みつめてナイト  

薄暗くなってきた陣地のあちらこちらで焚かれている松明の火が揺れている。  
自分の着込んでいるドルファン学園が周囲から浮いている事を感じ、  
ライズ・ハイマーは隣を歩いている年上の女性に気付かれないよう身を硬くした。  
ここはヴァルファバラハリアンの駐屯地が設置されているドルファン王国首都から  
2日程離れた谷間の平地である。時刻は夜に移り行く頃合だ。  
既に昨年の7月のイリハ会戦で疾風のネクセラリアことセイル・ネクセラリアが討たれ  
一週間前のダナン攻防戦では不動のボランキオことバルドー・ボランキアまでをも  
ドルファン軍に討ち取られたヴァルファバラハリアン軍の士気は高くはなかった。  
ライズとてこの敗色濃厚な状況を良しとしている訳ではない。  
ドルファンは彼女にとって憎むべき国であり、討ち滅ぼすべき相手なのだ。  
そう考え、鬱々とした日々を過ごしていたライズの前に今、隣を歩いている彼女  
氷炎のライナノールが姿を現したのは3日前の事だった。  
氷炎のライナノール・・・・ヴァルファバラハリアン八騎将の内の1人であり  
不動のボランキオを憎からず思っていたというのは公然の秘密であった。  
そのライナノールがドルファン学園近くのライズの寄宿舎に不意に現れて言ったのだ。  

「・・・・・いつも安全な後方で動いているというのはどういう気分?」  
その言葉を聞いた瞬間、ライズの頭は沸騰するかと思われた。  
自分が楽な任務に就かされているのではないかいう思いは常日頃から彼女を苛んでいた。  
ヴァルファバラハリアン八騎将として日々の鍛錬を怠けた事はないと言い切れる。  
だが、実際に戦場で活躍する機会は少なく、生死の狭間で戦っている同僚達に気後れしか  
感じていないというのも事実だった。いわば図星を指されてライズは顔を真っ赤にしながら  
反論したがライナノールは冷たく笑ってなおもライズの不義理を責める。  
そして、きつい視線でライズをにらむと彼女がいかに軍に役立っていないかを激しく説いた。  
そのライナノールの厳しい言葉を聞きながら、ライズは自分が能無しの役立たずである事を  
思い知らされ、少しずつ視線を落とし、最後には号泣して謝罪の言葉を繰り返した。  
そして、遂にライズはヴァルファバラハリアン軍の士気高揚の為に命を絶つ事を誓わされた。  
「・・・・・あなたの様なゴミでも、最期に役に立つ事がひとつあるんだけど」  
隠密のサリシュアンことライズ・ハイマーを見つめるライナノールの瞳はただひたすらに  
冷たかった。しかし、更に誤った情熱の炎までもを内包していた。  

──心酔していたボランキオが一週間前のダナン攻防戦で討ち取られた時から  
ライナノールは自分自身の生死など取るに足らない事と思い、人生に捨て鉢になっていた。  
だが、ボランキオの事を思い返す度に何故か隠密のサリシュアンへの嫉妬が湧き出してくるのを  
抑えきれなくなるのだ。ヴォルフガリオの実娘であるというだけで偵察などという楽な  
後方支援の任務に就く事が許されている少女。しかも、噂によるとドルファン軍の傭兵の  
一人と恋愛じみた息抜きまでやっているとも聞く。それが許せない。  
だから、ライナノールはライズこと隠密のサリシュアンに屈辱を味あわせたいと思った。  
少しでも自分の気持ちをこの少女に判らせてやるのだ、と・・・・。  
ライナノールは目の前で泣き崩れる少女を胸のすくような思いで嘲笑う。  
所詮、百戦錬磨のライナノールから見ればライズなど未熟な子供に過ぎない。  
脅しつけ宥めつけ、正論と挙論を弄する内、ライズはライナノールに逆らえなくなっていた。  
こんな事はヴァルファバラハリアン八騎将としては児戯にも劣る程に容易い事だが  
いわば温室育ちだったライズはそんな恫喝に抵抗力を持ち合わせていないガキだった。  
結局、ライズは死ぬ前に“もう一つ”軍の為に役立つ事までもを誓わされていた。  

その部屋の天蓋の入り口の布を開けた瞬間、息が詰まるような空気が流れ出して来る。  
喧騒、と言ったらいいのだろうか。空気がよどみ、怒声と嬌声が交じり合っている。  
足が竦んでしまったライズは、ライナノールに肩を押されるように天蓋の中へ押し込まれる。  
そこはヴァルファバラハリアン軍の下級兵士の睡眠を取るテントだった。  
中にいた数10人の兵士達は、自分達が足元にも及ばない氷炎のライナノールが入り口から  
入って来た事に気が付くと、一斉に緊張した雰囲気に包まれた。  
そんな兵士達に向かってライナノールは軽くねぎらいの言葉を掛ける。  
「・・・・御苦労、かしこまる必要はない。楽にしていい」  
そんなライナノールのセリフを聞いて兵士達は安心した表情になった。  
「今日はお前達に気晴らしの玩具をやろうと思ってな・・・・」  
そのライナノールの言葉を聞いた瞬間、うつむいていたライズの肩がびくっと震えた。  
あの日、いかにヴァルファバラハリアン八騎将として無能であるか思い知らされたライズは  
ライナノールに今まで軍に迷惑を掛けた代償としての死を選ぶよう諭された。  
その上で、死ぬ前に少しでもこの士気が衰えつつあるヴァルファバラハリアン軍の役に立つ事が  
恩返しになるとも説得され、その身を兵士達の慰安に提供する事を誓わされたのだ。  

ライナノールは野卑な兵士達を前に足が竦んでいるライズの肩を強く押して叫ぶ。  
「さあっ! 今日はこの女をお前達の好きにしろっ! 遠慮はいらんぞ!」  
そう叫んだライナノールは手早くライズの手首を捉えて後ろ手縄で縛ってしまう。  
「・・・・っ!」  
ライズは抵抗出来なくなった事を感じ、震えた目でライナノールを見る。  
だが、ライナノールの冷たい瞳の中には何の感情も読み取れない。  
それから逡巡している兵士達を鼓舞すべく、ライナノールはライズの制服の上着に手を掛け  
引きちぎるようにボタンを飛ばし、ライズの抵抗を押さえつけるように下着まで破り捨てる。  
ライズは生まれて初めて自分の乳房を他人の眼に晒される。  
白く、透き通るように綺麗な乳房と小さく色づきもほのかな乳首が空気に触れて緊張が走る。  
「・・・・い、いや・・・・・」  
覚悟はしていたとはいえ、ライズにとってその恥辱は耐えがたいものだった。  
テントの中にどよめきが走り、一瞬にして空気が下世話なモノに変化した。  
何人かの兵士が、それまで座っていた位置からライズの方へ近寄って来る。  
そんなライズの真っ赤になった耳にライナノールは囁いた。  

「もし、慰安の最中に舌でも噛み切ったら、死体は陣中に死に装束もさせずに晒すからね」  
ライズは目の前が闇に包まれた様に感じる。ライズにとっては誇りが人生の全てだ。  
「それにこの低俗な慰安婦がヴァルファバラハリアンの隠密のサリシュアンとバラす」  
その言葉によって、ライズは奇妙な形でライナノールの言葉に縛られて死を選べなくなる。  
そもそもライズに兵士に肉体を提供する事を強要したのはライナノールであるのだが  
そんな事に反論出来ない程にライズは混乱し、益々ライナノールの術中にはまっていた。  
ライズの眼に涙があふれる。背中を丸めて少しでも胸を隠したいのだが、ライナノールが  
ライズの肩を無理に反らせる。ライズは兵士達に胸を突き出す格好になった。  
「・・・いいおっぱいしてんじゃんか、姉ちゃん」  
兵士の一人が冷やかすようにライズに声を掛けてくる。  
「乳首もいい色、してるな」  
ライズの晒された乳房が、恥辱にまみれながら呼吸に合わせてタプタプと揺れた。  
「遠慮する事はないぞ、触ってみたらどうだ? ん?」  
ライナノールは兵士達に微笑むと、両手を後ろで縛ったライズを兵士達へ向かせる。  
それに触発されたように、3人の兵士がライズの近くまで近付いて来る。  

一人の兵士がニヤけた笑いを顔に張り付かせたまま、ライズの右の乳房をグイッとつかんだ。  
「・・・・っ!」  
そして汚れた手でライズの白い乳房をもみしだく。もう一人の兵士が左の乳首をつまんだ。  
「・・・・・いや・・・・」  
ライズは両手の自由を奪われたまま、首だけを振って涙を流した。  
乳首をつままれると異様な感触で鳥肌が立ったが、男達はそれを快感のせいだと受け止める。  
「おっと、乳首が硬くなってんじゃんか」  
「どれどれ・・・お、コリコリしてるな。吸って欲しいんだよ、こりゃ」  
「へへへへ・・・すべすべで柔らかいおっぱいだな、こりゃ」  
ヒゲの伸びかけたザラザラの頬がライズの乳房にこすりつけられ、ライズは目をギュッと閉じた。  
そんなライズの反応を楽しむように、兵士の一人が乳首を音を立てて吸った。  
ライズは乳首が絞られるようでムズムズとなり、気持ち悪くて耐えられなかった。だというのに  
男の口の中で自分の乳首が痛いくらいにキツく硬くなって行くのをどうする事も出来ない。  
そうして、ライズは抵抗も出来ないままに自分の胸を思うように嬲られる状況に絶望する。  

 

「・・・・いやあ・・・・・」  
テントの外まで聞こえて来たライズの喘ぎ声を聞いて鎧に身を包んだ少年が舌打ちをする。  
「まったく・・・大勢で寄ってたかって・・・・趣味が悪いぜ」  
そうつぶやいたのは、いささか負けん気の強いような風貌をしている綺麗な金髪の少年  
スパン・コーキルネィファ(通称:迅雷のコーキルネィファ)であった。  
「そうですな・・・・だが、兵達にはこの様な娯楽も時には必要でしょう」  
コーキルネィファの隣に立つ白髪の老将キリング・ミーヒルビス(通称:幽鬼のミーヒルビス)  
が苦笑交じりに言葉を繋げる。  
ミーヒルビスは盲目である為、嬲り者にされている女の姿形は判らなし声もよくは聞こえない。  
もし、彼の眼が光を失っていなかったとしたら、その少女を見て驚愕していたろう。  
そこにはライナノールの暗い姦計に陥れられた将軍の愛娘が恥辱にまみれていたのだ。  
「チッ! ・・・・ミーヒルビス、酒でも付き合ってくれよ」  
「よろしいでしょう・・・・」  
ライズの凌辱に加わろうともせずに、二人は駐屯地の奥へと歩き去っていった。  

 
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