ある日の体育の着替えの時。
「いいなぁ、エッちゃん」
姫乃は自分の着替えの手を止め友人の体をじっと見ていた。
エッちゃんが訝しげな顔をする。
「何、人の身体じろじれ見て」
「だって大人っぽいんだもん。あ、この下着もいーな。
可愛いのにちょっと大人っぽい感じがする」
「姫乃はそのままで可愛いからいいじゃない」
「だって」
姫乃が顔を赤くする。
(明神さん大人だからなぁ…早く釣り合うような大人の女性になりたい)
「わかった。例の彼氏の事か」エッちゃんは少し考えた後、
「じゃあ放課後に私がよく行く下着の店に行ってみる?急に大人っぽくなるのは
無理かもしれないけど」
「うん!行く。ありがとう、エッちゃん」
そう明るく笑う顔にはあどけなさが残る。
エッちゃんお勧めのランジェリーショップに到着してから姫乃は大はしゃぎだった。
「うわ、これすごい!」
手にしているのはどうはいたらいいのか分からない紐の様なショーツ。
エッちゃんが呆れて引き戻す。
「あんたにはまだ早いって。姫乃ならこの辺りのがいいんじゃない?」
可愛い物が揃うメーカーのコーナーに案内する。
「うわー可愛いー。でも、もうちょっと大人っぽいのがいいなぁ」
綺麗なレースがあしらわれた布の数々を見て回る。
「あ、エッちゃんこれなんかどうだろ?」
「…多分似合わない」
姫乃がまず選んだのは黒の少し透けたブラだった。
「下着って難しいね。あ、これは?」
「姫乃、その前にサイズいくつなの」
エッちゃんが冷静に聞く。姫乃は周りに聞かれるのが恥ずかしいので耳打ちする。
「うーん、微妙なサイズかも。例えばほら、今あんたが手にしてるので姫乃のサイズある?」
言われてタグを確認すると姫乃の一つ上のカップのしか並べられていなかった。
「えっそんな。もしかしてあれとかも?」
確認すると同様の結果だった。
あれこれ見たが、その日はこれといった手頃な物は見つからなかった。
「はあ…。大人っぽい下着を着るにはまず胸がないとダメなのか」
かくして姫乃は明神に胸を大きくする方法をしつこく聞くようになったとか。
おしまい