前提となる設定
摩津方さんが圭子の身体に移ってからしばらくしてのお話です
確か原作では移った翌日(11巻)に沖本君が大変なことになっていましたが、なかったことにしてください
次の項目に該当する方はスルー推奨
このカップリングは(少なくとも精神的に)801じゃねーかと思う方
武巳の相手は稜子以外認めないという信念をお持ちの方
自我を乗っ取られた圭子にひどいことしないで、という心の優しい方
圭子はつるぺたに決まってんだろと確信していらっしゃる方
その他、読んでいる途中で不快になった方はお早めに読むのを止めることをお奨めします
『今から私の部屋に来い 小崎摩津方』
深夜、武巳はそのメールに眠りを妨げられた
「今度は何の用なんだ……?」
いろいろな用件で、摩津方は夜遅くにメールを送ってくる
以前に護符≠ノよって助けられたこともあり、迷惑だと言うつもりはない
だが、心臓に悪いとは思う
同室の沖本を起こさないように、最近は寝るときに携帯をマナーモードにして手に握っていた
配慮の甲斐あって、沖本には気づかれていない。武巳は静かに部屋を出た
女子寮の一室
かつて木村圭子が水内範子とともに寝泊りしていた部屋
今、武巳はその部屋の前に立っている。どういうわけか女子寮の鍵は開いていて
誰にも気づかれることなく来ることができた
不思議に思ったが、見つかった方が問題になるので深く考えないことにした
ノックをすべきかどうか迷ったが、答えを出す前に 内側からドアが開かれた
「よう来たな」
しわがれた声で出迎えたのは、地味な柄の寝衣に薄手の上着を羽織った少女
木村圭子となった摩津方は、その部屋をそのまま使っていた
「入れ」
左目だけをひどく顰めた歪んだ笑みを浮かべながら、摩津方は武巳を部屋に招き入れた
武巳は落ち着かない様子で部屋の中に立っていた
その様子を見て摩津方はせせら笑った
「何を怯えておる。もうこの部屋では怪異なぞ起こらんというのに」
わかっている。そんなことはわかっている
だが、今武巳は怪異より忌まわしい存在と同じ部屋にいるのだ。落ち着くわけがない
「何の用、ですか?」
どうにか言葉を絞り出した
「お前は護符≠授けても、あの娘を返しても、相変わらず私を信用せんようだなあ」
笑いながら摩津方は言う
武巳はどう応じればいいかわからず、黙っていた
「くくく、だが、それでこそ、からかい甲斐がある……」
実に楽しそうに、摩津方は笑う
遅くに呼び出し、ただ自分を笑っているだけの摩津方に、武巳は反感を抱いた
「……用がないなら、帰ります」
早くこの部屋から出ていきたい一心で、武巳はそう言った
「ほう?」
摩津方の表情から笑みが消える
「う……」
しまった、と思った。機嫌を損ねてしまったのだろうかと武巳は焦った
その気になれば、この魔術師は自分をどうとでもできるのだ
しかし、摩津方の口から出たのは意外な言葉だった
「いいぞ」
「え……?」
「帰りたければ帰ってもいいぞ、と言ったのだ」
武巳は戸惑った
何のために呼んだんだ? 本当にからかうためだけだったのか?
しかし、願ってもない言葉に、武巳は出て行こうと摩津方の横を通り過ぎ、ドアノブに手をかけようとした
そのとき、首筋に冷たいものが当てられ、耳元で摩津方が呟いた
「――動くな=v
武巳はドアノブに手をかけられなかった。それどころか、指一本動かせなくなっていた
「帰ってもいいぞ。まあ、出来ればの話だがな」
摩津方は再び笑みを含ませた言葉をかけてきた
武巳は今の状況を理解していた
自分は魔術を掛けられたのだ。見ることはできないが、おそらく自分の首に当てられているのはあの魔女の短剣(アセイミ)≠セ
そして、理解してもどうにもならない。それもまた理解していた
「んん? どうした? 帰るのではなかったか?」
自分で術を掛けておいて、摩津方が言う
文句を言おうにも声すら出せない。ただ呼吸が不規則になるだけだ
「息が乱れておるな。この身体に興奮でもしたか?」
言われてから、自分と摩津方が今どういう体勢になっているか気づいた
摩津方は身長差のある武巳の耳元に囁きかけるために、背伸びをして、もたれかかっている
必然的に、互いの身体は密着する
背中から少女の香りと柔らかさを感じた
圭子の身体は着やせする質らしく、その胸の膨らみの感触は華奢な外見からの予想を超えていた
「かわいい奴だ」
摩津方はそう言って、耳に息を吹きかけてきた
「……っ!」
言葉が出ない上、事実、武巳は今意識してしまっている
どちらにしても、否定することは不可能だった
「恥じることはない。この年頃なら当然のことだ」
慰めているというより、やはりからかっているような口調で摩津方は言う
「それにな」
武巳の脚に、少女の細い脚が擦り寄ってくる
「お前を呼んだのは、親切にも私がお前に女を教えてやろうと思ったからだ」
武巳は今、ベッドの上に横たえられていた
正確には、摩津方の命令で自分からそこに移動したのだが
摩津方の命令に従う身体は、しかし自分の意志ではぴくりとも動かない
「緊張したり、抵抗の意思を持っていたりすれば、かえって術は強まる。観念することだ」
言いながら摩津方は武巳の服を剥いでいく
上半身を裸にしてから、摩津方は武巳の喉を撫でた
「一息くらいはつかせてやろう」
「げほっ、げほっ」
急に喉の動きが自由になり、武巳は思わず咳き込んだ
「何……で、こんな……ことを」
息を切らしながら武巳は聞く
「別に私は男色ではないのだが、な。身体が女だと性欲も女のそれになるらしい」
舌なめずりをして、摩津方は言う
「そして、この欲望を満たす相手として手近にお前という男がいた。それだけのことだ」
武巳は再び呼吸の自由を奪われた。ただし、魔術ではなく少女の唇で
「んんっ、ふ、くっ……」
摩津方の唇からどうにか逃れようとする武巳の口から吐息が漏れる
「ちゅ、くふふ、んっ」
摩津方はそんな武巳の様子を楽しそうに眺めつつ、舌を差し込んできた
口の中に入り込んできたものに対し、武巳は反射的に舌を動かしてしまう
入り込んできたものはその動きを的確に捉え、絡め取って離さなかった
ぴちゃぴちゃと舌の絡み合う音が部屋に響く
「んぐぅ、やめっ、んむ……」
首も動かせない状況で、武巳は必死に抵抗を試みた
しかし摩津方はそれに気づいてすらいないかのように武巳の口内を蹂躙していく
「むぅ、くちゅ、ん、じゅる……」
武巳にとって気が遠くなるほどの時間をかけてから、摩津方は満足したように顔を離した
「どうだ、女の唇は甘美なものだろう?」
摩津方は、武巳の口の端から流れ落ちている唾液を指で拭いながら訊いた
「……」
武巳は答えられなかった。酸欠にでもなったのか、意識が朦朧としていた
「やはり動けなくてはつまらんか? ふむ……」
指についた唾液を舐りながら摩津方は少しの間考え込んだ
そして、おおよそ指についた武巳の唾液を全て自分のものに塗り替えてから、にやりと一層深い笑みを浮かべた
「くくく、そうだな。お前も楽しませてやることにしよう」
武巳の耳元に顔を寄せ、摩津方は囁いた
「――脱がせ=v
その言葉に武巳の身体がゆっくりと起き上がり、摩津方の寝衣に手を伸ばす
魔術に束縛された武巳は躊躇いなく、無駄のない動きで寝衣を取り去っていく
無言の武巳。もはや命令に抗する気力すら失われていた
それでも、段々と露になる少女の身体は自然と目に入った
服を脱がしている手に感じる滑らかで少しひんやりとした白い肌
先ほど背に感じた意外に大きな乳房、そしてうっすらとした茂みに覆われた秘部
まだ成熟しきっていないその身体は、しかし男を昂らせるには充分に女を感じさせた
「なかなかの身体だろう?」
一糸纏わぬ姿となった摩津方は妖しい表情を浮かべそう言った
「答えなくとも構わんぞ? 何せ――」
その視線が武巳の身体のある一点を見つめる
「こちらの方が正直だからな」
摩津方の手が、武巳の下腹部を撫でた
「くっ……あ、はぁ…!」
既に勃起していた自分のものを刺激され、武巳は呻いた
「いい声で啼くではないか、小僧。男にしておくのが勿体無いな」
武巳のものを手でしごきながら、笑う摩津方
摩津方は武巳の下半身の衣服も引き剥がすと、それに直に指を這わせ始めた
「ふふん、生意気に暴れておるわ」
その手が少し上下するだけで武巳のものは敏感に反応する
摩津方はその先端を指で弾く。それだけで武巳のものはびくびくと震える
「くくっ、そうだな、先に一度出しておいたほうがいいか……」
摩津方は舌でそれを舐め上げた
「う…っ!」
弄ばれる武巳は声をこらえることもできない
「耐える必要はないぞ。無駄だからな」
さらに摩津方は口に含み、舌を絡めながら吸い上げた
「ちゅぷ、ん、んむ……」
その刺激は武巳の脳髄の奥まで侵していった
目眩めく官能に、武巳の理性が突き崩されていく
「うあぁ…あ……ああ!」
その声を上げたときが、武巳が完全に本能に支配された瞬間であった
「うっ、くはぁ、はぁっ……!」
もはや理性など欠片もなく、ただその快楽に身を任せた
「かはぁっ……、あっ、くぅっ!」
限界を迎えるのに、それほど時間はかからなかった
武巳は摩津方の口内で精を放った
「んん! む、んぐ、じゅるる……」
武巳のものから顔を離した摩津方は、口一杯に満たされたものを一滴も漏らすまいと上を向いて喉を動かした
さすがに少女の口には量が多すぎて一口で飲み干すことはできず、全てを嚥下したときには顔を上気させ、息も上がっていた
まだ幼さを残す少女の顔が見せるその様子は、娼婦さながらに蠱惑的なものだった
摩津方はその視線を再び武巳のものに落とすと、陶酔した表情を浮かべた
「……若さとはいいものだなあ」
武巳のものは、依然としてその硬度を保っていた
「さて……」
摩津方は武巳を仰向けに押し倒した
「あれだけお前を楽しませてやったからには、こちらも満足させてもらわなくては不公平というものだ。そうだろう?」
摩津方は自分で問いかけておいて、返答を待たずに次の行動に移った
武巳の身体を跨ぎ、膝立ちになる
「私の準備も既にできている。さあ、楽しませてもらうぞ……」
少女の身体の秘部からは蜜が内腿まで流れ出て、てらてらと光っていた
武巳のものを自分の入り口にあてがうと、ゆっくりと腰を下ろした
「う、ぐっ……」
摩津方が苦悶の声を漏らす
武巳のものを受け入れた部分からは蜜とともに血が流れ出ていた
これが意味するものは――処女喪失
「これほどの、ものとは……」
呻くように摩津方は呟く
破瓜の痛みについての知識はあった。ただ、あくまで知識としてである
体験してみて初めてその痛みの強烈さがわかった
「く……ふぅ……」
しかし止める気にはならない。激痛をもってしてもなお身体の奥の疼きは収まらなかった
女の身体を得てから苛まされてきた疼き
その正体が性欲と気づくのにそう時間はかからなかったが、その処理方法が問題だった
最初は自慰でごまかしていたが、本質的な衝動は消えることがなかった
それを消すには相手が必要だった。それも、不特定な人間ではない
『この欲望を満たす相手として手近にお前という男がいた。それだけのことだ』
嘘のほうが信憑性があるとは皮肉だな、と摩津方は頭の中で自嘲した
摩津方は武巳以外の相手と肌を合わせる気など毛頭なかった
何故か、理由はわからない
あるいはこの少女の前に宿っていた娘の精神に影響されたのかもしれない
あの娘に宿っていたとき、その記憶は全て自分のものとなっていた
その恋心も……
「だとしたら、とんでもない置き土産だな、あの小娘……」
摩津方は、武巳には聞こえないほどの小さな声でそう言った
武巳は、摩津方の苦痛に歪んだ表情を見ていた
それは今まで不敵な笑みを浮かべていた魔術師が初めて見せる表情だった
この魔術師も、人間には変わりないのだと、そう思った
武巳は身体を起こし、少女の身体を抱きしめた。いつの間にか魔術の束縛は解けていた
「……誰が動けと言った」
摩津方が不服を唱えた。だが武巳にはその声に怒りはこもっていないように感じられた
「少しは痛みが和らぐかなと思って……」
それは武巳の本心だったが、自分にその行動を取らせた根源は何かわからなかった
痛みに苛まれる姿を見て同情したのだろうか? それとも――
武巳がその答えを出す前に、自分を呑み込んでいたものが強く締めつけてきた
その刺激に反応して、意に逆らって腰が動いてしまう
「おい、待て! 止まれっ、うぐっ……」
摩津方が焦ったように制止を命じる。だが痛みに支配された今の精神状態では、言葉に魔術効果を加えることはできない
「腰が……勝手に……」
情けない声で武巳は言い訳をする
「この、愚か者…め……」
悪態をつきながら、摩津方も徐々に今までにない心地よさに流されていった
気づけば、自分も武巳の背に手を回していた
抱きしめ合いながら、二人は恍惚のひとときの中にいた
そして最後の瞬間が訪れた
「くう! もう……出る!」
「はぁ、あっ、ふうぅっ!」
武巳は繋がったまま果てた
摩津方も同時に達し、その身を震わせる
「はあっ、はあ、はあ……」
武巳は精を解放した直後、強烈な睡魔と疲労感に襲われた
摩津方を抱えたまま、ベッドに倒れこむ
気だるさを浮かべる武巳の顔に、摩津方は手を添えた
「小僧、貴様は私のものだ……」
その言葉と、老獪で妖艶な魔術師の笑みを脳裏に焼き付けながら、武巳の意識は沈んでいった
眠った武巳の髪を撫でながら、摩津方は言葉を続ける
「あの小娘にも、渡しはせん」
朝、目覚めたのは自分の部屋のベッドの上だった
「夢……?」
武巳は呟いた
向こうのベッドではまだ沖本が寝息を立てている
気づけば携帯は机の上に置いてあった
「……」
もしかして、夜に着信を受けたことから、全ては夢だったのではないだろうか?
そんな考えが武巳の頭をよぎる
いや、正確にはそれは願望だった
稜子を裏切ったあの行為
摩津方に対して抱いたあの感情
この記憶がただの悪夢であってほしい、心の底からそう願っている
だが、そうであることを証明するためには、確認しなくてはいけない
携帯の、受信メールを
武巳は机の上に手を伸ばし、携帯を手に取った
昨夜のメールは夢か、現実か
確かめる前に、武巳は高鳴る心臓を鎮めるために大きく深呼吸をした
ちょうどそのとき、携帯が着信し振動した
「!」
声を上げるのは寸前でどうにかこらえたが、思わず武巳は携帯を取り落とした
振動が止まった後も、床に落ちた携帯は着信を示す光の点滅を続けていた
「はぁ……はあ……」
呼吸が定まらない。落ち着かせようとした動悸も再び騒ぎ出す
まさか―――
武巳は震える手で携帯を開き、メッセージを見た
『今夜も同じ時間に来い 小崎摩津方』
その内容を見て、武巳は気が遠くなるのを感じた