夢を見た。新年早々…うん、雲っぽい質感の地面に立ってます。
そんでもって、眼の前に淡いピンク色の扉が…フフフ、私死んだのかな?
何この天国っぽい所…ヤンチャしてても逝けるなんて神様も寛大なんだな〜
はい、深呼吸ー吸ってー吐いて―ヒッヒッフーヒッヒッフ−……
誰も突っ込んでくれない、本当に私一人なんだなー…哀しいわー…
もう良いや、呼び止める人がいないなら…逝ってみよう!殺ってみよう!
「うーっす!!澪ちゃん久し振りー!!」
「新年が明けたんだ…パパやママに『明けましておめでとうございます。』って挨拶を教えてもらわなかったのか?」
「はい、すいませんでした…。」
「……五月蝿い、真剣に勝負しろ。」
「あー…ワシ駄目っぽい。また負けそう…」
扉の向こうは、濃い顔・濃いキャラの先代達が麻雀台を囲っていました。
隅っこ見れば、簀巻きにされた壊神が…あー自業自得だよね。
ってか、牌をよく見たら…かの有名な青色未来猫型ロボットのイラストが…
「あ、コレ?火神楽さんが大好きなんだって。」
「奴ぁ…言い様がない程ロマンチックだ。」
えっ!?…いや、人それぞれだよね。
いや、何で麻雀牌で…ドミノ倒しみたいに並べてんの!?
麻雀じゃないよね!?明らかに別のゲームしてんよね!?
「あー…そうそう、澪ちゃん。」
あ、蓬が生えてる。食べよう。
みたいなノリで呼ばないでくれるかな、明神。
「俺を産んでください。」
な…何言ったコイツ…!!?
殴ろうとして踏み込んだ瞬間、耳が痛くなるような大音量の音楽が流れた。
ちなみに音楽は小学校の運動会で使われそうなやつだった。
『はい、新年明けましておめでとうございます。
現代明神こと冬悟です。』
『世紀のヒーロープラチナです☆』
『…俺、名前何だっけ?』
『嫌だなぁーまだ昨日のお酒が残ってるのかな、正宗君☆』
先代達の隣に組み立てた机にパイプ椅子を並べ、今この実況を中継をせんとマイクも並べている
現代達が佇んでいた。
『はい、困惑している澪ちゃんに現在の状況を伝えてあげよう☆
ぶっちゃけ、この世界は過疎化しています。
原因は能力を持った人を見つける事が難しいし、育てるのも難しいし、出費激しいし、
儲からないクセに仕事多いし、安定した生活も望めないし…』
『俺、水道止められたし…ガスもそろそろ……』
『サバイバルなら結構いけるぞ。』
『君はテント生活で満足できるからだよ、正宗君。
そんな不況どころかどん底の世界で、一番の問題がお嫁さん☆』
『お前等一人だけど、俺はひめのんがいるもん。』
『うるせぇ、ロリコン。』
『あー…彼女欲しい。』
個人的な嘆きは良いから…話を進めてくれないだろうか。
『ぶっちゃけ…後継者がいないなら、作っちゃえ☆って意向だね。
ついでに、子供の魂に先代達のを使っちゃえば、最強のサラブレッド完成。』
『澪は、強いし女だしで…まぁ、好きなの選んでさっさと産んでくれ。』
『ついでに、ひめのんは笑顔で却下しました。』
…質問良いでしょうか?
『どうぞ☆』
誰の嫁になって、誰の子を私が選んだ先代の魂から産むのでしょうか?
『彼女のいない現代のどちらかとです☆』
『とりあえず、魂の方を決めてくれ。俺、ひめのんと初詣行くって約束してんだよ。』
『あー…生まれた時から好きでした。』
『気が早い上に、女としてでしか見てないだろ☆』
…嘘だぁぁぁあああああぁ!?
覚めろ!!夢だろ覚めろ!!
………何で私は、こんな格好してんですかね。
牛柄のビキニに…角……何処ぞのグラビアですか……
『澪ちゃんこっち向いてー?』
何だよ、こちとら落ち込んでんだよ。
振り向いたと同時に、フラッシュと機械音が聞こえた。
『ヤッター☆これ待ち受けにしちゃおう。』
『俺にも送ってくれ。』
『今度奢ってくれるならね。』
「あーほら泣いちゃったよー…だから、虎柄にしようって言ったのに…」
「虎は来年だ。虎柄だと、かの宇宙人で美人の『だっちゃ』が口癖のあの娘とかぶる。」
「それが見たいんすよ、俺は」
「元々鬼って、牛の角と虎の柄お合わせた仮想上の生き物じゃからのぉ…」
何で私がこんな目に…くそぉ…
「何やっているんだ。こんな格好をさせるなんて貴様等は何を考えてんだ!?」
あぁ…神吹さん、あんた良い人だ。その常識力でどんどん言ってやってくれ。
「何故、制服を着せないんだ!!」
馬鹿だぁぁあああ!!そんでもって変態だぁぁああ!!
『…ウチの師匠、先生だからさ。うん、仕方無いと思って欲しいな。』
『いーや、アレは性癖を露呈したな。』
『制服プレイかー…今度やってみよう。』
敵だ!!もうここは私の味方なんて誰一人いないんだ!!
『とりあえず、この制服を着ろ。』
………マジ泣きしたい。
結局…ジャージで落ち着かせた。
うん、ここまでくるのに時間かかったけど私は平気。
っつか、生前によくそんなぐだぐだなチームワークで人間願望と闘えたな。
『はーい、澪ちゃんがかなりのお疲れモードなので、さっさと済ませます。
一分間で、澪ちゃんを口説いて自分をアプローチしてください。』
『ちなみに、年功序列制度に則って、トップは…あの爺ちゃん誰?』
『いや、婆ちゃんかもしれないぞ。髪の毛長いし…』
『正宗君、君は眼帯の上に眼鏡を掛けようね。』
師弟揃ってぐだぐだか!!?
そんな突っ込みを余所に、我が師が前に進み出る。
懐かしい顔に笑みを零しそうになりつつ、一言放つ。
『……は?今、澪ちゃん何て言ったか聞こえた人ー?』
全員が手をおずおずと挙げる。
『冬悟君、どうぞ。』
『俺には「もう一度死んで出直して来い、エロ爺」と聞こえました…』
『あー…やっぱり?』
当たり前だろ…私は、ボケたふりして何度も風呂を覗かれたんだ。
この場で報いろ!!
『はい次ー…火神楽師匠…』
「泣くなよ爺さん、明らかにあんたが悪いって…ッな?」
「自業自得というところか…」
「澪も反省してるんだから許してやれよー」
『……火神楽師匠ー…?』
「俺のお気に入りの帽子やるから…ほら、可愛いだろー?」
「私も飴をあげよう…」
「神吹さん、飴はダメだって糖尿の気があるんだから。」
『澪ちゃん謝って!!?進まないから!!』
嫌だよ、被害者はコッチだもんよ。
飛行帽をかぶって、飴玉を口の中で転がす…
ちょっと可愛いじゃないか…爺。
っつか、火神楽さん威圧感凄くて怖いんですけど…
「澪…」
はい…
「俺は、そんなにできる事がないが…俺の店でお前の為だけに毎晩カクテルを作ろう…」
『師匠すいません。店は売り払いました。』
「何ー!!?」
『経済難だったんで。』
「あー…じゃあ、俺の銃で毎晩お前をつらn(柿ピーーーー!!!)」
『子供の教育上悪い表現だった為、伏せさせてもらいました。
ちなみに、別バージョンもあります。』
「何でだ!!今までにも危ないこと他の奴も言ってたろ!!」
『それはこちらでの判断ですので。』
「正宗テメェ!!絶対俺のこと嫌いだろ!!」
『いえいえ、決してそんな事はありません。』
「いや、絶対嫌いだろ!!墓参りしてくれねぇもん、お前!!」
『すいませんが、時間切れです☆』
ちょっと顔貸せとの火神楽さんからのお呼び出しに、正宗強制連行。
おそらく、次でメッチャクチャ使用されるであろう何かのボタンが、正宗から白金に渡る。
ってか、怖い怖いメッチャ怖いんですけど神吹さん…
火神楽さんと別の威圧感及び変態臭がする!!
「澪…とりあえず、何故先程渡した制服を着ないか答えてもらおうか…」
うわー…根に持ってたよ……
個人の自由なので着ませんでした。
それに、私が着ると年齢的に犯罪なので……
「まぁ、良い…ジャージを止めてブルm(ココアピーーーー!!!)」
『師匠、学校ネタは止めてください。』
「では、ミニスカートの看護師姿になってもらって私が医者になるのは?」
『それも止めてください。』
「とりあえず、私は脚フェチだから生足が見たい。」
『脚…いえ、俺も好きですけどね…』
「そうだろ、やはりあの足首から(コーヒーピーーーー!!!)
(はちみつピーーーーーーーー!!!)故にこk(グッピーーーーーー!!!)」
ほとんど…聞き取れない。
いや、その前に熱く語る神吹さんに対抗して、必死にボタンを押す白金の顔が…
『キリがないので、強制終了させていただきます。』
師匠にボコボコにされた正宗が、静かに幕を下ろしてくれた。
ラストに明神がやって来たけど…
ゴメン、好きな人産むって凄い嫌だわ。諦めてください。
「あー、俺も自力で転生する気だったから良いよ。」
あっさりしてますね。
「でも俺も墓について文句があんだよなー…」
『何!?俺ちゃんと墓参り行ってんじゃん!!』
「お前の墓参りは、本当に参るだけで掃除してくれねーじゃん。
澪ちゃんが知ってからは、掃除とかお供えとかしてくれるから良いけど、一番文句言いたいのは…
何で、墓裏にタケノコ植えた!!?
アレ、土の養分メッチャクチャ吸い取って繁殖してニョキニョキ生えてくるし!!
この前覗いたら、他人のお墓がひっくり返ってたぞ!!」
『アレは、あんたがタケノコ好きだったから奮発してお供えしたんだ!!』
「迷惑だろうが!!ってか、そこまでタケノコ好きじゃないし!!」
……春になったらタケノコ狩りしようと思ってたんだけどな………
タケノコ…煮込んでー天ぷらしてー…竹筒でご飯炊いてー…水筒も竹筒でー…竹御膳?
あー…味噌切らしてたなー…お餅買ってたかな、私…
アズミ誘って寺社参り行きたいなー…あーあと、日の出見なきゃ…
私、帰るわ。
入って来た時に使った扉を開いて、閉じて…結んで開いてその手を膝にー
また開いて、手を打って、その手で抉り出す?
…泣き声が聞こえる。
あー…あーーー!!!?アズミだ!!
「澪オバちゃんが怖いーー!!」
あー…そうだ。アズミ預かってたんだ私…ゴメン、ごめんね。
その後、アズミを泣き止ませる為に全力を尽くし、初夢のことなんて忘れた。