みつめてナイト

三人の仔猫たち2 

「レズリーは制服のままでいくのか?」  
 放課後、ハンナが鞄ではなくスケッチブックを小脇に抱えている彼女に尋ねる。  
「ああ、ズィーガーあたりで暫らくスケッチしてからビーチにいくから、学校からそのまま行くよ」  
「レズリーはタオル、持ってかないのか?」  
「ほっといたら陽射しでも、すぐ乾くからいいさ」  
 レズリーの即答にハンナは顔をくしゃくしゃっとさせる。  
「あ、あのさぁ……よ、かったらで……いや、やっぱりいいや」  
「どうしたのさ。言いかけておいて気になるじゃないか」  
「ご、ごめん……ほんとに、よかったらでいいんだけどさ……ボクに、一枚でもいいからさ…  
…欲しいんだ……だめかな……」  
 レズリーは真っ赤になっているハンナを見てニンマリとして言った。  
「いいよ。帰りによって、好きなのを選びなよ」  
「ボ、ボクが……す、好きなのを……レ、レズリーが選んでよ……」  
 レズリーは口をハンナの耳に近づけて、手で隠して囁く。  
「いいよ、す・ご・い・や・つ・を選んであげるから」  
 ぴんく色の舌をチロッと出してハンナの耳をぺろっと舐めた。  
「ひっ!な、なにすんだよぅ……!」  
 ハンナは小声でレズリーに怒った。教室で帰り支度をしている生徒たちに気取られている  
ような、レズリーに裸にされているような感じがして気が気でなかった。  
 その時、ハンナの視界にロリィが入ってほっとした。  

「レズリーはほんとに絵を描くのが好きなんだなぁ。でも、ロリィが残念がるぞ。ほら来た」  
「お姉ちゃん、はやく帰って出かけよう!」  
 ロリィの明るく無邪気で可愛い声が教室に響いて華やぐ。だが、ハンナにとっては昨日の  
ことが思い出されてほっとするどころではなかった。なにやら躰の奥がぞくぞくとしてくる。  
「ロリィ、お姉ちゃん先に行って絵を描いてるから、ハンナといっしょに帰ってくれないか」  
「ええ、だったらロリィもこのまま行く!」  
「我儘言って子供みたいだぞ」  
 ハンナはロリィにいじわるを言ってみる。  
「子供なんかじゃないもん。ロリィはハンナの先輩だもん!」  
「な、なに言ってんだよ!ロリィ!」  
「ハンナ、声が裏返ってる」  
ハンナはロリィの何気ない言葉に過剰に反応して、ロリィの手をぎゅっと掴むと教室の外へと  
猛烈な勢いで歩き出していた。  
「ロリィもお姉ちゃんといっしょに行く!」  
「タ、タオルを取ってこなくちゃな、なロリィ」  
「ロリィ、持ってきたよ。だから、お姉ちゃんと行くのッ!」  
「お姉ちゃん、先に行って絵を描かなくちゃいけないから、ごめんなロリィ」  
「うん、ロリィわかった。ハンナと着替えてからにする。早くいこうよ、ハンナ!」  
「ロリィ、引っ張るなったらぁ!」  
 今度はロリィがハンナをリードしてすごい勢いで歩き出していた。  

「ロリィ、そう引っ張るなよ。でも、ああ頼まれちゃ断れないもんな」  
 いつもはぶっきらぼうで、がさつなのに、ちょっとしたしぐさで女らしさをチラッと魅せる  
レズリーにはふたりは叶わない。かといって自然体の彼女も女の子らしく、着飾るわけでも  
ないのにオシャレで、その辺も多くの下級生たちの憧憬の的となっている所以だった。  
 しかも、ふたりはレズリーに愛されて自分たちしか知ることのできない、もうひとつのレズリー  
の顔を知っているという優越感めいたものを感じていた。  
「わかってるんだったら、早く帰ろうよ。ハンナ、お姉ちゃん!」  
「あ、ああ……ロリィさ、あれレズリーから貰ったか?」  
「えっ、何のこと?」  
 ロリィはハンナの手を引くのをやめて立ち止まる。  
「だ・か・ら……あ・れ・だ・よ」  
 ハンナの返事はあいまいでさっぱり要領を得ない。  
「あれじゃロリィ何のことかさっぱりわかんないよう!」  
「だから……あれなんだよな……あれ」  
「もう、なんなのよ!」  
「クロッキーのことだよ」  
「え、何なの?」  
「ロリィ、ほんとにわからないのか?デッサン、絵のことだよ。ロリィはいっぱい描いて貰って  
るんだろ」  
「うん、そうだよ。レズリーお姉ちゃんにいっぱい描いてもらったの。ロリィのこと綺麗に描いて  
くれてるの」  
 ロリィは先輩風を吹かせて、ハンナにさも自慢げに話す。  

「で、ボクさレズリーに一枚、記念に貰えないかって頼んだんだよ」  
「それで?」  
「だから、ロリィはヌードのクロッキーをさ何枚貰ったのかなあって思って」  
「貰ってないよ、悪いと思ってロリィ、お姉ちゃんに頼んだことないし」  
 ハンナはにんまりと笑ってロリィに言う。  
「ふ〜ん、そうなんだ。ボクはね、今日帰りにレズリー家に寄っていっしょに選んで貰うんだ」  
「えッ!え〜ッ!どうしてッ!そんなのずるい〜ッ!」  
 ロリィは頬をぷうっと膨らまして真っ赤にしてハンナに地団駄を踏む。  
「ロリィも海に行った時、レズリーに頼んだらいいだろ。きっと何かくれるんじゃないか」  
 とってつけたような言い方にロリィはのってしまうのが、ハンナには可愛くてしかたがなかった。  
「もう、しらっと言わないでよ!しらっと!ハンナよりロリィの方が先なのにぃッ!」  
 ふたりは仔猫のようにじゃれ合いながらドルファン学園の校門を抜けて、セリナリバー駅  
の方へ歩いて行く。  
「なあ?ロリィはどうしてレズリーにおねだりしなかったんだ。いっぱい、えっちな絵、描いて  
もらってたんだろ」  
 ハンナの素朴な疑問だったが、ロリィにはハンナの言葉がカチンとくる。  
「ロ、ロリィのは……え、えっちな絵なんかじゃないもん!」  
「そりゃ、ロリィはボクなんかより可愛くて綺麗だよな。ふふふっ、こうだっけか?ねえ、ロリィこうかな?」  
 ハンナは頭の後ろで両手を組んで、右脚を少し曲げてつま先を立ててみる。そのまま両手で  
髪の毛を掻きあげてしどけなく俯いてみたりしてロリィを挑発する。  

「ふえっ……うっ、なんでハンナお姉ちゃんが……ロリィの……絵のこと知ってるの……」  

 ロリィはさっきまでの勢いはどこへやら、立ち止まって俯いて、大きな紅宝玉の瞳を潤ませて  
ぽろぽろと涙をこぼして、手の甲で顔を拭いだす。これには、さすがのお調子者のハンナも  
参ってしまった。  

「ボ、ボクがどんな絵を描いてるのって、頼んで見せてもらったんだよ……」  
「ロリィとレズリーお姉ちゃんだけの絵なのにぃ……ふぇっ、ううっ、うあぁぁ……」  
 ロリィは手の甲で目をごしごしやりだしている。  
「ご、ごめん……ボ、ボクがわるかったよ……ロリィ、ほんとにごめん」  
 ハンナは腫れ物にでも触るようにして立ちすくんで泣いているロリィへと頭を掻きながら  
近寄よっていった。  
(レ、レズリーなら……こういう時、迷わずに、こう……ぎゅうっと抱きしめるんだろうけど…  
…ええい、ままよ!)  
 ロリィの大きな黄色い蝶がとまっている頭を赫い制服の胸に掻き抱いた。  
「あっ……」  
 ロリィがハンナの胸で小さな声をあげる。ハンナはロリィの頭をやさしく撫でている。  
「ごめん……ボクが本当に悪かったよ。許してよ、ロリィ」  
 暫らく間があって、ロリィが唇を開いた。  
「ハンナお姉ちゃん、リボンがくしゃくしゃになっちゃうよ!」  
 ロリィはくしゃくしゃの顔をあげてハンナを見つめる。  
「あっ、ご、ごめん……」  
 慌ててロリィの頭を撫でていた手を離すハンナ。  
「びっくりした、お姉ちゃん?」  
「へ?」  
「だからあ、びっくりしなかったかなあって、嘘泣き」  
「で、でも、ロリィの顔、涙でくしゃくしゃだよ」  
「ほら、お姉ちゃん見てよ」  
 そう言ってロリィはハンナを見上げながら、またぽろぽろと眦から涙を流すのだった。  

「ど、どういうことなんだよう!」  
「ハンナお姉ちゃんがビッグベアに食べられちゃっているとこを想像してたの」  
「な、なななッ!」  
 ロリィはハンナの腕をするりっと抜けて、まるで黄色い蝶がひらひらと舞うように逃げ出す。  
「こ、こらああッ!ロリィ、待てよッ!こいつッ!」  
「やだようだ!キャハハハ」  
「こら、ロリィ、なんて想像するんだよ!許さないからな!」  
 ハンナの俊敏さからいえば、ロリィを捕まえるのは時間の問題だったが……ハンナは  
ロリィを追いかけるのをやめて棒立ちになっていた。  
(でも、いたずらの空想だったけれど、ロリィはボクのことで泣いてくれたんだよな)  
「ロリィ!」  
「ど、どうしたの?」  
「やっぱりボクがわるかったよ。ほんとにごめん……ロリィの気持ちも考えなくて、わるかったよ」  
 ロリィはハンナに近寄ってきて手を握り締める。  
「お、お姉ちゃん……はやく、帰ろう。そして海へ行こう」  
「そうだな、レズリーきっと待ってるだろうし」  
「うん!」  
 ロリィがこぼれんばかりの笑みをハンナに向け、ふたりは明るく駆け出して行った。訓練場が  
見え始めていた頃、辺りが騒がしくなっていることに、脚が止まる。ひとりの男が走ってきて  
ふたりに声を掛ける。  
「君たち、俺といっしょに来い!」  
「どうかしたんですか?」  
 ハンナは尋常でない雰囲気を感じていた。ロリィの握りしめている手も顫え始めている。  

「考えている暇はない、来いッ!」  
「はい!ロリィ、いくよッ!」  
「うん!」  
 ハンナとロリィは男といしょに今来た道を戻って走っていく。  
「よし、あそこに入れてもらおう」  
 軒先に入って民家の玄関の扉を叩くも、そこは固く閉ざされままだった。  
「おい!開けろ!子供もいるんだ!頼むから開けてくれ!くそっ!」  
「いったい、どうしたんですか!」  
「サーカステントへの搬入の際にホワイトタイガーが係員を喰らって逃げたんだ!」  
「うそッ!」  
 男は閉ざされた扉を悔しそうに一瞥すると、ハンナとロリィをじっと見て言った。  
「ごめん、お嬢ちゃん!きみたちも早く逃げるんだ!わかったね!」  
 男はそう言い放つと走って逃げていった。  
「お、おじさんッ!」  
 手を握っていたロリィの手の力が弛緩して、ハンナの手から離れた。しかしハンナはロリィの  
手をぎゅっと握り締め、閉ざされた扉をスポーツシューズで思いっ切り蹴り上げる。  
「ロリィ、走れるね!」  
「お姉ちゃん、ロリィ走るのが……」  
「走れるね!ロリィ!」  
 ハンナがロリィの弱気な心に喝を入れる。  
「は、はい!」  
「さあ、スポーツの祭典のかけっこだ!いくよ、ロリィ!ようい、ドン!」  

 ふたりの耳には、人々が逃げ惑う悲鳴にまじって絶命の叫びが聞えていた。ホワイトタイガーは  
逃げる人々の背を狙っては取り押え、肉を喰らっている。なかには、ロリィよりも小さな少女も  
いた。  
 聖獣としての威風に魅入られ捕らえ見世物にしょうとした天罰かなのか、ホワイトタイガーは鬼神  
と化して人を襲っているようにさえ見える。  
 しかし実際、獣の行為は捕食でさえなく、皮肉にもただ遊んでいるに過ぎなかった。フェンネル  
地区は戦争などではなく、たった一匹の白き獣の災厄によって血で塗られていた。  
「ロリィ、あと少しだ!がんばれ!駅に入れば、もうだいじょうぶだだから!」  
「う、うん……」  
 ロリィの脚は重くなって、もはや限界だった。ハンナは繋いだ手をぐいっと引き寄せて、ロリィ  
の躰を小脇に抱える。  
「お姉ちゃん……」  
「だいじょうぶだからね、だいじょうぶさ!」  
 また後方から悲鳴が聞えてきた。ハンナに迷っている時間は無い、最後の賭けに出るしかない。  
(もう少し、あと少しだけでいいから、神様お願いです。ボクの脚を走らせて!)  
 ハンナは懸命に走る。走る!走る!走る!  
 「ああッ!」  
 走っていたハンナはブチン!という音が脚にして、ロリィを抱えたまま道に転げる。  
(しまった!腱が切れたぁッ!)  
 腱ではなくスポーツシューズのバンドが切れていただけだった。しかし転倒した際に膝を擦り  
剥いてしまいロリィを抱えて走るのは、もはや不可能だ。  
「ロリィ、行けえッ!駅へ走るんだッ!」  
「い、いやああッ!ハンナといっしょじゃなきゃ!」  
 ロリィは泣きながら、ハンナが倒れている場所に戻ってくる。  
「いやあッ!お姉ちゃん、立って!立ってよ!」  
 ロリィはハンナの腕を両手で掴んで引っ張っていた。  
「よせ!ロリィ!ボクのことはいいから行けったら!ロリィ、レズリーが待ってるんだろ?な、  
だから行くんだ、行けってばッ!」  
「いやだよ!そんなこと言わないで、お姉ちゃん……ロリィ、そんなのいやだああぁッ!」  
 ロリィはハンナのうでを胸に抱きしめたまま腰を落としてしまった。  
「ロリィ、行けったら!行けッ!」  
「ロリィ、いやだあぁぁぁぁぁぁぁッ!ぜったいに、いやああああぁぁぁぁぁぁッ!」  
 ハンナはロリィの躰に覆い被さる様にして抱きしめようとした時だった。レッドゲートから騎士が  
声をあげて走って来る。  
「蹲るなッ!後を振り返って獣の目を見ろッ!獣の目を見るんだああぁぁぁぁッ!」  
 ホワイトタイガーが蹲るハンナとロリィに向けて狙いを定めて駆けて来る。ハンナは振り返り  
駆けて来る獣を見た。ロリィは躰がすくんでハンナの背中に顔を埋めている。  
「ロリィ、顔をあげて見て!我慢して見て!」  
「うん。ロリィ、わかった!がんばる!」  
(間に合うか?間に合わせてやる!間に合わせればいいだけのことだッ!)  
 騎士が剣の柄に手を掛け、妖精のピコが彼の顔の近くで羽ばたきながらガッツポーズの  
右手の拳を天上へと掲げる。  
(間に合うよ、ロケットアタ〜ック!だもん。でもこれってかっこわる〜いね)  
(う、うるさい、だまてろ!仕掛けるからな!)  
(はい、はい。どうぞ御自由に)  

「伏せろッ!伏せるんだああぁぁぁッ!」  
「ロリィ、伏せてぇッ!」  
「お姉ちゃん!」  
 ハンナとロリィに駆けて来た獣は視線を外されたことで戸惑い、すんでのところで立ち止まって  
うろたえた一瞬の隙を捉えて、秘剣の一撃に騎士は賭ける。躰が弾丸のように飛翔すると  
全体重を切先の一点に掛けホワイトタイガーの咽喉元から頭を刺し貫く。  
 獣に、一瞬にして非情の死が訪れた。獣は誰の目にも惨劇の張本人、悪魔の虎としか  
映らなかったが、ただ遊びたい幼子でしかなかった。騎士は獣の返り血を鎧に浴びていた。  
剣を抜き取ると獣の巨漢が地にどさっ!と崩れ堕ち、剣を一振りすると鞘へと収めた。  
(稜やったね!一瞬だったよ!)  
(ああ……そうだな……)  
(嬉しくないの?この娘たちを助けることが出来たんだよ!)  
(またくだらない通り名が増えちゃったな)  
(……もう、かっこいいッ!て言って欲しいの?)  
 ピコが稜の顔の前で羽ばたいて、脇を締めて両手を捩ってくっ付けていた。  
(ば、馬鹿いえ……)  
(だめだよ、稜はやさしいから感傷に浸ると死に祟られるんだからね)  
 ピコは騎士の頬にへばりつくと両腕をいっぱいに拡げて、小さな躰で稜をやさしく抱きしめてくれる。  
(わかってるつもりだよ、ピコ)  
 稜は左手でピコの躰をそっと撫でていた。  

 

「あ、あのう、どうもありが……とう」  
「待って、顔をあげちゃいけない」  
 ハンナの声で何事かと、ロリィが恐る恐る顔をあげるとホワイトタイガーの遺骸を見ないように  
騎士がしゃがみ込んで大きなマントを拡げている。ただその裏地の赫を目にしたロリィは  
今しがた起った事を小さな胸でいっぺんに理解してしまっていた。  
「立てるかい?ゆっくり立ってね。もう終わったから心配はいらないよ」  
「は、はい。ありがとうございます。ロリィ、ねえ……ロリィったら……」  
 ゆっくりと三人は立ち上がったが、ハンナがロリィの方を向くと少女は固まってしまっていた。  
「ロリィ、助かったから。もう大丈夫だから、ねえ、ロリィ?」  
「お、王子様だぁ……ロリィの王子さまだああぁぁぁぁぁぁぁッ!」  
 ロリィは突然叫んでハンナの躰を押しのけると、獣の血に濡れた鎧も気にせずに騎士へと  
飛びついて抱きつき泣きじゃくるのだった。  
「き、きみ、お洋服に血がついちゃうよ。ね、もうだいじょうぶだから、泣かないで」  
「うわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」  
 ロリィのその姿を見て、ハンナも感情が溢れ出て騎士にいっしょになってしがみついては泣くの  
だった。  
「怖かったよう、怖かったんだああぁぁ……ボク、とても怖かったんだあああぁぁぁぁぁッ!」  
 お調子者の気丈なハンナも泣きじゃくっていた。ふたりの少女たちの手は稜の鎧をしっかり  
と握り締めて、なかなか離そうとはしない。  
(稜、この娘たちどうするの?早く病院に連れて行ってあげよう、ね、それがいいよ)  
(それがいいな。でも、暫らくこのままでな、ピコ)  
(う、うん……しかたないよね。でもスケベ心起こしちゃだめだからね)  
(な、なに言い出すんだよ、ほんとに)  
 この段になると訓練所の兵士たちが、やおら繰り出てきて、殺戮の街のサルベージに  
あたろうとする。  

 
 

「ほんとうに、病院へ行かなくてもいいのか?」  
「私たち、ともだちとの約束があって急いでいたんです」  
 という事は、そんな感じで騎士は後ろを振り向いていた。  
「途中まで送っていくよ」  
「えっ?そんな、ご迷惑じゃ……やっぱり、お、おねがいします……」  
 ハンナは社交辞令めいた事を言ってしまってから後悔して、素直に騎士に願い出た。  
ふたりしてどうやってここを通り抜ければという困惑も確かにあったが、彼がいてくれれば  
というハンナの素直な願いの方が勝っていたともいえる。  
「その方がいいだろ?」  
「は、はい、ボクのそばにいてください!」  
 とんでもなく場違いなことを言った様でハンナは羞ずかしさで躰がいっぱいになって、  
女であったことを意識しないではいられなかった。目元を赧く染めてもなお、まっすぐに  
見つめているハンナに騎士は照れ笑いをしている。  
 そんなハンナは彼の笑顔を見て、また瞳から涙がぽろぽろと溢れ出てくるのを押さえる  
ことができないでいた。  
 騎士はハンナの頭を抱き寄せて、やさしく髪を撫でてくれる。ハンナは素直に彼に抱かれて  
昂ぶった気持ちを落ち着かせるのだった。  
(ボク、女の子らしく髪を伸ばそうかなあ……)  
 ロリィを横目で見ると、頬をぷうっと膨らませてこちらをじっと睨んでいることに気づく。  
ハンナとロリィは騎士に送られながら病院へは行かずに帰宅した。惨劇の場を通らねば  
ならなかったが、ふたりがそれを見なくても済んだのは、命を助けてくれた騎士がマントで  
少女たちを覆い隠して先導してくれたおかげだった。  
 ロリィは騎士に抱きついて、終始ぼうっとしていたが、ハンナだけはそこを通る際に血の  
飛び散った臭いにあてられて吐瀉してしまっていた。  

 ハンナとロリィが落ち合ってビーチの外れ、人気のいない岩場の多い磯に着いた頃には  
陽が幾分かは傾きかけていたが、夕闇の刻にはまだ間があった。  
「はあ、はあ、レズリーお姉ちゃん、怒って帰っちゃったかなぁ……」  
「そんなことないよ、ロリィ。ほら、見てごらんよ」  
「あっ、ほんとだ!よかったあ」  
 白い砂浜に靴がちゃんと揃えてあって、すぐ傍にはドルファン学園の制服が綺麗にたたまれ、  
その上にレズリーのスケッチブックが載せられているのが遠くからでも見て取れる。  
「ロリィ、はやく行こう!」  
「うん、お姉ちゃん!」  
 ハンナはロリィの手をぎゅっと握り締めてると、ふたりは浜へと急いで駆け出していった。  
雲ひとつなく、どこまでも蒼い空。陽にきらきらと輝いている昼下がりの潮が立てる音が  
生命の源へと還らせるようなやすらぎに包ませる、心地よかった。  
 ハンナは海そのものは嫌いではなかったが、いつも最初に嗅ぐ磯の香りだけは苦手だった。  
しかし今回ばかりは肺いっぱいに吸い込んで生きているを実感する。きらきらと煌めく波に目を  
細めて暫らく眺めてから、想い同じくしているのだろうとロリィを見ると、彼女もまた海の自然の  
流れをじっと見ていた。  
「よかったね」  
「うん……あっ!レズリーお姉ちゃんだ……」  
 ロリィがハンナの手を握り返してくる。レズリーが海面から顔を見せ、見事なプロポーションの  
裸身と真珠のように白い素肌を徐々にあらわしてゆく。いつもはふわっと輝くようなレズリーの  
金髪がケプルのように、微笑を魅せる顔や肩に、そして豊かな美乳を覆い隠すように絡み付いている。  
 それでも彼女の美しさは損なわれることなく、もし本当にいるとしたら人魚か美神・ヴィナスだと  
ハンナは思うのだった。  

レズリーはごく自然に浜へと上がって来た。昨日、肌をあんなに見せ合って愛し合ったのだから  
羞ずかしいはずなんてないのにと思っても、顔が熱くなるのがハンナには分かっていた。  
 秘所を飾る潮に濡れた恥毛や豊かな乳房も隠しもせず堂々として歩いてくる。濡れた金髪を  
掻き上げ真っ白で透き通る裸身を晒してふたりの前に立った。水滴が玉になって素肌をつーっと  
滑り落ちる。  
(レズリーって、ほんとは人魚姫なのかなあ……)  

「どうしたの、ハンナ?脚の膝小僧を怪我しているよ」  
 レズリーに声を掛けられて、ぼうっとしていたハンナは我に返るが、彼女に魅せられてしどろもどろ。  
「え?あ……うん、ちょっと転んじゃってさ、ボク」  
 ロリィもハンナとレズリーのやりとりをぼうっとして見ていた。来る途中にとても大変な目に遭った  
ことなども忘れて。  
「ほんとにそそかしいんだから。それに手当てぐらいちゃんとしなさいよね」  
(レズリーにはやく会いに来たかったんだ、ボク……)  
 レズリーはそう言うと、ハンナの怪我をした右脚の方に腰を下ろして皮が剥けている傷口を舌を  
そっと差し出してやさしく舐め取ってくれる。  
「あっ、レズリー汚いからいいよ。そんなことしなくても」  
 ハンナはレズリーの濡れた肩に触れて、前屈みになろうとする。  
「ほら、動いたりしちゃだめだろ。砂石もついてるから、じっとしてな」  
「ご、ごめん……」  
 ハンナの手をロリィがぎゅっと握り締めてきたのが分かった。ロリィもたぶん同じ気持ちなんだろうと  
ハンナは思っていた。レズリーは自分たちがどうして遅れてきたのかも聞かないで、母親のように  
躰の変化にいち早く気づいてやさしくしてくれている。ハンナは涙がぽろぽろと溢れ出して屈んでいる  
レズリーの肩に雫をぽたぽたとこぼれさせていた。ロリィもしゃくりあげるように泣き始めてしまい。  
「ねえ、あんたたち、ほんとにどうしとゃったの?」  
 レズリーが訝しげに顔をあげる。  

「ねえ、どうしたの?」  
 レズリーは立ち上がってハンナとロリィを見た。ハンナはレズリーの頬を両手で挟むと熱く  
口吻をする。  
「あっ、んんっ……ちょっと、ハンナ……ロ、ロリィ……あん、んんっ」  
 ハンナのしょっぱいキスとロリィの熱い頬擦りがレズリーの冷たいお尻に触れていた。レズリーは  
右手でロリィの頭をやさしくやさしく撫で、左手はハンナの頬の涙を拭うように撫でまわす。  
 ハンナのキッスは積極的だった。なにかの不安を打ち消すかのように、なにかを確かめるか  
のようにレズリーには感じられる。ロリィも烈しくお尻に啜り泣く顔を押し付けるように頬擦りして、  
時には双臀を鷲掴みにしてきつく爪を立てて、自分を食べんばかりの勢い。レズリーはふたりに  
尋ねることはやめて、躰を波にまかせていった。レズリーの耳に潮のリズムが快楽への誘い  
のように心地よく芯に響いている。  
「ああっ、ああ……ロ、ロリィ、す、すごいわ……」  
「んっ、はふ……お、お姉ちゃん……レズリーお姉ちゃん……」  
 ロリィはレズリーのお尻に歯形を残して、桃を割り開き蠢くアヌスにそっと舌を這わしていく。  
ハンナはレズリーの唇を離れて、首筋を這ってゆっくりと下りてゆく。レズリーの顔は仰け反って、  
潮に濡れた金髪で火照った顔を掃き雫を降らせていた。  
「あっ、どうして……ハンナ……どうして」  
 首筋が下りたハンナの唇はレズリーの乳房の谷間を通ってへそへと近づいていった。  
レズリーはてっきり乳房を愛撫してくれるとばかり思っていたので、少し物足りなさを隠せない。  
「ごめんね、こめんね、レズリー……ボク、ボクね……」  
 下腹に吹きかかるハンナの濡れた吐息が乳房の期待を凌駕していった。  
「そ、そんなこと、ないわ。ハンナ、気持ちいいわ、とっても。ああ……ロリィもじょうずよ、とっても」  
 レズリーは傅くふたりの髪に指を絡めては、物狂ほしそうに弄ってゆく。  
「ボク、ボクね、花が好きなんだ……レズリーの花も好きだよ……だ・い・す・き・だ・よ」  
 濡れてしっとりとしている恥毛を、そこに朝露のようにところどころ水滴が載っている眺めを  
喘ぎながら告げると、レズリーの咲いた花びらへと唇を被せていった。  
「あううぅぅッ……いっ、いやああぁぁッ……」  
 ハンナとロリィに挟まれて責められ、レズリーのなかが弾けてらしからぬ呻きが洩れる。  
ロリィが右手をレズリーの左腰に添えられているハンナの手に被せ、ハンナはそれに応えて  
可愛らしい指に絡めていた。  
 ロリィは舌を尖らせてそっとアヌスに挿入を仕掛けてくる。ハンナの恥戯は唇と舌で思うままに  
弄っていたが、昨日よりも積極的に刹那に自分を求めてくれることがレズリーには悦びとなる。  
ふたりの刹那的な責めがレズリーを物狂おしくさせ、官能の大波に顔をむちゃくちゃに揺すって  
金髪を振り乱して水滴を飛び散らす。  
躰がくなくなと揺れ快美感に慄き、それを支えているすらっと長い美脚もガタガタと顫え始め、  
レズリーは立っているのもやっとなほど波に呑まれようとしていた。  
「あうう、もういいからぁ……ああ……いやあ、お、おねがいよ……あうううんッ!」  
 レズリーはハンナの肩に両手を添えて、秘所に貪りついている彼女の顔を引き剥がそうと  
していた。レズリーは歔いてふたりに哀訴していても、追撃は止むことが無かった。  
「ハ、ハンナ!オ、オシッコがでちゃいそうなのッ!ああっ、いじわるうううぅぅッ!」  
 レズリーはハンナの肩に爪を立て、総身を痙攣させる。その烈しい顫えは、ふたりの唇に  
ダイレクトに歓喜として伝わってくる。ふたりにレズリーを共有しているという確かな悦びと  
なっていた。恐怖からの生還がふたりを踏み込ませていたのかもしれない。  
 レズリーの溜まっていたものが堰を切って一気に水流が迸った。ハンナはそれをまともに  
口に受けて飲み込めるだけ飲もうとする。  
「ああ……いやああああああぁぁぁぁぁッ!」  
 レズリーの羞恥に身を焦がす咆哮が磯に響いていた。  
「あッ!ああああああッ!」  
レズリーは白い砂浜へと崩れ、立て膝を付いて両手で顔を覆って泣いていた。まだ股間  
からはチョロチョロと羞恥の奔流の名残りを見せている。  
 そのまま白い尻を落とすと膝を抱えるようにして背中を丸めてしまう。ハンナとロリィは尻餅を  
着いて、レズリーの見せた初めての反応に唖然となってしまう。ハンナが急に心配になって  
レズリーに飛びついて、ロリィもそれに倣うのだった。  
「ごめんなさい!レズリー!ボクが悪かったよ!許してよ!ほんとにごめんなさい!」  
「お姉ちゃん!ごめんなさい!ロリィ、おいたしたりしてぇ、許して!ごめんなさい!」  
 ハンナとロリィは蹲るレズリーを挟んで、屈み込み砂浜に顔を着けてレズリーを心配そうに  
窺っていた。ふたりは交互にレズリーの丸まって小刻みに顫える背中を慰めるように撫でている。  
 レズリーは砂浜に伏した顔をイヤイヤするように烈しく振り出した。ふたりに暗い雲が立ち  
込めてくるが、そうじゃなかった。  
「ち、ちがうの……嬉しかったの、とっても信じられないくらいに気持ちよかったのよ。ごめんね、  
ふたりともびっくりさせちゃったりして……」  
 レズリーは顔をあげるとハンナにレズリーにと感謝の口吻をした。  
「ごめんなさいね、ハンナ。うれしいわ」  
 ハンナはレズリーにねっとりと濡れた顔を舌で舐められてキスをされ……  
「ごめんなさいね、ロリィ。かわいいわ」  
……ロリィは唇を押し付けられ、割り開かれてレズリーの寒露な唾液を流し込まれてこくんこくんと  
白い咽喉を鳴らして呑み込んだのだった。  

 

 レズリーは白い砂浜にゆったりと躰を伸ばして、うつ伏せに寝そべり、組んだ腕に頭を横向きに  
載せてふたりを待っていた。ハンナとロリィは抱擁し、キスをしながらお互いの服を脱がしてゆく。  
レズリーはふたりを熱い眼差しをもって嬉しそうに眺めている。  

 衣服を脱ぎ合うのも惜しむように、くちゃっぴちゃという唾液を絡めるハンナとロリィの情熱が  
波音に交じって微かにレズリーへと届いている。  
 そして早くレズリーと戯れたいという逸る気持ちと、ハンナとロリィのなかでレズリーを介しての  
新しい絆の誕生を歓びあいたいという気持ちがふたりのなかで可笑しくも絡み合って蕩けてゆく。  
「はあ、はあッ、はあん……よかったね、お姉ちゃん元気になって……」  
 ロリィの華奢な躰がハンナのなかでくなくなと揺れて、幼き乳首をハンナの弾力のあるツンと  
上向くレズリーよりはいくらかは小ぶりながらも綺麗な女の子らしい乳房に擦り付けている。  
「はっ、はっ……そうだね、ロリィ……ひっ、あっ、ああん……んんっ」  
 昂ぶりで熱くひくつくハンナのアヌスにロリィの細い指がそっとやさしく弄って、それに応えようと  
ロリィのやわらかいぷりぷりっとした唇に擦り付けるようにしては捲り上げて舌をねっとりと  
挿入していく。暫らくふたりの顔は唇を熱く求め合ってくねくねと揺れて、ようやく離すのだった。  
「はっ、はあっ、はあ……ボ、ボクたちレズリーを待たしたりして、いけない子だ……」  
 ハンナはロリィの額に寄せて、鼻を擦り付けて言った。  
「いっ……いこう……ハンナお姉ちゃん……はやく……レズリーお姉ちゃんのところへ……」  
 レズリーは睦言を聞き及んで、ゆっくりと躰を仰向けに、ハンナとロリィに晒して四肢を  
ゆるやかに拡げて、レズリーは三人の愛のかたちを紡ごうとする。  
 ロリィがレズリーの顔の傍に正座を崩す格好で座ると唇を寄せていった。  
「お姉ちゃん、泣いちゃったときね、ハンナお姉ちゃんとロリィの奴隷になったのかと思っちゃった」  
「あら、そんないけない言葉、ロリィはどこで覚えたのかしら?」  
「やっぱりいけない言葉なのね……」  
「ふふっ、わたし、ロリィの奴隷になってもいいのよ」  
 すぐにロリィは烈しく顔を横に振って応える。  
「お姉ちゃんは、ロリィのお姉ちゃんなんだから。奴隷なんかじゃないもん!」  
 ロリィが砂の付いたレズリーのボリュームある乳房を昂ぶって少し力込めて握るよう揉み  
しだいていた。かといってさほど握力もないロリィのことだから、むしろ丁度いい刺戟でやさしい  
波紋が拡がっていった。むしろ、愛らしい妹のその気持ちの方が、赫く真珠を輝かせている。  
でも、またハンナやロリィの恥戯に身を委ね陶酔するのもよいものだとも考えていた。  
 レズリーは投げ出していた右手でシュルルッと黄色い大きな蝶をほとき、ロリィは唇を被せて  
レズリーの愛撫で喘いでいる熱い吐息を呑み込もうとしていた。  
 ハンナはしとどに濡らして砂がまばらに付着しているヴィナスの丘へと頬を寄せて擦り付け、  
腰骨を挟むように手のひらでじんわりと愛撫を加えていた。  
 砂の押し付けられる微妙な感触が、レズリーのヴィナスの悦びに拍車を掛けて顔を仰け反らせ、  
彼女の残されていた左手がハンナの短く刈ったさらっとした栗色の髪の毛に、もっと刺戟を頂戴と  
おねだりをしているかの様に掻き毟っていた。  
(ああ……とってもいい……こんなのって、ふたりとも昨日とは別人みたい……ああッ!)  
 昨日より今日の方がレズリーに寄せる執着のベクトルが全くといっていいほど違っている  
ことをレズリーはまだ知らされてはいなかった。  
 死の恐怖からの生還がふたりに、レズリーの肉体の上での確かさの生を求めて彷徨って  
刹那に狂おしく弄っていることが、彼女の花唇を赫く膨らませ露を滴らせて女を開いていっていた。  
 いつもはロリィが猫だったのに、今日ばかりはレズリーが猫にならざるを得ないだろう。  
ハンナにとっても散々に昨日責められた後だっただけに、レズリーの全く違った反応は好ましく  
とても愛しいものと映っていた。  

 自分のことをボクと呼び、男の子にあこがれて髪を短くして明るく振舞おうとするハンナには  
明確な変化が訪れていた。しかし、いくら男の子らしく振舞っていてもハンナの可愛らしさは  
分かる人には隠せるものではなかった。そのしなやかな美しさは極めて性的魅力となっているのだが  
残念なことにレズリーしか気づいてはいなかった。そのおんなの扉を少しだけ開いてくれたのが  
レズリーそのひとだったのだ。  
 感謝を込めて鞘にそっと舌を這わして唇で愛撫するようにしては愛でて、ルビィを艶やかに  
させると、そっと舌の尖りで押したりしてレズリーの躰を突っ張らせ、愛しい人にまたはばかりの  
ない悦びの苦悶をあげさせてしまう。  
 レズリーの烈しい仰け反りがロリィの可愛いらしい唇を弾いて、口を大きく開いて真っ白い  
前歯を覗かせる。ロリィはそのエロティックな光景に、ハンナにちょっとだけ嫉妬を持ちながら  
レズリーの今や潮ではなく汗で濡れてへばりついている砂を丁寧に払いながら御髪を無意味と  
知りつつも愛しさを込めて整えてやるのだった。ぴちゃっ、ぴちゃっとロリィの耳にレズリーの  
立てるヴィナスの神殿の淫音が聞こえていて、とても切なくなってきてしまう。  
「はっ、はあっ、はああっ、ああッ……また、またきちゃうううッ!」  
(ハンナお姉ちゃんばかりで、ずるい……ロリィもお口で愛してあげたいのに……あげたいのに)  
 ロリィはレズリーの躰に寄り添うように正座を崩した格好で蹲って、ハンナに責められて  
悦楽に陶酔する顔を抱きしめると我慢できなくなってしまい、ぐいぐいと頬擦りをした。  
「お姉ちゃん!お姉ちゃん!レズリーお姉ちゃん!好き!好き!好きなのおおッ!お姉ちゃん!」  
 レズリーは両手でロリィの頬を挟んで顔を起こしてにっこりと微笑む。  
「ロリィ、わ、わたしの顔を……跨いでちょうだい……さあ、いらっしゃい……あうっ、は、はやくううっ!」  
 ロリィは躊躇いながらも跨いで膝立ちになって、自分の無毛の秘所を喘ぐレズリーの唇にそっと  
降ろしていった。  

「啜ってあげるから……ロリィも……お豆をいじってね、ね、ねっ……ごめんね、ロリィ……」  
 ロリィはレズリーの官能に火照る顔を跨いで見下ろしていた。それだけでもロリィにはたまらない  
快楽だったに違いない。  
「ううん、ロリィ、とても嬉しい!ありがとう、お姉ちゃん!お姉ちゃん!」  
 ロリィの濡れて光っているやわらかなスリットをレズリーは喘ぎながらも舌で割り開き、溢れ出る  
愛液をちゅるちゅると啜り始める。ロリィは自分でもまだ女になり切っていないクリトリスを恐る恐る  
触れてみるのだった。レズリーはロリィの太腿をがしっと両手で捉え強く吸おうとする。  
「ああっ……あっ、あうっ、お姉ちゃん!お姉ちゃん!いやあ、いやあぁぁ……うあああッ!」  
 その嬌声も歔き声とともに、ロリィの開いた唇から唾液がたらっとこぼれ落ちる。膨らみかけの  
乳房から喘ぐ下腹をつーっと伝い落ちて愛液と交じり合い、ロリィは顔を烈しく左右に振りながら、  
無意識にレズリーの熱い唇にセックスを擦り付けていた。ハンナもふたりのやりとりに堪らなくなって、  
自分のしとどに濡れる茂みに手を伸ばして愛撫し始める。  
 白い砂浜に官能に爛れた花々を咲きほころばせて、蜜が朝露のように恥毛を輝かせ秘唇を  
艶やかに潤わせて、ひくひくと別の生き物のように蠢く場所に唇が妖しく吸い付いていて、こくっこくっと  
咽喉を鳴らしておいしそうに呑み込んだりもしている美少女たち。  
 またひとつの愛を学んで綺麗になっていた。そして少女たちの双臀は快美感に顫えて悶えていた。  
ハンナは愛撫を止めて、火照りきった秘所をレズリーへと合わせて、レズリーもハンナを受け入れやすい  
ように膝を浮かして両脚を更に拡げてはブロンドとブルネットのピュービックが熱く絡み合い蕩けゆくのだった。  
ハンナは律動を始めながらも、ロリィのしなる背中に舌を這わせて快美の焔にわななかせてやり  
薔薇色に真珠の素肌を染めあげる。  

 

 やがて三人の仔猫たちは、人としてお互いが分かち合える最高の瞬間を迎えたのだった。  

 

「ねえ、沖に行ってみようよ!」  
 ハンナが起き上がり白い砂浜を駆けだして、波に素足を浸けていた。  
「ほら、行こうよ!ふたりとも!せっかく海に来たんだしさあ!」  
 両手を青空に掲げて万歳をする。  
「ロリィ、やだあッ!もっとこうしてたいッ!」  
 砂浜に横たわって肘をついて躰をゆったりと伸ばしているレズリーのお尻に、ロリィは顎を  
ちょこんと載せて指を触れるか触れないかのタッチで彼女の背中を滑らせて遊んでいる。  
「ロリィ、泳げなかったっけ?」  
 レズリーが躰を動かして背中を愛撫しているロリィの方を見た。  
「えっ!泳げないことはないけれど。ロリィ、沖までなんか泳げない……よ」  
「や〜い、泳げないんだぁ」  
 ハンナが波に立って腰に手を掛けて、全裸のまま脚を拡げて波に仁王立ちになってロリィを  
茶化しに掛かる。  
「ハンナ、ロリィが可哀相だろ」  
 レズリーがハンナを注意するけれど、ロリィの瞳はどこか淋しそうだ。  
「ふふっん、そんなことは百も承知!ほら、ロリィ、おいでよ!心配することなんかないからさ!」  
 ハンナが裸で砂浜に寝そべっているレズリーとロリィのところに戻って来て、前屈みになると  
ロリィに手を差し出した。レズリーも不安そうなロリィの頬をやさしく撫でて促すのだった。  
「行こう、ロリィ。ハンナもああ言っていることだしさ」  
「う、うん……お姉ちゃん」  
「ほら、ロリィ、立ってごらんよ。ねっ」  
 ロリィはハンナの差し出した手とレズリーの頬を撫でていた手をとってゆっくりと立ち上がると  
ロリィを真ん中に挟んで、三人は陽に煌いている波へと駆け出して行く。  

 波に逆らって三人はバシャバシャと駆けていって腰まで浸かると繋いでいた手を解いて  
波に躰を揺らし、それぞれが泳ぎ出していった。ハンナがクロールで先に泳いで海中へと躰を  
真直ぐに伸ばしてさかなのように潜っていった。レズリーはロリィの泳ぎに合わせて平泳ぎで  
進んでいく。  
「ロリィ、潜ってハンナを見てごらんよ」  
「えっ、ロリィ、こわいよ……」  
「危なくなったら、助けてあげるから。ねっ、やってごらんよ」  
「う、うん……ロリィ、やってみる」  
 ロリィはハンナがしたように躰を真直ぐに伸ばして、脚で水を掻いて潜ってゆく。レズリー  
もロリィに沿うようにして潜っていった。海の青が拡がって、海面が陽によってキラキラと  
綺麗に輝いている。ロリィはさかなのようになって泳ぐハンナを見てうらやましくなっていた。  
白い裸身が真直ぐになってしなりながら進んでいく。伴走してくれるレズリーも長い髪を  
棚引かせたゆたうとさせせて、ロリィをドキッとさせていた。  
 レズリーの女らしい白い肢体が青のなかを優雅に、人魚姫か水の妖精のように泳いでいる。  
ロリィはどんどん潜っていって、海水が冷たくなることに少しだけこわくなって来ていた。  
 ロリィの幼い裸身を海の底の冷たさが包んでくる。でもその冷たさが総身を気持ちよく  
させているのもロリィは分かった。  
(とてもきもちいいよ、お姉ちゃん!ロリィ、おさかなになっているみたい!ううん、きっと  
ロリィおさかななんだよ!)  
 どんどん進んでいくロリィにレズリーは心配になって先に行って海面を指差す。レズリー  
の髪がケプルのようにふわっと揺れ動いている。ロリィは彼女に頷いて海面に向って  
泳いでいく。  

 ロリィも有頂天になっていたことに気が付いて海面をめざして泳いでいった。レズリーは  
海面に向って進むロリィの白い裸身が光のなかに蕩けていく様を見あげて感動しながら  
その後を追って海面へとあがっていく。  
  ロリィが海面に顔をあげると、ハンナが泳いで近づいてくる。  
「ちゃんと泳げるじゃない、ロリィ」  
「う、うん。ロリィ、出来るみたい」  
「でも、調子に乗っちゃだめだよ。波に逆らったりしちゃダメだから。ほら、ボクの首に  
捕まりな」  
「えっ、でもロリィ……」  
「遠慮なんかしなくていいから、捕まりなよ」  
 レズリーの視界にハンナとロリィの立ち泳ぎしている裸身が見える。自分たちが自然に  
抱かれているということに気が付いて少しだけ羞ずかしくなって、目元を赧く染めると  
静かに瞼を閉じて海面へと顔を上げた。  
「こらあッ!待てったらあ、ロリィ!せっかく助けてあげたのに!」  
「あれは、ロリィの王子さまが助けてくれたんだもん!ハンナなんかじゃないよ〜!」  
「もう、許さないぞッ!脚引っ張って食っちゃうぞ!」  
 海面でバシャバシャ騒いでいるハンナとロリィにレズリーが驚いていた。  
「やあだあッ!ハンナ、お姉ちゃんのばかあ!」  
「ば、ばかあって、こらあ!」  
 ロリィは海面に上がってきたレズリーを盾にしてハンナから逃げる。  

「もう、危ないからよしな、ふたりとも。いったいどうしたのよ?」  
「疲れただろうから、首に捕まりなって言ったら、レズリーの方がいいってさ!」  
 ハンナは少しだけむっとしていた。  
「なんだ、そんなことか。ほら、ロリィわたしの首に手をしっかりと巻きつけなよ」  
「うん!お姉ちゃん」  
「ああっ、甘やかしちゃだめだよ」  
「ハンナもしてほしいか?」  
「な、なに言ってんのさ」  
 三人は笑いながら浜を目指して泳いでいった。暫らくしてハンナはレズリーへと近づいてきた。  
「代わろうよ、レズリー」  
「だいじょうぶよ」  
「ほら、ロリィ、こっちにおいで」  
 ハンナはロリィに目配せをする。  
「うん、レズリーお姉ちゃん、ありがとう」  
 レズリーから離れて、ロリィはハンナの首に手を廻した。  
「さっきは、ごめんね。ハンナお姉ちゃん」  
「気にしてないよ、ロリィ……んっ、ロリィの乳首がこりこりってして背中がくすぐったいな」  
「やだあ、ハンナお姉ちゃん……」  
 ロリィが顔を羞ずかしさに薔薇色に染めていた。  
「だからかあ、ロリィを手放したくなかったのは。そうなんだろ、レズリー?」  
「な、なに考えてんのよ、ばか」  
 レズリーまでハンナを馬鹿呼ばわり。ロリィも面白くなって追随する。  
「ばか、ばか、ばか」  
「いいかげんにしろよ、もう!」  
 三人はまた笑い出して浜へと泳いで行く。  

「ロリィ、もう立てるよ」  
「砂浜まで連れてってよぅ」  
 ハンナは泳ぎを止めて歩き出すがロリィは彼女の腰に脚を絡み付けて離れようとは  
しなかった。  
「こら、ロリィ、降りろったら!ロリィ!」  
「まだ、やだぁッ!やだったらぁ!」  
 海中ではハンナの陸上で鍛えられた引き締まったお尻と、そのうえに載っているロリィの  
未成熟な小さなお尻が海中に揺らいでいる。  
「また、ばかやってんの。でも、おもしろい絵が描けそう」  
 レズリーも泳ぐのをやめて、ふたりの方を見てにっこりと涼しい微笑を向ける。  
「ひどいじゃないか、レズリー!こんどはきみがおんぶしなよ!」  
「そうよ、そうよ!ロリィをおんぶしてぇ!」  
「なあに言ってんだよ、こいつは!」  

 
 

「何してるんだろ?あいつら?」  
 海辺を散歩していた騎士が彼にしか見えない妖精の娘に話しかける。  
「泳いでるんでしょ……って、裸じゃないのぉ!ダメッ!見ちゃだめぇッ!」  
 ピコは稜の顔の前を飛んで手をいっぱいに拡げる。  
「こ、こらあッ!俺の顔の前を飛ぶなってばッ!見えないだろ!せっかくいいもの  
見てるのにッ!」  
「稜のしてること覗きだよッ!覗きしてるって、思われちゃうよ!はやく逃げようよ!」  
「逃げたりなんかしたら、それこそ覗きじゃないかよぅ」  
「そんなこと、どうでもいいからあッ!」  
 ピコの躰が稜の顔にぴとっとへばり付いた。  
「どうでもいいことないだろ!」  
「どうでもいいんだよッ!稜のばかあああッ!」  
 ここにも、哀しい馬鹿がひとり居た……。  

 

 ハンナはロリィを背中に抱えたまま躰を左右に烈しく揺すって、海面から覗かせた乳房が  
ぷるんぷるんと艶めかしく揺れる。  
「きゃあッ!」  
 もういちどハンナは海中に潜って水を勢いよく掻いて白いさかなになる。突然のことにロリィは  
開いた口に潮水をしこたま呑み込んでしまう。  
 ザバッと海中から立ち上がって、波を蹴ってハンナは浜へと駆けてゆく。  
「げほっ!げほっ!ハンナのばかあ!ばかあ!」  
 ロリィは両手の拳でハンナの背中をおもいっきりポカポカと叩いているが、ハンナはそれでも  
ちゃんと後ろ手にロリィの可愛らしいちっちゃなお尻を抱えて波をバシャバシャ蹴って走っていた。  
 そして、砂浜に男を見つけてハンナの脚が止まった。  
「覗き魔だったんだ……あのひと」  
「ねえ、ハンナお姉ちゃん……あっ、お、おろしてぇ!ロリィをおろしてぇ!」  
 ハンナは言われなくとも、あまりものショックで腕をだらりと下ろしてしまっていた。ロリィは砂を  
蹴って男へと駆けてゆき、その胸に飛び込んでいった。  
「王子さまあッ!ロリィの王子さまああッ!」  
 ロリィは裸のまま男に抱きついて、泣いて叫んでいる。レズリーは呆然としているハンナを  
通り過ぎて、男へと何も隠さずに堂々として近づいていく。  
(き、来ちゃったよぅ……どうするの、稜……)  
「俺はなにも悪いことはしてないぞ」  
 ピコに言ったつもりが、つい口に出てレズリーが受け止めた。  
「はだかの幼子を抱きしめて、いつまで惚けた顔をしてるのよッ!」  
 レズリーの平手がパシィーン!と音を立てて、裸のロリィに抱き付かれている男の頬を強く  
叩いていた。  
(あっちゃあ〜っ!だから、逃げようって言ったのにぃ。すけべ心なんかするからだよぅ)  
ロリィがその大きな音に驚いて、騎士の顔を見上げようとした。  

「ロリィ、こっちへ来るのよ!さあ、来なさいッ!」  
 裸で抱きついているロリィを男から無理やり剥がしにかかる。レズリーはヒステリーを起こして  
しまっていた。ロリィも騎士の困った顔を見てしまったことと、レズリーの行動とにパニック状態  
になる。  
「やだああッ!ロリィの王子さまなんだからあッ!王子さまなんだからああッ!」  
 ロリィの涙声に気が付いてハンナはレズリーに駆け寄り、彼女の肩を掴んだ。  
「やめてよ、レズリー!このひとなんだよ!この騎士さんがボクたちをホワイトタイガーから  
助けてくれたんだよ!だから……」  
「えっ?」  
 レズリーはハンナの言葉に我に返り、ロリィの涙交じりの声にいたたまれなくなっていた。  
(ねぇ、この金髪の娘、だいじょうぶかなあ……稜?)  
(俺の方がだいじょうぶじゃないってば)  
(それは仕方ないでしょ!)  
「ほら、きみ。綺麗なお姉ちゃんが心配しているよ。ね」  
 稜はパニックになっていたロリィの涙を指で拭うと肩を掴んでそっとレズリーの方へと  
押してやった。  
「ごめんね、ロリィ。わたしが悪かったわ」  
「ううん、ロリィこそ、ごめんなさい」  
「ロリィ、こっちへおいで」  
 レズリーの豹変のことがあったのでハンナの誘いに素直に従って、ふたりして少し距離を  
取った。  
「ごめんなさい、早とちりしたりして」  
 レズリーは恐縮して騎士の前に立っていたが、手を下腹の位置に組んでいるだけで別段  
とって裸を隠したりなどしてない。  

「いや、見てしまった俺の方も悪いわけだから」  
 レズリーの堂々とした態度に、暫し裸の少女と話していることを忘れそうではあったが、  
その少女とは思えないプロポーションは見事なまでに悩ましい色香に溢れていて、そちらの  
方に見るなと言っても気がいってしまう。  
 稜は自分の視線にも気おされないレズリーに逆に恥ずかしくなって、青空を見上げる。  
「あ、青空が綺麗だなあ。まっ、そういうわけだから、気にしなくていいよ」  
「綺麗でしょ、だから自然に抱かれてみたくなったの」  
「きみの躰も綺麗だよ、女神様みたいだ……」  
 青空を仰いだまま、騎士は少女に喋っていた。  
「ふふっ、お兄ちゃんみたいなことを言うのね」  
「あっ、か、顔も綺麗だよ……すごく……」  
(なに言ってんのよ!ばかあ!)  
(お兄ちゃんて誰?)  
(そんなこと、知らないわよ!いいから、はやく帰ろうよ!)  

 ロリィはハンナの裸の前に立って、ハンナはロリィの前を隠すように手を組んで抱いて、少し  
離れてふたりの様子を見ていた。するとロリィがハンナを見上げて口を開く。  
「なんか、なごんじゃってるね。いいな、ロリィもああしたいな」  
「う、うん、ぶっきらぼうじゃないし……女の子モード入ってる」  

「じゃあ、俺、もう行くから」  
 騎士は裸のレズリーに背を向けて、砂浜を歩き出した。  
「まって!あしたの正午、ロムロ坂の喫茶店に来てよ!ふたりを助けてくれたお礼をさせてください!」  
 レズリーはロリィ見たく、騎士へと抱きつきそうなくらいだった。  
「別に気にしなくともいいよ」  
「ううん、わたしもお詫びしたいから……ダメですか……?」  

「げっ!レズリーが覗き魔にモーション仕掛けてるよ!」  
「ロリィの王子さまだってばぁ!」  

 
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