真っ赤なポストの上には、妖精さんが座っている。  
       _  
.     , ´   ヽ r‐.      「おはよう、ポストの妖精さん」  
.  ___i b ,-、 d i_| i      『オハヨウ、“魔女”サン』  
  i  __.  `='   .__!     妖精さんはポストの上で、いろいろな人が手紙を入れるのを見ている。  
  !__! |     |       でも気に入った手紙を持っていってしまうので、  
.      |___________|       時々手紙が届かないことがある。  
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  「妖精さんに手紙書いい?」  
|   [二二二二二二]   |  『アラ、本当ニ?』  
|   !_______!  |  「うん。それなら取っても大丈夫だよ」  
|               |  『アリガトウ。ナンダカ最近ハ手紙ガ少ナクナッテキテ寂シイノヨ』  
                 今度、妖精さんに携帯電話を教えてあげよう。  
 
 
近所の木下さんの家の、生垣の薔薇は“監視者”だ。  
    _ .              
   r/へゝ.^、       大きく咲いた花の真ん中の、大きな目玉がその証拠だ。  
  ノ({0})ソ)ノ       監視者はずっと何かを監視して、土の中の誰かに何かを報告している。  
  ゝ-^ーソゝ         何を監視して誰に報告しているのかは、規則なのか聞いても教えてくれない。  
   ⌒^ ~)) ,r ‐、    「おはよう、“監視者”さん」  
      ((ノ_,、,ゝ     『ヤア、オハヨウ“魔女”サン』  
  r ‐- 、 ))       「ねえ“監視者”さん、いつも何を監視しているの?」  
  ゝ- ヽ((        『禁則事項デス』  
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;  「誰に報告しているの?」  
      ノ \      『中ノ人ナンテイマセンゼ“魔女”サン』  
    /    ヽ,     やっぱり教えてくれません。  
   /       ',    「綺麗な目だね」  
   {0} /¨`ヽ {0}.     『ソウダロ?デモ綺麗スギルノモ大変ナンダゼ。前ノヤツ生花ニサレタヨ。  
.   l///トェェェイ///',   ダカラ今度ハ普通ノニシテミタゼ』  
  ノ   `ー'′   ',  後で木下さんに切らないように言ってあげようかな。  
 
 
丘の墓地には、小人さんが住んでいる。  
 
   , ヘ.             髭をはやした、妖精さん達。  
  ○ ) \  ¶⌒ヽ、     墓石の下に住んでいて、とても器用。  
   (二二二) ||二不      「おはよう、小人さん達」  
.   i b ,-、 d iノ||         『“魔女”サンダ!』『朝ダ!』『挨拶ヲ!』『オハヨウ!』  
.  ノ! ノ`='し .i |j         今日も何か作ったらしく、小人さんは誇らしげに見せる。  
.   ヽ.__ノ            『コレデ目ヲツツキ出スンダ。鳥ノクチバシデ出来テイルカラ、  
    《  》    , ヘ.      軽クテ硬クテ、トテモ鋭イ!』  
.          ○ ) \    「なんのクチバシ?」  
           (二二二)   『……ハ』『………t』『………o』『………!』  
.          i b ,-、 d i   一瞬の沈黙が場を支配した。  
.         ノ! ノ`='し .i\ 聞いてはいけなかったみたい。  
.          ヽ.__ノ   「それじゃあ、またね」  
            《  》    『マタダ!』『マタネ!』『次ヲ!』『待ツヲ!』  
 
私はおうちに帰ってからも挨拶をする。  
家族はもちろん、ぬいぐるみも。  
それから  
 
┫:::::┃   「おはよう、隙間の人」  
┃:::::┃   棚と冷蔵庫の隙間から、じっと家の中を見ている目に挨拶する。  
┃{0}┃     
┃:::::┣━   
┃:::::┃     
 
 
┳γ⌒ヽ━γ⌒ヽ━γ⌒ヽ━γ⌒ヽ━━━┳┓ 「おはよう、引き出し虫さん」  
┃γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ dγ⌒ヽ┃┃ キッチンの引き出しを開けて、  
┃l b ,-、d lb ,-、d lb ,-、d l.b ,-、d  lb ,-、d┃┃ 中にびっしりと入っている何かの  
┃γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ .┃┃ 顔の模様をした虫さんに挨拶する。  
┃l b ,-、d lb ,-、d lb ,-、d l.b ,-、d lb ,-、d ┃┃   
┃γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ .┃┃   
┃l b ,-、d lb ,-、d lb ,-、d l.b ,-、d lb ,-、d ┃┃   
┃l  `=' l γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ ┃┃   
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 (@)                              「おはよう、ぺらぺらさん」  
 |   |                              外の木で日向ぼっこをしている、  
 |   |          //                 薄っぺらい人に挨拶する。  
 |   |         //                    
 |   |______/ /____________      
 |                \        \    ()   
 |    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄|  /¨`ヽ   | ̄ ̄ ̄  
 |   /            |  |   /¨`ヽ  .|  
 |   |             |  |  ヽ._.ノ   |  
 |   |             | | {0},  {0} /  
 |   |             \ \     /  
 |   |                ̄\_  _)  
 |   |                    ̄  
 |   |  
 |   |  
 
この人達は、とてもやさしい人達ばかりだ。  
……でも、私は知っている。  
この人達は、本当は鳩なのだ。  
お父さんとお母さんを食べるために、私のおうちにたくさん集まって来ている。  
だから、私はみんなに挨拶する。  
少しでも長く、お父さんとお母さんが食べられないように。  
それでもいつか、絶対、食べられてしまうだろう……  
 
 「おはよう、壁の影法師さん」  
 
     ..:::::::::::::::::::..        
    .:::::::::::::::::::::::::::.      
    {0}::::/¨`ヽ:::{0}      
    :::::::::::ヽ._.ノ::::::::::     
    ::::::::::::`ー'::::::::::::     
   .::::::::::::::::::::::::::::::::::.     
 
今日も、私は挨拶をする…   fin.  
 

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