ソフィアの選択
ソフィアの舞台、その好機は早々にやって来た。ドルフィン国の傭兵としてこの地を
踏んで三年目の年明け興行の舞台に立つことになったらしい。ソフィアの実力と可憐
な美貌を持ってすれば主役も可能と思っていたが準主役というポジションとのこと。
ソフィアは落ち込むことなく、カミツレにある湖水のようにどこまでも透き通る美しい瞳
を輝かせ、可愛らしい薄桃色の唇が小鳥のように途切れなく夢を囀っている。彼女は
強くなった、そう遠くない未来に主役の座を勝ち取ることだろう。
そんなソフィアの楽しそうな横顔を彼女のこさえてくれたサンドイッチを啄ばみながら
眺めている。それが私の支え、戦場を生き抜く為の糧となっていた。
「ご、ごめんなさい……わたしばかり夢中になって喋ってばかりで……」
「そんなことないよ。俺にとってソフィアの微笑みはなによりのご褒美だから……」
親指に付いていたドレッシングをぺろっと舐めて、羞ずかしさに頬を染めて俯くソフィア
の顔をそっと掴んで横を向かせる。
「あっ……」
もちろん彼女は拒んだりせずに、目元が朱に染まる顔を私に晒してくれる。大樹の側、
マットを敷いてのバスケット越しのキッス。少しだけ舌を差し入れてやさしく唇を舐め回して
から、ゆっくりと唇を離す。閉じられた瞳のソフィアの顔が愛らしい。ソフィアとの交じり合った
唾液が名残惜しそうに細く長く糸を引いた。ソフィアの瞳も開かれてそれを見ていた。
「え、えっち……」
ソフィアの瞳がうつろで色に惚けているみたいだ。
「俺、君の前だからエッチになれるんだ」
(だ、だめだからね!ソフィアこれからお稽古があるんだから!襲ったりしちゃだめだから!)
「じゃ、じゃあわたしも……もっとえっちになる……」
ソフィアはバスケットを自分の方に寄せると胸のボタンを外し始める。
(ソ、ソフィアまでぇ……もう、やってらんないわ!)
下を向いてボタンを外している、ソフィアの胸元に私も手を掛ける。するとソフィアはパッと
両手を離して私の頬を挟んで口吻をした。そのまま体勢を崩してソフィアにしな垂れかかって
とさっ!とマットに沈む。
ソフィアの衣服を脱がしてブラのホックを外す。彼女は腕を交差して両肩を掴んでいる。
「えっちになるんじゃなかったのかい?」
もう、何度とみた真珠のように白い素肌なのに日々美しさを増していくようだ。その肌が
今、羞恥に喘いで快楽の赧に呑み込まれようとしている。
「あんっ……騎士さまのいじわる……」
可愛らしい天使の声が少し拗ねている。
「ほら、見せてごらんよ」
ソフィアの手首を掴んでマットに水平に拡げた。風が吹くたびに梢が揺れて、ソフィアの真珠
の裸身に降り注ぐ木漏れ日が艶めかしく乳房の上で揺れている。小鳥の囀りとソフィアの
熱い吐息が耳に心地よく響いて来る。私のペニスが烈しく脈打っていた。
「羞ずかしいよ……こ、こんな格好……嫌やあっ……」
ソフィアは乳房を私の目に曝け出されて、羞恥に顔を横に向けていた。
「ソフィアのお胸、少しは大きくなったかな……」
掴んでいた両手首を離すと、細い腕を辿ってソフィアの柔らかい脇を挟み、唇を張り詰め
ている薄桃色の乳首に被せていく。
解放されたソフィアの両手は頭を捉えて髪を掻き毟っていく。挟んでいる脇への
少し擦り付けるような愛撫に、右乳首への舌の責め。ソフィアの白魚のような
指は力を増して私の髪を絡め取っていた。
「騎士さんは……大きい胸が好きなの……ああん……はああっ……」
乳首から唇を離して、顎で乳房を撫で回す。
「どうして、そう思うの?」
「あっ……だっ、だって……さっき言ってた……わたし、レズリーみたいに……ないし……」
ソフィアの羞恥に喘いでいる顔に近づいて、両手で挟むと絹のようなソフィアの髪の感触が
指先に伝わってくる。ペニスはこれでもかといきり立つ。
「ソフィアのだったら何だっていいさ。小さくても、大きくても……つるぺただとしてもね」
「ばっ、ばかああっ……」
「このままでも好きだし、レズリーの胸みたくもっと大きくなっても好きだよ」
(何言ってんのよ、バカ!)
「羞ずかしいよ……いつも、わたしから裸にされて……」
ソフィアの艶やかな髪をやさしく撫でて、彼女の大きく澄んだ瞳をじっと見る。
「鎧脱ぐのってめんどくさいからなぁ……男から裸になっても格好つかない……それじゃあ、
こういうのはどうかな!」
ソフィアの背中を抱くと、転がって彼女を上にした。そして彼女の上体を両手で脾腹を
掴んで起こさせる。
「あっ……あああぁぁぁ……」
ソフィアの消え入りそうな喘ぎが洩れ、心もとない躰をどうにかしてと言わんばかりに
脾腹を支える両手首にソフィアの白魚の指が絡んでくる。唇から吐息が洩れて頭が
くなくなとして亜麻色の髪が美しくたゆたうとしている。
ソフィアのショーツはぐっしょりと濡れていて、セックスのカタチを浮き上がらせていた。
「俺のペニスをソフィアの綺麗な手でさわって……ほら、瞳を開けてごらんよ」
「は、はい……」
消え入りそうなか細い声だった。ソフィアは上体を支えるように掴んでいた私の両手首を
離して、膨らみきった股間にそっと添える。
「あっ……こ、こんなにも大きくなってるのね……」
事実、烈しくペニスはズボンを突かんばかりに屹立していた。ソフィアの不慣れな所為も
あったが、かえってそのことがやりにくくしていた。
「あせらなくていいよ、ソフィア」
甲斐甲斐しく動く細い指、それだけでも逝ってしまいそうなくらいだ。ようやく解いてズボンと
下着を下ろして屹立を外気に晒す。ソフィアの細い指が灼熱の肉棒に絡み付いて、ソフィアは
顔を近づけて羞恥に火照る頬を擦り付けた。
「硬くなって……こんなにも熱くなってる……」
「あっ、ああああああああっ!」
私はソフィアの細い指と頬の感触に総身を顫わせて弓なりに仰け反った。ソフィアは自分
が初めて責めに転じたことを悟って、もっと積極的になっていった。片手で私の皺袋をやさしく
揉みしだき、怒張を握り締めている手は彼女の柔らかい頬にぐいぐいと擦り付ける。
「かっ!ああっ、うあああああああっ!」
ソフィアの熱い吐息が下腹にそよぎ、かと思えばふるふると揺れるソフィアの長い睫毛が
灼熱の肉棒を悩ましく擽っていく。ソフィアの膣内(なか)に行く前に吐き出してしまいそうだ。
何かよそ事を考えなければ持ちそうに無かった……ピコ!そうだ、ピコ!ピコ!
(なんでわたしがよそ事なのよ!しっつれいしちゃうわねっ!すかたん!)
ソフィアは悪戯っぽく私に微笑むと可愛らしくピンクの舌を出すと棹の頂上を目指して
ゆっくりと舐め回しながら這い上がっていく。
「ソ、ソフィア……で、射精ちゃうよ……」
ソフィアの唾液がなめくじが這った軌跡のようにキラキラとひかる。
「ご、ごめん……ホントに射精ちゃいそうなんだ……」
ソフィアは右手でペニスを握ってリング状にして扱き、舌は亀頭をゆっくりと目指している。
皺袋を揉みしだいていた左手は、しなやかな脚を揃えると、くの字にして引き寄せてショーツ
のサイドに指を掛けて、そっと引き下ろしていく。ぐっしょりと濡れている為に股間にあたって
いた布地が引っ付いていて、ゆっくりと剥がれて行った。
ソフィアは左脚を心なし引き付けてショーツを抜き取った。その間にも、ソフィアの舌は赫黒
い亀頭へと近づいていく。いくらおとうさんのを見慣れていたといっても、最初の羞じらいの
頃に較べれば雲泥の差……いや違う、私の少年みたいな反応がソフィアの官能を駆り立てて
いるのだろう。傘の部分に舌がついに触れて唇の感触も伝わってくる。もはや限界だった。
びゅくっ!びゅるっ!と宙に高く舞う。尚もソフィアの頬にあたりながらもしぶかせている。
一瞬、彼女は驚いて動きを止めていたが、勢いよく白濁を噴き出し続けている鈴口へ唇を
被せてきたのだ。
「あああっ!ソ、ソフィアああああああああっ!」
私の腰が跳ね上がってしまって一気にソフィアの咽喉奥を突きあげてしまう。
「んぐうううっ!んんんっ!」
「ああ……ソフィア、ごめん……よ……」
もう自分でも何を言っているのかも分からなくなっていた。腰を引こうとするも左手に
尻肉を掴まれ、唇がペニスを挟んで離そうとしない。主導権はソフィアにあった。
「ソフィア……」
吐き出した物を更に搾り取ろうと吸いたてている。ソフィアは汗で頬にへばりつく髪の毛
を掻きながら白い喉をこくんと鳴らして、躰をゆっくりと起こして膝立ちの格好で私を跨ぐ。
唇からは白濁が滴っていた。
いくらソフィアが妖しく変貌しょうとも限りなく処女に近く愛しい、いつまでも果てることなく
抱きしめていたい。セックスに耽溺するのではなくソフィアに溺れていた。
しかし、ソフィアには正式な婚約者・ジョアン・エリータスという家柄のしっかりとした貴族
の男がいた。それなのに、私は彼女にこんなにも深入りしてしまい安らぎさえも得てしまって
いる。
(ソフィア、俺はどうすればいい……一時の戯れか……君を奪ってどこかへ行って
しまいたい!)
ソフィアは左手で彼女の唾液で塗られたペニスを握って、右手で濡れそぼるセックスを
逆ヴイ字に指で拡げると秘孔へと添えて、ゆっくりと腰を沈めていく。腰をペニスに沈め
切る瞬間、下を向いていた顔がゆっくりとあがって、私と目が合いソフィアはやさしく
微笑んで、顔を反らせていく。美しく細い眉が寄って、眉間に官能の喘ぎの皺を作って、
亜麻色の髪は真珠の素肌の背中に真直ぐに流れていった。
「ソ、ソフィア……君は俺のた・か・ら……だ!」
セックスをお互いに昂めるための小細工などでなく、本心からの言葉だった。ソフィアは
ゆっくりと律動を始める。仰け反っていた頭も戻って顎を引く。薄目を開いて私に笑みを
浮かべては、また眉が吊りあがっていく。愛という言葉が重かった。
私はソフィアの不安定にたゆたうとする躰を起き上がってしっかりと抱きしめる。ソフィア
は私の肩を掴んで烈しく腰を揺すっている。
(俺はこんなにも君を愛していて、こんなにもソフィアが欲しいんだ!)
木々がザザーッと磯のようなざわめきを立てていた。
「どこまでも、ソ、ソフィアとこうして……いたい……許されなくとも……あ、愛しているッ!」
「ああ……あっ、ああん……はあっ……」
ソフィアの吐息だけが熱く、森に私の愛という言葉だけが空しく響いている。小鳥の
美しい囀りが私を嘲笑しているかのようだ。
「愛している!愛しているんだ!どんな謗りを受けようとも、ソフィアを愛しているんだああぁぁッ!」
私はソフィアの揺れる乳房に顔を擦り付けていつしか母親に甘える子供みたく泣いていた。
「はっ、はっ、あっ、ああ……あ、愛して……ます……だ、誰よりも……はううっ……あうっ
……あなたを……愛して……るうううううううううううッ!」
乳房に埋めていた顔を上げて、ソフィアの顔を両手で挟んだ。彼女も泣いていた……。
私たちの密会は人知れず森のなか、何度素肌を重ねたかも忘れるぼに……師匠に叱られて
拗ねて私に会いに来たのが遠い昔にさえ思える。しかし、彼女の口からハッキリと愛という
言葉は聞いたことはなかった。
「はっ、ああっ……あ、愛しているの……騎士さまを……はうっ……んんんっ」
セックスの昂ぶりに歔いて、愛という言葉の重みにソフィアは泣いていた。私はソフィアの
愛を紡ぐ言葉を遮って頬を両手で挟んだまま唇を擦り付けていた。
「ソフィアが欲しい!もっと、もっと欲しい!」
「んんっ、愛してる……愛してるの……愛してるッ!」
烈しい嵐のようなキッス、唇が離れる度に愛という言葉が零れてくる。ソフィアの躰を仰向け
にして私は覆いかぶさっていく。
「もっと、もっと、わたしのなかに入ってきてええぇぇぇぇぇッ!」
「ソフィア、熱い……蕩けそうだよ……」
ふたりの手が力強く絡み合って、至福の場所を目指していく。私とソフィアはセックスの
幻想から醒めた時、本当の愛を口にすることができるのだろうか。その棘は小さくても
ふたりにとっては烈しい痛みとなっていた。想いは叶うと信じたい、信じていたかった。
戦況は徐々にではあったが好転しつつあった。このまま一気に攻め込めば勝機をもぎ取る
ことも可能かもしれないが、かつてのドルファンの領地、ダナンに居座り続ける傭兵騎士団
ヴァルファバラハリアンがドルファン国の命取りとなっていて、プロキアが突きつけた咽喉元
の刃だったのだ。
戦場にて、その武勇を轟かせた八騎将軍の何人かを退けはしてきたが、その手馴れとの
闘いは絶えずぎりぎりのなかでの読み合いだったといってもいい。剣技に生きる者ならば
誰もが熟知していること、必ずや強い者が勝つという心理が骨身に滲みていた。
同等もしくは、それ以上の力を有した者たちもいた。その鬩ぎ合いに倒れることなく私は
生きてこれた。もし私が強くなったとすれば、剣技にではなく心に僅かに差があったから
なのかもしれない。ヤング教官の教え、クレアさんが私に託す想い、ドルファン学園の平和
を信じ続ける乙女たちの為、この美しく心安らぐドルファンの……何よりも私を愛してくれる
彼女、私が愛したソフィアの為に生きて還ると信じていた。
だが、そう言っては剣の露となって消えて逝った仲間を見てきたのも事実……また敵に
於いても大義もあり守るべきものもある。
(だめだよ……隙をつくったりしちゃあ……ソフィアの為にもがんばってよ!)
「ありがとう、ピコ。わかってるさ……わかっているとも!」
ピコが羽ばたいて私の頬を抱きしめながら励ましてくれている。そのピコを左手でやさしく
包んだ。
「好転した戦況、俺の居場所が隙となるか好機となるか、見極めてやる!」
稲妻が夜空を裂いて、烈しい音を立て窓を雨が叩いている。きゃっ!と言ってピコが
しがみ付いてくる。
「心配ないよ、ドルファンは勝つ。俺はもう一度生きるために、ソフィアの元に生きて還って来るよ!」
(必ずだよ……必ずだからね!)
「団長!本体が動きました!まもなくレッドゲートが突破されます!」
その刹那、閃光が瞬き雷鳴が轟いた。
「主力をゲートに回せ!他の要所の防衛も侮るな!俺もすぐに行く、行けえッ!」
「はっ!」
立て掛けていた剣を帯刀し心を引き締める。
「行って来る、ピコ!」
ピコを振り返らずに部屋を飛び出していく。
(強くなったんだよ!八騎将の誰よりも強くなってるんだよ!そうでなきゃ神の刃なんか
体得できるわけないじゃないのさあッ!みんなの想いがあんたを強くしたんだよ……
強くしたんじゃないのさぁ……還って来ないと許さないからねッ!)
部屋にひとり残したピコの泣き叫ぶ声が聞えてくる。
「みんな!ダナンに主力を裂かなかったことで読み勝ったと思うな!これが最後の闘いと
なる!気を締めて懸かれッ!」
おーッ!というドルファン兵士と傭兵の混成部隊の士気はいやがうえでも高まった。
雨は大粒となって視界を遮るまでになっている。斥候の歩兵が地を蹴って突入して来た。
ドルファン側も応戦し剣を交える、斬り合いなどと呼べるものではなく、死力を尽くした男たちの
剣と剣との殴り合い。稲妻が闇夜を裂いて、一瞬戦場は真っ白となって鬼の顔を映し出す。
「気おされるな!ドルファンを守り抜けぇ!愛する者を守れッ!」
弓の雨が降り出してきた……まだだ!まだだぁ!知将ならば次の一手があるはず。
「凌げぇ!凌ぐんだぁーーーッ!」
(馬軍の蹄の音が近づいてくるよ!備えて!)
ピコの声が聞えてくる。
軍団長・ヴォルフガリオの騎馬隊が特攻を嗾けてくる。豪雨でぬかるんだ大地を抉って
の疾走がドルファンに迫ってくる。
「堪えろ!堪えるんだッ!」
弓の雨は烈しさを増していく。兵士たちの視界にはブラッディアーマの魔王の姿が見えて来る。
「堪えろ!引きつけろ!」
(読み合い、いやこれは奴と私との一対一の鍔迫り合いだ。ヤング教官、俺に力を貸してくれ!)
「いまだああッ!弓兵、工兵動けええぇぇぇぇぇッ!」
雌雄は決した。ドルファンはプロキアから勝利をもぎ取った。悪くとも和議に持っていける。
この国を守りきった……愛する人の住まう国をこの手で守ったんだ。
「おい、終わったぞ。これで還れる」
ぬかるんだ泥に両手をついて肩で息をしている兵士に手を差し伸べた。その時、崩れていた
馬が動いて、巨人がぬっと立ち上がった。ゆっくりと私の方に近づいてくる。巨人を取り囲むように
威嚇する兵士たちも手を出せずに、彼が動くたびに輪を拡げていた。
「さあ、早く立ち上がれ」
「は、はい」
「我が名は破壊のヴォルフガリオ。この国を守りし者よ、我と剣を交えよ!」
「みんな、手を出すな。下がっていろ!我の名は巫女那・稜、お相手いたす!」
私は剣を上段に構え間合いを詰めていく。デュノスが先に動いた!早い!ガシャーン!
と巨人の剣が重く圧し掛かる。
(防御で凌げるか……一撃の必殺剣に賭けるしかい!)
「でぃやあああああああッ!」
デュノスの剣をやっとの思いで弾く。デュノスは踏ん張りきって剣を斜めに真直ぐに
構えた。
「く、来る!躰よ、持ちこたえてくれ!」
「ゴッドブレス・へヴンスドアああぁぁぁぁぁぁぁッ!」
デュノスの放った衝撃刃が閃光となって私の全身を襲う。
「ぐっ、ぐはっ!」
血反吐が雨に打たれる泥の上に吐き出された。
(私は倒れない、こんな処で死んでなるものか!)
「た、倒れぬのか!こ、これまでか!」
(デュノスが私の間合いに踏み込んできた!いまが時だ!仕掛ける!)
「秘剣・舞桜斬んんんんんんッ!」
「うおああああああああッ!」
ガッシャーン!と鍔迫り合いに閃光が光った。
(き、効いていないのか?いや、剣が軽くなっている!これなら、生ける!生きてやる!)
「でりゃああああああああッ!」
破壊のヴォルフガリオの巨体が仰け反って剣が上段に掲げられた時だった。バシャーン!
という轟音と落雷が彼の剣を直撃した。私もその衝撃に躰を弾き飛ばされて泥を転げ回る。
剣を突き立てて、どうにかこうにか起き上がった時、敵の将は立ったまま剣を天上に掲げて
絶命していた。私は泥に両膝を付く。
(勝った……ピコ、勝ったよ……ソフィアの国を守ったよ……)
(おめでとう……稜!よかった、ほんとうによかったね!)
天上を見上げて降り注ぐ大粒の雨に涙に濡れる顔を晒す。
「団長、奴がこんな物を……」
「て、敵といえ軍を束ねた将……丁重に扱うんだ!」
「も、申し訳ありません!」
「みんな、我々は勝ったんだ!ドルファンを守り抜いたんだああぁぁぁぁぁぁッ!」
「オゥーーーーーッ!」
城門は兵士たちの歓喜の声で溢れかえっていた。
「ねぇ、本当に見に来てよね!」
「ちゃんと行くよ!ソフィアのアドリブも見たいしね」
「バカ……」
ソフィアは立ち上がって服を整えると前屈みになって、大樹にもたれて座っている私の顔を
手で挟んで口吻をする。
「ありがとうございます、騎士さま……還って来てくれて」
唇を離すと羞ずかしそうに微笑するとソフィアはバスケットを持つと駆けて行った。
「本当に来てくださいね!」
「必ず行くよ!必ず……」
(ねぇ、どうしてソフィアを抱いちゃったの?死ぬかもしれないから?ちがうよね、ちがうって
言ってよ!)
「俺、そんなに物分り善くないよ、ピコ。怖かったんだ、ヴォルフガリオが。まだ、手が顫えて
いるんだよ。だから、ソフィアの温もりが欲しかったんだ」
(勝てるよね、負けてやろうなんて思ってないよね!)
「だから、ソフィアを抱いたんだ……彼女を道具かなにか見たいに扱ってしまったけれど……」
(ソフィアならきっと分かってくれるよ、きっとそうだよ!)
「墓所へ急ごう、ピコ!」
(う、うん……ソフィアの為にも勝とうね!)
一昨日の雷雨が嘘のように晴れ渡っていた。共同墓地にはまだ相手は来ていなかった。
暫らくして赫いマントを纏った騎士が私を目指して近づいてくる。
「ライズ・ハイマー、俺は君とは剣は交えたくない!収めてはくれまいか!」
隠密のサリシュアンは動きを止めてゆっくりとマスクを取った。
「そなたが我らの前に立ちはだかって退けられた同胞の恨み、そしてヴァルファの無念、
理由ならばいくらでもある!」
「だめということなのか……」
「戯けたことをぬかすな!剣を抜かれよ!抜かぬというのなら、わたしから参る!」
ライズが剣を抜いて地を蹴った。
(いま間合いを詰められてはまずい)
「ええい!ちょこまかと墓を盾にせず闘わぬかあああッ!」
墓石に手を掛けしゃがみ込み、ライズが駆けた時を狙い大地を蹴ってロケットのように
烈しく彼女にぶつかって、柄の先がライズの腹を抉った。
「ぐはっ!プ、プレシズ・キルううううぅぅぅぅッ!」
もんどりをうって転げるライズはその体勢で必殺剣を放つ。秘剣は一発必中のもので
連発は効かない。一度外してしまえばそれまでのこと。左肩に食らったがまだやれる。
「舞桜斬んんんんっっっっ!」
ライズの剣が折れて弾き飛ばされた。ライズは飛ばされた剣に這って駆け寄り柄を握ろうと
するが、もはや剣を握る力は残されていない。腰を落としたまま開いた手を呆然と眺めている。
「君の負けだよ、ライズ」
「あ……ああ……うわああああああああああああッ!」
拳すら握れなくなった手を振り上げて地面に叩き付ける。
「よ、よせ!ライズ!」
彼女の両手首を掴んで抱きしめた。
「き、貴様にわたしの何が分かると言うのだ!殺せ、殺せええぇぇぇぇぇッ!」
「お、落ち着け、ライズ!こ、これは父上が君にしたためた物だ!」
雨でインクは滲んで読みにくくはなっているが、かろうじて読めないことはなかった。
「そ、そんなもの見ずとも、父上の願いぐらいわたしには分かっている!もう、わたしには
何も無いんだ、りょう……何も残ってないんだよ……」
闘っている時からライズが感情だけで剣を握っていたのだろう。私は傷ついた彼女の心
をきつく抱きしめる。
「りょう、わたしを抱いて……あなたが、ソフィアと付き合っていることは知ってます……
それでも、わたしを抱いて欲しい……それを支えにこれからを生きて行くことが……
りょう……お願いします……」
ライズは私の胸に背中を預けて、顔をうな垂れて泣いていた。
「いくらなんでも、それは出来ないよ……」
ライズは躰を顫わせて嗚咽する。
「敗軍の姫として……陵辱されるのでもいいから……犯して……ください……りょう、おねが……」
ライズの顔を捻じって彼女の言葉を唇が奪う。赫い瞳が瞑られて歓びの雫が頬を伝う。
鋼の鎧に抱かれた赫き鎧の復讐の戦士は、ただの少女となって私の腕のなかにある。その
ライズ・ハイマーの心の鎧をゆっくりと解き放つ。
「あ、あなたも鎧を……とって……」
ライズの鎖帷子がもどかしかった。私も次々と鎧を落として少女と同じ格好となって躰を
一緒に揺り動かす。ライズの手が私の頭を引き寄せて、深く唇を求めてきた。ふたりの帷子が
擦れ合うシャリッという音が、ペニスを大きくしていた。遠慮せずに私は彼女の口腔へと侵入
すると、官能の昂ぶりからなのか絡んでくる舌が顫えているような気がしていた。もしかして
彼女の紅の塗られた赫い唇だったのかもしれない。どんな気持ちで紅を注して臨んで
来たのかと思うと胸が痛んだ。
ライズを私の方を向かせてお互いの鎖帷子を落として、胴着を脱がし合う。ライズの赤に
私の黒は肩を肌蹴られて背中の後へとゆっくりと落ちていった。
「ライズの化粧しているところ初めて見たよ……」
それは私を殺す為に施されてきたもの、女として死を覚悟せしめたものであるに違いない。
「ご、ごめんなさい……りょう……す、好きだったの……」
ライズは肌蹴た上半身を腕を交差させて顫える肩を掴んで乳房を隠している。私は彼女の
頬をやさしく両手で挟んだ。
「いまはふたりは恋人だ……それでいいよね、ライズ……」
私の黒い瞳のなかにライズの涙に潤う赫い瞳が映っている。
「は、はい……あ、ありがとう……りょう……」
ライズは静かに瞼を閉じると睫毛が微かにわなないている。私はライズの唇にキスをした。
「ライズ、君の乳房を俺に見せてよ」
「わ、わたしの胸……ふつうの女の子のとちがうの……」
私はライズの羞恥を無視してやさしく両手首を掴んでゆっくりと剥がして行く。
「あっ……いやああ……羞ずかしい……」
並みの兵士なら一瞬で切り捨ててしまうほどの手馴れ、極限までに鍛えられた肢体に
無駄な脂肪はなかった。乳房をそっと触ってみる。確かに筋肉だったが、少女らしい弾力と
鍛えられた美しさと彼女の気高さがそこにあった。
「綺麗でとても柔らかそうだよ」
手でそっと心なし持ち上げてつんと張り詰めている薄桃色の乳首を唇に含む。
空いた手でもう片方の乳房もやさしく愛撫する。乳首を唇から離して、汗でしっとりと濡れて
いる乳房に頬を擦り付けながらライズに私は語りかける。
「柔らかくて、とても女の子らしいよ、ライズ」
「ありがとう……嘘でもうれしい……りょう……」
「うそなんかじゃないよ、ライズ」
ライズは乳房を愛でている私の頭を赤子をあやす様にやさしく撫でていた。
「あっ……ああん……」
乳房を揉みしだいていた手を腰布のなかへと滑らせていく。
「ライズ、のここ濡れているよ」
私はライズのしとどに濡れる繊毛を指に絡めて弄び、セックス全体を手のひらでやさしく
覆った。
「い、いやあっ……りょうの……えっち……」
「えっちじゃないよ……恋人なんだから、好きってことさ……」
「も、もう……あ、あうう……」
「だから、ライズもえっちになって俺のを触ってよ……」
私はセックスを覆った手のひらをやさしく上下にゆっくりと擦っては、少し握り締めるようにして
セックスを掴んでいた。
「うっ……あああ……ああん……」
ライズの右手がルージュに塗られた唇に近づいて歯を人差し指に立てるとグローブを
すっと脱ぎ捨て、私の膨らみきった股間に寄せてくる。右手が反されて遠慮がちに指の感触
が皺袋から亀頭へとすうっとなぞられた。
「はっ、はっ……あっ……か、硬くなってる……よ」
ライズの微妙なタッチが背筋にぞくっとした快美を走らせる。
「お、俺もライズが……ほ、欲しいんだ……」
私はズボンのホックを外して脱ぎ捨ててペニスをライズの目の前に晒す。彼女は私の怒張を
もう一度やさしく下から上へと撫でる。私の肉棒はびくんびくんとライズの愛撫に反応した。
「り、りょうの……オチンチンが……は、跳ねてるよ……」
「う、嬉しいんだよ……ああっ……ラ、ライズ……き、君の手が、とても気持ちいいんだ」
「よ、悦んでくれてるの……」
「も、もちろんさ……」
そういって私はゆっくりとライズを押し倒す。彼女の躰はサリシュアンのマントに仰向けになる。
しかし、まだ腰布は付けられたままで、ライズの深紅の脚の具足が排除を妨げていた。
「いいよ、りょう……引き裂いても……引き裂いて、りょう!」
「ご、ごめんよ、ライズ……」
私は腰布に両手を添えると一気に引き裂いた。シャアーッという絹を引き裂く音と供に
ライズの男に堕ちる声が私の耳に残った。
ライズの晒されたセックスに手を近づけて、小さな女の命の膨らみをやさしく愛撫する。
「ああ……あううう……」
腰布が引き裂かれた時、そしてクリットの愛撫にライズの腰は二度びくんと跳ね上がった。
ライズは両手で顔を隠している。
「ライズ、君の膣内に入れるからね」
「き、来て……りょう……お願い……」
怒張を秘孔にあてがってゆっくり沈めていく。私はライズの顔を覆う両手を剥がして、その手を
やさしく握り締める。まだ痺れているらしく弱々しく握り締めてくるのがいじらしい。
その分、私がライズの手を力強く握り返す。彼女の手は強く握ろうとしては力なく開かれて
は痙攣してしまう。。私のペニスの切先が彼女のベールにあたり、ゆっくりと押し拡げて行こうと
していた。
「んっ!」
赫いルージュに塗られた下唇をきつくぎゅっと噛んで、そしてライズの黒髪が額に閉じられた
瞼に汗によって紅潮した顔へと張り付いていた。私は動きを止めてライズに言葉を掛けた。
「痛かった……ごめん……」
彼女の左手を離して、汗にへばりつく髪をひとつひとつ取り除いていく。解き放たれたライズ
の手は行かないでとばかりに私の右手を追うのだが力が入らず、胸元に寄せられた。
ライズは一気に刺し貫かれることを望んでいたのかもしれない。
「痛かったら、我慢しなくともいいよ……ライズは女の子なんだからね」
「で、でも……わたしにはこの瞬間しかない……遠慮せずに貫いて……」
痛みに閉じられていた瞼が開かれて、赫い瞳が訴えていた。
「ごめん、ライズ……君の処女は俺が貰う!」
止めていた腰をゆっくりと落として、きつい締め付けの秘孔が徐々にペニスで満たされていって
ライズは開帳された。
「ひっ……い、痛いいっ……あっ、ああ……」
「ぜんぶ、ライズのなかに入ったよ……わかるだろ……?」
「か、かんじるよ……りょうがわたしのなかでひくひくしてる……ね」
赫い瞳が涙で溢れんばかりに潤っていた。
「痛かったんだね……」
「う、うん……この躰が裂かれるみたい……神様が……わたしに罰を与えてる……」
(父上との剣術の鍛錬でさえも思わなかったのに……)
「どうして、そう思うの?」
「ソフィアに……あっ……ご、ごめんなさい……わ、わたし……」
「そんなことを言うライズは悪い子だよ……」
そう言って躰を密着させ、闘う為に施された赫いルージュの唇を私は掠め取る。
「君の処女を貰いに行くからね……いまだけは、俺はライズのものだから……」
密着して裸身を重ねあい、静かに腰を動かしていった。ライズは拡げられていた
両脚をくの字に掲げると、私のストロークを繰り出す腰に交差させ、より深い繋がり
を求めて羞恥を捨てる。
刹那的な肉の戯れだけにはしたくなかった。破瓜の痛みだけを刻ませたくないからこそ
素肌のふれあいを欲し、我が肉体全身全霊で彼女の総身を愛撫して少しでも女の悦びを
感じて貰いたい。感情のみの繋がりでも満足するライズかもしれないが、例えかりそめで
あっても男と女の愛し方を彼女に贈りたい、自己満足としりつつも。
ライズの乳房が私の胸板で押しつぶされて、硬くしこる乳首が転がされ、下腹によって
クリトリスがじんわりと擦られていく。
「り、りょう……か、からだが熱いの……あっ、ああん……」
「い、痛くない……かい……?」
「わ、分からない……膣内(なか)が……痺れるようで……熱いの……分からない……いいっ!」
「ライズ……ライズ……ライズ……!」
彼女の名前を連呼して汗にぐっしょりと濡れて紅潮する頬を両手で挟み、何度も何度も
口吻をする。ライズに言った言葉が自分に跳ね返って、愛という言葉が出てこなかった。
その愛という言葉はソフィアにこそ贈ったものだから。
かりそめの愛に苦悶するなか知ってか知らずか、ライズは腰に絡めた両脚を強くセックス
に引き付けて、口吻している頭に腕を絡めて私を掻き抱いていた。
「ラ、ライズ……い、イキそうだ……ライズ……」
「はっ、はっ、はうっ……」
喘ぎの感覚もやがては短くなっていた。ライズの子宮を突きあげるのが、いつしか無上の
悦びとなって総身を顫わせると、自分の欲望を解き放っていた。
あっ!という短い声をあげて、苦悶に吊りあがり歪む眉……瞑られていた破瓜の雫で潤う瞳が
薄っすらと開いて、その瞬間を感謝するようにライズ・ハイマーは私に微笑み返す。
ライズは私の腰に絡み付けていた脚を投げ出して、息を荒くしていた……。
「も、もっと、もっと……あなたが……りょうが欲しい……!」
私は躰を起こしてライズの右脚をあげて、私の右側に撥ねさせて彼女もまた躰を捻る。その時にライズへの刻印の、赫の証が目に入って来た。セックスから溢れ出た二人の交じり合った残滓にも朱が
入って、地に敷かれた彼女のマントにとろりと濃厚なスープのように滴り落ちる。私はライズの
胸に腕を廻すと彼女を繋がったまま抱きかかえる。
「ひっ、ひぃーっ……」
ライズの上半身を墓石にあずける。まだ墓石にしがみ付くこともできなく、腕を組んで乗せて
そこに顔を熱い吐息を出しながら横向きにして置いている。彼女の赫の具足に守られた、
それでも鹿のように美しい脚。破瓜の疼痛が消え去らないのか微かに顫えて……私はライズのくねくねと誘うように蠢く腰を掴んで膨らみの退かないペニスを彼女の熱いヴァギナに突き入れる。
「ああっ……り、りょうのが奥まで来る……も、もういいから……わたしをコ・ロ・シ・テ……」
「アッ、アアア……ッ!も、もう……どうにでもしてちょうだい……り、りょう……殺してぇぇぇッ!」
抽送のたびに彼女の白い素肌に私の汗が滴り落ちる。墓所での男と女の背徳の交じり合い。
「り、稜……戦士のわたしに……と、とどめを刺してぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!」
「ラ、ライズっ!あ、愛しているッ!」
(セックスの為の戯言と取られてもいい、ライズに贈りたい!届けえぇぇぇぇぇぇぇぇッ!)
心地よい潮風がそよぐ。ドルファンの傷ついた戦士を休息させ癒すことのできる、やさしい
風が母のように頬を撫でて行く。ライズ・ハイマーという戦士は私の全ての行為を受け入れて
少女になった。
一羽の群れからはぐれたカモメが飛んできて、見下ろすように雲ひとつないどこまでも
澄んでいる蒼の天上へと駆け昇って白の美少女は空へと蕩けて逝った。
私のすべての恥戯を受け入れた少女は崩れることなく、墓石に躰をあずけて荒い息遣いを
していた。ライズが蕩けきった顔を私に向けて言った。黒髪が顔にへばりついて見ようによっては
鬼神ともとれなくもない。
「稜……私を殺して……!」
その言葉を吐き躰が墓石から滑り落ちていった。ライズの熱いヴァギナからぬるっと白濁を
射精したばかりのペニスが抜けた刻だった……。
ドン!という音が周囲を空震させる。北西の方角から黒煙があがっていた……ま、まさか!
地に崩れた少女の肩を掴んで私を向けさせ詰問していた。ライズは墓石に背をもたれて
泣いている。
「り、稜……私を殺して……殺してぇ!」
「泣いてちゃ分からない、どういうことなんだ!」
ライズの顫える細い肩を烈しく揺さぶっていた。
「だから……稜、私を殺してもいいから……そして、許して……ゆるして……!」
「殺してばかりじゃ何もわからないだろうがあッ!本当のことを喋らないかあああッ!」
ライズはひっ!と声をあげ竦みあがる。私は掲げた手のひらをライズの頬に振り下ろす。
振り下ろしたつもりだった……出来る訳がなくライズの慄く頬に手をそっと触れるだけが
精一杯だった。
「ライズ……ごめん、さよならだ……」
かりそめの愛は終わりを告げていた。私はペニスを始末もせずに脱ぎ捨てた服を掻き集め
着込む。いつしかライズが私の後を獲っていた。
「そのまま続けていて……」
ライズが鎧を取って付けてくれる。
「八騎将軍のひとり、血煙のゼールビスとしか私は知らされてなかったの……」
「稜はフィメールへ行ってちょうだい……わたしなりのけりをつけたいから」
「そいつは、決着をつけたいのだろ……なら、俺が行く」
「ラ、ライズ……は、ソ、ソフィアの……生死を……た、確かめてくれないか……頼む」
血を吐くような思いでライズに願い出る。ライズにしても同じことのはず。
「稜がそう言うのなら、劇場へ行くわ……」
鎧を着付け終わって私はライズを振り返った。情事が終わったままの格好、脚を守る
だけの赫の具足だけが彼女の素肌を隠すだけの姿態をじっと見られて俯きかけになる。
その哀しみの顔を引き止めてキスをした。
「俺は君を憎んだりしないよ……善良な人たちを欺き虐げる戦を憎むよ……ライズ……」
剣を帯刀して背を向けると走り出した。
「そ、そうね……戦争はゲームなんかじゃない……幾多の血が流れてしまった……うっ、
ううああああああああッ!」
ライズが崩れて地に両手を付いて天上の空に向けて泣き叫ぶ。
「ライズ!さらばだッ!」
同時に私もライズに叫んでいた。
(さ、さらばって、どういうことなのッ!ねぇ、答えてよ!答えなさいよッ!)
ピコが羽ばたいて私の頬にへばりついてくる。
「もう、俺に八騎将を相手するだけの力なんか無いよ、ピコ」
(ソフィアが待ってるんだよ!劇場に来てねって言ってたじゃない!ま、まさかソフィアが
死んだと思っているの!そうなんでしょ!ソフィア生きてるよ!ぜったいに生きてるよおおおッ!)
墓地を出て真直ぐ北を目指す。勝負を望んでいるのなら、きっと奴はそこにいる!