みつめてナイト  
 
 

ドアを開けると赤を基調としたメイド服を身に付けている少女が立っていた。  
彼は、そのドアをノックした少女の事を思い出そうとして一瞬視線を泳がせる。  
まだ頬にそばかすの残る少女は頭のカチューシャを揺らしながら、にこっと笑った。  
「先日はプリシラ王女から頼まれた買い物に付き合って頂いてありがとうございました」  
彼はその少女がプリシラ・ドルファン第一王女付きのメイドだと思い出した。  
「そういえば、ご苦労だったね」  
「名前・・・・・覚えて・・・頂いてますか?」  
そのメイド少女は上目遣いに彼の顔を覗き込むようにして問い掛けてくる。  
「確か、プリム・・・だったか」  
彼の返答を聞いてプリムはちょっと驚いたように、だが満足したように微笑む。  
「覚えていてくれたんですね」  
そうして彼の肩越しに部屋の中を覗き込んで中に入りたい意志を表示する。  
彼はプリムの意図を計りかねながらも身体をずらしてプリムを自分の部屋の招き入れた。  
本当はこの部屋にはピコという“同居人”も居るのだが、今日は出掛けている。  
きっとまたカミツレ地区の森林区辺りにでも遊びに行っているのだろう。  

──通称『東洋人の傭兵』と呼ばれる彼がドルファンの軍に籍を置いて久しい。  
マルタギニア海に面しながらもプロギア・ゲルタニア・ハンガリアという列強と国境を接し  
ヴァルファバラハリアンとの戦闘を余儀なくされているドルファン王国。  
彼のような傭兵に取って、ここは稼ぎ、そして名を成す絶好の舞台でもあった。  
幸運にも彼はその戦の中で勝ち続け、ヴァルファバラハリアン八騎将を悉く討ち果たし  
先日行われたパーシバルの戦いでは『破滅のヴォルフガリオ』の腹心でもある軍副団長  
通称『幽鬼のミーヒルビス』をも撃破し、彼の勇名は轟き渡っていた。  
既に彼の通り名は『常勝無敗』という冠を付けずに呼ばれる事はない。  
当然ながらドルファン城に招かれる事も多く、プリシラ王女と接する機会も増えた。  
プリシラ・ドルファン──このドルファンの第一王女であり彼の知人でもある。  
この王国きっての高貴な身分であり、あらゆる教養を身につけた最高のレディであり  
更に城の脱走常習犯にして、後先考えない能天気で無責任で無鉄砲な少女だ。  
彼が城から脱走したプリシラと偶然出会って引っ張りまわされたのも随分前の話だ。  
以来、何故か彼を気に入ったプリシラと楽しくも騒々しい日々を送っていた彼である。  
このメイド少女プリムはその暴れん坊プリンセス・プリシラ付きのメイドだった。  

プリムを部屋に招きいれた彼はイスを引いて座らせてくれた。  
さりげなく座り易いようにイスを引いてくれる彼の仕草にプリムはさすがだと感じる。  
彼は窓際のストーブからヤカンを持ち上げてプリムに茶を出してくれた。  
そんな彼の行動を興味深そうに見ていたプリムは、出されたカップに頭を下げた。  
「なんか、人に給仕してもらうのって変なカンジです」  
立ち上る湯気をじっと見つめていた顔を上げると、プリムはえへっと笑った。  
普段は自分がメイドとして走り回るのが仕事なのだから当然といえば当然だ。  
プリムはそっとカップを持ち上げて彼の入れた茶に口を付ける。  
彼の故郷、東洋の飲み物だろうか? 少々不思議な味だが、しかし悪くない味だ。  
「・・・美味しい・・・」  
「それは良かった」  
もう一度カップに口を付けて茶をすすった後、プリムは上目遣いでそっと呟いた。  
「プリシラ様にも・・・御馳走されたんですか?」  
彼が静かに頷くのを見てプリムはちょっと口篭もる。  
プリムのそばかすだらけの顔の中で、そこだけ妙に大人びた瞳が揺れた。  

──少しの間、二人は茶をすすりながら取り留めのない雑談を交わした。  
彼の語る色々な他国の話、そしてこのドルファンでのプリムが知らない軍や戦争に  
ついての話は、語り口の柔らかさと興味深さでプリムを夢中にさせた。  
「・・・・それで?」  
彼がさりげなく水を向けたのは、丁度プリムのカップの中の茶がなくなった頃合だ。  
「プリシラ王女からの伝言でもあるのかな?」  
それまで楽しそうだったプリムの表情が不意に曇る。プリムはカップを置く。  
「・・・・騎士さまは・・・・・」  
プリムは下を向いたままそっとメイド服のリボンをいじる。  
「プリシラ様を・・・どう思われていますか?」  
胸の奥から搾り出すようにして問い掛けるプリムに、彼は視線を向ける。  
「大切な知人だ。多分、特別な友人と言ってもいいと思う」  
「あたしの事は・・・どう思いますか・・・っ?」  
突然、イスから腰を浮かせつつ東洋人の傭兵に詰め寄るプリムだ。  
そして、その丸い瞳に涙を一杯に浮かべて彼をじっと見つめる。  

彼はそのプリムの一途な視線に臆する事もなく、座ったままそっと口を開く。  
「・・・プリシラ王女付きのメイド。それじゃいけないかな?」  
プリムは彼のその返答を聞いてちょっとだけ哀しそうな表情になった。  
しかし、すぐに気を取り直してそばかすだらけの顔でにこっと笑う。  
「それだけで充分です」  
その笑顔は、これっぽっちも充分とは言っていなかったが、何かを決心した顔だった。  
プリムは立ち上がって、そっと胸のリボンをほどくとそれまで座っていたイスに掛ける。  
それから、手を後ろに廻して背中のジッパーを下ろすと上着からそっと腕を抜く。  
スカートをゆっくりと脱ぐと後は清楚な下着のみになったが、さすがに恥ずかしかった。  
プリムは脱いだメイド服をまるで裸身を隠すかのように胸の前で抱き締める。  
プリムの、顔には似つかわしくない見事に大きい乳房が自己主張して揺れる。  
メイド服を着ている時には判らなかったが、ゴムマリのような見事な乳房だった。  
「・・・騎士さま。・・・お願いします・・・」  
消え入りそうな声で、しかし、しっかりとした意志を秘めてプリムは言った。  
「その取るに足らないメイドに・・・お慈悲を下さい・・・」  

さすがに彼も、自分の前で下着姿になったプリムに問い掛けるような視線を向けた。  
だが、その視線に怖気づく事もなく下着姿のプリムはそっと彼に近寄る。  
そして、その甘い息が掛かるほどに彼に近寄ると、プリムは吐息混じりに囁く。  
「・・・お願いします。ご迷惑はお掛けしませんから・・・」  
彼はそのセリフに眉を顰めたが、プリムの必死な表情からは視線を外さない。  
“何故”、と問うべき事象が余りにも多い気がした。  
プリムは心情を語っているようでいて、実は何も語っていない。  
そしてその行動は余りにも性急で一切の疑問を受け付けないようだった。  
「・・・お願いします。お願いします。お願いします。・・・」  
プリムは立ち尽くしたまま、まるでうわ言のように繰り返すばかりだ。  
彼は返答に窮するしかなかい。  
そして・・・一瞬、彼は目を閉じて何かを考えたようだった。  
しかし、近寄ってきたプリムの顔を引き寄せると、そっとその唇を重ねた。  
プリムの表情が必死さから、少しの喜びとかなりの緊張に代わる。  
彼はイスから立ち上がるとプリムを寝床へと運ぶべく抱き上げていた。  

ため息のもれる程に豊かなプリムの乳房は、その大きさを自己主張していた。  
ベッドに横になっているにも係わらずその形が崩れる事はない。  
緊張からか部屋の寒さからか、ふくらみの中の二つの乳首が身を起こしている。  
彼は下着を脱がしたプリムの背中に手を廻すと、その可憐な身体を包み込んだ。  
プリムは「あ」と聞こえるか聞こえないか程度の囁きをもらしたが抵抗はしない。  
彼とプリムは抱き合ったまま少しの間互いの温もりを確かめ合った。  
「ふ・・・ぅ・・・はぁ・・・・」  
彼の胸板がプリムの豊か過ぎる乳房を押し潰していた。  
その圧迫される柔らかさの中心では小さな塊が硬くなっているのが感じられる。  
もう一度唇を奪いながら、彼はプリムの乳房に手を添えた。  
彼はまるで形状を探るかのようにゆっくりと指を這わせ、そうして揉み始める。  
「あっ・・・あっ・・・」  
彼は既に硬くなったプリムの乳首をそっと摘む。  
胸が大きい割りに感じるプリムは小さく、だが確かに快感を口にする。  
「ああ・・・感じます・・・くぅ・・・」  

彼は、たっぷりと豊かなプリムの乳房を両手を駆使して愛撫していく。  
焦れったくなる程に優しく、時折、強く。リズミカルに揉みしだく。  
プリムは感じ易いようで、既に潤んだ瞳はどこか遠くを見つめている。  
彼はゆっくりとプリムを促すと彼女の脚を開かせた。  
両脚をまるでMの字のように開脚させながら、プリムは思わず股間を手で隠す。  
案の定、プリムは初めての経験らしく、彼は目でやめるかと問い掛ける。  
プリムは、しかし涙を目の端に浮かべながらもしっかりと首を横に振った。  
「・・・これくらい・・・我慢出来ないと・・・」  
プリムはそんな事を小さく呟く。彼はそのセリフを問い質す事はしない。  
彼は、プリムの指の1本1本をゆっくりと持ち上げてその割れ目を露にさせた。  
「はぁぁぁ・・・」  
プリムは恥ずかしがって今度は顔を手で覆っている。  
彼はしばらくプリム自身を指で転がすように刺激しつつ、指先を奥へと進めた。  
「あ、あ、・・・・痺れて・・・きました」  
彼は、顔をプリムの脚の間に埋めてその割れ目に口付けをする。  

プリムは予想していなかった感触にびくっとして太腿で彼の頭を挟んでしまう。  
彼は幾度もキスを繰り返してプリムに刺激を与えて、その唇から何度も吐息を漏らさせた。  
そうして、準備が整ったと見るや身体を滑らせてプリムと重なった。  
「身体の力を抜いて」  
緊張していたプリムはその彼の言葉にこくっと真剣な表情で頷く。自分を抱いている男が  
この期に及んでいいのか?などと益体もない問いかけをする男でなくて良かったと思う。  
プリムは鼓動を早めながら、自分の処女を捧げる相手の動きを待った。  
彼はゆっくりと先端をプリムの膣口へとあてがい、挿入を始める。  
「・・・・くっ 、うぅ・・・痛い・・・」  
いくらも侵入していない位置でプリムの口から苦痛の声が上がる。  
だが、彼はプリムの両脚を高く上に上げさせ、太腿部を抱えて広げるようにして  
少しでもプリムの苦痛を和らげるようにしながらも、腰を止めはしない。  
そして、強く打ち付けるようにしてプリムの処女を貫通する。  
「ひぃぃぃっ・・・!」  
プリムはたまらずに悲鳴を上げて身体を弓なりに反らせる。  

彼は挿入した後はゆっくりと進めえてなるべくプリムに負担を掛けまいとする。  
しかし、処女喪失の痛みは実は一瞬のものだ。実は膣にかかる圧力の方が苦痛なのだ。  
「大丈夫か?」  
プリムは言葉を発する余裕もなく、はいと目で答えて首を縦に振った。  
彼はそれ以上何も言わず、自分の分身をゆっくりと突き進め、先端を子宮に届かした。  
「・・・・くぅぅ・・・はぁぁぁ・・・」  
そして、彼は静かにプリムの身体の上で身を横たえて、しっかりと抱き合った。  
彼の胸板に押し付けられたプリムの大きな乳房が何回も上下する。  
彼に髪を撫でられながら、荒い息の中でプリムはそっと目を閉じて感触を確かめた。  
「あたし・・・女に、なれた・・・んですね」  
プリムは自分を見つめる彼の瞳の中の小さな自分に向かって小さく言った。  
何か不思議な感覚だった。これまでの自分を否定するような、再確認するような・・・  
ふと、自分の中に入っている彼自身が小さく息づいているのにプリムは気付く。  
「騎士さまの好きなように・・・動いて・・・下さい」  
涙でぐしゃぐしゃになったそばかすだらけの顔で、プリムはにこっと笑った──  

 

──結局、あの日、事が終わるとプリムは身繕いをして彼の部屋を出て行った。  
シャワーを浴びた後、何度も何度も彼に礼を言って頭を下げたものだ。  
同居人の手前もあり、プリムに連絡を取りあぐねている内に、2日が過ぎてしまった。  
今日、彼はドルファン城から届いたプリシラ王女のお茶会の招待に応じて登城していた。  
勝手知ったる城という事で、門番も顔パスで通り抜けてプリシラの待つ部屋へと向かう。  
「あれ、あっちでなんか話し声がしてるよ?」  
一緒に付いて来た妖精のピコが何かを聞きつけたらしく彼の注意を引く。  
程なくして階段の影で城のメイド達が集まって噂話をしているのを見つけた。  
「・・・昨日はプリムの番だったよね。可哀想に・・・」  
「・・・でも、あの娘、はじめては好きな人にあげてたんだって・・・」  
彼は、会話の中に先だって肌を重ねた少女の名前が出てきた為、耳をそばだてた。  
「・・・まあ、はじめてを好きな人にあげられたんだったら不幸中の幸いよね・・・」  
耳を澄ますと、どうやらそれは城のメイド達に強制されている『夜伽』の事のようだった。  
『夜伽』──すなわち城のメイドは、交代で王家の者達の夜の慰み者とされているらしい。  
人権無視も甚だしいが、しかし封建社会ではそれを責めても詮無き事であろう。  

そして、プリムが最初にその身体を他人に蹂躙される事になっていたのは昨日。  
──つまり・・・彼の部屋から帰った翌日だった。  
事情を何も知らないピコはメイド達の話を聞いてぷんぷんと腹を立てた。  
「ひどい話だよねえ? 女の子を何だと思ってるんだろ」  
「・・・・・」  
彼はその言葉には答えずメイド達に気付かれないようにその場を離れて歩き始めた。  
城の中を少し歩くと、彼を見つけたメイド姿のプリムが笑顔になって近寄って来た。  
「プリシラさまがお待ちかねです」  
彼はその笑顔を見て、何か眩しいものでも見たかのように目を細めた。  
プリムは、ん?という表情で瞳を丸くして首をかしげる。  
・・・まあ、はじめてを好きな人にあげられたんだったら不幸中の幸いよね・・・  
彼はプリムを元気付けるような言葉が思いつかずに、そっとこう言った。  
「この間は、とても可愛かったよ」  
それを聞いたピコが目を丸くして、背中の羽根を震わせて彼とプリムの顔を交互に見る。  
まるでトマトのように真っ赤になったプリムの顔がいじらしかった。  

 
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