テレビではお笑い芸人たちが入れ替わり立ち替わり漫才をしていた。  
明神はそんなテレビをぼんやり見ていた。  
時間は0時を少し回ったところ。  
そろそろ寝ようと思いつつも,なんとなく動くのが面倒くさくてだらだらしていた。  
その時コンコン,と小さくノックの音が聞こえた。  
このうたかた荘でノックをする奴は一人しかいない。  
「どうぞ〜」  
そう答えると小さい影がするっと入ってきて,ドアを後ろ手で閉めた。  
ぱたん,とドアと空気の音がする。  
「どした?ひめのん。こんな時間に」  
姫乃は答えずにもじもじして,明神の部屋をきょろきょろと見回している。  
「座る?」  
自分の隣を指差してそう聞くと,こくん,と頷いて小走りでやってきた。  
「どーした? 眠れないのか?」  
姫乃はふるふると首を振る。いつの間にか明神のクッションを膝に抱え込んで,そこに鼻をうずめてしまっている。  
明神は姫乃がやって来た理由が全くわからなかったが,まぁいいかと思ってテレビに視線を戻した。  
あ,この芸人ちょっとおもしろいんだよな……  
「あのね」  
姫乃がクッションから顔を上げ,思い切ったように言った。  
「うん?」  
明神の意識は半分以上テレビにあった。  
「……あの」  
「うん」  
「みょーじんさんのこと,とーごさん,って呼んでもいい?」  
テレビの笑い声だけが部屋に響いた。  
 
「え」  
姫乃を見る。姫乃は上目遣いに見上げてくる。何これ?  
自分の顔がみるみる赤くなっていくのがわかる。  
「え」  
間抜けな声しか出ない。しかも二度目。  
突然何言ってんだとか,むちゃくちゃ嬉しいよそんなのとか,それを言うために今までもじもじしてたの!?可愛すぎるとか  
頭の中は色んな言葉で埋め尽くされているのに。  
姫乃から『駄目なのかぁ……』という残念オーラを感じる。  
「や」  
自分のヘタレ具合に涙が出そうだった。  
「よろこんで……」  
それまで不安気な目で明神を見つめていた姫乃が,ぱっと笑顔になった。  
「ありがとっ」  
明神はコクコク頷くことしかできなかった。  
「じゃあ私部屋に戻るね」  
そう言って姫乃は立ち上がろうとする。  
「え,それ言うためだけにわざわざ来たの?」  
「……うん」  
姫乃がまた少しもじもじした。  
「お昼間とかはみんないるから,恥ずかしいもん。この時間だったらみんな寝てるから……え?」  
明神は姫乃の手を握り締めていた。  
 
「みょーじんさん……?」  
「呼び方違うんじゃない?」  
「とっ………………………………とーごさん,どうしたの?」  
明神は答えず,姫乃の細い体を引き寄せて抱きしめた。  
折れてしまいそうだ。だが,あたたかい。  
唇を重ねると,姫乃は一瞬体をこわばらせたが,やがて明神の背中に腕を回してきた。  
明神はそのまま姫乃をゆっくりと押し倒す。  
パジャマのボタンに手をかけたが,ふと気付いて手を止めた。  
「……あんまり見ないでくださいっ」  
姫乃がぱっ,と腕を寄せて胸を隠す。いやまだ外してないから何も見えないんだけど……  
「この時間に下着をつけず男の部屋に来るなんて……危なすぎるっ」  
保護者の言い方になってしまった。  
だってぇ……と姫乃が胸をガードしたまま見上げてくる。  
「私,冬悟さんとなら,いいもん」  
そう言い終わったか否かの唇に,明神は喰らいついた。  
舌を絡ませながら,右手でボタンを外し,胸を揉んだ。  
「ぷは……んっ」  
やっと口で呼吸できるようになった瞬間に乳首をつままれ,姫乃は小さくあえいだ。  
明神の舌が姫乃の乳首を弄ぶ。  
「ゃっ……んんっ」  
明神の右手は姫乃の秘部に伸びていった。すっかり濡れているそこは,明神の指を軽々と吸い込んだ。  
くちゅり,と卑猥な音が響く。  
テレビからはまだ笑い声や話し声が上がっていたが,全く気にならなくなっていた。  
「ゃぁぁ……」  
奥まで指を入れると,姫乃が小さくいやいやをした。  
「嫌なの?」  
少し意地悪く聞いてみる。恥ずかしがっているだけなのはよく判っている。  
姫乃はぷぅっと膨れてみせ,明神の頭を引き寄せてキスを求めた。  
「嫌じゃないー」  
「じゃぁ……いい?」  
姫乃がこくん,と頷く。  
明神はもう一度軽くキスをしてから,十分に潤った姫乃の中に侵入していく。  
もちろん明神の準備は完璧だった。  
姫乃が明神をしがみつくように抱きしめ,肩に少し歯を立てた。  
「! ひめのん,痛い!?」  
「……だいじょぶ。きて」  
ゆっくりと奥まで挿れる。姫乃が何度か深く,熱い息を吐いた。  
「大丈夫?」  
汗で少し湿った前髪をかき分けてやると,姫乃は笑顔で頷いた。  
それを見てから,明神も微笑み,ゆっくりと動き出した。  
徐々に速度を上げる。  
姫乃がよがり,締め付けてくる。  
「……とうごさんっ」  
「姫乃……!」  
腰を動かしながら何度も何度もキスをした。そして,果てた。  
 
「うわああぁ」  
しばらくはぐったりしていたのだが,我に返ると罪悪感にさいなまれ,明神はバタバタ転げまわった。  
「ど,どーしたの!?」  
「……俺,ひめのんが高校卒業するまでは待つつもりだったんだ。ほんとだよ」  
恥ずかしそうにしている明神を,姫乃はおもしろそうに見上げた。  
「えへへ,でも私は嬉しかったよ,冬悟さん」  
そう言って腕の中にいた姫乃は明神に抱きついた。  
 
 
おわり  
 

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