下校時。瑞希の言葉に、ひっかかるものを感じた功司。  
「あれ? 瑞希の家ってこっちだったっけ?」  
「さぁ……覚えてない」  
「覚えてないって……」  
「思い出して」  
「え?」  
「功司くんが思い出してくれないと、私、おうちに帰れない」  
「ははは、なんか俺が何か思ったらそうなるみたいな言い方だな」  
「……」  
 意味不明な言葉。そして沈黙。この世界の真相を未だ知らない功司にわかるはずも無い。  
 気まずくなりかけた空気をなんとかしようとおどけてみせる。  
「そう言えば、瑞希の下着ってどんなのかな?」  
「!!」  
 歩いていた瑞希が立ち止まり、頬を引きつらせる。それもそうだろう、功司が先の言葉を口にした瞬 
間、彼女がどんな下着を身につけているかが不確定になってしまったのだ。  
 パンストを履いているのがせめてもの救いだが、その下に何も履いていないに等しい状況に彼女は置 
かれてしまったのだ。  
「思い出してっ!!」  
 引きつった表情のまま、だけど頬を染めて功司に詰め寄る瑞希。  
「可及的速やかに思い出してっ!!」  
 
 無論彼女が慌てている理由に思い至らない功司は、きょとんとしたままのほほんと答えてしまう。  
「ん〜〜、瑞希ってなんか物静かで大人びているから、沙夜みたいな子供っぽい下着じゃないんだろう 
な……。  
 ストッキングの色に合わせて黒! それも意外と大胆なTバックとか」  
「!!」  
 かぁ〜〜〜〜っ、と瑞希の顔が紅潮してゆく。次の瞬間、功司は瑞希が持っていた学生鞄によってし 
たたかに打ちのめされていた。  
「功司君のばかぁぁぁ!」  
 珍しく大声を出す瑞希が、なぜか懐かしく感じられた。泣きながら走り去る彼女のスカートがめくれ 
あがり、黒いパンストの下には、それはもう面積の小さい……瑠羽奈ですら穿くのを拒むようなショー 
ツが一瞬だけ見えた。  
「……」  
 瑞希に叩かれたのとは違う理由の鼻血をあふれさせ、功司は意識を失った。  
 
 
 終  
 

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