摩津方IN木村圭子は何となく惚けていた。  
 授業を受けると自分が生きた時代とはまた変わっているのだと実感する。  
 増えて減った様々なもの。  
 ゆとりと囁かれる現代は過去に比べれば増えていた。だから減らしている。  
 結果的に差し引きは無いに等しい。  
「ではここの文章を…木村、読んでくれ」  
「あ、はい! えっと…『恐怖に―――」  
 例えば今読んでいる文章。  
 出展元「断章のグリム なでしこ(下)」と書かれたそれは自分の時代の教科書には載ってないだろうファンタジー。  
 これも足されたもの。代わりに堅苦しい文章が減った。  
 自分は違う時代の人間だ。  
 しかめられた左目に前髪がかかり隠れるように止められた留め具。  
 そこに摩津方という人間の証は確かに存在する。昔の人間が。  
 パラドックス。果たして自分はここに居ていいのか?  
 かつての自分なら絶対に思わない疑問。確実に人に回帰していく自分への恐怖。  
「摩津…じゃなくて木村ちゃん!」  
 ふと声がして見ると武巳が教室の外から手を振っていた。手には弁当箱。  
 その大きさから見るにおそらく自分の分もあるのだろう。  
 疑問はあっという間に氷解した。  
 下らない。自分に存在価値を彼が与えてくれたではないか。  
「こぞ…じゃなくて近藤先輩少し待っててくれますか?」  
 いつか言ってくれた。自分を保守してくれると。  
 決めた。  
 自分はこの少年を保守すると。今まで散々な事をしてきた償いには足らないかもしれないが。  
「何々彼氏?」  
 木村圭子のクラスメートが興味津々と言った様子で聞いてくる。  
『わたしの周り煩い人ばかりでごめんなさい』  
 頭の中に響く木村圭子の謝罪。別に気にしてない、と言葉には出さず伝える。  
「違うよ。ただお世話になってる先輩だよ」  
 そう答えながら摩津方は思った。もし枯れの横にそれとして、彼女として立てる日が来るなら、と。  
 お互いに保守をする二人。その思いは同じ色。思いが繋がるのもあと少し。  
 
 近藤武巳は呆けていた。理由は無い。授業中にも関わらず窓の外を見てただ呆けていたのだ。  
 視線の先には体操服を着た木村圭子の姿があった。体育の授業らしい。  
 ちなみに摩津方は運動したくないという理由で絶賛引きこもり中である。  
「体操服にはやっぱりツインよりポニーだな…」  
 ろくな事を考えていないのは明白な独り言。  
「………!?」  
 ふと武巳からドギャーンとオーラが溢れて瞬く間にドドドドドドと教室を埋めつくした。  
 見開かれた目の先にはやはり木村圭子。だが更に言えば体操服の下、ブルマである。  
 そこから確かに白い何かが出てるのを見たのだ。  
「あ、あれは…ハミパン………!?」  
 教室内の生徒は「俗・マジカル少女あやめちゃん」を執筆中の空目を除きオーラに気圧されて吹っ飛んだ。  
 ただいくら乙女になったとは言え、その禍々しいオーラに気付かないほど摩津方も愚鈍ではない。  
『圭子ちゃん』  
「ん?」  
『ハミパンしてる』  
「えっ!? あ、本当ですね…やだ、恥ずかしい………」  
 指摘されてハミパンを直す木村圭子。そして  
「馬鹿やめろアアアアアアァァァァァァァァァァッ!!」  
 盛大な武巳の絶叫が教室に響いた。  
 その日、たまたま武巳と接触したカヴンが一週間活動停止を余儀なくされるほどに滅多打ちにされたとか何とか。  
 
 保守  
 

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