みつめてナイト  

夕焼けのスナップショット 

  ドルファン学園の帰りのソフィア・ロベリンゲが私を見つけて駆け寄ってきた。  
「あっ、こら!どこ行っちゃうんだよ!」  
 ハンナが走っていく彼女の背中に叫ぶ。  
「ソフィア、王子様と付き合っていたんだ……」  
 ロリィが溜息交じりに呟いた。  
「何のことだよ、王子様って?」  
「東洋からの傭兵さ、ソフィアがチンピラに絡まれた時の話し聞いたろ?」  
 レズリーがぶっきらぼうにハンナに説明する。  
「思い出した!あのヤング教官が高く買っていたという……へえ、ソフィアがねえ」  
「ハンナも少しはリボンでも付けて女の子らしくすれば。あんた、ロリィにも負けてるよ」  
「レ、レズリー……たら!王子様か……いいなぁ」  
 ロリィが少し嬉しそうに顔を赤らめながら、傭兵の顔を見上げながら楽しそうに微笑ん  
でいるソフィアの横顔を遠くから羨ましそうに眺める。  
「な、なんだよ!レズリー、言い過ぎだぞ!」  
 凄い剣幕でハンナは食って掛かる。  
「ほら、人の恋路を邪魔するやつはなんとかだよ」  
 レズリーはハンナの耳朶をぎゅっと掴むと歩き出した。  
「い、痛いよーっ!レズリー!」  
「ハンナ、あれ見ていてホントに羨ましくないのか?」  
「へっ?痛う!」  
「待ってよ、レズリーにハンナ!」  

 

  ソフィアは私を見上げながら、少し荒い息遣いで喋っていた。  
「俺は逃げたりなんかしないよ、ソフィア。それに友だちはいいのかい?」  
 あっ!と小さく息を呑んだ彼女の顔が真っ赤になって、ごめんなさいと言うと  
女の子たちを追おうとする手を私は掴む。  
「何か話があったんだろ?」  
 またソフィアはあっ!と声をあげる。こんな可愛い小鳥を群れに帰すのはもったいない。  
「あの……あした……」  
「せっかくだからロムロ坂の方へ行かないか、ソフィア?」  
 オーディションの告知があって、どれだけ落ち込んでいることだろうと来てみれば、  
自分の方が日々の闘いの疲れを癒されていた。  
「見てください、これ!」  
 ソフィアがテーブルに着くと、一通の手紙を差し出した。わたしは、それを受け取ると  
中身を開いて目を通す。  
「す、すごいじゃないか、ソフィア!おめでとう!レストランでお祝いするんだったよ!」  
 言ってしまってからハッとしたのだが、ソフィアは微笑んでいてくれた。  
「まだ、練習生ですよ!」  
「俺は未来のスターとコーヒーを飲んでいるんだ!」  
「騎士さんたら……」  
 真っ赤になってカップに瞳を落とすソフィア、しかし何かを思い出したらしく、その朱に  
染まった顔をあげてわたしに言った。なんて可愛いんだろ……。  

 

「あの……明日はお暇ですか……?」  
「ああ……武術の鍛錬があるけど……」  
(女の子からデートに誘っているのよ!ホント世話が焼けるわね)  
「ピコ……あ、いや……昼からならいいよ、うん、もちろんいいよ!」  
 よかったぁ!と言って胸の黄色のリボンのところで手を合わせて、心底嬉しそうな笑み  
をわたしに向けてくる。思わずぎゅっと抱きしめたくなる。  
「それじゃあ、明日は一日、私にお時間をください。ごめんなさい騎士さま、アルバイト  
に行かないと……」  
「送って行くよ」  
「い、いいです……明日たっぷりと会えますから。それじゃあ、また」  
 ソフィアはカフェテラスを後にした。ひとり取り残されたわたしは、嬉しそうにバイトに  
駆けて行く彼女の後ろ姿を眺めていた。  
(あんたも、はやくバイトに行くのよ!)  
「わ、わかったよ、ピコ……」  
(ソフィアから誘って来るなんて珍しいな。慰めるつもりが、これじゃあなんだかなぁ……)  
(もっと、男を磨かなくちゃね!)  

 次の日は早々に鍛錬を切り上げてソフィアとの待ち合わせの場所へと向かった。しかし、  
その前に寄りたいところがあった。  
心が浮ついていて訓練どころじゃなかった。それならどうして一日おやすみをとらなかったのよ!  
とピコに散々愚痴られてしまった。  

 

確かに、戦に身を置いている者にとっての時間は貴重だ。俺は死ぬはずがないと功を  
焦ったものが剣の露と消えていったのをずっと見てきた。  
 私にだって恋人ぐらいはいた。恋に落ちて守りに入ったときに魔の刻が私を襲い、彼女  
に助けられた。もう恋は終わったと思った。そんな荒んだ心の片隅に小さいけれど白く  
可憐なソフィアという花が咲いて、その控えめな椿が私を誘ってくれた。もういちど生きて  
見ようという思いが沸々と湧いてくるような気がする。恋人を亡くしたことから、もっと騎士  
として心を鍛錬しようと神の刃を体得すべく流転してきた。ソフィアはそんなわたしの翼を  
癒す止まり木なのだろうか。それとも家となるべき存在なのだろうか。  
 ヤング教官の墓石は何も答えてはくれなかった。私が去ろうとしたら、ひとりの女性が  
声を掛けてきた。  
「守るべきものがあって人は皆、闘えるのですよ……それは戦に限ったことでは  
ありませんよ」  
「ク、クレアさん……」  
 彼女はヤング教官の綺麗にたたまれていたマントを私にさしだした。  
(どうしたの!クレアさんはあんたに貰って欲しいと言っているのよ!)  
「おれには……ヤング教官の代わりは荷が重いです……」  
 クレアさんがマントを拡げると私の顔を両手でやさしく包んだ。潮風にマントが  
棚引く。クレアさんの白いマントとが蕩けあうように絡んでいた。  
「なら、もっと強くなって。あなたを待っている人の為にも。あなたを見てわたしを  
見ているような気がしたの」  
 クレアさんは唇を近づけてきて、そっとキスをした。慰めるような、励ますようなやさしい  
口吻だった。  

 

「もう迷いはなくなったでしょ。さあ、いってらっしゃい」  
「ありがとう、クレアさん……」  
(もう哀しい女をつくるのも見るのもたくさんだ……もっと強くなって……ソフィアを  
守りたい!)  
わたしは一礼すると、もう降り返らずに海を見下ろす頂の墓地を後にした。  
 セリナリバー駅に着くとソフィアが待ち合わせ場所にすでにいた。  
(少し遅れたね。ソフィア、怒っているのかな?)  
 私を見つけたソフィアが右手を掲げて手を振っている。急いで彼女の元へ走っていく。  
「ごめん、ソフィア……君を待たせてしまって」  
「いいんです、わたしが無理してお願いしたのですから」  
「でも……遅れた……」  
「謝ってばかりいないで、行きましょうよ!それにちょっとしか遅れてませんよ、ほら!」  
 ソフィアは私の手をいっぱいに引っ張って歩き出す。伸び切った腕の先に、今度は  
決して離すまいと誓った柔らかく白い手がある。私は少し強く握る。彼女には痛く感じた  
のかもしれない、立ち止まって私の顔を見つめるソフィア。すると彼女は顔を真っ赤に  
させて私の手をぎゅっと握り反してきた。  
「やっぱり、騎士さんには叶わないわ」  
ニッコリと微笑むソフィアだった。  

 ソフィアが誘ったのはレッドゲートだった。ソフィアをこの場所に誘ったことも一度もないし  
来るべき場所とは思っても見なかった。  

 

「ドルファン国は負けませんよね……?」  
「君がいる国を滅ぼしたりなんかするものか!」  
 ソフィアが私の胸に飛び込んできた。胸に頬を寄せて瞼を閉じている。私はソフィアの髪  
をやさしく撫でた。  
「わたし暴力や争いごとは嫌いです、勝手な女ですよね。わたしたちは騎士さんたちの  
お蔭で外の戦争も知らないでしあわせに暮らして行けるのに……」  
 ソフィアはわたしの顔を見上げる。  
「この国の為じゃなく、わたしの為にきっと帰って来て!生きて還って来てください!」  
 ソフィアの見上げる瞳が涙で潤っている。わたしは人差し指でその宝石を受け取る  
と言った。  
「ソフィア、君の為にきっと帰ってくる、きっとだ!」  

 私とソフィアはセリナ運河を遊覧するゴンドラで向き合って座っていた。  
「景色がとても綺麗……戦争があるだなんて……ごめんなさい……」  
「戦争のことは忘れて楽しもうよ。ねっ、ソフィア」  
彼女は風で乱れた髪を手櫛で整えようとする。ゴンドラが橋にどんどんと近づいて  
私は彼女の隣に座って橋を潜った時を見計らって唇を奪った。レッドゲートからの二度目  
のキッス。  
「騎士さんが駅に来た時、怖かったの……」  
「どうして、ソフィア?」  
 ソフィアは私の胸に頭をしな垂れかけている。そんな彼女を包み込むようにマントが  
掛かり、私はソフィアの細い肩を抱いている。  

 

「黒いマントが悪魔みたいで……ご、ごめんなさい……でも、今はなんかやさしい……」  
 私はもう一度、ソフィアの顎を手であげさせるとキッスをする。  

「あぶないから気をつけて、ソフィア」  
 私の手を取ってソフィアがゴンドラを降りる時、ちょっと揺れてきゃあ!と言って抱きついてきた。  
「大丈夫だった?」  
 ソフィアがこくんと頷く。  
「騎士さま。もう一箇所、御一緒してほしい処があります」  
「いいよ、ソフィアが誘ってくれるなら何処へでも行くよ」  
「ロムロ坂を上った頂の史跡の円形劇場に行きたいの」  
「ちょっとここからじゃ遠いけれどいいの?」  
「はい、今日じゃないと駄目だから……」  
 ロムロ坂は高級住宅街だが、その外れに史跡の円形劇場がある。史跡ではあったが  
修復管理されて、今も使われていた。ソフィアが初めて父親に連れられて舞台を夢見た  
場所だと聞いていた。  
 そこに着くと、人は誰もいなかった。時折、小鳥たちの歌声と心地よい潮風が吹いている。  
「さあ、早く早く!」  
 石の座席の間を潜って中央の舞台へと下りて行く。その頃、あんなに晴れていた空  
からぽつぽつと雨が降ってきていた。  
 ソフィアは舞台に一人上がると、黄色いワンピースのスカートの裾を掴むと腰を軽く  
落として礼をする。わたしは彼女に拍手を贈る。  

 

「騎士さん、お誕生日おめでとうございます」  
 そうか、今日はわたしの誕生日だったのか!  
(自分の誕生日を忘れるくらい闘いに染まっているなんてね!)  
 ピコのぼやきが聞えてきた。ソフィアが歌い始める。透き通るような天使の歌声だ。  
それは恋歌で人魚姫の悲恋をうたったものだったが、ソフィアの今の自分の気持ちを  
聞かされているようだ。その至福の時間はあっという間に過ぎていった。  
 私は暫らくソフィアを感動してじっと見つめていた。慌てて気が付いて彼女に拍手を  
贈りながら、舞台にあがって彼女を抱いた。  
「今までで最高のプレゼントだよ!ありがとう!」  
 そう言ってソフィアにキスをする。私が彼女から唇を離すとソフィアが羞ずかしそうに言った。  
「ほんとうのプレゼントはわたしなの……騎士さま……わたしを受け取ってください」  
(でも婚約者がなんて言っちゃだめだからねッ!)  
「ほんとに俺なんかでいいの?」  
(あちゃーっ!おんなじじゃないのさ!)  
 ソフィアは返事はしてくれなかったが、真摯な眼差しが全てを語っていた。そして瞼を  
閉じる。はじまりのキッス、軽く触れるか触れないか位のそっとやさしい口吻を何度も何度も  
ソフィアにした。ソフィアのマシュマロのような柔らかく甘い感触が伝わってくる。わたしは  
それを楽しむかのように左右に軽く擦る。  
 また、顔を離してソフィアの顔を眺める。あっ!という残念がるようなソフィアのか細く甘い  
声が洩れる。唇は昂ぶりに薄く開かれて、白い前歯が覗いている。  

 

その顔にはぽたぽたと雨が降り注ぐ。その表情は儚くて、どこまでも透き通るカミツレ地区  
の湖水の様だ。  
 わたしは顔を横にしてソフィアの唇を奪いに掛かる。上唇を捲るように舌でなぞって歯茎  
も舐める。ソフィアはビクンとして?を顫わせて、唇が開かれていく。ぐいっと唇を押し付けて  
ソフィアに更に口を開けるように促す。  
「んんん……」  
 天使の喘ぎが鼻孔から洩れた。ソフィアは私に逆らうことなく何処までも従順になっていく。  
私がソフィアの口腔に舌を入れても、顔を真っ赤にしながらもそれに応えてくれる。細い  
華奢な肩に添えていた手は、乳房をやさしく愛撫して左手は背中を撫で回してから、もっと?を  
引き寄せる。  
「ソフィア、君が欲しい」  
 私の興奮がソフィアに伝わっているはずだ。ペニスは痛いまでの滾りを見せて膨らんでいる。  
それをさらに分からせようと両手を双臀に廻して布地越しに浮き上がる勃起を擦り付けるように  
引き付けては、じんわりと双丘を愛撫した。  
「ああ……い、いやあ……」  
 ソフィアの初めての言葉らしい言葉があがった。それは拒絶などではなく、快美感の波  
に呑まれまいとする微かな抵抗かもしれない。  
「嫌かい?俺はソフィアが欲しいな」  

 

「騎士さんの意地悪……!」  
 少し拗ねたようなソフィアの声が可愛い。黄色いワンピースを脱がすとソフィアらしい  
純白の下着が姿を現す。女性らしさの丸みにはまだ満たないものの、少女らしい美しい  
肢体。ブラに隠された膨らみも大きくもなく、かと言って小さくもない。どちらかと言えばわたし  
好みの大きさか。しかし、いつかはクレアさんのようにと邪な考えが過ぎる。  
 ブラのホックを外して、官能に慄く乳房に右手を被せる。ブラがパサッと下に落ちて真珠  
のような肌の乳房が露になる。左手で露になった乳房をも覆って揉みしだいていく。  
 仰け反ってソフィアの細い首がぐんと伸びた。慌てて倒れ掛かりそうなソフィアの背中を  
右手で支える。マントを脱いで床に敷くとソフィアをそこへ横たえる。マントの裏地の赫に  
真珠の素肌のソフィアが眩しい。わたしも上着を脱いで、ソフィアの側に横になる。  
「はあ、はあ、はあ……波止場で出会った時から……好きでした……騎士さま……」  
「俺もだよ、どんどん好きになっていく。もう戻ることは出来ない!」  
 ソフィアは目を細めて嬉しそうにニッコリとしている。髪は雨に濡れて細く尖って妖しく  
乱れている。ソフィアの清楚さには似つかわしくないと思いつつも、私にしか見せることの  
ないもうひとつのソフィアだと思うと嬉しくペニスが硬くなっていく。  
「雨、寒くないかい?」  
「ううん、?が火照っていて冷たい雨が気持ちいいの」  
「ほんとだね、ソフィアの真珠の素肌に桜が咲いている」  
「さくら……?」  
「そうだよ、桜。ほら、ここみたいな色をした花なんだ」  
 私はソフィアの硬くしこった乳首を摘んだ。  

 

「ああん……桜の花、あなたと見たいな……」  
「いつか、連れて行ってあげるよ。そして一緒に見よう、ソフィア」  
 言ってしまってから、しまったと思った。ソフィアはドルファン国の人間で、この国で演劇  
の華になろうとしてがんばっている。そんな華を摘むことがわたしに許されるのだろうか。  
 ソフィアの右手が気持ちを察してか私の頬をやさしく触る。  
「連れて行って、いつかきっと……やくそく……あっ、んんん……」  
 彼女の言葉を振り切って、ソフィアの肉体を責めて行く。今は彼女を愛して生きている、  
それだけで充分だ。ソフィアのマシュマロのような唇を奪い首筋を舐めて乳房に、ソフィア  
のたまらないという喘ぎが耳に心地いい。彼女が官能に喘ぐ度に、?が跳ねて肋骨が  
浮びあがって腹がへこんでいた。  
 乳房を愛撫してから下腹へと目指していく。まだソフィアのショーツは脱がしていないが  
その昂まりが腰を捩らせる。手の平を秘部ですっぽりと覆って上下に擦る。舌は太腿から  
内側の柔肉を舐める。  
「ひあっ……い、いやあああ……ああ……騎士さまあああっ!」  
 私の背中にしがみ付くことの出来ない両手はソフィアの赧く染まる顔を覆う。一気に  
ソフィアのショーツを引き下ろす。  
「いやあっ……羞ずかしい……」  
 濃くもなく薄くもないソフィアの恥毛は濡れそぼっていた。そのふさふさとしたやわらかい  
彼女の感触は味わえなかった。けれど私は今、ソフィアのバージンを奪おうとしている。  
彼女のセックスを唇と舌で更に潤わせてから、ズボンをぬいだ。  

 

「ソフィア、顔を見せてよ。羞ずかしがることなんかないんだよ。ほら、取ってごらん」  
 ゆっくりと壁を取り除いていく。  
「今から入っていくけど、痛かったら言って」  
 ソフィアの開き切ったヴァギナにペニスをあてがい秘孔にゆっくりと沈めていく。  
「ううっ……」  
 ソフィアの秘孔が苦痛に顫えていた。  
「だいじょうぶかい?」  
「い、いいの……騎士さん……そのまま続けて……」  
 奥へと突き進んで私はソフィアに覆いかぶさる。彼女の荒い息遣いが私の胸に吹き掛かる。  
ようやく整いを見せた頃、ソフィアの耳に囁く。  
「今から動くからね、ソフィア」  
「はい、騎士さん……」  
 ソフィアの細い両腕が私の首に廻される。ゆっくりと静かに律動を開始する。いくらやさしく  
しても彼女の反応が、自分の肉が凶器となってソフィアの膣を引き裂いているような残忍  
な気持ちになってしまう。このまま一気にとさえ思ったが、ソフィアのヴァギナを軋ませる呻きに  
微かに艶が交じり出した。  
 ソフィアの歔く頭を抱いて、彼女を突きあげる。体重を掛けまいと肉の結合に徹するのも  
ありだったが、肌を重ねていたかった。ひとつに蕩け合いたいと切に願っていた。  
 床に拡がるマントの深紅の裏地に真珠の素肌に蠢く浅黒い肌。そこに天上からふたりに  
冷たい雨が降り注いでいる。  

 

  ソフィアは耐え切れずに、私の抱いている腕を跳ね上げて仰け反って叫んだ。  
「あああ……あうううううううううッ!騎士さまああああああああああッ!」  
「ソ、ソフィアああああああああああッ!」  
 ソフィアの仰け反った肩に乳房に、大きく開いた口に雫が降り注ぐ。火照る素肌に冷たい  
雨は関係なかった。私はソフィアのなかに精液を何度も解き放った。出なくなってもソフィア  
を離したくないと突きあげを繰り返すという醜態までやらかしていた。  
 暫らくのインターバルを得て、ソフィアともう一度素肌を重ねた。私は性に目覚めた少年  
に戻ってしまったようだ。ふたりはマントの上でぐったりとなって眠りに落ちていく。  
目が醒めた時は夕焼けで、ソフィアの素肌が熱情そのままに赧く染まっていた。  
「ごめん、俺ばかりが先走ったりして」  
「ううん、わたしも気持ちよかったよ」  
 涙の乾いたくしゃくしゃになった顔でまっすぐに私を見て微笑む。彼女を起こして着替え  
てから、嫌がる彼女を負ぶってロムロ坂を下りてフェンネル地区のソフィアの家までいく。  
最初は羞ずかしがっていたのに、まんざらでもないらしく頬を背中に擦り付けたりする。  
「疲れただろ、寝ててもいいぞ」  
「騎士さんのえっち……」  
「えっちかぁ……えっちかもな」  
 ソフィアがくすくすと笑う。私も久しぶりに声を出して笑っていた。いや、恋人を失ってから  
初めてのことだった……。  
 笑った後で、ソフィアがもう一度背中に頬を寄せて小さくか細い声でこう言った。  
「おとうさんの背中みたい……」  
 ソフィアは家に着くまで眠りに落ちた。わたしの背中を濡らしながら……。  

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