彼の指が彼女自身に差し込まれている間、プリムは深い安堵感を感じている。
それと同時に体の奥底から、快感が大量に溢れ出る気もしていた。
「くぅっ、うぅっ……ふぅぅっ」
彼の指が優しくプリムの秘裂に差し込まれ、湿った音を立てさせる。
膣から彼の指が抜かれると、「あんっ」っと甘い吐息がプリムの口から漏れた。
彼はプリムの身体を抱きしめ、耳たぶを軽く噛みながらクリトリスを捻り上げる。
プリムのそこは、既に彼を迎え入れる準備が整っている事を知らせていた。
彼はプリムの上に重なると、そっとプリムの中に勃起したペニスを挿入し始める。
「あふぅううっ……んんっ」
ちゅぷんっと粘膜が擦れ、彼自身によってプリムの膣が満たされる。
気持ちいい、とプリムは思い、目の前が軽くフラッシュしたように思う。
彼がプリムの身体を気遣いながらも、挿入したペニスを動かし始めた。
「ああっ……あっ……あぁっ」
その彼の動きに合わせて、プリムが声をあげる。
彼の中に包まれているような快楽が、プリムの全身に押し寄せた。
耳元に感じる彼の荒い息や、たちこめる体臭さえもがプリムには心地良かった。
「あっ、いい……いいですぅ」
彼が優しく自分を見つめているのに気付き、恥ずかしく思いながらも嬉しく感じる。
「わたしの身体……身体ぁあ……ああぁっ」
彼は開いた手でプリムの乳首とその周囲を、優しく刺激し始めた。
そうされると、もっとそうして欲しくて、プリムは自然に彼に甘えてしまう。
いつも彼に抱かれる時は、自分の弱みを彼に見せて甘えてしまいたくなるのだ。
そうして誰かに全てを委ねてしまう感覚は、プリムの快感を増幅させる。
「ああ、そこ好きぃっ」
いつもの自分からは考えられないほど、媚を売った言葉が口をついて出て来る。
彼の身体の動きに合わせるように、プリムの身体が大きく動く。
彼自身がプリムの秘裂を出入りする度に、ぐちゅぐちゅと湿った音が漏れ出る。
「あんっ、奥がいいですぅ……ああぁぁっ!!」
彼のペニスが、一旦引き抜かれてからもう一度差し入れられる。
「ん、あぁんんっ」
プリムは、鼻の奥をならすような声を上げた。
無意識に彼の腰に絡めた足に力が入り、腰が追いかけるように動いてしまう。
子宮の中から湧き上がる快感と、急速に失われる充足感。
それらの雑多な感情が背骨に沿って這い上がり、プリムの全身を震えさせた。
「んんっ……あああああっ」
プリムは、もう頭の中に霧が掛かったようになってしまっていた。
彼が腰の動きを激しくすると、他愛なくプリムは昇りつめてしまう。
「ああんっ……! だめぇぇえええっ」
同時に、彼のペニスから大量の液体が吐き出された。
自分の中に熱い液体がかけられるのは、プリムに怖いほどの満足感を与えてくれる。
二人は並んで身体を横たえると、しばらく行為の余韻に浸る。
そうして体を震わせながら余韻に浸っていたプリムが、そっと身体を起こす。
プリムは、彼を見つめながら荒い息で囁く。
「……もう1回……わたしを、愛して戴けますか?……」
確かプリシラを抱いた時は1回だけだったはずだ、と、まだこだわるプリムだ。
そして、横たわった彼の身体の上にプリムは自分の身体を持ち上げる。
まだ硬い彼のペニスを自分の割れ目に誘導すると、プリムは彼をくわえ込む。
「く……ああ……ああんっ」
騎乗位で彼と繋がったプリムはその快感に大きく身体を仰け反らせる。
プリムの大きな乳房がその動きに連れて、上下に激しくバウンドする。
一旦落ち着いたプリムは、両手を彼の太腿について彼を上から見下ろす姿勢になった。
プリムは少し腰を浮かせると、そっと腰を回転させてみる。
微妙に上下しながら高さを変えてみると、堪らなく快感が増幅される。
「ああぁん……ああぁ、……ここぉ気持ちいいぃ」
プリムは腰だけを動かす振りで、自分の感じるところを擦りつけ始めた。
「はぅんん……はあぁ……くぅぅん」
彼が悪戯っぽく下から突き上げてみると、プリムは悲鳴を上げる。
「……やぁっ……! うごいちゃ……いやぁあっ」
拗ねたよう喘いだプリムは、気を取り直すと汗まみれの顔で彼に向かって微笑んだ。
「……わ、わたしぃ……判ったことがぁっ……あるんです……よ……」
プリムは再度少しずつ腰を落としてから上げて、馴染ませるように動かす。
そうして、吐息交じりの荒い息を吐きながら、プリムは笑顔で言う。
「女の子の、身体はぁっ……男の人に愛されるためにぃっ……あるんですっ」
そうして、プリムは自分の豊かな乳房を揉みしだき、乳首を摘む。
「……おっぱいも……あそこもぉ……全部っ……全部ぅうっ」
自分の感じるところは知っているから、プリムはすぐに絶頂へと向かってしまう。
「きっと、わたしの身体はぁっ……騎士さまにぃいっ」
荒い息の間から出る喘ぎ声は、性器の擦れ合う音より大きく響く。
「あああっ……愛されるためにぃいいいっ」
喉から大きな声が出た。喘ぎ声を出すことに抵抗がなくなっているプリムだ。
声に出さないと、逃げ場のない快感に押しつぶされそうなのだ。
びくんっ、とプリムの身体に衝撃が走った。
一瞬にして、プリムの頭の中が白くなる。
「ああぁぁぁああっっ……!!!」
プリムは身体を大きく震わせながら、絶頂の恥ずかしい喘ぎ声を上げた。
彼は自分の上に倒れこんできたプリムを抱きとめて、プリムにキスをする。
彼の舌が差し込まれると、プリムは自分から舌を絡めてしまった。
二人の唇が離れると、プリムの口から名残を惜しむように唾の糸が引く。
彼の身体の上に乗っかる体勢だったプリムが、どさっと彼の横に身体を横たえた。
荒い息を吐きながらも、プリムは彼の身体にそっと寄り添った。
厚い胸板の彼にそっと寄り添うと、とても愛しい匂いがする。
二人はしばらく余韻を味わっていたが、結局、身体を起こしたのはプリムが先だった。
ちょっと恥ずかしげな表情で、プリムはシャワールームに入っていく。
程なくして軽くシャワーを浴びたプリムが、下着を身に着けて出て来た。
それからプリムは、いつもの赤色を基調としたメイド服を身につけていく。
先ほどまで快感に乱れていた少女は、キチンとした仕事着に身を包んでしまう。
彼もプリムに代わってシャワーを浴びる為に身体を起こして、シャワールームに入る。
カチューシャを付けて身支度を終えた後、プリムはいそいそとベッドメイクを始めた。
それから汚れ物を洗濯桶に突っ込み、食卓を片付けて食器を洗う。
元々プリムは有能なメイドである上、彼への愛がこもっているから仕事も丁寧だ。
彼が遠慮するのには構わず、プリムはすっかり部屋の掃除を済ませてしまう。
いつか騎士様のメイドになれたらいいのに、とプリムは叶わぬ夢を見てみる。
一通り彼の身の回りの世話を終えたプリムは、彼に微笑みかけた。
「そろそろ帰ります。お城の仕事、きっとたくさん貯まってるでしょうし」
プリムは、プリシラ専属メイドなのだから、通常のメイドより気苦労が多いのだ。
彼が静かに微笑んで見つめてくれるのを感じて、プリムは幸せな気分になる。
このままずっと二人で居られたらいいのに、と思ってしまうのだ。
世界中から人が居なくなって……二人だけになってしまえばいいのに……と。
だが、プリムは祖母から預かった『意志』を片時も忘れた訳ではなかった。
プリムと同じようにメイドだった祖母が書き残した手記。
仕えた主人である、デュノス・ドルファンの死の真相を書き残した手記。
──『ローズバンク手記』
いつかきっと、自分に災いをもたらすであろう書物。
だが、災いを恐れてその身を隠し、大好きな祖母の思いを無駄にしたくはなかった。
例え、この幸せを失おうとも。例え、愛する人と添い遂げられなくとも。
その決心は、この身が朽ち果てようとも怯む事のないものだ。
同時に、その決心だけは、彼にも打ち明ける訳にはいかないものでもあった。
プリムは、にこっと笑うと、そっと愛する人にキスをしてから囁く。
「今日は、ありがとうございました。また、逢えますよね?」
彼が静かに頷いたのを確認してから、プリムはドアを開けて彼の部屋を出て行った。
プリムが居なくなると、急に部屋の中が静かになる。
そろそろ、本当に剣の手入れをしておかなくてはなるまい──
そう思った彼が物置に向かおうとした瞬間、ドアが叩きつけられる様に開かれた。
「そういえば、プリシラ様を見送った時のキスは、1回でしたよっ!!」
プリムは慌てて走って来ると、彼に跳び付いて2回目のお別れのキスをする。
「えへへ……。わたしの方が、やっぱり1回多いです……っ」
そばかすだらけの顔をくしゃっとして得意げに微笑むプリムだった。
──プリムの運命を大きく変える事になる、今年のプリシラ王女の誕生パーティー。
その日まであと2週間余りとなった、この日の事を。
この日の事を──プリムは毒殺されるその瞬間まで、決して忘れる事はなかった。
エピソード:プリム編 『貴方に逢えてよかった』
< 完 >