──ドルファン首都マリーゴールド地区、フラワーガーデン。
暖かくなってきたとはいえまだ5月下旬の夕暮れ時の少し肌寒いそんな園内の一角で、
アンはギュッと目をつぶると、勇気を出して彼の大きな胸の中に飛び込んでいた。
彼が困った顔をしているのを見るのが怖いから、きつく閉じた目は開けそうにない。
「ごめんなさいっ・・・・今日は・・・今日はもっと一緒にいたいんですっ」
図々しい子だと思われたろうか。あつかましい子だと思われたろうか。嫌われないだろうか。
心臓が口から飛び出しそうだ。口の中が乾く。それでももっと一緒にいたい。
今日は、偶然カミツレ地区で出会った彼にこの並木道まで連れてきてもらい、時を過ごした。
いつもはここでお別れになる。だが、今日こそは思いを打ち明けようと思った。
あの日、彼に「お友達になって頂けないでしょうか」と言った事で未来が開けたように。
彼の優しい手がそっと自分の背中を抱いてくれた事に気が付き、アンは嬉しさで一杯になる。
そうだ、いつだって彼は例えようもなく優しく、わたしが望んでいる答えを言ってくれる。
それは、まるでわたしの喜ぶ答えが書いてある本を持っていてそれを見ているかのように。
だからこそ、アンはその彼の優しさに甘えたいと思い、言葉を途切れ途切れに呟く。
「わたしを・・・・あなたの物に・・・して下さい・・・」
一瞬、彼の身体が驚いたように震えた。そして、アンの心臓は早い速度で動き出す。
お願いっ・・・嫌いにならないでっ・・・アンは彼の身体にギュッとしがみついた。
そして、彼が何か言おうと口を開いた瞬間、アンは背伸びをすると自分の唇を彼と重ねた。
彼は目を見開いて戸惑っている。アンはもう何がなんだか解らないままもう一度彼の胸に
体当たりをするように飛び込む。そのまま二人は花が満開の茂みのそばに倒れこんだ。
──彼が長い栗色の髪の少女と楽しそうに歩いているのを見掛けたのは3日前だった。
既にヴァルファバラハリアンが八騎将を二人までをも討ち果たした彼はドルファンでも
知られるようになってきた傭兵だった。噂では王女プリシラの覚えめでたい勇者とも聞く。
アンは自分が好きになった人の活躍を喜ぶと共に、段々自分から遠い人になっていく彼を
思って胸が張り裂けそうになる。もうすぐ自分など相手にしてもらえなくなってしまう。
そんな事を考えたアンはどうしても彼に自分のこの思いを打ち明けたいと感じる。
戸惑っている彼を、アンは涙をいっぱいにためた瞳でみつめながら叫んだ。
「お願いですっ・・・わたしを抱いてください・・・好きだと言ってください!」
彼はふと遠くを見るような寂しげな眼になった。そんな彼の表情をアンは知らなかった。
あの瞳は何を見ているのだろう何処を見ているのだろう。アンの胸がキュンと鳴る。
だが、それは一瞬の事だった。彼はそっとアンにキスをして好きだ、と言ってくれる。
「あっ・・・」
彼の手がまるで羽根が触れるような感触でアンの胸に触れた。始めはそっと、やがて少し
ずつ力をいれてアンの緊張をほぐすかのように、彼は繰り返し乳房を揉んでくる。
「んっ・・・・」
自然に甘い声が出ている自分にアンは驚いた。彼にいじられた乳首はすぐに勃起する。
彼はアンの上着のボタンを外すと、清楚な白い下着ごしにその乳首に唇を当てた。
舌ではじくようになめながら、リズムをつけて吸い上げられる。
乳房を揉まれ、乳首を吸われている内にアンはとけてしまいそうな気持ちになっていた。
そうして、彼はもう一回唇を重ねてきた。柔らかい舌がアンの口の中に入り込んで来る。
アンの舌を絡め取るかのように動いた舌が、アンの歯の表面をなぞり、そして口内をなぞる。
「・・・・んっ・・・・はぅ・・・・ん」
余りの快感に声が出てしまう。自分の口の中を思うままにされる事が気持ち良くて堪らない。
自分は彼に愛されているという実感があった。もっと自分を好きにし欲しいと思った。
アンは幸せの中にいた。