ドルファン学園からロムロ坂の喫茶店までは、それなりの距離がある。
だが、ハンナ・ショースキーは学生鞄を抱えたままその距離を必死で走っていた。
ゆっくり歩かないと、ショートカットの髪が乱れてしまうというのは判っているのに。
それでも、脚が心の速さに比例していない気がして焦ってしまうばかりだ。
ようやく喫茶店に着きドアをくぐった時には、ハンナは肩を大きく上下させていた。
店内に入ったハンナは、目を輝かせてキョロキョロと店内を見渡す。
道に面している大きなテーブルに探している人物がいた。
ハンナは急いで髪を撫で付けながら、そのテーブルに近付いていく。
テーブルについてカプチーノを飲んでいた男が、そんなハンナに顔を向ける。
非常に体格の良い、スポーツマンタイプだが少し冷たそうな美形の男だ。
ハンナの顔がパッと輝いたが、しかし男の方はつまらなそうな表情のまま頷く。
「・・・キムさん、遅くなってごめんなさいっ」
ハンナは、心から謝罪の気持ちを込めてペコッと頭を下げる。
実際、ハンナは約束には1分だって遅れてはおらず、むしろ早いくらいだ。
それでもキムが自分を待っていてくれたのかと思うと、嬉しさでつい謝ってしまうのだ。
キムと呼ばれた男は、すくっと立ち上がるとハンナに一瞥も呉れずに歩き出す。
ハンナは急いでキムのカプチーノの伝票を掴んで、自分の財布からお金を出した。
これでキムの会計をハンナが済ませたのは何回目なのか、正確には覚えていない。
正直な処、ハンナも裕福な訳ではないので困ってしまう気持ちもあった。
だがキムの分を自分が支払うという事が、なんだか大人の女性になった気分になるのだ。
他の誰でもない、自分に頼ってくれているという嬉しさもある。
そうしてハンナが会計を済ませている間に、キムはとっとと歩いていってしまう。
「・・・キムさんっ・・・」
ハンナは慌てて小走りでキムを追いかけて、その横に並ぶ。
そうしてハンナはにっこりと笑いかけるが、キムは特に反応を返すでもない。
──ハンナ・ショースキーとキムが出逢ったのは1ヶ月程前の事である。
近頃治安が悪くなってきている森林区で、ハンナはチンピラに絡まれた。
そこを偶然通りかかったキムが、チンピラを撃退してハンナを救ってくれたのだ。
ハンナ自身は、例の『東洋人の傭兵』を知っているから外国人に偏見はない。
体格も良く見た目も整っているキムに、ハンナはたちまち心を奪われたのだ。
ハンナはキムの横を並んで歩きながら、一生懸命話題を振っては反応を確かめる。
「ね、ね、・・・それでね・・・」
だがキムの態度は変わらず、前を向いて一人で勝手に歩みを進めているままだ。
ハンナはちょっと哀しくなってしまって、口を閉じて俯いてしまう。
そんな態度をチラッと横目で見たキムが、ぐいっと手をハンナの頭へ伸ばす。
キムは、まるで幼い子供にするかのようにハンナの髪の毛をぐしゃぐしゃっと撫でた。
「やんっ・・・な、撫でちゃ嫌だようっ・・・」
ハンナは手を上げてキムの手を避けると、ちょっと顔を赤くして髪の毛を左右に振る。
さっきまでは対等の大人扱いしてくれていたようでいて、不意に子ども扱いだ。
ハンナはなんだか文句が言いたいやら甘えたいやらで、頬を膨らます。
キムはそんなハンナにまったくお構いなしにさっさと歩いていってしまうのだ。
まるでキムの手の中で弄ばれている気がして、ハンナは胸をドキドキさせた。
そうして歩いている内に、二人はキムの借りているアパートメントに辿り着いた。
ハンナがいくら頼んでも合鍵はもらえないので、鍵をキムが開けるまで待つ。
ドアが開けられると、ハンナは浮き立つ気持ちを押さえきれず声を上げた。
「こんにちわー」
キムと一緒に部屋に入りつつ、誰もいない部屋にハンナは挨拶をする。
いつもながら、キムの部屋は乱雑というか散らかり放題だった。
ボクの部屋でももう少しキレイだよねと思いながら、ハンナはため息をついて苦笑する。
しかし、それでも嬉しそうに手近な処から早速片付けを始めた。
──ふと、床の上に長い金髪の髪の毛が落っこちているのに気付く。
ハンナは茶色のショートカットだから、これはハンナの髪の毛ではない。
表情を曇らせてそっとそれを摘み上げたハンナに、キムは関心なさそうな表情で言う。
「ああ・・・昨日、知り合いが彼女連れで遊びに来た」
それを聞いて、ハンナは胸を撫で下ろした。
「そうなんだ、・・・そうだよね」
別に疑っていた訳ではないが、ちゃんと安心させてくれるキムは優しいと思う。
そういえば、部屋の中にも少々残り香が感じられるが、これも知人の彼女なのだろう。
キムは、まるで何かを誤魔化すかのようにハンナをぐいっと抱き寄せる。
「そんなことより、抱いてやるよ・・・」
口調も冷たいし、ちょっと乱暴で雰囲気のないキムの言葉だ。
だが、これはキムの照れ隠しだとハンナは思っている。
──ハンナは、キムにチンピラから救ってもらった翌日にキムの部屋を訪問したのだ。
お礼にとお菓子を持って来たハンナは、いきなりキムに押し倒されてしまった。
甘い言葉を囁かれた訳ではないのに、強く抱き締められた瞬間に力が抜けてしまう。
そして自分が女であった事を改めて思い知らされたハンナは、キムに夢中になる。
もっとも、この頃はろくに話もしないまま抱かれるだけの事が多くてちょっと哀しい。
ハンナは、もっとキムと色んな事を楽しく話してデートをしたいのだ。
だが、キムの機嫌を損ねるのもイヤなのでそれを言う事はない。
むしろ、これが大人の付き合いというものなのだろうと思う事にする。
抱き寄せられ、そのままキムにベッドに押し倒されながらハンナはこくっと頷く。
キムが自分を抱きたいと思っているのは、きっと自分が魅力的だからだ。
女の子として誰かに必要とされる嬉しさが、キムの性急な行動を肯定させる。
自分が、見た目女の子していないというのは、ハンナの大きな劣等感だったからだ。
キムはハンナをベッドに寝かした後、散らかった床の上から何かを拾い上げた。
それは、荷造りにでも使うような細くて頑丈なロープだった。
ハンナはロープを見た瞬間、心臓がぎゅっと掴まれたような気になる。
「おまえ、さっき俺のことを疑ったろう・・・」
そう言うキムの視線は、なんだか冷たくてどこか寂しそうだ。
なんだろう・・・まるでボクが憎くて仕方ないみたいだ、とハンナは哀しくなる。
ハンナは必死になって、ぶんぶんと首を左右に振った。
「・・・そ、そんなことないよ・・・ボク・・・」
ハンナはキムの事を疑った事などこれまでもないし、これからもないだろう。
キムは、問答無用とばかりにそのロープをハンナの身体に絡め始める。
「・・・あっ・・・・っ・・・」
ドルファン学園の制服の上から、ハンナは乳房の上下にロープを巻きつけられる。
キムに逆らって嫌われたくない一心のハンナは、抵抗を躊躇する。
一旦うつ伏せにされたハンナは、後ろ手に両手を縛られて上半身の自由を奪われた。
そうしてもう一回引っくり返されたから、縛られた腕がちょっと痛い。
自由を奪われてしまった事実に、ハンナの心臓は破裂しそうになっている。
「これをくわえるんだ」
キムはハンナの制服のスカートをめくって、その裾をハンナの口にくわえさせる。
「・・・んんん・・・・」
ハンナはキムの言う通りにスカートをくわえて上目遣いに見つめた。
命令されてくわえさせらえたスカートの布地の味が、ハンナの口の中に広がる。
キムは、ハンナのショーツを脱がせて乱暴に足首から抜き取った。
ハンナが昨夜一所懸命選んだお気に入りの下着が、無造作に投げ捨てられた。
キムはハンナの秘裂を観察するかのように、股間を凝視した。
キムに見つめられているうちに、ハンナの割れ目がじんわりと濡れ始めた。
・・・ボクの恥ずかしいところが・・・いっぱいいっぱい見られちゃうぅ・・・・
子宮の奥底から来るような熱さが、ハンナの膣口をぱっくりと開かせていく。
まるで自分の全てを暴かれてしまうような感覚に、ハンナは股間を濡らした。
「・・・ふん・・・もう濡れてきやがった」
キムは憎々しげにそう言うと、ぐいっとハンナの縛られた乳房を揉みしだく。
「くぅううんっ・・・・」
優しくして、とハンナは目で訴えるがキムは見て見ない振りだ。
「縛っってやったから、乳が絞られて良い感じだな」
キムはハンナの両の乳房を力強く揉み込み、制服の上から乳首を刺激する。
根元を縛られてじんじんしてた乳房を乱雑に弄られるだけで、ハンナは高ぶった。
剥き出しにされた割れ目から、ちゅぷんっと愛液がこぼれるのがハンナにも判った。
「ふ・・・・ふうぅぅ」
ハンナは堪らなくなって、唾液で濡れたスカートの端を口から放してしまう。
「キムさん・・・お願い・・・」
「ちっ・・・スカートをを放しやがって」
キムは、細い目で睨みつけるようにハンナを見ている。
「もっと・・・ボクに・・・優しくしてぇ」
「何を言ってるのか全然判らないな」
キムは厳しい声でそう言うと、更にハンナの乳首を摘み上げる。
「ひぐっ・・・ぅ!」
ハンナは身体を竦めて、小さく快感の叫び声をあげた。
キムが更に絶妙な力加減で乳首をくりくりと捻って、ハンナを弄ぶ。
「ふぁぁんっ・・・ボク、感じちゃうよぅ」
蔑むような視線でハンナを見たキムは、吐き捨てるように言った。
「いやらしい女だ」
「いやぁぁぁあ・・・ボク、ボク・・・エッチじゃないよぅ」
ハンナは、目の端に涙を浮かべてキムをせつなそうに見つめる。
そのセリフを聞いたキムの指が、ハンナのクリトリスを擦り上げた。
「くぅぅんっ・・・・っ!」
ハンナは目をぎゅっと閉じて、ショートカットの髪の毛を揺らす。
「おまえは、どんな事をされても感じるんだろが」
「違うぅ・・・あぁぁっ・・・いやあああぁぁぁ」
キムはハンナの両足を抱え込んで固定すると、股間の割れ目に口を付けた。
そして、強い力でハンナのクリトリスを吸い上げる。
「だ、だめぇっ・・・感じすぎちゃ・・・ううぅぅっ」
ハンナは唯一自由になる首を振って、真っ赤になった顔をシーツに押し付けた。
キムはハンナの事などお構いなしに、更にクリトリスを吸い上げた。
「あああぁ・・・ボク、ボクぅぅっ」
もう息も絶え絶えになったハンナは、キムにキツ過ぎる快感を訴える。
キムは、依然としてまるでハンナを憎んでいるかのように顔を歪めた。
そうして、もう洪水のように愛液を出しているハンナの股間を睨みつけるのだ。
「誰にでも弄られれば感じるんだろうが」
「ち、違うぅっ・・・ボク、キムさんだからぁ・・・っ」
ハンナは、キムの思い遣りのないセリフにぽろぽろ涙を流す。
キムは一つ鼻を鳴らすと、ハンナの割れ目の襞を舐め上げて甘く噛んだ。
「ら、らめぇっ・・・そこ、らめぇっ・・・」
ハンナは涙をシーツに飛び散らしながら、喘ぎ声を上げる。
余りの快感に逃げようとしても、キムに太腿を抱えられているから逃げられない。
ハンナはもう何も考えられず、ただひたすら顔を左右に振って悶えるだけだ。
「ボク・・・だめになっちゃうよぅぅっ」
ハンナは、すすり泣くような甘い喘ぎ声を上げた。