亜紀は暗い部屋でぼうっとしていた。呪いのFAXがただダラダラと流れるFAXを見つめながら思う。
…これはイタズラなのか。
…本物なのか。
…どうなってしまうのか。
…死んでしまうのか。
…どうやって死―――
ぐぅ〜
…………お腹空いた。
…今日の夕飯はどうしよう。
…昨日食べたCoCo壱番屋のトッピングは何だったか。
…ポップンのエピックポエトリーのレベルは詐称じゃないか。
…ヴィジュアルREMIXの階段に本家の面影がない。
…ミクスチャーとユーロビートをやり比べるとレベル設定がおかしい。
…今の時代はNLなのかBLなのかGLなのか。
ビー、
ふとFAXから聞き慣れない音が聞こえた。見れば、用紙切れの文字が浮かんでいた。
「あぁ…最初からこうすれば送られてこないね」
こうして呪いのFAX事件は大騒ぎになる前に偶然にも解決された。
送った本人や駄目教師は結局、犬に美味しく(性的な意味で)食べられてしまったが。
この一連の結末を聞いた詠子も思わず「なんでこ〜なるのっ!」と叫んだあと、ドリフのコントみたくずっこけたという。
今回の被害者の中に中途半端なところで召喚止められたサブナックが居る事を忘れてはならない。
解決後。機関から貰ったお金の使い道を考える亜紀。
家具一式にテレビとパソコン。余ったお金はどうするか。
ふとパソコン買うならソフトも、と考えた。だが何を買えば良いものか悩む。
とりあえず電気屋に行くだけ行こうと立ち上がる。そして
「…!」
十叶詠子に出会ってしまった。驚いたのは詠子の方である。
その手に持つカゴは美少年が描かれた何かのソフト。とにかくかなり慌てていた。
「何を買ってるんですか?」
「これは…わたしが腐とかじゃなくて…そう! 物語の参考資料なの!!」
いつもの無邪気な笑顔に無茶苦茶な理論。だが亜紀は特に気にする様子はない。むしろ
「…面白いですか?」
やや興味を示した。暇つぶし程度という考え方だが。
「うん、凄く面白いよ」
詠子のカゴの中にあるソフトを確認すると亜紀は同じソフトをカゴに入れた。
そして文化祭頃になると亜紀は見事に腐女子になっていた。
文芸部の展示する部誌。その中の亜紀の作品を読んで詠子はその成長っぷりに、文芸部員は親友の汚れ方に涙した。 空目だけは
「人それぞれだ」
と言ったのみだった。その空目の作品『マジカル少女あやめちゃん』は後に商業化されることになる。