Missing Blue  

抱き合うこと数分。  
破れかぶれになっていた事によるテンションも下がり、  
冷静に自分自身が置かれている状況を整理する。  

静乃を攫う  
↓  
おじさん激怒  
↓  
許婚に助けられ離脱  
↓  
自分の部屋へ  

我ながらよくやったもんだ。  
信じられない。おじさんの怒りももっともだ。  
これから親戚付き合いとかどうすんだよ………それは親任せでいいか。  
交通事故に遭った息子をほっぽって海外フラフラしてる罰だ。  
………そうでも思わないとやっていられない。  
まあ後で静乃の許婚の………名前何て言ったっけ、にはお礼言っとかないとな。  
「………はは」  
自嘲気味の笑いがこぼれる。一体どのツラ下げて会いにいったらいいことやら。  
問題は山積みだ。でも、  
「お兄様………?」  
不思議そうに俺の顔を見上げる静乃。  
………実入りは大きかったよな。  

何も言わず、抱きしめる腕に力を込める。  
目を閉じ、再び俺に身体をあずけて来る。  
長い髪から漂う香りが鼻腔をくすぐる。  
柔らかな身体の感触………って、あ。いや、生理現象がっ。  
「あっ」  
気付かれた。  
どこまでも決まらない自分に情けなさを覚える。  
くそ、なんだってこんな状況で。  
いや、こういった状況だからこそ、か………なんだっけ、釣り橋がどうとか。  

静乃と目が合う。………そらす。………?  
微かにではあるが、静乃が肩を震わせている事に気付く。  
やば、怒らせちゃったか。  

「いや、その、これはな、えー、静乃?」  
なんだか様子がおかしい。さらによく見ると、クスクスと笑っていた。  
「そ、そうですよね、男の人ですもんね、お兄様」  
………言い訳をしようとしていた俺が非常に格好悪いじゃないか。  
まあ、静乃の言う通りではある訳で。  
言葉に詰まる。  
「でも、これって、お兄様が私に魅力感じてくれている、って事ですよね?」  
照れもあるのか、顔を紅く染めながらいらずらっぽい笑みを浮かべる静乃。  
肯定の意を伝える為に軽く頭を撫でてやる。  
「嬉しいし………なんだか安心しちゃいました」  
「何だよ、安心って」  
「最後まで格好良く決められちゃうのも、なんだか、  
お兄様らしくないなあー、と思って」  
勝手なことを………  
「悪かったな、格好悪くて」  
怒ったような口調を装ってみる。  
裏腹に、俺の心の中はそんな静乃に対する愛おしさで満たされている。  
ツボに入ったのか、なおも笑う静乃。  

 

静乃には結構おちょくられっ放しだ………なんだかなあ。  
黙らせよう。決定。  
「私は気にしま――――」  
最後まで言わせずに、唇を奪う。  
突然のことに、目を白黒させる静乃。  
そんな瞳を間近で見る事によって、反則気味の勝利感を味わう。  
眼前のその眉が非難するかのように寄せられた。  
………その割に逃げようとしないので、全然説得力が無い。  
しばらくその唇の感触を堪能していると、観念(?)したのか、  
ふっ、と表情を緩める静乃。  
そんな姿を見ていると、ついついもっと困らせてやりたくなり、  
ためらいがちに開かれている口内に、舌を滑り込ませる。  
反射的に引く舌から、静乃の狼狽が伝わって来る。  
もう少し深く舌を差し込み、舌先を触れ合わせた。  
「〜〜〜!?」  
息をのみ、声にならない悲鳴を上げるも、  
狭い口内には逃げ場など無い事に気付いたのか、俺の舌にされるがままになる。  
手を引くようにして絡ませてゆくと、徐々に要領を得、  
躊躇いがちにではあるがこちらの舌の動きに合わせてくる。  
調子に乗って強くしようとすると逃げられてしまうので注意が必要だった。  

少しずつ、少しずつ動きを早め、静乃を追い詰めてゆく。  
徐々に蕩けてゆく瞳に、まるで小動物を弄んでいるかの様な陰鬱な歓びを感じた。  
「ぅ………ふぅ………」  
静乃の洩らす声に甘いものが交じり始める頃には、  
こちらの動きに合わせるどころか積極的に求めて来る様になっていた。  

このまま際限なくこうして戯れ続けるのも悪くは無かったが、  
とりあえず俺の方から唇を離す。  
名残惜しげにお互いの舌が解け、唾液の橋ができ、すぐに切れた。  
口に残っている静乃の感触をなんとなく反芻し、余韻に浸っていると、  
静乃がまた口元を綻ばせていることに気付く。  
「………ファーストキスだったんですよぉ」  
家柄と年齢を考えると、そうだろうなとは思う。意外でもなんでもない。  
「お兄様、わかってます?初めてだったんですよ?大切なものなんですよ?」  
静乃、お兄様はそんな簡単な英語もわからないと思っているのか。  
「あ〜あ、ちゃんとしたかったのに………」  
むぅーっ、とわざとらしくむくれる静乃。  
わかるからその目をやめてくれ。  
「ごめん、調子に乗りすぎた」  
楽しげな、時々こちらをからかう時の静乃の姿を前にして、  
これ以上しらばっくれることなんか出来やしなかった。  
素直に頭を下げる。  
そのまま上目使いに静乃の顔を覗き見ると、満足げにニコニコとしていた。  
こいつ………俺の情けない姿を結構好むよなあ。  
わかっていてやる俺も俺なんだけど。  

「で、では、その、えーと」  
なにやら言い淀む静乃。  
俯くその視線の先で、両手の指をそわそわと絡めている。  
「なんだよ、静乃」  
「お、お兄様ばかり、ずるいので、えーと、今度は私の番だと、思います」  
ヘンな言い回しだな。なんだよ番って。  
訳がわからず、ボーっとしていると、  
「め、目は閉じて下さいっ」  
命令口調かよ………と思うものの、  
その妙な迫力に、とりあえず従ってしまう。  
いつかのお祓いの時みたいだ。  

しばらくそうしていると、ズボン越しにさわさわ蠢く指を感じた。  
そのまま窮屈になっていたそこから解放され………え?  
思わず目を見開いてしまう。  
「し、静乃!?」  
「お、お兄様………なんか、こ、これ」  
跪いた静乃の目の前には、その、気取られた時よりも元気になったものがある。  
正直なところ、軽口を叩き合っている最中には痛い程だった。  
どうしたらいいかわからない、といったような目がこちらに向けられる。  
何をしようとしているかは大体わかったけど………  
「とりあえず、脱いだ方がいい」  
「え」  
飛ぶし。  
「だから、脱いで」  
「〜〜〜ッ………だから、って何ですか………」  
背伸びをしたはいいものの、結局俺に従う形になり、少し拗ねたような表情を浮かべる。  

ばさり、とワンピースを脱ぎ捨て………スポーツタイプか………。  
律儀に畳んでいる静乃と目が合う。  
「お、お兄様っ、なんだか、め、目つきがイヤラシイですよ」  
胸の前で両手を交差させる静乃。  
そんな事言われても………  
下着の選択が意外で、とか正直に言うと本当に怒り出しそうだし。  
「そっ、それに、なんで私だけ裸にならないといけないんですかっ」  
「………わかったよ」  
静乃が激しく狼狽している様子がなんだか可笑しくて、つい口元が緩んでしまう。  
それがバレない様、背中を向けて俺もシャツのボタンに手をかけた。  
今更ながら静乃の服を俺自身の手で脱がせられなかったことが惜しくなる。  
………気が利かない、か。  
枚数的にこちらの方が時間を食う。じーっとこちらを(多分)見ている静乃。  
随分と間抜けな絵だった。  

「脱いだよ、ほ―――」  
振り向いて絶句する。  
透き通るように白い肌。  
女であることを主張してから間もない胸。  
隠そうとしている指の隙間にのぞく桜色の蕾。  
静乃はショーツ一枚になっていた。  
いつかのプールでは水着に覆われていた部分の大半が目の前に晒されている。  
しばらく何も考える事が出来ず、静乃の身体を見つめ続けた。  
「お兄様………」  
静乃の声で我に返る。  
「あ、ああ」  
言って、ベッドに腰をかける。  
軽く手招きすると、素直に俺の脚の間に座る。  
必然的に俺のモノが眼前に突き付けられる形になり、小さく息を飲む静乃。  
少し、いや、かなり真剣な眼差しをそれに向ける。  
向ける………が、一向にその先に進もうとしない。無理もないか………  

「静乃、無理しなくてもいいから」  
「べ、別に無理なんかしていませんよ」  
意固地になっている。  
ごにょごにょと何事かつぶやいた後、静乃の唇が竿の部分に寄せられた。  
軽く口を付ける。  
「うっ………」  
ただそれだけの刺激で、情けなく声をもらしてしまう。  
「……?」  
先を促そうと、こちらを見る静乃の頭に手を乗せる。  
ちゅ、ちゅ、と軽い音を立てて、全体に口付けをしてゆく静乃。  
「静乃………舌とか使って」  
自分から始めた手前もあるのか、俺の指示に素直に従う。  
まるで子犬の様にペロペロと一心不乱に舌を這わせ始める。  
「そう………その裏の所とか………くっ」  
静乃はのみこみが早い。  
漠然とした指示を出しても、それを的確に実行してくる。  

………昔、一緒に遊んでた頃もこうだったよな。  
素直で………賢くて、芯が強くて。  
幼い頃の(今もそうなのだが)静乃の姿と、今懸命に奉仕している静乃の姿が重なる。  
もしかしたら非常にヤバイ事を、まあ中等部の娘なんだから実際ヤバイんだけど………  
そういった後ろめたさすら愉しみつつある事を自覚する。  
「う………んぅ………ぷぁ………」  
少し息苦しくなったのか、口内から俺のモノを吐き出す静乃。  
「どう………でしょうか………」  
不安げな声と共に、潤んだ瞳がこちらに向けられる。  
先程幼い頃の姿を思い浮かべたせいか、今更ながら異常に照れを感じた。  
どんな言葉をかけてやったらよいことやら、と思索しつつ、  
とりあえず静乃の頭をくしゃくしゃと撫でてやった。  
目を細め、安堵の表情を浮かべる静乃。  
最早抵抗は無いのか、唾液と先走りでてかっているそれに頬を摺り寄せてくる。  

「くっ?」  
熱を帯びた柔らかな頬の感触と、吐息を感じる。  
突然のことに、堪える事も出来ず、俺は甘い痺れを解放した。  
「きゃ!?」  
白濁とした液体が静乃の顔に浴びせかけられる。  
悪いとは思いつつ、汚されてゆくその姿に魅せられてしまう。  
幾分かは口にも入ったのだろう、静乃の喉がこくん、と動く。  
「う………っ、なんか、ヘンな味ですね………これ」  
指に絡んだ粘液を弄びながら言う静乃。  
相変わらず、俺をからかっているつもりなのかも知れないが、  
うわ、指に絡んだものまで啜られると、こう、ガマンが………  
「酷いですよぉ、お兄様」  
所々汚れた顔もそのままに、クスクスと無邪気に笑いながら言う。  
………止めを刺された。  
「静乃………っ!」  
「お、お兄様!?」  
強引に静乃の腕を取り、ベッドに横たわらせる。  

目の前で軽く震える胸に舌を這わせる。  
仰向けにさせると、ほとんどまっ平らだった。  
「ぁ………ちょ、ちょっと待って、うぁっ!?」  
音を立て、静乃の胸にマーキングを施してゆく。  
自分自身をも焦らすかのように、乳首へは最後に向かう。  
ようやくたどり着いたその部分を舌先で押しつぶし、  
そのままくるくると円を描くようにする。  
「んっ………んぅぅ………っ」  
いやいやをするかのように頭を左右に振り、  
俺の肩をつかんでいる静乃の腕に力が込められる。  
当然、中等部の娘の力では俺を引き剥がす事など出来はしない。  
その抵抗を楽しみつつ、両方の胸をしばらく弄び、開放する。  
「………お兄様っ、あ、あのっ」  
必死で何事か訴えかけようとする静乃。  
無視して、今度は静乃の脚の付け根に唇を寄せる。  
ショーツの端を口に咥え、爪先へ向かう。  
分泌された体液が細い糸を引く。  
「〜〜〜っ」  
これを悟られたく無かったのか、静乃の表情が引きつる。  
その様を見て、唇の端が歪むのを抑えられなかった。  
静乃を覆っていた薄布を全て取り去る。  

はあ、と深く息を吐くも、一向に呼吸は穏やかにはならない。  
今の俺は酷く浅ましい表情を浮かべているのだろうな、と思う。  
その部分に目を向ける。  
微かな茂りと、ぴったりと閉じられた構造にあてがわれた、対照的な構造の俺のモノ。  
これから、という段階になって、俺はようやく幾分かの平静を取り戻す。  
自分の獣性に愕然とし、動けなくなってしまった。  
「お、おにい、様」  
目に涙をいっぱいに溜めた静乃が、こちらに声をかける。  
………なにも答えられない。  
怖かったろうにも関わらず、気丈にも強張った笑顔を作る静乃。  
ビンタの一発でも張られた方がよっぽど気が楽だった。  
「ちょっと、怖かったですよ、えと、笑顔が邪悪で」  
ぽろ、と涙が一滴こぼれる。  
「で、でも、いいです、お兄様なら」  
ぽろぽろと涙をこぼしつつ言う静乃を見ていると、  
先程とは違った感情で胸がいっぱいになる。  
いたたまれなくなり、静乃の肩に両手を回し、きつく抱きしめる。  
………卑怯だな俺。  

「ごめん………」  
囁くと、静乃は首を縦に振った。  
「………もう止めようか?」  
「え?あ、あの………?」  
正直なところ、最後までしたいのだが………  
「俺は十分気持ちよかったし」  
静乃を壊してしまいそうで恐ろしかった。  
「それに、静乃って巫女さんだから」  
これは建前だ。  
「時間、あるだろ?」  
「はい、そ、そうですね、お兄様もこうして―――」  
きゅ、と静乃の腕にも力が込められる。  
「帰って来て下さった訳ですし」  
「静乃のお陰だよ」  
「そうですねー、そう思うんならもっと優しくして欲しかったですねー」  
意地悪く微笑む。俺を気づかっているのだろうか。  
わからないまま、手繰り寄せたタオルで静乃の顔を拭く。  
目をつむってなすがままにされる静乃。  
仕上げ、とばかりに静乃と軽く唇を重ねる。  

「お兄様」  
離れた直後に静乃の唇が動いた。  
「………なんだよ」  
「あ、あの、お兄様を受け入れるとかは、もうしばらく、でも、私今成長期ですから、  
 じゃなくて、その………」  
それっきり、黙ってしまう。  
「うん?」  
促すと、  
「お、お口でなら、いつでも、お相手できると、思いますから」  
早口で言い、背中を向けてしまう。  
せっかく落ち着きかけたのに………なんて事言ってくれるんだよ。  
今夜は地獄になりそうだった。  

 

後日。  
静乃との帰り道。  
「静乃………おじさん相当参ってるらしいぞ………そろそろ帰ってやったらどうだ?」  
「嫌です。私を閉じ込めようとする人の所へは帰りません」  
表情一つ変えず、きっぱりと言い切る。怖っ。  
「友達のところにだってずっと居る訳にもいかないだろ」  
諭すように言うと、  
「じゃあお兄様の家に行きます」  
「そ、そりゃマズいだろ」  
「どうしてですか?」  
「どうしてって………」  
ロクな噂が立ちそうに無い。  
言葉に詰まっていると、静乃が「あっ」と声をあげた。  
「あ、あの、お兄様」  
「ん?」  
「あの、スマタって何で――――むぐ」  
慌てて口を塞ぐ。  
「だっ、誰からそんな事聞いたんだよ………友達か?」  
そのまま、静乃に問う。  
こく、と頷く。こいつ………  
どういう経緯でそういう話題になったのかが手に取るように解るのがイヤだった。  

 

おわり。  

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