みつめてナイト  
 
 

抱き締められた彼の腕の中で、プリムは駄々をこねるように彼の胸を叩く。  
「わたしはそんな簡単な女じゃ・・・っ!」  
顔を紅潮させたまま、気弱な瞳で彼の顔を睨み付けるプリムだ。  
「君との時間を、無駄にしたくない」  
そのセリフを耳にして、彼の腕の中のプリムの顔が更に真っ赤になった。  
「わ、・・・わたしが騎士様のこと好きなの知っててっ・・・!」  
彼は何も言わずにプリムを更に強く抱き、プリムはぎゅっと彼に押し付けられる。  
「こ、こんな事なんかで、・・・ご、誤魔化されませんっっ!!」  
すっかり誤魔化されかけているプリムは、それでも拗ねたように口を尖らす。  
さっきまでの彼とプリシラの情事を覗かされていた哀しさが、胸から消えないのだ。  
「・・・わたしの気持ちに・・・つけ込んでぇっ」  
プリムはそっぽを向くが、彼の腕の中でいつまでも意地は張れない。  
嫉妬混じりの愚痴を連発して発散した後は、そっと彼の胸に身体を預ける。  
「・・・甘い言葉を囁けば機嫌が直ると思って・・・・ずるいっ」  
「済まないが、他のやり方を知らない」  

彼がプリムを強く抱きしめたから、プリムも意地っ張りな抵抗を止める。  
小さな声で、ずるい、ずるいとしつこく繰り返しながら、プリムは目を閉じる。  
「・・・抱けば・・・機嫌が、直ると思って・・・」  
抱かれて機嫌が直ってしまう可愛いプリムは、彼の腕の中でせつない吐息を持て余す。  
そうして、彼の胸にもたれかかるようにしてそっと呟くいた。  
「・・・わたし、・・・・・・・イヤな娘・・・ですよね」  
それを聞いた彼の抱擁が、苦笑するかのように更に強くなるのをプリムは感じた。  
ああ、本当にわたしはイヤな娘だ、とプリムは哀しくなってしまう。  
彼をこんなに好きなのに、どうして好きという想いだけで満足出来ないのだろう。  
わたし一人を見つめて欲しい、この人をひとり占めしたい。  
一緒にいられる時間が多ければ多い程、もっと望みが増えていくのだ。  
騎士様ともっと一緒にいたい、もっと優しくして欲しい。  
もっと、・・・もっと・・・わたしの事を好きになって欲しい。  
そして、彼が優しくしてくれるのが判っていて甘えて嫉妬してしまう。  
本当は悪いのはあの女であって、騎士様でない事など判っているはずなのに。  

いつも自分をこき使うプリシラには、きっと仕返しすると誓っているプリムだ。  
それなのに恋愛でもライバルになろうとは、人生は皮肉なものとしか言えない。  
自分を優しく抱き締めてくれている彼の顔を、プリムはそっと見た。  
プリムの嫉妬に困ったような、でもそれさえも包んでくれるような笑顔だ。  
そんな彼にもっと甘えてみたくて、プリムは小さな声で囁いた。  
「プリシラ様の・・・香水の匂いがします・・・」  
プリシラは、いつも王族御用達の香水『空中庭園』を使っている。  
甘く、そして爽やかな香りのそれは、プリムごときが手に入れられる物ではない。  
先程までプリシラを抱いていた腕でプリムを抱く行為を、彼は恥じたようだ。  
彼はその腕を解こうとするが、プリムはそれを押し止めて更に彼に抱き付く。  
「いいんです・・・っ!」  
そうして瞳を潤ませたプリムは、積極的に彼に唇を差し出す。  
「今すぐ・・・抱いて・・・下さい」  
そっと、プリムはせつなそうな声で彼に懇願する。  
「・・・わたしの匂いで、プリシラ様の匂いを」  

それはもう我儘以外の何物でもない事を知りつつ、プリムは駄々をこねた。  
「・・・プリシラ様の匂いを、消させてください」  
彼はもう何も言わずに、ヤキモチ焼きのプリムの言葉に従って、唇を合わせる。  
プリムは、彼に嫌われてしまうのではないかと心配になって、ぎゅっと目を閉じた。  
彼はそっとプリムを抱き上げ、自分のベッドに運び込んだ。  
彼にしても、プリムのやるせない気持ちを感じない訳ではないのだ。  
プリシラとの情事でシーツは乱れ、まだ温もりさえ残っていそうなベッドである。  
そんなベッドの上で同じく彼を慕うプリムを抱く事実は、実は哀しいものだ。  
ベッドの上で、彼はプリムの乱れた前髪を額の上で分け半開きの口にキスをした。  
彼の舌が差し込まれると、プリムは自分から舌を絡めてしまう。  
しばらく、二人は熱い深い口付けを交わす。  
彼が唇を放しても、プリムは口を半開きのままで余韻を味わった。  
プリムはまるで夢見心地の表情で、名残を惜しむかのように口を開く。  
「・・・もう1回、キスして下さいって言ったら我儘ですか・・・?」  
プリムは彼の下で小さく言い、そして彼の不思議そうな表情にそっと答える。  

「プリシラ様を抱く前はキスは1回でした・・・わたしにはそれより多く」  
プリムの顔が、せつなさと羞恥心で、今まで以上に紅潮した。  
「わたしにはプリシラ様より・・・1回多くキスして・・・下さい」  
ああもう、自分はどこまで彼の優しさに甘えるつもりなんだろうとプリムは泣きそうだ。  
実は、彼はプリムの不満に文句を言える究極のセリフを持っているのだ。  
たった一言、『プリシラとの事は、君も承知済みのはずだ』と言うだけで良い。  
だが、彼はそれを口にするような事はしなかった。  
彼は要望通りもう1回プリムに口付けをすると、そっとメイド服と下着を脱がせていく。  
プリムの、見事と言うしかないたわわに実った乳房が、ぷるんとこぼれ出した。  
彼は、プリムの両方の大きな乳房の先で硬く尖っている乳首を同時につまんだ。  
「ううぅ・・・んっ」  
思わず、プリムの鼻から息が漏れる。  
プリムは、自分の全身が感じやすくなっている事に気付いていた。  
ちょっと悔しいが、やはりプリムも先ほどのプリシラの情事に興奮していた。  
プリムとしても、至近距離での他人の情事を聞いたのは初めてだったのだから。  

彼に抱かれているプリシラ様はとても可愛かった。  
あの、いつも生意気で跳ね返りで後先考えない能天気で無責任で無鉄砲で無謀な王女が。  
悪口なら、永遠に思いつくあの女が──  
なんと可愛く甘えて、彼に抱かれていた事だろう。  
そのプリシラ王女の記憶は、プリムの心を切り刻む。  
自分は、騎士様にとって可愛い女だろうか。  
こんな嫉妬深くてすぐに駄々をこねる、子供のような自分が・・・  
そっと目を閉じたプリムは、今は快感の中にその想いを閉じ込める事にする。  
彼はプリムの大きさの割りに感度が良い乳房を、ゆっくりと揉みしだいた。  
「あぁ・・・ああんっ」  
その感覚は、いつもプリムを夢中にする快感だった。  
プリムの心臓が、まるで早鐘のように鳴り響いていて、彼に聞こえそうだ。  
ずっと乳房全体を揉みしだかれていると息苦しくなって来たが、悪い感覚ではない。  
「あふぅう」  
プリムは、彼に甘えるように吐息をついた。  

彼に乳房を自由に揉まれ、こねられる度にプリムの胸の中で快感が大きくなる。  
「はぁぁぁあ・・・いいですぅ」  
彼はプリムの胸を愛撫しながら、メイド服と下着を全て取り去った。  
そして、自分の服とプリムの服を、ベッド横のイスの上に置く。  
ちなみに、そこはついさっきはプリシラの服を置いていた場所でもあるのだが・・・。  
彼の手が、そっとプリムの股間に向かう。  
もう既にかなり湿っているプリムの足の間は、彼の手を容易く吸い込む。  
彼の指がクリトリスの包皮をむき上げると、硬く硬直した肉芽が中から現れた。  
彼は、中指の腹ですり潰すようにそっとクリトリスを撫でる。  
「ああぁぁっ・・・!」  
プリムの白く綺麗な太腿が、ぴくっと大きく痙攣する。  
足元からせり上がってくる痺れるような感覚で、腰部が甘く溶けるようだった。  
「気持ちいいかい?」  
彼が、プリムの前髪をしごくように掻き揚げて問い掛けてくる。  
「・・・はい・・・気持ちいい・・・です」  

プリムは、彼の透き通った瞳に見入りながらそっと頷く。  
きっと騎士様以外の人にこんな事を言われたとしても、嬉しくはあるまい。  
だけど、それを騎士様に言われるとこんなに感じてしまうのは何故だろう。  
騎士様に与えて貰える快感は、あの『夜伽』の時の苦痛とは大違いだ。  
自分勝手に動き、果てる王族の男達。あれは排泄行為でしかなく、比べるだけ無駄だ。  
彼になら、どんな事をされても気持ち良くなるというのに。  
きっとこれが──・・・きっとこれが、恋してるということなのだろう。  
「・・・とってもぉ、気持ち・・・いいです」  
そんなプリムの膣口は、クリトリスが膨らみ濡れそぼり、更に愛液を湛えている。  
彼はクリトリスに刺激を与えながら、他の指をそっと粘膜の中に挿入した。  
「くきゅぅぅ・・・んっ」  
くちゅくちゅっと湿った音が、プリムの股間から絶え間なく奏でられる。  
プリムの膣口が、ちゅぷっと音を立てて彼の指をくわえ込み、快感を貪る。  
「んっ、んっ・・・・あんっ」  
プリムの口から断続的な喘ぎ声が漏れ始め、目を硬く閉じて彼の指を味わった。  

 
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