ソフィア・ロベリンゲがあの男達に呼び出されるのはこれで何回目だろうか。
ソフィアはぼんやりとした足取りのまま、いつもの家へ向かっていた。
暖かくなってきたとはいえ、まだ寒い5月下旬の影法師が伸びつつある夕暮れ時。
“あの日”父親の借金を手っ取り早く返す方法があると呼び出されたソフィアは金貸しから
ソフィアの父の借金を買い取ったチンピラ達に強姦された。
四人がかりで代わる代わる一晩中犯され、その後も毎日呼び出されては犯された。
それが少し前の事──いわゆるドルファン戦役ダナン攻防戦の始まる前夜の事だ。
その後行われたダナン攻防戦で、ソフィアの憧れの東洋人の傭兵はヴァルファバラハリアン
が八騎将、不動のボランキオを討ち果たし、更に有名人となっていた。
そんな彼の活躍の裏側でソフィアがいつか出会う大切な人の為に大事に取っておいた純潔は
あっけなく散らされ、男達の気分のままに抱かれ、膣口に精液を流し込まれていた。
それでも全くといって言い程に減らない父の借金が恨めしい。
元々、利息が法外な相手から借りているのだからどんなにソフィアが頑張った処で実は
どうしようもないのだ。それでも逃げる事さえ叶わないソフィアだった。
・・・何度。何度、あの憧れの東洋人の彼に相談しようと思った事だろう。
彼はいつも優しく、そしてとても彼女を大切にしてくれていた。
いや、だからこそ自分のこの境遇を打ち明けて軽蔑されるのが怖い。
自分が既に貴方に愛される価値などないと打ち明けてしまう事が死ぬより怖かった。
だから、3日前たまたまシーエア地区で出会った彼に誘われた時、ソフィアは精一杯
デートを楽しもうとした。無理に笑って彼を不快にさせないように気を付けたのだ。
──ちなみにそのデートを偶然アンが目撃してしまい、今日の夕方フラワーガーデンで
アンが東洋人の傭兵に言い寄る要因となってしまったのは皮肉な巡り合わせと言えた。
しかし、ソフィアは彼とアンが甘い時を過ごしている事など知る由もない。
更に言えばドルファン学園の先輩のライズが現在、汚辱の中に居る事も知る事はない。
今のソフィアは、こんな状況でも生きて、自殺しようともしていない自分を恥じるだけだ。
死のうともしない上に空腹を覚えて食事さえ出来る女なのだ。そんな自分を恥じた。
その上、自分でもここ何日かで身体が男達の行為に慣れつつあるのも判っていた。
身体がチンピラ達の手と舌の動きを拒絶していない。
いや、身体が愛撫を悦んでいる。次の動きを待ち焦がれている。
口が自然に喘ぎ声を上げる。抑えようとしてもソフィアの嬌声が途切れる事はない。
ソフィアは自分がどこまで墜ちていくのか判らない事に慄然とした。
いや、本当に恥じるべきは快感に流されてしまう弱い心なのではないだろうか。
しかも、今日はいつも以上に酷く淫らな事をさせられるのだ。
そんな憂いを抱えつつ、ソフィアはいつもの家──チンピラ達の溜まり場に辿り付く。
そこはかって彼女が辱められた場所だ。そして、今日も辱められる場所だ。
ソフィアが扉を開けると酒を飲んでいたチンピラの首領、ギースが近寄って来た。
ギースはソフィアの腰を抱くようにしていやらしく彼女の尻を服の上から撫で回す。
「遅かったな・・・悪い娘だ。くくく・・・」
そして無造作に顔を近づけてくるとアルコール臭い口でソフィアの唇を奪う。
抵抗しても無駄だと判っているソフィアは目を哀しげに閉じただけだ。
ひとしきりソフィアの口の中と身体の感触を楽しんだギースはニヤッと笑う。
そうしてギースはソフィアが身に付けている質素な普段着を舐めまわすように見る。
「とっとと支度をしろよ。客がさっきからお待ちかねだぜ?」
──そう。今夜からソフィアは見ず知らずの客に身体を売らされるのだ。
それはいつまでたっても返済の目処がつかない父の借金の為にギースが指示した事だ。
勿論、娼婦に落とされる事をソフィアは必死で拒絶し、何回も男達に許しを乞うて泣いた。
『お願いですっ・・・それだけは許して下さい・・・』
だが、男達はソフィアが娼婦になるという運命を受け入れるまで一日中執拗に犯し続け
遂に息が上がって抵抗出来なくなったソフィアが頷くまで嬲り尽くした。
『どうだ? YESと言わないといつまでもヤリまくるぜ?』
『・・・あ、あふぅ・・・もぅ、どうにでも・・・して下さいぃ・・・』
『命じられたらどんな客でも取る売春婦になるんだな? そらっ!』
『・・・はひぃっ・・・娼婦に・・・なりますぅ・・・』
結局、ソフィアは、もう自分などどうなってもいいと諦めたのだった。
今もギースに胸の頂点を摘まれ、もう一人のチンピラに後ろから乳房を揉まれるだけで
身体の中に悦びが駆け巡り、息が速くなるのが自分でも判っていた。
こんな堕落した自分など場末で客を取って遣い捨てられるだけの女だったのだ。
夢など見たのが間違いだったのだ。音楽の道を志すなど・・・おこがましい事だったのだ。
「よぉし、ソフィア。精々、頑張って客に気に入ってもらうんだぜ」
ソフィアは、ぼんやりとした心が男達の愛撫に支配されていくのを感じていた。