夢を見た。  
懐かしい…記憶の隅に置き去りにされた日常的な夢だった。  
私は若くて制服でロングスカート穿いてて、大好きなあの人も黒いコートに身を包んで、私の前方を歩いてた。  
コンビニで夜食を買い、真夜中の公園で、私とその人はブランコに並んで座っていて話していた。  
 
「夜の公園って、何か欲情しない?」  
 
口に含んでいたコンビニの鮭おにぎりを私は盛大に吹き出し、そして咽た。  
 
「食いもん粗末にすんなよ。お米には一粒7人の神様が宿っているんだぞ。」  
 
眉を寄せ、片手に持ったワンカップの酒を一口飲む明神は、空いた手で私を指さす。  
お前が良からぬことをぬかすからだと大声で返せば、近所迷惑だろと軽くいさめられる。  
 
「さっきの発言はなー…おっさんも不謹慎だと反省はしてる。  
でも、後悔はしてないから全体的に大丈夫だ!!」  
「だって、公園って昼間は子供の遊び場だろ?それが夜になったら大人の遊…」  
 
殴った。渾身の力と体重をかけて殴った…つもりだった。  
ところが、掌で乾いた音と共に軽々と止められていた。  
腹が立ったので弁慶の泣き所(つまりは、すね)に蹴りを入れようとすると、  
奴は軽く飛び跳ねただけで難なく蹴りを避け、空振りをしバランスを崩した私を  
制服の襟を掴み、そのまま猫を捕まえたかのように私を吊上げた。  
 
「そう怒るなよ、おっさんだって…男の子だもん♪」  
 
何が男の子だ。傍目から見りゃ成人式どころか三十路越えだろうが…  
それに男の子は、私より小さくてだな…こう、無邪気に笑うんだ。  
 
「俺も無邪気じゃねぇかー」  
「男はじいさんになっても少年の心を持ってんだぞ!!」  
「それに屈めば小さくなれるぞー」  
「澪ちゃん少年愛なのか?」  
 
そんな訳ないだろ!!私の理想の男は高身長で、少なくとも目線が肩あたりじゃないと嫌だ。  
 
「そんなこと言って、ちっちゃい人好きになるかもしんねーぞー?」  
「身長より、器の大きい奴が良いぞー?」  
「澪ちゃん乳と同じくらい身長も大きいから、難しいだろ?」  
 
最後の台詞はセクハラに値したのでチョップをした。  
 
黒コートの襟を掴み、顔を寄せて睨みつけながら私は思い出す。  
そうだ…これは夢だ。私はここで何をやっても証拠及び痕跡は残らない。  
ならば、ここで現実にて言えなかった告白とやらをやっておかなければ!!  
また、いつ夢でこの男と出会える機会が分からないのだし…  
 
「澪ちゃん、この状態はキスをする男女の体制だぞ?」  
 
ニヤニヤしながら額をくっつけてくる。  
知ってる…この顔はからかって冗談で、何事も無く終わらせようとする顔だ。  
いや、実際は私がこいつの言葉に踊らされて逃走してしまっていたのだが…  
今の私は違う!!海外研修ということでスキンシップの激しい国に生活してたのだからな。  
こんな風に寄って来た男の対処は、きっちり身につけて帰国したのだ。  
 
「あれ?澪ちゃん、やけに落ち着いて…ッ!?」  
 
襟を掴んだ手を胸板に這わせ、首の後ろへ回し、後頭部に手を当て…  
体を密着させて、腹に気合いを溜めて…よし、唇を…  
 
「澪ちゃ…ギャアァ!!?」  
 
重いっきり頭突きをしてしまった。  
 
「痛い!!メッチャ痛い!!グラサンが食い込んで痛い!!!」  
 
ごめん…本当にごめん。ああ、そんな膝ついて仰け反る程痛いんだ。  
あちらの国の男はガッシリしててだな、隙を作るにはこんな反則技を身に着けざるおえなくて…  
はい、すいません。ほとんど反射で頭突きしました。  
悪意は本当無いんです。  
はい…はい…どうせ私は暴力女ですよ!!  
 
「澪ちゃん、そんな自嘲した笑みを浮かべないで、ちょっとはおっさんを心配しよう!!」  
「怒ってないから、事故だって分かってるから!!」  
「いきなり外国語で悪態つくの止めてくれ!!」  
 
はっ…何で私は公園のフェンスを登っているんだ。  
 
「とりあえず、降りて来なさい。」  
 
そこまで登っていなかったらしく、高さもそこそこしかなかったので飛び降りた。  
すると、奴は必死の形相で走って来て、腹に半ばラリアットを食らわせるかのように、  
私の体を抱き上げ着地地点に正座をさせた。  
 
「長くてもスカート穿いてんだから慎んでくれ!!!」  
 
肩を掴み、注意をしてくる人は馬鹿犬のしつけに苦悩するブリーダーのようだった。  
 
「澪ちゃん、なんか変だ。」  
「公園のフェンス登ったり、色気が出たかと思えば頭突きしてきたり…」  
「そんな登ってないとか言ってるけど、軽くビル三階の高さはあったぞ。」  
 
何処にそんな高さがあるフェンスがあるんだ。  
嘘もそこまでいくとアルツハイマーと思われるぞ。  
黙って横見たってだな、私は騙され…  
 
「うん、思い出せたな。この公園は、高等学校のグランドと隣接してます。  
野球部があるので、公園で遊んでいる子供に流れ玉が当たらないようにするため、  
安全を考慮して高いフェンスが取り付けられています。」  
「澪ちゃん子供好きだから、この対策見て凄く感心してたでしょうに…」  
 
あぁ…何か、色々細かいとこまで再現されてるなー…  
いつもの夢って言ったら、こんなはっきりしてなくて有耶無耶なのになー  
細部までこだわらなくて良いから、もっと単純に告白したら次には結婚式の場面に移り変わってくれないかなー…  
 
「おーい、澪ちゃーん?」  
 
好きだから結婚してくれ、この野郎。  
 
「……はい?」  
「澪ちゃん、結婚したいのか?」  
 
そうだよ鈍いな…新郎になって白無垢でも、ウェリングドレスでも、チャイナ服でも良いから、  
バージンロード歩いて誓いのキスでも、ケーキでもモチでも何でも良いから…結婚したいんだよ。  
 
可愛い子供も欲しい…できれば女の子が良いな〜  
あー…でも、やんちゃな男の子も欲しいなー  
公園でキャッチボールして、サッカーして…勉強もさせなきゃなー  
 
「澪ちゃん…式典の前に出産する気か!?」  
「できちゃった婚!?でき婚か!?」  
 
いや、いちいち突っ込みをいれなくて良いから結婚してよ。  
女からプロポーズって軽く反則だからな?  
それとも何だ…私との結婚は嫌か?嫌なのか?  
 
「いやいや…冗談でもおっさんには光栄な告白だったぞ。」  
「でもなー…澪ちゃんが未成年だから、手を出したら俺捕まっちまんだよなー…」  
 
何だ、成人して振袖着てから出直して来いって言いたいのか?  
こちとら未来でも過去でも総計何年あんたに惚れ続けているのか知らないだろ?  
既成事実か?本当に「できちゃった☆」結婚しちまえば確実にお前をものにできるのか?  
上等だ婚(?)チクショー…リクエスト通り襲い受けてやろうじゃないか。  
 
「怖い!!澪ちゃん、眼メッチャ怖い!!?」  
「野獣!?マジで野獣の眼してるから!!戻っておいで!!?」  
 
天国か地獄にいる育ての親へ…いや、夢は昔の記憶なんだから自宅にいるんだろうか…?  
とりあえず、私こと澪は…この男をものにする為に狩ります。  
 
「ちょっ!!シャツん中に手を突っ込むな!!」  
「乳無いから!!澪ちゃんみたいな乳はおっさんには無いからな!!?」  
 
胡坐を掻いていたお前が悪い、胡坐はな…私に「此処に座って下さい」言ってるのと同じだ!!  
私はそこが特等席に見えて仕方ないんだ!!  
座るしかないだろう!!向かい合って胸板に顔引っ付けて腰に足を絡めるしかないだろ!!  
そんでもって、シャツ一枚の手薄な防備なら胸板を直に触りたくなるに決まってるだろ!!  
私はな…何年もこうやってお前とイチャつきたかったんだぞ!!?  
 
「一方的なのにイチャイチャになんのか!?」  
「首…っつか、頚静脈に歯が食い込みそうなんだけど!?」  
 
抵抗したら噛み殺そうとしてるからな…  
一方的発言とは失礼だな…私はお前の両腕を拘束なんてしてないし、  
ましてや薬や道具などを使って体の自由も奪ってないというのに…  
 
「薬!?どこで学んだんだよ、そんなこと!!」  
 
エロいのは男の特権じゃないんだぞ…ぶっちゃければ全人類がエロいと言っても過言じゃない。  
生殖して人は生まれるんだ…また一つ賢くなったね  
 
胸って…男の人も感じるんだな  
私はてっきり男は下半身のみが性感帯かと思っていたが…うん、考えを改めなければ  
 
「澪ちゃん、男は下半身生物みたいな発言はちょっと…」  
 
そんなテケテケの下半身バージョンみたいな生物に異性がなったら困る。  
 
「あー微妙に論点が違うけど…うん、それは俺もなりたくないな。」  
 
…何やかんや言って、この男は何も抵抗しない。  
胡坐掻いて、向かい合うようにその足に私が座っていて好き勝手していても、  
手はずっと…体重を支える為なのか地面の上。  
シャツめくって胸板をじわじわと舐めまわしていても、飾りのような乳首に犬歯の先を食い込ませようと、  
脇腹を指で触れるか触れないかの位置で這わせても…  
眉を寄せて声を押し殺す顔は一瞬で、あとは結構普段と同じヘラヘラした顔。  
そんでもって、時々こっちがゾクゾクするような笑みを浮かべる…  
イラッとする、イラッと…この大人の余裕が欲しい。  
 
「そんなムスッとした顔しないの。女の子は笑ってるのが一番なんだから」  
「それに俺、結構楽しんでんだぞ?」  
 
誰が不機嫌にさしてんだよ…  
楽しんでる…うん、そうじゃなくてこっちは感じて欲しいんだけどね。  
 
「澪ちゃん体ばっか弄るんだもんよーこれは愛を感じないからねー」  
「愛があるなら感じるんだけどねー」  
「キスも何も無しで体一直線だとねー」  
 
しまった!!キスか!!キス無しだと男は愛を察知できないのか!!  
いや…これはまだ大丈夫だ。今すれば良いのだから…  
いやでも、これってファーストキスになるんだよね?  
夢の中でもファーストキスになるんだよね!?  
ヨッシャアアアァァァアア!!ファーストキスはファーストラブの男なんてロマンチックだろ!!  
 
「澪ちゃん…俺は時々君が恋する中学の男子に見える。」  
 
低レベルだな!?  
いやでも…はい、やらせていただきます。  
どうやれば良いんだっけ…キスって…とりあえず、顔近付けて…  
あ…唇カサついてないかな私…リップ持ってたっけ……  
 
「大丈夫だから!!さっきもっと凄いことしてたのに何でそんな乙女チックになるの!?」  
 
いや…これはマナーだと思います。  
 
では、いざ…!!  
…いや、男の唇って想像してたより硬い質感ですね。  
いやでも…粘土…紙粘土?  
…グラサン邪魔に感じる。  
こいつ眼どんなんだろ…見たことないな。  
でも、ここで見たいとか言っても外してくれないだろうし…盗っちまうか?  
キャラの一部だから…これ盗ったら色々困るかも知れない。  
盗って良いかな…盗っても良いよね?  
肩に置いていた手をさり気なく移動させて…後頭部へ……  
…………!!!!??  
 
「澪ちゃん…何で逃げるの?」  
 
気づけば唇どころか体も離れた場所に私は立っていた。  
約3m…片手に硬い感触………サングラス?  
盗ってた!!盗ってたよ!!  
ちょっと掛けてみよう…  
 
「澪ちゃん、さっきの質問の答えは?」  
「それとも何だ?サングラス盗りたいだけにこんな大掛りな芝居したのか?」  
 
それは、違う…何か口の中にニュルッてしたもんが入ってきて吃驚したから…  
 
「あぁ、それ俺の舌。」  
「澪ちゃん、舌入れてこないし…ちょっと困った顔して可愛かったし、後頭部に手を移動させてくるから…」  
「まさか…そんなに穢れを知らないとは……」  
 
うん…すいません。  
経験値0です、私。  
 
「サングラスを返してくれ。」  
 
大きな歩幅で歩いてくる奴の顔は、思ってた以上に格好良かった。  
いや、夢だから美化させてんのかもしれないけどね。  
これが、すっごい好みの顔なんだよなー  
 
「はい、返す。」  
 
気づけば真ん前に顔があって、私はもう少し顔を見ていたくてサングラスを後ろ手に隠した。  
 
「澪ちゃん、返そう?」  
 
黙って俯いていたら、耳に重低音の声が入ってくる。  
後ろで両手でしっかりと握っていたサングラスに、持主の手が伸びてきた。  
嫌だ…  
 
「ゲームをしようか、澪ちゃん?」  
 
ニッコリと無邪気な顔で笑ってくる。  
 
「どうやら澪ちゃんはそれが気に入ったらしいけど、俺は返して貰いたい。  
だから、ゲームをする。公平で澪ちゃんの望み通りで俺も楽しめるゲーム  
そんでもって、景品はそのサングラス…中々良い案だろ?」  
 
言うまでもなく、私はその案に乗った。  
 
「野外と屋内どっちが良い?」  
 
…はい?  
 
「俺はそろそろ秋も深まるんで、屋内が断然良い。」  
「いやでも…場所あるか?  
家…?俺の家…?この前変な菌類が群がってたのを見た気がするな」  
「適当に見繕って…だと、あの辺か?」  
 
独り言を言いながら、この男は私から制服の上着を脱がして棒タイを解くと、  
髪を手ぐしで梳いて勝手にポニーテールにし、棒タイで器用に括る。  
 
「はい、俺のコートの中に上着隠して持ってみ?」  
「あー…うん、澪ちゃん大人っぽい顔してるから大丈夫だな。」  
「じゃあ、おっさんに身を任せて一緒に来なさいな。」  
 
何の真似なんだろうか…これは……  
とりあえず、追いかけて行けば…色鮮やかなネオンの街に照らされて…  
あっという間に、ラブホテルの一室へ…  
 
「ま、驚くのも仕方ないけどな…先ほどのちょっとした服装の改造はカモフラージュだ。  
俺も警察に知り合いいるからなー…援助交際思われて捕まって殺されるので、  
会社帰りの新米OL目指してやってみました。」  
「澪ちゃんの巨乳と度胸だからできることだな。」  
 
それは分かった。今から何するつもりか私は聞きたい。  
 
「え、ゲームだけど?」  
「ルールは簡単。今から俺と情事をしてもらう。  
その間、澪ちゃんがサングラスを守り抜けば勝ち、俺が奪い取ったら澪ちゃんの負けな?」  
「言っとくけど俺はいじめっ子体質だから、泣いても手加減しないぞ?」  
 
やっぱりド変態だったコイツ!!  
メチャクチャ笑ってんだけどコイツ!!  
発想から危ない奴じゃねーか!!  
 
「澪ちゃん、やる?やらない?」  
 
やってやろうじゃないか、ド変態野郎!!  
 
まず、ゲーム開始の体勢から変態炸裂だった。  
あいつに私が襲いかかった時の体勢…向かい合うように胡坐の上に座った体勢。  
後ろでにグラサンを握ってる私って…凄く不利じゃないか!!  
 
「ゲーム開始するぞー?」  
「はい、開始。おっさんがルールの全てだから。」  
 
それはあまりに身勝手だろ!!  
 
「知らん。俺は澪ちゃんを苛めて楽しんでサングラス奪い返すだけだもんよ。」  
 
制服のカッターシャツを脱がせようと、ボタンをちまちま外していくゲーム発案者。  
っつか、今…背中軽く触っただけでブラのホック外したぞコイツ!!?  
どれだけ手慣れてんだ!?  
 
「この技は男は全員使えると思っても良いぞ。」  
「はい、バンザーイ」  
 
素直に言葉に従って後ろ手にしてた両手を解いて、上へあげる。  
袖の中にグラサンを滑り込ませ、落ちてきたところを肩と首で挟み、  
シャツを脱ぎ終わって自由になった手で胸を両手で隠す。  
ついでに、グラサンは胸の谷間に挟んでいる。  
我ながら良い考えだ!!胸の谷間に手を突っ込める奴なんて現実にはいないはずだからな  
 
「お前は峰さんか?」  
 
呆れ顔で普通に腕を胸から引き剥がされた。  
で…胸から落下したグラサンはまだ脱がされてないスカートの上へ…  
これはマズイ!!と直感した私は、奴を押し倒しグラサンをさっき脱いだシャツに包み、  
ベッドから離れた場所に投げた。  
おそらく、グラサンは無傷だと思う…たぶん、きっと……  
 
「あー…壊れてないと良いな。」  
 
ゆったりとした口調とは裏腹に、私の肩と腰に手をかけて思いっきり抱きしめてきた。  
ちょっ…何!?  
 
「え?普通にSEXするだけだが?」  
 
スカートのホックを外し、ジッパーも下ろされる…  
本気で胸板から離れようと抵抗しているのに、肩に回された片手一つで無力化される。  
これが、男女の差なのだろうか…  
こうやって、太腿を触られるだけで…尻を撫でられ……何触っているんだ!!?  
ちょっ…嫌だ!!パンツに指引っ掛けるな!!何そのまま下ろそうとしてんだ!!  
 
「そりゃー邪魔だからだよ、澪ちゃん。」  
 
これ最後の砦だぞ!!?これなかったら…私、全裸じゃないか!!  
乳は良い、まだ許せるけど下は…まだ心の準備どころか………  
 
「へー…可愛らしいのが今はあるんだなー」  
 
いつの間に剥ぎ取った!?本人の眼の前で広げて見るな!!  
指に引っ掻けて、ぶんぶん回すの止めろ!!  
動こうにも足は絡められて解けないし、片腕で肩は押さえられてるしで身動きができない。  
 
「返してほしい?」  
 
涙目で勢い良く頷く私の顔を見て邪悪な笑みを浮かべた男は…  
指を少し動かしただけで、私の砦を遠くに飛ばしてくれやがった。  
 
この馬鹿は何だろうか?  
こう…先程から私は嫌だ嫌だと言っているんだけどな。  
キスマークは理解できるが、歯型を刻む馬鹿がどの世界にいるんだ!!  
 
「何か…吸いついて赤い痣が残ってもなー…?」  
「痣は痣でしかないし、蚊に刺されたって言い訳されたらそこまでだしなー…」  
「歯型は確実に誰かのもんだって判る上に、俺に『喰った』感がある!!」  
 
うわー…力強く私は物扱いされたな。しかも、食べ物扱い。  
手首につけた歯形をなぞる様に舌を這わせても……すいません、上目遣いは止めてください。  
顔を逸らして知らん振り…いや、耳まで真っ赤なのは自覚してんだけどね。  
ニヤニヤ笑うな!!眼を合わせようと迫って来るな!!  
 
「澪ちゃん、眼を逸らすのは動物世界で屈伏を意味するらしいぞ?」  
 
あんだとチクショー!!?  
 
挑発だと分かっていても腹が立ったのには変わらないから、真正面から堂々と睨みつける。  
少し眉を上げた奴は、眼を細め満足そうに…余裕の笑みを浮かべる。  
余裕!?余裕か、コンニャロー…私はいつも必死なんだ!!  
動揺させたいの一心から半ば噛み付くかのようにキスをすれば、舌を滑り込ませて貪られる。  
お互い眼を逸らさず、私は睨みアイツは微笑さえ浮かべて口内を探り合う。  
いや、ちょ…押し倒すな!!  
 
「俺は初めて…ここまで抵抗する奴と対面したな。」  
 
押し倒すのを阻止せんと額で頭突きをしようとすれば、二度目は喰らわないと右手で頭を押さえられた。  
そして先程の台詞を溜息混じりに吐いて嘆くように…項垂れて私の肩に頭を乗せる。  
 
「澪ちゃん、絶対俺のこと嫌いでしょ?」  
「だって強姦じゃないのに、何この抵抗…普通は恥ずかしそうに頬赤らめて…」  
 
ここから、この男は自分が興奮するシチュエーションとやらを語るが、  
それは一切私に繋がるものはなかった。  
いやいや…泣いてない。泣かないから、私強いもんよ。  
嫌いじゃないし、むしろこの筋肉馬鹿が好きですよ。  
 
「何か、鼻息荒いよ? 澪ちゃん興奮して………」  
 
我慢してませんよ、我慢することなんて何一つないしな!!  
おろおろするなよ…私はだな……!!?  
何、その表情!!凄いニヤけてる…どころじゃないよな!?何かもう、獣だろ!!  
獣が獲物を狩る前の悦びの顔だよな、ソレ!!?  
 
「あー…ゾクゾクする。」  
 
それはこっちの台詞だろ!?  
両腕で、頭を挟み込み舌をべっとりと頬にくっつけ、そのまま眼まで覆うように舐める。  
視界が唾液でぼやけたかと思えば、首筋に痛みが走った。  
瞬時に頭に走った言葉は『喰われる』で、言葉通りに奴は首に走る頸動脈に牙を食い込ませようとしていた。  
 
「………虐めても大丈夫だろ、澪は」  
 
低い低い声で、色気さえ漂わせて…完全に怯えた私の眼に笑みを映す。  
嫌だ、止めろと言っても、今のこの男は止めないだろう。  
私の無言は承諾と捉えられ、服を脱ぎ、私と同様に全裸になった。  
 
 
 
胡坐を掻いて澪を後ろから抱え込む。  
指で唇の形を確かめるようになぞり、吹きかかる温かい吐息で指先が湿る。  
反対の手では柔らかい内腿を触れるか触れないかで這わせる。  
 
「…っつぁ……」  
 
時折こんな風に声を上げる澪の顔は、眉を顰め眼は潤んでいるのだろう。  
俯いて見えない顔を唇を弄んでいた手で、顎を持ち上げ眼を合わせる。  
予想通りの顔で、まだ羞恥があるのか眼を逸らそうとして長い髪が顔を隠す。  
 
「見ないでくれ…」  
 
か細い声で、泣きそうな声で力無く言う。  
いや…まぁ、先程理性が何処かへ旅路に出ていた俺が何したかって聞かれたら困るけどな。  
っつか、謝る余地がない程荒々しく抱いて、澪の色んなもん奪ったし、未だに下は繋がったままだし…  
色々ヤバイ事やったので、その辺は自己規制させていただきます。  
ただ、謝る事があるとすれば……すいません、デコピンで乳首やら何やら弾いて…  
 
「そうじゃない!!あれは痛いけど…あの……後処理は気持ち良……」  
 
あぁ、口に含んだな。色々痛そうだったし、唾液を舌で擦りこむ度に澪の嬌声は…  
 
「言うな!!気持ち良かったから仕方無いんだ!!」  
「私が落ち込んでんのは襲われたからじゃなくてだな…あのむしろ襲われるの好きです。」  
「じゃなくて…何故、血が出ないんだ!!私は貞操を守ってきたはずだ!!」  
 
アレ…あれか……最近の子はすでに発育段階で破れてるらしいな。  
良いじゃないか、痛いの無くて  
 
「痛かったわ、ボケ!!何あのグロい太い長いもん!!ビビッて泣いてしまったじゃないか!!」  
 
人は痛みを伴って成長するんだぞ、澪。  
何やかんや言ってちゃんと今も納まってるし、ちゃんと締め付けてくれて…怖っ!!  
 
「抜け…今すぐ抜け!!」  
 
……殺気立った眼してるけど、さっきの行為で口しかまともに動かないのオジサンしってるからね?  
少し腰を打ちつければ、歯を食いしばって澪は白い喉を反らす。  
と、同時に後頭部で顔面を狙って頭突こうとする。  
うお…油断も隙も無ぇ……あの勢いで当たってたら鼻血出てたな。  
 
「クソッ避けやがって…」  
 
避けるよ、避けますよ…痛いのはオジサンだって嫌だもんよ。  
 
もう頭突きは嫌なので、体位を変えた。  
下は繋がったままで、顔がまともに見れるように澪の体を反転させる。  
内壁が抉られ一際高い嬌声が響く。  
他の女の声は耳が痛くなるような高音で、超音波?  
蝙蝠が飛んでくるじゃないのか?って感じだけど、澪の声は静かで好きだ。  
我慢強い性格からか、零れるのは吐息がほとんどで奥歯を噛み締めて声を殺す。  
顔を両手で包みこんで、もうちょっと声を出してくれても良いんじゃないかと言えば、  
 
「お断りだ、絶対嫌だからな。」  
 
とか何とか、放せとばかりに腕を掴み、白髪の前髪の間から睨んできた。  
…反抗的な態度をされると虐めたくなるのは、俺だけか?  
静かに唇に舌を差し込み唾液を流す、無抵抗に受け入れる澪の手は俺の首へ…  
爪を立てて首を絞めてくるがお構いなし。  
 
嫌よ嫌よも好きの内って言うけど…澪をそうなのだろうか  
一息吐いて呟いてみる。  
 
「私がツンデレだと…?」  
 
……そうは言ってない。  
いや、ほとんど五分くらい呼吸させてないんだけど…よく生きてるなこの娘。  
 
「私は違うからな!!半分そうだけど違う!!」  
「虐めて欲しいが故に、反抗するのもあるけど…」  
「いや、それがほとんどだけど…」  
 
…マゾだ。澪のMはマゾのM?  
いやいやいや…俺の性癖知ってて……ない、ないない。見せてないもんよ。  
俺の影響じゃない………多分。  
きっと…  
…………おそらく  
あまり考えたくないので、腰を動かして誤魔化す。  
 
「澪…下の口が咀嚼する音が響いてる。」  
 
そりゃあ、お前がワザと水音立てる為に腰振ってるからだろ。  
こっちは声を漏らさないように頑張って歯食いしばって…っつぅ〜…だな!!  
あ〜最悪、ちょっと声出ちゃったよ…集中してんのに邪魔するな!!  
くつくつと喉の奥で笑うな、余裕かますな…〜〜ぁ……  
コイツ…今、いきなり速度落としやがった!!  
 
「ん…何か?」  
 
平然としやがって…眼が笑ってんだよ!!  
頭突きは避けられる…ならば、チョップしかないだろう!!?  
………ベルトで両手首を後ろでまとめられました。  
 
「往生際が悪いな、澪…」  
「反抗期?思春期?」  
「あー…手が後ろに回ってるから、胸が突き出る格好に……」  
「(縄で縛るとかいうのが情事であるのは、女の体を綺麗に見せるためだとか言うのは…)  
あながち嘘じゃないかもな。」  
 
って、何だその()の中は!!そして、その笑みも何だ!!  
満足そうな顔で胸…胸ムネ……胸肉に噛り付くな!  
 
「え…何で胸の後に肉入れた?」  
「胸のほとんどは、脂肪だぞ。」  
「澪の体脂肪率の内、何割がこの巨乳が占めてんだろ…」  
 
あ、最後のはちょっと興味ある。  
 
澪の意識が別のとこに向いたのを確信して、また速度を速める。  
意表を突いた攻撃程、相手が素の顔を出す機会はない。(自論)  
胸肉こと、乳を揉みほぐし、飾りを弾いて口に含み、顔を覗き見る。  
あーあーあー…泣いちゃってるよ…可愛いな、おい。  
そこまでして声を出したくない理由って何だろな。  
理性?理性ですかね?どうでしょうか、七味か一味か十味のじーさん。  
はい、何も聞こえて来ない。  
うん、生きてるもんな…あの人絶対長生きするよ。  
 
「今、考えてた奴は男か女か答えろ…」  
 
涙声で言われても…今のは警察の爺さんだな。  
え?何…嫉妬?嫉妬なのか?いやー…抵抗はしても、その辺は女なんだな。  
男冥利に尽きるな〜。  
じゃあ、お礼に善がるくらい喜ばせてあげないとな〜?  
 
「待て!!話が飛んだぞ!!」  
 
はいはい、飛びましね。じゃあ、澪も飛んじゃって?  
ギリギリまで引き抜いて、一気に貫く。  
何度も、何度も繰り返して…やっと、声が聞こえてくる。  
最初は風が吹き抜けたような音…  
 
いきなりの事で、喉から息が吹き抜けた。  
何度も襲い掛かって来る、下からの衝撃と何かの波。  
首筋に掛かる吐息が熱い…口を覆いたいのに手が後ろにある…  
どうしよう…どうしよう、どうしよう声が……やぁ…ぁ…  
 
「…可愛い。」  
「あれ、すっごい意外で…吃驚だ。」  
「名前呼んでみ、名前」  
 
…明神?  
 
 
違う!勇一郎だからな!!  
いや、名前そんなに周りに教えてないからだと思うけど…  
 
「ゆー…いちろ?」  
 
頭回ってないから舌足らずなんだろうけど、これは良いなーっと素直に思う。  
名前って大切だと思うんだよな。  
呼べば呼ぶほど馴染むし(下半身も)、うん?この先?  
ご想像にお任せします。  
 
 
散々啼かされた挙句…意識飛ぶまでやられましたよ。  
気持ち良かったけど…じゃなくてだな、あぁ、もうこれは…シメる!!  
これら全てコイツとの獣的接触を終えた今、刀とジャックナイフで刻んで、爆破させる!!  
それとも剄伝導済みの水を体内に入れて殺すか…ミズチお前との戦いは無駄ではなかった。  
 
「生々しいな!!それメッチャクチャ苦しい死に方だろ!!」  
 
水は人の体内に必要とされる反面…一歩間違えば殺しの道具になる。  
高圧掛ければ…フフフ、まぁ楽しいことはできる事は確かだな。  
 
「俺の方が優位なのに何で脅されてんだろ…」  
 
この世は、実は女性が強いのだよ勇二郎君。  
 
「勇一郎だから…二じゃなくて一だからな。」  
 
 
この夢が覚めた朝、私は清々しい気分で泣いた。  
 

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