トントン…。  
深夜の管理人室のドアを叩いたのは姫乃だった。  
 
「あれ?ひめのん、どしたこんな時間に…。」  
 
パジャマ姿で枕を抱えた姫乃は、あからさまに「怒ってます」という  
オーラを出しながら、無言で管理人室の中へと足をすすめる。  
 
「えっちょ…ちょっとひめのん!?」  
 
とまどう明神を横目でキッとにらみつけた姫乃は  
 
「明神さんのせいなんだから!!」  
 
と怒鳴ると、ぽかんとしている明神をよそに、さっさと  
明神の布団にもぐりこんでしまった。  
 
「えっ!?ええっ!?ちょっひめのん!?ひ…姫乃さ〜ん!?」  
 
何が起きたのかさっぱりわからずあわてふためく明神を見て  
ちょっとだけ怒りが収まったのか、姫乃はぴょこっと布団から顔を出し、  
 
 
「明神さんのせいなんだから、責任とってください。」  
 
 
と真剣な顔つきで言い放った。  
 
「あ、あのさひめのん、もう少しわかりやすく話してくれないか?  
俺バカだからさ、ちょっと意味がよく…。」  
 
「…昼間みんなで怖い話したじゃないですか…。」  
 
そういえば。  
今日は土曜日、学校が休みの姫乃と、仕事がなかった明神、  
それにめずらしく全員がうたかた荘にいて、ロビーで雑談をしていた。  
そのうち誰とはなしに怪談話を始めて…。  
 
 
「私、怖い話苦手だって言ってるのにみんなしておもしろがって!  
だから…その…一人で寝るの怖くなっちゃったの!」  
 
「あ…ああそういうこと…って、だからってなんでここ!?  
なんで俺の布団!?」  
 
「だって!みんなをけしかけたのは明神さんじゃない!!  
それに私が怒ったから今夜はみんなどこかに行っちゃって…。  
あずみちゃんと一緒に寝ようと思ったら澪さんが連れてっちゃったし…。」  
 
「そ、それでここ…?」  
 
「…だめですか?」  
 
だ め だ ろ う 。  
 
いやいやいやいや、だめだろう!常識的に考えて!女子高生的に考えて!  
しかも今なんつった! 誰 も い な い ? おいおいおいおいおいおい!  
ガッデム!無理!ダメ、ゼッタイ!  
 
 
「えーとあのさ、ひめのん、じゃあここ使ってもいいから、  
俺はロビーのソファで…。」  
「だめ!だって一人じゃ眠れないもん…。」  
「じゃ、じゃあドアの外で怖くないように見張って…」  
「だめ!」  
「え…えーとじゃあ…えーと…。」  
 
「いいから!隣に寝る!!!」  
 
…結局姫乃に押し切られる形で、明神は姫乃のとなりに横たわった。  
でもさすがに同じ布団に寝るのはマズイ、どう考えてもマズイので  
布団の隣の畳の上、というギリギリな位置に寝てみる。  
 
それでも横を向けばすぐそこに姫乃の顔…。  
 
ああ、どうする俺?どうなる俺?  
 
「明神さん、手…。」  
「え?」  
「手、貸してください。」  
 
言われるままに手を差し出すと、姫乃の温かい手が触れた。  
 
「おっきい手…。」  
 
明神のごつい手と違ってほっそりとして小さな手。  
かと思えば初めての握手のときのように意外に力強かったりして、  
姫乃本人を思わせる手。  
 
「朝までこうしてていいですか?」  
 
信頼されている。とっても信頼されている。  
姫乃がうたかた荘に来てから、ずっと妹のように扱ってきた。  
きっと姫乃にとって自分は「頼れるお兄ちゃん」みたいな感じなんだと思うし、  
そうであろうと努めてきた。  
 
自分が姫乃のことが好きなんだ、と自覚してからは特に。  
 
姫乃には「フツーのしあわせ」を味わってほしいから。  
フツーのしあわせに、フツーじゃない男は、邪魔だから。  
 
そんなことを考えていたら、小さなあくびが聞こえた。  
姫乃が眠ったら姫乃の部屋に運ぼう、それがいい。そう思った時  
 
「明神さん…私、妹なんかじゃないですよ…。」  
 
ギクリとしてわざと外していた視線を姫乃のほうへ向けると、  
眠たそうにトロンとうるんだ瞳で、でもまっすぐに明神を見つめる  
姫乃と目が合った。  
 
「妹なんかじゃ…ないです…。」  
 
 
心のどこかで何かをおさえていた糸が、ぷつりと切れた気がした。  
 
 
「あっ…んぅ!」  
 
つかんだ手をひっぱり、自分の胸に抱き寄せ、口づける。  
 
…何をしてるんだ、俺は。だめなんだよ、姫乃のそばには俺みたいな  
フツーじゃない男がいたらだめなんだよ…!  
 
頭ではそう思いながらも、心はもう決まっていた。  
深く深く口づけ、強く強く抱きしめる。  
 
「ぷはっ!んっみょうじん…さんっ!くる…しいよっ!」  
 
 
ハッとして少し力をゆるめる。  
「ご、ごめん!」  
「ううん…ちょっとびっくりしちゃったけど…大丈夫。」  
「その…ごめん…。」  
「ふふっ、やだ、あやまらないでください…私、うれしかったんだから。」  
 
ふいにそう言われて涙が出そうになった。  
いい子なんだ、本当に。  
 
 
「…ごめん。」  
「もう、あやまらないでって言ってるのに。」  
「こんな俺が…姫乃を好きになってごめん。」  
「え…?」  
 
「好きなんだ。姫乃が。」  
 
覚悟を決めるように姫乃の目をしっかりと見つめてそう言うと、  
胸に抱きかかえていた姫乃を布団に下ろし、今度は力を加減しながら  
抱きしめ、優しく口づける。姫乃もそれを受け入れた。  
 
強張っていた姫乃の体からだんだんと力が抜けていく。  
頬が上気し、呼吸が乱れていく。とまどいながらも明神の舌の動きに、  
一所懸命に応えようとする。  
 
このままじゃ止まれなくなる…それはだめだろ、いくらなんでも  
姫乃はまだ17歳だし、もちろん初めてだろうし…そう思って  
名残惜しむかのように銀の糸を引く唇を離し姫乃を見つめた。  
 
「…どうして…やめちゃうの…?」  
 
「やめちゃいや…。いや!」  
 
のしかかるように抱きつかれ、ぶつかるようなキスをされる。  
 
「私、妹じゃないよ…女の子だよ。明神さんを好きな、  
一人の女の子だよ?」  
 
「明神さん、私と二人きりになるの、避けてたでしょ。逃げてたでしょ。  
そういうの、わかっちゃうんだから…!」  
 
自分ではうまく隠せていたつもりだった。  
うまく「頼れるお兄ちゃん」でいられていたつもりだった。  
 
「子供扱いしないで…!」  
 
姫乃の大きな瞳からボロボロこぼれる涙を  
明神はぺろりと舐めあげて、  
 
「俺の方がよっぽど子供だな…。」  
「え?」  
「俺のが「弟」かもしんない。」  
 
 
そういうと明神は自分の上に乗っていた姫乃を抱きかかえ、ひょいっと  
ひくりかえすとあっという間に組み敷いてしまった。  
 
「怖くなったら言ってな?」  
「…うん。大丈夫。」  
「好きだよ姫乃。本当に。」  
「…うん。うん!」  
 
まだ涙の跡の残る姫乃の顔に、満開の笑顔が咲いた。  
 
「ん…はぁんんっ…!」  
 
もう、迷いはなかった。むしろ今まで抑えに抑えていた感情が  
一気に爆発した。余裕なんてまったくない。好きだ好きだ好きだ好きだ!  
 
「ひゃあっ!あんっあああっ…!」  
 
耳たぶから首筋、鎖骨…とキスの雨を降らせて行く。  
そのたび姫乃は自分の声やビクビク反応する体、体の奥がジンジンするような  
感覚に驚きとまどい、恥ずかしさと嬉しさでどんどん体は熱くなった。  
 
「あっあっんん…!」  
 
パジャマのボタンはいつのまにか全て外され、キャミソールの中に  
明神の手がすべりこんでくる。  
 
「ああんっ!んんっやっ…ああっ!」  
 
すでに硬くなった小さな突起をそっと指の腹でこねあげる。  
姫乃の予想以上の反応に明神も嬉しくなり、もっと鳴かせてみたくなった。  
 
キャミソールの中に入れていた手をそのまま上に引き上げ、  
すぽっと脱がしてしまう。  
 
「きゃあっ!は…恥ずかしいよ…明神さ…きゃああんっ!」  
 
そのまま、そのかわいらしいピンク色の突起にしゃぶりついた。  
 
ぴちゃぴちゃと音をたてながら、優しく舐めあげ、  
時に強く吸いつく。  
 
「うあっ…あああんっ!やっあっみょうじんさぁん…!  
私…なんかヘンだよぉっ!ああんっ!」  
 
片方の突起を口に含み、もう片方を指でこねる。  
細身の体がビクビクとはね、声があがる。  
 
明神はジーンズの中で痛いほどに硬くなっていく己自身を意識しつつ、  
そっと姫乃のパジャマのズボンに手をかけた。  
 
「あっ…!」  
 
一瞬姫乃の体が強張る。何と言っても初めてなのだ。  
セックスとはどういうことをするものなのか、いくら姫乃だって  
多少の知識はある。でも…。  
 
「あ…で…電気!電気消してくださいっ!」  
「…オバケ怖いんじゃなかったっけ?」  
「ばかっ!いじわるっ!」  
 
「はいはい。…豆電気はつけててもいい?」  
「だめです!全部消してっ!」  
「はーい…。」  
 
照れてる姫乃もかわいいなあ…と思わず笑みがこぼれる。  
てゆーか言われるまで全然気付かなかった。  
本当に余裕ねえな、俺…。  
 
 
窓から差し込む月明かりに照らされて、姫乃の白い肌が浮かび上がる。  
明るい部屋で見るそれよりもよっぽどなまめかしい光景に  
明神は思わず息を飲んだ。  
 
仕切り直し、とばかりに深く口づけながらパジャマのズボンを脱がし、  
下着ごしに敏感な部分にそっと触れてみる。  
 
「んんっ!あっ…!」  
 
緊張からか少し力んだ足がビクッと震えた。  
 
「怖い…?」  
「…少しだけ。でも怖いより…その…恥ずかしいし、き、気持ちいい…し  
もう頭の中ぐちゃぐちゃ…。」  
「はは、俺も。あーもうだめだ。」  
「え?」  
「姫乃、かわいすぎ。」  
 
顔から火が出そう、とはこういうことか、というくらいに真っ赤になった  
姫乃を抱きしめ、その胸に顔をうずめる。突起を口に含み、  
姫乃の反応を見ながら徐々に責めていく。  
 
「んああっ!ふぁっあっあっあんっ!」  
 
空いた手を首筋や背中、太ももにはわせる。  
下着ごしに触るソコは、しっとりと濡れていた。  
 
腰から手を差し入れ、かわいらしい水玉模様の下着をするりと取り去ると  
うるみを帯びてヒクつく秘所があらわになる。  
 
すぅっとなでる風が汗ばんだ肌に心地いいが、好きな男の目の前に  
自分でもよく見たことのない恥ずかしい部分がさらされているのかと思うと、  
一気に顔に熱が集まる。  
 
「あっいやっ!見ちゃだめ…!」  
 
姫乃は思わず足を閉じようとしたが、明神のひざが割って入り、  
あっさり阻止されてしまった。そして、  
 
「あっんんっいやっ!そんなとこ…だめっだめえーっ!あああっ!!」  
 
あろうことか明神はそのままぷっくりとふくらんだ敏感な蕾に舌をはわせた。  
体の芯に電気が走ったかと思うような快感と羞恥心に悲鳴に近い声をあげる。  
 
「あああっ!!やぁっ!んんっみょうじんさんっ!みょうじんさぁあん!!  
いやっ!いやあっ!」  
 
蕾を転がしながら、うるんだ秘所の入口を指で少しずつほぐしていく。  
つぷっぷちゅっと水音をたてて、指先をほんの少しだけ抜き差しすると  
どんどんうるみが増してくる。  
 
「ひあぁっ!ああんっみょうじんっさん…!なんかヘンっなのぉっ!  
んあああっおかしくなっちゃうっ…!怖いよぉっ!!あっ!あああっ!」  
 
ビクビクッと姫乃の体が大きく跳ねた。  
 
一瞬頭が真っ白になって、一体自分の体に何が起きたのかよくわからず、  
ぼんやりとした心地のいい余韻に身を預けていると、いつの間にか  
目の前に明神の顔があった。  
 
「…大丈夫か?」  
「う、うん、だいじょうぶ…かな?」  
「そか、よかった。」  
 
いつの間にか上半身裸になっている明神を見て、ドキッとした。  
自分とはまるで違うゴツゴツとした大きな体。抱きしめられれば小柄な姫乃は  
その腕の中にすっぽりと納まってしまう。  
 
男の人なのに、なんだかお母さんみたい…。  
 
「明神さん…。」  
「ん?」  
「私、明神さんを好きになってよかった。」  
 
ぎゅっと抱きつかれ、ちゅっとかわいくキスをされる。  
ああ、もうどこまでかわいいんだ、この子は。  
 
ちゅちゅっとついばむようなキスを楽しんだあと、  
明神はまだ熱の残る秘所に手を伸ばした。  
 
「あんっ…やぁ…んっ」  
 
くちりと音をたてて、ゆっくりと指先を沈めていく。  
静かな部屋にぴちゃっくちゃっといやらしい音が響く。  
 
「はぁんん…っああっ…あっあっ…!」  
 
一度達したそこはさらにうるみを増して、すでにしたたり落ちるほどに  
濡れそぼっていたが、明神はたっぷりと時間をかけて少しずつほぐしていく。  
 
なにしろ初めてに加えてこの体格差だ。自身のものが特別大きいとは思わないが、  
少しでも姫乃の負担を減らしてやりたい。  
 
とはいえ明神のほうも限界は近かった。  
 
「ああっあっんぅ…!みょうじん…さんっあっ!ああっ!」  
「姫乃…ちょっと辛いかもしれないけど、ごめんな…。」  
 
すっと指が引き抜かれ、カチャリとベルトを外す音がした。  
 
暗くてはっきりとは見えないが、初めて見るそれは、想像よりも  
ずっとずっと大きい気がして、一瞬体に力が入る。  
 
「難しいかもしんないけど…なるべく力、抜いてな…?」  
「う、うん…。」  
 
したたる愛液をすくい取って自身に塗りつけ、グッと入口にあてがう。  
尻をつかんで引き寄せ、ゆっくりと先端を沈めていく。  
 
「うっ…んん…!」  
 
姫乃が苦しげな声を上げる。  
 
「あっああんっ…みょうじん…さん!」  
 
少しでも意識がそれるよう、指の腹で蕾をこねながら、  
明神は一気に腰を沈めた。  
 
 
「ひああぁーーーーっ!!」  
 
 
あまりの痛さにさきほど絶頂を迎えたときとは違う意味で頭が真っ白になり、  
思わず明神の背中に爪を立てる。  
 
「みょう…じんさん…!い…たいっ…よぉ…!」  
 
ぽろぽろと涙がこぼれる。つながった部分が燃えるように熱い。  
 
一方明神も、姫乃の中のきつさにあっという間に果ててしまいそうな  
快感を覚えていた。  
 
痛がり、涙をこぼす姫乃とは裏腹に、キツキツの秘所は明神を離すまいと  
きゅうきゅうと締め付ける。  
 
うわ…これはちょっと…まずい…って…。  
 
このまま泣きじゃくる姫乃を無理やりに犯して、  
思いきり中に自分の欲望を吐きだしたい、そんないけない考えが  
浮かんでは消え、浮かんでは消え…。  
 
「みょうじん…さん?」  
 
ハッとして姫乃に目を向けると、大粒の涙をこぼし、眉間にシワを  
寄せながらも一所懸命に笑顔を作ろうとしている姫乃がいた。  
 
「痛い…けど…うれしいよ?明神さんがすごく近くにいるんだもん…。」  
 
いけない考えはすっ飛んだけど、うっかり果てそうになって  
あわてて自身を引き抜く。  
 
「うあっ…!」  
 
パタタッと鮮血が落ち、シーツにシミを作る。  
 
「…桶川さん…あんたって子はどんだけ…。」  
 
なんとかこらえたものの、もうこれ以上は我慢が効きそうになかった。  
 
「姫乃のせいなんだから…責任とってな…?」  
「え…きゃあぅっ!!」  
 
もう一度自身を深く沈め、ゆっくりと動き、かきまわしていく。  
苦痛にゆがむ姫乃の顔に罪悪感がわかないわけではないが、  
もうこれ以上は無理だ。ごめん、姫乃。ちょっとだけ耐えてくれな?  
 
「うああっ!あっああっみょうじんさんっあああーーー!」  
 
明神は少しずつ動きを早め、中をこすりあげていく。  
ものすごく大きな痛みの影に、チラチラと小さな快感が見え隠れする。  
 
「うあっああんっ!あっあっあぅん!」  
 
苦しそうな声から、少しずつ快楽の混じった声に変化してきたとき、  
突然姫乃はくるりとひっくりかえされ、尻を高く持ち上げられた。  
明神の位置からは全てが丸見えだ。  
 
「うあっ…やだぁ…!ああんっあっあっだめぇっ!!」  
 
痛みがだいぶ薄れてきて、快感が強まってきたときに急に  
後ろから突きあげられ、姫乃の秘所はまたうるみを増してきた。  
 
明神は尻を抱えていた手を離し、姫乃が大きさを気にしているらしい  
かわいらしいふくらみに手を伸ばす。  
 
「ひゃうっ…!ああっあああんっ!ああーっ!!」  
 
死角から伸びてきた大きな手に両方の突起をこねくりまわされながら、  
後ろから激しく突かれる。  
 
「あっあああっ!みょうじんさんっ!きもち…いい…よぉっ!  
「姫乃…俺も…!」  
 
ふいに上半身を引き起こされ、あぐらをかいた明神と向き合うような形で  
座らされる。下から突き上げられながら、そっと、キスを交わす。  
 
「ああっあんっみょうじんさん…!私…もう…あああっ!」  
「姫乃…!!」  
「ああーーーーーっ!!」  
 
 
姫乃が絶頂を迎えた直後、明神も姫乃の白い腹の上に己の欲望を  
吐きだした。  
 
 
翌朝、先に目を覚ましたのは明神だった。  
 
行為のあと疲れ果てた二人はそのまま眠ってしまい、  
明神の腕の中では一糸まとわぬ姿の姫乃が小さな寝息を立てていた。  
 
普段はとんでもなく寝相の悪い明神だが、さすがに腕の中に  
姫乃がいるとあって無意識のうちに緊張しながら寝てたらしく、  
布団からはみ出ることはなかったらしい。  
 
「この格好で転がりでちゃったら事件だしな…。」  
 
そっと姫乃の頭を布団に下ろし、服を身につける。  
姫乃を起こさなきゃ…と思ったが、かわいらしい寝顔をもう少しだけ  
見ていたくなって、そっと布団に戻る。  
 
自分の腕の中で安心しきった顔で眠る姫乃。  
「フツーのしあわせ」を、自分が姫乃に与えてあげられる自信は  
正直言うと、ない。  
 
学歴もない、仕事もない、あるのは妙な能力ばかり。  
 
 
だけど、守ることはできる。  
絶対に、守りぬいてみせる。  
 
 
あどけない姫乃の寝顔に、そう誓った。  
 
 
 
 
 
おしまい。  
 

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