも本気ともつかない声に稜は慌てる。そんな彼を尻目にクレアは手を高く上げると稜の  
引き締まっている臀部に強い一発をお見舞いした。パシィーン!肉の乾いた音が部屋に響いた。  
「ああッ、ちょっと、クレアさん!ああっ!」  
 パシーン!パシィーン!とクレアの容赦ない擲打が繰り出される。稜のペニスはそれによって  
目覚めてクレアの太腿の外側に亀頭を小突くまでになって膨らんでしまっている。  
「ふふっ、立って来たんじゃないの。違うかしら?ほら、返事をなさい!!」  
 クレアに突き出される格好になっている双臀を再び叩かれて赧く染まり始めていた。ピコの混じり  
合った悪戯っぽい思念がそうさせているのか、それともメッセニによって開花させられた性愛がそう  
させているのかなど、クレアにはどうでもよかった。ただこの瞬間を稜といっしょに無心で愉しんでいる。  
 もちろん稜にしても、クレアを組み敷くことぐらい造作もない事なのだから、彼女の変化に驚くと共に  
嬉しくも感じている。クレアは叩くのを辞めると、股間の真ん中にぶら下げている滾ったペニスを  
彼の尻から手を差し入れて、長くしなやかな白い手で握り締める。  
「んああッ!」  
「あら、稜。女の子みたいな声を出しちゃったりして、かわいらしいのね」  
「ク、クレアさん、へ、変ですよ……どうしちゃったんですか……ああ……扱いたりしないでくれっ!」  
「これはピコちゃんの分よ。海森さんの分もね!」  
 そう言ってクレアはペニスから手を移して陰嚢をぎゅうっと握り締めていた。  

「うああああッ!」  
「騎士のくせにだらしないわよ!」  
 パシャーン!クレアはそう言い放つと、また稜の双臀を打ち始めるのだった。稜の臀部は真っ赤を  
通り越してひりつく痛みと化していたが、ペニスはますます硬くなって彼女の太腿にその灼熱がダイレクトに  
ふれている。さらにクレアの瞳をメドゥーサへと変えて、稜の尻をいたぶり続けている。今、稜のペニス  
はクレアにむぎゅっと握られでもしたら、射精しそうなまで膨らみきっていた。  
「ク、クレアさん……俺、射精しちゃいそうだ……」  
 稜は涙に潤んだ瞳で、クレアのメドゥーサの瞳を仰いでいた。クレアは稜を見下ろして彼の赫く  
腫れ上がった双臀を両の手で鷲掴みにすると、彼の太腿はその快美に烈しく悶えてしまい、拡げて  
いた脚を女の子のように閉じ合わせてしまうのだった。  
「よく我慢したわね。今度はわたしのオマンコを可愛がってね、稜」  
 クレアは稜の赫く腫れ上がった双臀をじんわりと愛撫すると、その感触とやさしい誉め言葉に、  
清楚な唇から洩れた卑語に彼のペニスが弧を描くように痙攣を見せるのだった。  
「さあ、わたしのオマンコに入ってきてちょうだい!」  
 稜の腰を膝から下ろして、クレアはしなやかな背中を彼に向けて、右ひざからベッドに乗せ四つん這いに  
なって上がっていった。稜は自分の滾るペニスを待ち望んで濡れて煌いている恥毛と腫れぼったくなって  
ぬめって熱くうねっているクレアの太腿のあわいを眺めている。  
「どうしたの。はやく来てちょうだい」  
 左肩からクレアの紅潮した甘えた美貌が振り向いて稜を誘っている。クレアの濡れそぼってひくつく  
秘所を見ていた稜が言った。  
「クレアさんのオマンコが厭らしくよだれを流して、俺のチンポを誘っているんだね」  
「そ、そうなの!」  
 生娘のような反応を見せていた稜の口から、攻勢に転じる卑猥な言葉が洩れて、その破廉恥な  
言葉を聞いた彼女の秘奥がジュンと潤って、クレアのなかの官能の焔がメラメラとあがって稜を  
熱く見つめて、長い睫毛を顫わせながら静かに閉じると、ゆっくりと前を向いたクレアの肢体が  
逆海老にしなって白い真珠のような素肌の綺麗なスロープを描き出している。  

 その頂上のどっしりとした、魅力的で量感のあるクレアの双臀が稜を誘っている。彼はクレアに  
貰った尻のひりつきに堪えながら、やさしい瞳に闇の光を称えて、クレアがしどけない格好をして  
待つベッドへとゆっくりと這い上がっていった。  
「は、はやくうッ!きてえッ!おねがいよッ!」  
しどけない肢体に、切羽詰まったようなクレアの声が烈しくペニスを反り返らせて下腹に触れる  
ほどに屹立を見せている。そして彼女の白いなだらかな背中に乗らなかった艶やかな長い髪が  
クレアの稜との官能の波紋を示すかのように、白いシーツに妖しく散らばりを魅せてゆるやかに  
拡がっていた。  
「見て、クレアさん。俺のチンポもクレアさんが欲しくてこうなっている」  
 クレアは四つん這いになって、逆海老に反らした肢体を前後にゆるやかに揺さぶりながら、性愛に  
耽溺する凄まじい美貌を肩越しにぐいっと捻じって見せた。その眺めに稜のペニスがまた烈しく  
痙攣してぶるんぶるんと揺れるのだった。クレアは稜の逞しく天上を指す屹立とテラテラと煌いて  
いる亀頭に、赫い唇をゆっくりと開いていって、ハアッ……と声を発しながら熱い吐息を洩らして白く  
透き通った前歯を覗かせ、さもしゃぶりたそうにして、これ見よがしに惚けた瞳を向けながら  
薄桃色の舌で上唇をゆっくりと舐めまわす。クレアは両腕を真直ぐに伸ばすと何かの儀式かの  
ように、ゆっくりと肩を落として顔をベッドに沈めていった。楚々としたクレアの容姿からは想像も  
できないような痴態を稜にあけすけに魅せて心ごとぶつかっていっていた。  
太腿は大きく拡げられクレアの白い双臀が稜のペニスに焦がれて、たまらないとばかりに  
ゆすっている。稜の手がクレアの蠢いている腰を捉えて、撫で回してから一気に渇望を埋ずめる。  
「クレアさんはレディなのに、とっても厭らしいんだね」  

 彼はクレアのベッドに沈んでいる肩の傍に両手をついて覆いかぶさり、ドスンという重い衝撃を  
子宮に与え続ける。クレアはちがうの!ちがうの!と首を振りシーツに散らばっていた長い髪を  
引き摺って振り乱して歔き喚く。  
「うそだっ!クレアさんは、あんなに俺のお尻をぶったじゃないか!」  
 稜の腰がクレアに重い一撃を衝きあたえ、うああッ!という喜悦を洩らす。  
「も、もっ、もっと動いて……おねがい……稜……」  
「ダメですよ、クレアさん。誰からあんなコトバを教えてもらったのか答えてくれなきゃね」  
「嗚呼ッ!なぜッ!いじわるッ!動いてッ、動いてッ、動いてよおおッ!」  
 クレアの尻が淫らに舞い、伸ばされていた腕が折れて空で悔しそうに拳を強く握り締めている。  
稜は単純に夫の名を吐かさせる為の言葉責めの戯れのつもりだったのが、クレアには別の意味を  
与えていたことに気づかないでいた。メッセニ中佐に教えられたのよ、とは口が裂けても言える  
ものではない。そのクレアの苦悩が稜には可愛らしくしか映っていない。  
「じゃあ、どこを突いて欲しいのですか。クレアさん?言っていただけませんか」  
 稜を嬲っていた時に言えた卑語が、立場が逆転してしまうと何故だか出てこない。  
「い、いっ、言えない……!」  
「何故ですか!俺を嬲った後に可愛がってと言った場所ですよ!今、俺のチンポが咥え込まれて  
いる此処じゃないですか!」  
 稜はそう言ってクレアの膣内に嵌り込んでいるペニスをふるわせる。  
「あ、ああ……オ、オマンコ……よ」  
(どうして、言えなくなったんだろ……ピコちゃん、たすけて、たすけて……)  
 啜り泣きしながら、やっとのことで小さく呟く。  
「もっと、大きな声で言ってよ。ねえ」  
「わ、わたしの厭らしい……オ・マ・ン・コをかわいがってください……」  
「ほら、ちゃんと言えたじゃないですか!」  
「は、羞ずかしい……はやく動いてぇ!あっ、ああっ、ど、どうしてえええッ!」  
 稜はクレアの膣内からペニスを抜去すると、彼女の躰を仰向けに返して  
挿入してはズリュッと引き抜いて、クレアの躰を横たえて、また肉棒を突き入れる。  
「ああっ、い、いや、いや、いやああっ!こんなのはいやよおおッ!あ、あやまります……謝りますから  
ちゃんと愛して、愛してちょうだい……ああ……かんにんしてえ……」  
 稜は先ほどのお返しとばかりに、気ままに思いつく体位でクレアを苛め貫いていた。  
快美に浸りきらないままに突き入られてはいたが、クレアの総身は確実に顫え始めていた。  
稜は最後にクレアを抱き起こすと対面座位で彼女の裸身を強く抱きしめる。  
「ク、クレアさん、俺をいかせてくださいッ!」  
「は、はい……!」  
 クレアは躰をくなくなと揺すり、口をだらしなく開いて唾液を滴らせていた。クレアは最後とばかりに稜の  
ペニスを食いちぎらんばかりに腰を揺り動かして、汗をどっと噴出して白目を剥いて瞬き  
始めていた。尻をぶたれたひりつきと膣の締め付けが、もはや限界だった。糸の切れた  
マリオネットを抱いたまま静かに背中をベッドに沈めて浅い眠りに堕ちていった。暫らくしても、ふたりは  
エクスタシーの夢から醒めてまだ睦み合ってベッドにいた。  

「いたずらさんなのね。でも、たっぷり汗を掻いたでしょうから、熱もさがったわね」  
「クレアさんもたくさん汗を掻いたね」  
 稜が汗で乱れていた髪を手櫛で梳いてやる。  
「エッチだったかしら」  
「好きな人の前でエッチになれるなら、それでいいじゃない」  
 クレアの顔が少しだけ曇る。メッセニ中佐との戯れが過ぎるから。  
「どうしたの、クレアさん?ねえ」  
「う、ううん。なんでもないの。さあ、シャワーを浴びて何か召し上がりましょう」  
 クレアが上体を起こして右手を稜に差し伸べるのを、稜の左手がそっと握った。  
「ねえ、立てる?抱っこしていってあげようか?」  
 クレアの顔が羞恥に頬をみるみる染めあげていった。  
「お、おとなをからかうもんじゃありません!って、こ、コラッ!やめなさいってば!」  
「べつにいいじゃない!俺まだチンチンが痛いよ!あんなに烈しいんだから」  
「バ、バカ……」  
 かあーっと朱に染まるけれど嬉しい、久しぶりのしあわせだった。クレアは稜の胸板に手をついて、  
身を委ねると安らぎに顔を埋める。クレアのヴァギナもひりつきを感じていた。  
「ねえ、クレアでいいから」  
「えっ、なに?」  
「だから、クレアって呼んでね、ほらっ、言ってみて」  
「ク、ク・レ・ア……さん……」  
「ばか」  
 今度は稜が赧くなる番だった。  

 クレアは早めに酒場に行き、仕事着に着替えるとトランプからジョーカーと各カードの2から5までの数番を抜いてきり始める。そして、念を入れてもういちどきると緑のフィールドに裏向きに綺麗な動きで  
白い手が2重の円を描いて並べていった。お遊びで思いついただけのことだったはずなのに、真剣な  
眼差しで自分の描いたカードの環を見つめている。  
「ば、バカらしい……あ、あそびよ、あそびのはずなのに……」  
(でも、稜とのことは遊びなんかじゃない)  
 クレアは長い睫毛を慄かせて瞼を閉じ合わせると、天上を向いて左手をカードの運命の環へと  
移動させると人差し指を止める。そしてカードを表に返すとダイヤのクィーンが現れた。  
「意外な人からの好意って、もう泥沼になっているじゃないの……!もっ、もういちどよ」  
 カードを掻き集めて、クレアのしなやかで白魚のような指がカードの円をまた描いていった。  
そしてカードを指差そうとした時、不意に胸を鷲掴みにされ顔を捻じられて、強引にキスをされた。  
瞼を開くまでもなく、口髭の感触が人物を指し示す。クレアはそれでも目をいっぱいに開いて  
メッセニの胸に手を突いて唇を振りほどこうとして、メッセニの唇を噛んだ。  
「やっ、やめてください!」  
「痛ッ!占いとは、笑わせてくれる。男でも出来たか、クレア」  
「そ、そんなことはあなたには関係ないでしょう」  
「おまえはわたしの情婦のはずだ!ちがうかッ!」  
 クレアは左手を捻じられてテーブルに上半身をうつ伏せに組み敷かれる。  
「なにをなさるのですか!」  
「わかりきったことをいうなッ!」  
 もう一方の手も掴んで後ろに廻させ、懐から取り出した紐で両手を縛った。  
「いっ、いやああッ!括らないでええッ!人が来ちゃううッ!」  
 必死に抗議していたはずのクレアに微かに媚態の香りが漂い、メッセニの  
股間は、それに反応するかのように彼のズボンの布を浮き立たせていた。  

「甘えるな!クレア!」  
 甘えるな!というメッセニの理不尽なことば嬲りがクレアのなかで反芻する。どうして私がメッセニ  
になんか甘えているのだと、咲きかけていた官能の誘惑を打ち消してキッと強く睨みつける。  
「なんだ、その目は!情婦ならわたしに傅かんかあッ!」  
 激怒したというよりも、その睨んだ抗議するクレアの美貌にメッセニのペニスが烈しく勃起して  
いたのだった。今すぐにでもクレアのズボンを引き摺り下ろして怒張を濡れてもいないだろう窮屈な  
ヴァギナに突き立ててやりたいという衝動に駆られる。だが、メッセニはクレアの腰まで伸ばしている  
綺麗な長い髪を腕にくるっと巻きつけると、うなじを晒して反抗する女性ディーラーの顔を  
おもいっきり引き上げた。  
「ひぃーっ!あっ、ああ……いっ、痛いいいッ!」  
 クレアの括られていた両手首の汗を握り締めていた拳の指がいっぱいに拡げられた。  
「もっと痛くしてやるからな!男に現を抜かしていたおまえだから、こんなことぐらいでは濡れとらん  
だろうからな」  
「ああ……」  
 白い咽喉を伸ばしたクレアの赫い唇が開いて絶望の声を洩らす。メッセニは緑のフィールドに  
左手をついて、クレアの絶望に呻く顔に欲望にぎらつく顔を近づける。  
「痛くしてほしくなかったら、しゃぶれ!心を込めてだ!」  
「……」  
 欲望に染まった醜悪な顔を近づけられたことで、クレアの僅かばかりの抵抗心が戻って来て  
下唇を強く噛んで、サイレントボイスで彼に挑んでみたところで長く続くわけがなかった。彼の  
嗜虐心を煽るだけで、更なる頭皮を剥がす様な痛みがクレアの歪んだ美貌を仰け反らせる。  
「あうっ!す、するから……痛ううっ、い、いたします……!させてください……!ううっ……」  
 腕に巻いた髪を解かれ、肩を掴まれて乱暴に返されてクレアは仰向けにされると、黒い  
ズボンとショーツを手早く引き摺り下ろされて、そこらは白磁のような下肢が曝け出される。  

「や、約束がちがいます……」  
「わたしは気が短いでな。それに黒のベストに真珠のような白さの腿には堪えきれん」  
 テーブルの外に投げ出されて拡げられているカモシカのような美脚を視姦してから、クレアの  
繊毛に手を添えて引っ張って嬲り始める。  
「しゃ、しゃぶります!おしゃぶりいたします!さ、させてくださいませ……ああ……」  
 性器を嬲られて躰を揺さぶるのだが、後ろ手に縛られている為に抵抗は制限されていた。  
メッセニは右手でクレアの女を弄びながら、左手で彼女を刺し貫く為の凶器を外気に晒して  
秘孔へとあてがう。  
「んっ、ううっ……」  
「まだ痛いか!」  
 メッセニはクレアの核を弄るのをやめて、手のひらで恥丘を愛撫しながら浅く突いていた。  
「は、はい……」  
「なら、これならどうだ」  
「くううっ!んああっ!あぁああっ」  
 子宮を小突かれてクレアの躰が跳ねる。  
「どうだ!クレア!おまえは犯されて悦ぶ女なんだ!もっと叫べ!」  
「んっ、んっ、んはっ、んあっ、あうぅ」  
 クレアは顔を左右に振って啜り泣いていた。  
「はやくイカせないと人が来てしまうぞ。もっと締め付けてみろ」  
「いゃあ、いゃあぁああっ!うああ……」  
 クレアは天井を潤んだ瞳でじっと見ていた。メッセニはクレアの躰に覆いかぶさって崩れていて、  
傍に散らばっていた伏せられたカードを一枚取ってクレアに渡す。それはダイヤの6のカード。  
メッセニが帰った後、そのカードを手にしてクレアはテーブルの上で躰を縮込ませ啜り泣く。  

 メッセニの凌辱以来、クレアは意固地になって稜の誘いを断っていた。  
「クレアさん、待ってください!」  
 稜がクレアの手を掴まえて、引きとめようとする。  
「あなたとは遊びだったのよ!判ったでしょ、離して!」  
 クレアには稜の自分に寄せる真摯な眼差しが辛かった。それを振り切るためにわざと憎まれ口  
を吐いていた。しかし稜はクレアをまだ信じていて、腕を掴んで引き寄せると骨が折れんばかりに  
きつく抱きしめられて、クレアは稜の肩から空をぼうっと眺めていた。行きかう人たちが何事かと  
足を止めては過ぎ去っていった。  
「クレアさん、俺はクレアさんが好きでどうしょうもないんだ。わかるだろ」  
 クレアの瞳からは、涙が溢れてきた。  
「わたしとセックスしたいだけなのでしょう?」  
「あたりまえでしょう。好きなんだから、セックスしたいと思うのが普通でしょ?」  
「ちがうのよ、私はメッセニ中佐の情婦なのよ。わかった」  
「だから?」  
「だ、だからって、あなたなんとも思わないの?」  
「クレアさんの気持ちはどうなんですか!」  
「わたし?夫を見殺しにされて、幼馴染もあなたに殺されたのよ。そんな人を好きになれて?」  
 クレアが一瞬何を言っているのか、稜には判らず、それを理解するのに数分を要した。そして  
稜の頭の中は真っ白になっていった。クレアの躰を抱きしめていた力がだんだんとゆるくなって  
稜の抱擁は解かれる。稜は石畳にがくっと跪いて拳を握り締めると、そこを叩き始めていた。  
クレアは見て見ぬふりをして、そこを去るつもりでいた。  
 しかし稜はなにかに取り憑かれたように、泣きもせず叫びもしないで黙々と石畳に拳を打ち  
つけていて、クレアの頬に稜の拳の血が飛び散った。  
「ひっ、やっ、やめなさい!りょう!稜―――ッ!」  
 稜の腕にしがみ付こうとしたが、軽くクレアの躰は突き飛ばされてしまう。クレアはすぐさま  
這い摺って行って、振り上げた拳の下に躰を滑り込ませる。刹那、彼女の躰に激痛が走る。  

「うぐぅうッ!」  
 稜の叩いていた拳の動きが止まった。  
「ク、クレアさん!!」  
 さすがに、通行人もこの二人の奇行を見過ごすわけにもいかず、止めに入ろうとする。  
クレアは起き上がると、なんでもないんですと必死になって、その人たちに弁解をしていた。しかし  
稜をクレアの家に連れて行くのは至難なことだったが、死人のようになってしまい責任も感じて彼を  
家につれて帰った。扉を閉めるや否や、虚脱状態の彼に喝を入れるようにクレアは告白した。  
「稜、聞える!わたしはあなたを愛しているわ!本当よ!嘘じゃない!愛してます!」  
 愛というものにクレアは自信をなくしていた。いまでは、その存在すらも彼女のなかでは危うい。  
いつか消えてしまうものという恐れがあったからだ。しかし、街中の光景を見せられて、自分で  
大切な物を壊そうとしていたことに烈しく後悔しないではいられなかった。このまま彼にしがみついて  
いこうと素直にそう思えるまでに彼女のなかで変化が急激に起こっていた。  
「クレアさん……」  
「なに、なんなの、稜?」  
「ごめんなさい」  
「あ、謝らないで、あなたは何も悪くないわ。悪いのはわたしの方よ」  
 クレアは躰を扉に押し付けている稜の首を抱くと、彼にやさしい口吻をした。しかし稜の唇が  
開かれることは無かった。  
「クレアさん……もう、慰めてくれなくていいです……俺、もう消えますから」  
「な、なにを言っているの!」  
「奴らが最後の賭けに出てくるはずです。その時、俺もいっしょに散ります。クレアさんは好きに  
生きればいい」  
「や、奴ら?」  
 クレアは顔面蒼白になっていった。稜の言葉には、相変わらず生気がなく死んでいて、  
そこはかとない不安を掻き立てていた。クレアは稜の胸倉を引っ掴んで、その背を扉に  
思いっ切り叩きつける。  
「いいかげになさい!愛してるといったでしょうに!それなら、わたしを奪って見せなさい!  
あなたは男でしょう!奪いなさいよ!」  
 クレアの悲痛な金切り声が部屋に響き渡り、崖っぷちの稜を引き戻すのに、なりふり構わず  
必死になっていた。一度ならず二度までも戦地へ赴こうとしている男の命をあやうくしていることに  
気が付いたからだ。それだけは、なんとしても引き留めねばならなかった。  
夫・ヤングにネクセラリアのことは直接に話してなかったが、自分の生い立ちや戦争への  
不快感を話す際の気持ちに、あまりある情報を知らず知らずに刷り込んでいたことを、そして  
そのもたらした結果をメッセニから突きつけられたという二重の屈辱が蘇る。更にメッセニとの関係を  
打ち明けて諦めさせるつもりが、とんでもない結果を生み出そうとしていた。クレアのなかでダイヤの  
6のカードの残像がちらつく。  
「ダイヤのシックスがなによ!そ、それでなのね!死ぬつもりで、あなたは手を潰そうとしたのね!」  
 稜の血だらけの拳を、むずんと掴むクレア。  
「来なさい!病院へ行くのよ!」  
 彼と入れ替わりに扉に廻ったクレアの躰を、今度は稜が後ろから彼女を抱きしめていた。稜の  
抱擁にクレアは穏やかになっていく。  
「クレアさん、ほんとに俺のこと、好き?」  
 後ろから耳元に甘く囁かれて、躰がぞくっとする。耳を舌でなぞられて、火照り始めた頬を唇が  
這うようにして滑り、長い髪を分けてクレアのうなじを吸うのだった。  
「ああ……だ、だめよ、病院に行かなくちゃ。あっ、あぁん……」  
「いまクレアさんが欲しい。だめですか?」  
 クレアが扉に手を付いて荒い息を吐き始める。  
「だめなんかじゃない……。稜、あなたが欲しいのよ。わたしの気持ちが判らないの?」  
 細い肩が顫えていて、稜になにかを訴えている。彼はクレアの着物の紐を解いて、その素肌を  
肌蹴させて肩を落としてクレアの白いなだらかな背中があらわになった。稜が背中に唇を這わそうと  
したとき、彼女が振り向いていた。彼の拳の血がパステル檸檬のワンピースに痕を残す。  
「ごめんなさい。大切なお召し物に、こんな……」  
「なにを言っているの。たいせつなものは、あなたよ。稜、死んだりしたら二度と許さないから。  
あんな思いは、もういやだから」  
「愛しています。クレアさん」  
 クレアは両手で彼の顔をしっかりと挟んで、唇を重ねて舌を吸う。クレアの衣服は床に落とされて  
下着姿の眩しいまでの白い肢体を確かなものとして抱きしめていた。ブラのホックが外されて  
溢れんばかりの柔らかそうな乳房が彼の手にこぼれて、やさしく揉みしだく。  
「ここじゃいや。ベッドへ行きましょう。ね」  
 クレアは軽々と横抱きにされて、甘えるように稜の胸板に火照る顔を埋めて運ばれる。  
「あなたの重荷になりたくなかった。だから、あんなことを言って別れようと思ったの。でも、もう  
わたしにはあなたしかいません。後悔したくないの。甘えてもいいですか……?」  
「ええ。もちろん。俺も、もう一度生きるために還って来ますよ。あなたの元へ、クレア」  
 クレアはやさしくベッドに下ろされて、ショーツを脱いで稜が裸になるのを待っていた。  
やがてクレアは両腕をいっぱいに拡げて稜を迎えると、長く熱き抱擁に躰を蕩けさせていく。  
稜によって衝きあげられて、意識が飛ばされそうな快美感に顫えてクレアはちからいっぱいに  
喚き、痙攣するのだった。もう離すまい、離れまいとして稜の背に手を廻してしがみ付いていた。  

 その晩、クレアはメッセニの邸宅に呼ばれていて、はっきりとケジメをつけようと決心していた。  
家を出る際には雨がぽつぽつと降り始めていた。クレアがメッセニの侍女に寝室へと通される。  
ちらっと貌を覗いてもかなりの美人であることが分かる。この女も彼の玩具なのだろうかと  
考えていた。しかし、その考えも彼の寝室の前に立って完全に停止してしまう。その奥からは  
少女の歔く声が聞えてくる。侍女が扉を開けると恭しく礼をして後じさった。クレアは侍女の  
行動よりも、開かれた眺めに絶句していた。  
「あうぅ……、ああ、ああ……」  
 ベッドに腰掛けたメッセニの膝の上に載せられて、背を彼の胸板に委ねて結合していたからだ。  
少女の透き通るような白い素肌は、男の肌との落差に眩暈を起こすほどの幻想を魅せ付ける。  
女に成り切らない胸が快楽に喘いで、肉付きの薄い脾腹には肋骨が浮き出ている。メッセニの  
手は細い少女の肩を抱いて躰を揺さぶっている。  
「もっと締め付けてみろ、ロリィ」  
 少女のそれは十分にきつい締め付けを有していたが、彼は少女を嬲ることで愉しんでいる。  
そしてロリィは腰を掴まれてベッドへと躰を移されて、後ろから貫かれた。シーツに血が零れていた。  
彼はロリィの性器ではなく、排泄器官にペニスを嵌めこんでいた。それを見たクレアのなかで  
何かが切れていた。  
「クレア、よく来たな。まさか、ほんとうにやってくるとは思わなんだぞ」  
「ど、どういうことでしょうか」  
「今日は奴の命日になるからな」  
「奴と申されますと……」  

「稜とかいっていたな。そいつのことだよ。赫のバカどもが夜襲を仕掛けてくる。伝令が  
あったのだよ」  
「わ、わかりかねますが」  
「鈍い奴だな。謀反を仮作した咎でその場で殺すか、襲撃に乗じて謀るかのどちらかさ」  
 メッセニはクレアにそう言いながらもロリィの躰をぐらぐらと揺さぶり続けている。  
「うぁああっ、はあ、はあ、はあ、はうぅうっ」  
 四つん這いになっていた肩がベッドに沈んでも尚、白いシーツの上を少女の華奢な躰は  
揺さぶられている。クレアは懐の短剣の柄に手を掛ける。  
「せっかく来たのなら、はやく脱ぐんだな」  
 柄から手を離して、マントを絨毯の床に落とし、メッセニとロリィが交わっているベッドへと  
近づいていった。  
(真の蔵を一突きにしなくては……)  
 クレアはメッセニの横に立つようにして、左手で柄を握り締め鞘を抜いていた。ヤングのもとへ  
逝くはずだった短剣でクレアはメッセニの胸を一突きにした。ロリィの直腸のなかで膨れ上がった  
彼のペニスは白濁を迸らせてベッドへと倒れ込んだ。ロリィの華奢な背中にその刹那、  
おびただしい精液が降り注ぐ。ロリィは首を捻じって倒れ込んだメッセニを見ると、クレアが  
短剣の柄を握ったままメッセニを深く突き立てているのを見るや、枕を取ると彼の苦痛に歪む顔に  
その体重を落とした。  
「ロ、ロリィ……!」  
 クレアはロリィのとった行動に少なからずショックを受けていた。  

 
 

301 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:03/02/19 14:38 ID:w8Fov5xs 
彷徨のクレア39  

「クレアさん、躰をしっかり押さえて!殺さなきゃ!殺すのよ!」  
 メッセニは絶命していた。しかしクレアには何の希望も残されていない。  
「クレアさん、クレアさん!しっかりしてよ!」  
 ロリィの手がクレアの頬を引っ叩いていた。  
「王子様が死んだりするわけがないわ。それをこっちに」  
 ロリィは突き刺さっている短剣の柄からクレアの指を一本一本取り除いていった。そして  
ぼうっとしているクレアの躰をベッドから突き落とすと、メッセニの死体に馬乗りになって短剣を  
抜き取って胸板を滅多刺しにして喚いた。  
「うあぁああああああああああああああッ!」  
 真珠のような素肌が噴出した血によって塗りたくられ、クレアは恍惚としているロリィの鬼神の  
姿を見たような気がしていた。  

 それからは、思ったほど大変ではなかった。政敵も多かったことと、彼の性癖を知る者たちの  
多くの証言により、ふたりは助かった。しかし、ロリィの心は壊れてしまった。ロリィの両親は彼女を  
教会にあずけて国を去っていった。そして、クレアは還ってきた稜とともにこのドルファンを  
旅立ち、この事件は人々の記憶から忘れられた。  

 

 その十年後……ある晴れ渡った日の港で。  

「ねえ、おじさん。あの娘いつも此処にいるの?」  
 港に毎日来ている娘のことが気懸かりな男が港の漁師に尋ねる。  
「あの娘はやめときな。いかれているんだからな」  
「いかれてる?」  
「王子様、王子様ってばっかさ」  
「でも、可愛いぜ」  
「シスターにしか心は開かないよ」  
 その時、橋げたから子連れの夫婦がやって来た。  
「ロリィ……!ロリィなのね!あ、あの時はほんとにありがとう……!」  
 ロリィの細い躰をきつく抱きしめて女は泣いていた。  
「ク、クレアさん。い、痛いよう……」  
「ご、ごめんなさい。ごめんなさい。ゴメンなさい……」  
「ママ、泣かないでゆ」  
「泣かないでよ、でしょ。もう、この子ったら」  
「ロリィ、ありがとう」  
「お兄ちゃん……おかえりなさい」  
 ロリィは稜の顔を見ると、再び子供の方を見て跪いて子供目線に合わしていた。  
「お姉ちゃんも泣かないで」  
「哀しくて泣いているのじゃないのよ。温かい気持ちでいっぱいなの」  
 ロリィの凍結していた十年の時がゆるやかに動き出した。稜とクレアの息子がロリィ・コーウェルを  
見初めるのは、また別のはなし。  

 

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