みつめてナイト  
 
 

息が苦しくなったロックは、テディー・アデレードの胸元から顔を上げた。  
ふと大きく息を吸い込むと、テディーの匂いが押し寄せてくる。  
どこかミルクのような甘さを持った、優しくもロックを包み込むような香りだ。  
今まで、そんな事にも気づかずに夢中になっていた自分に少し呆然とする。  
だが気付いた途端に、胸ときめかせる匂いに全身が痺れたようになった。  
「・・・はぁぁぁああ・・・」  
テディーの口から小さな吐息が漏れ、その匂いまでもが官能的だ。  
薬によって、ロックを愛しい『東洋人の傭兵』と誤解させられているテディーである。  
ロックはやましさを振り切るように、テディーの白く柔らかい乳房へ視線を落とす。  
薄っすらと下着のラインが残って赤くなっているのが、妙に色っぽい。  
さっきまでロックがしゃぶっていた乳首も、唾液まみれでぬらぬらと光ってキレイだ。  
ロックの舌の刺激で尖った乳首が、テディーの呼吸に合わせて軽く振動している。  
不意に堪らなくなったロックは、再度テディーの乳首にむしゃぶりついた。  
「ふっ・・・あんっ・・・っ!」  
テディーは、ロックの頭を抱え込むようにして身をよじる。  

乳首自体に味などなく、ましてや妊娠している訳でもないから母乳が出る訳でもない。  
それでも、テディーの硬くなっている乳首をくわえるとロックは高ぶる。  
股間のペニスはとっくの昔に弾けんばかりに膨張しており、暴発しないのが不思議だ。  
「やぁあ・・・ん・・・っ」  
テディーの吐息が、ロックの頭の上を通り過ぎる。  
頭の上で吐息を漏らされると、何故かくすぐったくて身体がぞくぞくするロックだ。  
唇をテディーの乳首から放したロックは、ふとテディーの首筋に視線を止めた。  
それは・・・最初、虫刺されか何かに思えた小さな赤い痣だった。  
だが鈍った頭でも、少し考えるとそれが“キスマーク”だと気づく。  
テディーの右の首筋に付けられた、情事の証拠としての痣。  
──当然、・・・ロックではなく『東洋人の傭兵』が付けたものだろう。  
そう思い至った時、ロックの頭の中が沸騰した。  
まるで、テディーが自分の物であると主張しているかのような・・・  
──キスマーク。  
いや、実際はテディーはあの『東洋人の傭兵』のものなのだから当然だ。  

それでも、ロックは泣きたくなる程に悔しくてせつなくて哀しい。  
テディーが自分以外の誰かに抱かれて喘いでいる姿を、想像する事が苦しい。  
キスマークがあるのとは逆のテディーの左の首筋に、ロックは唇を近付ける。  
テディーは、あの『東洋人の傭兵』に抱かれてどんな吐息を漏らしたのだろう。  
あの『東洋人の傭兵』に抱かれて、テディーはどれだけ乳首を硬くしたのだろう。  
「・・・ひゃぅうんっ」  
今のテディーは、自分のそばで小刻みに身体を震わせながら可愛い声を上げているのに。  
そっと口を放しても、そこにキスマークなど出来ない事に気付いてちょっと戸惑う。  
もっとも、口紅をひいている訳ではないのだからキスしただけで跡など残らない。  
混乱した頭でもやっとそれに気が付いたロックは、テディーの首を強く吸う。  
「んんん・・・はぁぁぁ・・・」  
ロックが強く吸った跡が赤くなって、テディーの首筋にキスマークとして残る。  
もう一個、とロックは更に強くテディーの首筋を吸ってキスマークを残す。  
「ふぁんっ・・・気持ちいいぃっ」  
テディーは、豊かな乳房をたぷたぷと揺らしながら喘ぎ声を上げた。  

ロックはテディーの首筋から唇を放すと、再度大きく乳房を揉み込んだ。  
「んふぅっ、んんん、ふうっ・・・」  
のけぞるテディーの胸元で、豊かな乳房が激しく揺れる。  
ロックは指の隙間にテディーの乳首を挟み込んで、強く刺激して感触を味わう。  
そんなロックに向かって、テディーがかすれたような声で囁く。  
「今日は、・・・はぁっ・・・とってもおっぱいが好きなんですね・・・?」  
なんだか含み笑いでもしているような、色っぽい口調だ。  
あの清純なテディーの口からそんな言葉が紡ぎ出される衝撃で、ロックは口篭もる。  
恋人というものは、──こんなにも、自分を曝け出した会話をするというのだろうか。  
ロックは、憧れのテディーになんと答えたらいいのか見当もつかずに呆然とした。  
「・・・うふふ・・・私の事、気遣ってくれてるんですか・・・?」  
テディーの態度に甘えたような色が含まれ、そして官能的な表情になる。  
いつも大人びていると思っていたテディーの顔がちょっと悪戯っぽくなった。  
幼いような、それでいて見た事もないような成熟した笑顔のテディーが小声で言う。  
「・・・もう・・・大丈夫なんですよ」  

テディーが何を言っているのか全く判らないロックは、言葉を失った。  
ロックに向かって、テディーはそっと秘密でも打ち明けるかのように囁いた。  
「・・・この頃・・・痛くなくなったんですよ」  
どこが──と聞き返しそうになったロックだが、すぐにその意味する事実に気付いた。  
テディーはロックの腕に手を添えると、そっと下半身へと誘導していく。  
「ふふ・・・ちょっと、・・・感じられるようになりました・・・」  
そう囁くテディーの顔は、リンゴのように真っ赤だがとても嬉しそうだ。  
自分の愛しい人が与えてくれる快感を存分に味わえるようになる幸福。  
女として愛される充足感を、今まさに手に入れようとしている笑顔──  
そんなテディーを見るロックは、頭をハンマーでぶん殴られたような気になる。  
テディーが快感を求めている・・・そして、それは本当は自分が与えていい物ではない。  
頭を痺れさせたまま、ロックは右手をテディーの脚の付け根に伸ばした。  
テディーはロックの手を押し止めもせず、身体を預けるようにして囁く。  
「・・・愛して・・・下さい・・・」  
仕立てのいい洒落たスカートに包まれたテディーの股間が、ロックを誘う。  

ロックは、自分が人間として最低の事をしていると判りつつも手を進めた。  
スカートの下の手触りの良いショーツに、ロックの手が触れる。  
ロックは、テディーのふっくらとした恥丘をつつつっと撫で上げた。  
「ひゃぁっん・・・っ  はあぁぁぁぁぁ・・っ」  
テディーは恥ずかしそうな顔で喘ぐと、ロックにその可愛い顔を寄せてくる。  
ロックは、テディーのショーツ越しに恥毛のしゃりしゃりとした手触りを感じた。  
テディーの性器に毛が生えている、と訳の判らない事で感動するロックだ。  
そっとテディーの顔を見ると、ロックを『東洋人の傭兵』だと信じて愛しげな表情だ。  
ロックはせつない思いになって、テディーを強く抱き締めてしまう。  
それはまるで、抱き締める強さがテディーへの愛情を示すのだと誤解しているように。  
「・・・? 大丈夫・・・ですよ・・・?」  
そんなロックに一瞬不思議そうな顔をした後で、とろけそうな笑顔になるテディーだ。  
「私は・・・貴方のそばから・・・どこへも行きませんから」  
そうだからこそ、・・・──とロックはぎゅっと目を痛いくらいに閉じる。  
だからこそ、抱き締めていたいのだ。  

 
 
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